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新しい未来へ~互いを救ってくれた愛と共に…。~【凛と拓夢の話3】

さよなら……【凛と拓夢】

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触れ合った指先が離れていく。これでもう本当に最後なのはわかってる。終わりに近づけば近づくほど、この手を手繰り寄せたくなる。凛は、精一杯笑ってくれていた。

「じゃあ、元気で」

「拓夢も……」

振り返れば二度と戻る事は出来ない。

「せーので進もうか?じゃなきゃ、俺。歩けないよ」

「私もだよ」

俺と凛は、お互いに見つめ合う。

『せーの』

一緒に言ってから、回れ右をした。

背中合わせに、まだ凛がいるのを感じる。

「じゃあ、また、いつか」

「うん。また、いつか」

歩き出したのが同時なのが、わかった。凛のヒールのカツカツという音だけが規則正しく聞こえている。振り返る事はしない。

振り返れば、二度と凛を手放せなくなる。

「凛、ありがとう」

「拓夢、ありがとう」

俺達の声が響いて重なり合う。音だけが、抱き合ってくれていた……。

俺は、泣きながら歩いて行く。

「帰ろうか!星村君」

「はい」

出た所で、相沢さんが待っていてくれた。

「凛は?」

「見てないよ。会場に戻った……」

相沢さんの言葉に膝の力が抜けて崩れ落ちそうになる。

「大丈夫か?星村君」

「すみません」

「絶望だろ?これ以上にないくらいの……」

「はい……」

今までの【さよなら】とは違う。重くて痛い【さよなら】だった。

「素敵な歌詞がかけるね。急いで、帰ろう」

「はい」

相沢さんは、俺を支えてくれて歩き出す。

身体中に力が入らない。
味わった事のない絶望。
俺、こっから本当に復活出来るのかな?


♡♡♡♡♡♡♡♡

拓夢に絡み付いていたいぐらいだった。今すぐに、拓夢と愛し合いたいぐらい。未来なんかなくたっていいと思えたなら、この結末はなかったのかな?

【せーの】で、背中合わせになった。

まだ、拓夢の温もりがあるのを感じる。

歩き出したのは、同時だった。

拓夢の歩く足音がかすかに聞こえてくる。

「凛、ありがとう」

拓夢の声が聞こえ、私も叫んだ。

声が、重なり合う。まるで、愛し合っていたあの頃のように……。

振り返ってはいけない事はわかっている。もう、戻る事は出来ないのだから……。

会場の入り口についた時、私は拓夢にバレないように見てしまった。

拓夢は、こっちを振り返る事なく出て行った。

胸が痛くて、息が出来ない。苦しくて、悲しくて堪らなかった。

私は、会場の扉を開ける。

「もうすぐ、終わりだって……」

龍ちゃんが扉の前で待っていてくれた。

「龍ちゃん……」

足の力が抜けて、私はふらついた。

「凛、選ばなかったんだね……」

私は、龍ちゃんの言葉に頷く。

「頑張ったね、凛」

龍ちゃんは、優しく私の頭を撫でてくれる。

未来なんかいらないと思えたら違ったかも知れない。

でも、今の私はまだそんな風には思えなかった。

「龍ちゃん……私、ズルいよね。ズルい人間だよね」

「人間なんて、みんなズルいんじゃないか?俺は、ズルい凛も好きだよ」

「龍ちゃん……」

まっつんさんと理沙ちゃんの二次会が終わった。最後に二人から、ささやかなお礼として、天使の羽根がついたスプーンが渡される。

「おめでとう、理沙ちゃん、まっつんさん」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

私と龍ちゃんは、二人に会釈をしてから離れた。

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