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契約

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「ちょっと待って」
 
「ちょっと待ってよ」という声に止まって振り返った。

「まずは、俺が払うから」

何の話?

「佐浜さんが、書いた歌詞一曲一万円でどうかな?」

「そんなくれるんですか?」

「うん。ちゃんと一曲書いてくれたら一万円。俺が、半分書いたら5000円。それでどう?」

すごい、一曲書き上げれたら一万円もくれる。

私は、頷いた。

「じゃあ、やってみるって事ね。」 

「やってみたいです。」

「俺の名前の横にRってつけたら、あんたの歌詞が使われたって事」

「はい。」

「ついてなかったら、あんたの歌詞じゃないから」

「はい。」

「売れたら、また渡すから」

「はい」

「じゃあ、それで俺と契約ね。」

嬉し過ぎて

「マジ、感謝です。」って言ってしまった。

あっ、ヤバ

「何それ?マジ感謝です。って何?」 

めんどくさいこの人

「何、急にそれ?」

「嫌、なにもないですから。」

「だから、それなに?」

しつこい、めんどくさい

「もう、いいです。」

「まぁ、いいや。」

この人って性格悪いよね。

絶対、悪いよね。

「スマホ、貸して」

そう言われてスマホを渡した。

「はい、これで契約終了」

そう言ってスマホを渡された。

「ありがとう」

「あんまり、喜んでないよね?」

「いえ。」 

「好きな芸能人、俺じゃないとか?」

「はい。」

えっ?はいって言っちゃった。

「あー。気にしないで、気にしないで。大丈夫、慣れてるから」

嫌。何か傷ついた感じでてますけど

「ちなみにだけど、ちなみにだよ。誰が好きなの?」

「芹沢龍さんです。」

「そっちかー、そっちね。わかるよ、わかるわかる。すごくわかるよ。」

って、頷いてる。

「佐浜さんが、ちゃんと仕事してくれたら会わしてあげるよ。」

「本当ですか?」  

「急にキラキラするよね。」 

「すみません。」

「いや、全然大丈夫だから。」

「頑張ってみます。」

「思い付く単語やキーワードでてきたら、ショートメッセージしてくれない?一単語100円で買うから!」

「わかりました。やってみます。」

「とりあえず、最初は気になる単語送ってきて俺が繋げて送り返すから。それ見て感覚つかんで」

「わかりました。やってみます。」

「後さ、ちゃんとメンバーにわかってもらうから一緒に頑張ろう。」

「はい。」

「後、live見ていってよ!俺らのバンドの感覚掴むために」

「わかりました。」

「じゃあ、連絡待ってるから」

そう言って走っていった。

何かちょっと楽しかった。

夢なんてなんだったっけ?足が悪くなった時に捨てた。

赤ちゃんダメになって私の夢はお母さんになる事だって思って頑張って、心が壊れそうになった。

私、北浦巽さんの夢に一緒に乗ってみようかな。

こんなに楽しいの久しぶりだよ。


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