上 下
57 / 64
ルカの話

魂の選別

しおりを挟む
「彼の名前は、塩野風磨(しおのふうま)。29歳です。この大転換期の中での魂選別に外れました」

「魂選別って何ですか?」

俺の言葉に、ルシア様は、俺の肩を叩いた。

「説明しても?」

「はい、どうぞ」

ルシア様は、男に聞くと話始める。

「魂選別というのは、転換期や大転換期に行われる。死神の世界のいわば大掃除だと言われている。それに外れたものは、年齢に関わらず寿命を早めに切られてしまうのだ」

「魂を選別するのは?」

「神と下界にいる神のしもべだ」

その言葉に俺は、ルシア様を見つめていた。

「下界にいる神様のしもべがいるのですか?」

「いる!何食わぬ顔をして!来た」

その言葉に、俺達は見つめる。

「塩野さん、検温の時間ですよ」

看護士さんは、俺達三人を見つめて笑った。名札には、【神下】と書かれている。

「神下(かみしも)さん」

「はい」

「俺は、長くないんですよね?」

「どうでしょうか?先生に聞いて下さい」

そう言って、血圧を計るからと腕を出させた時だった。俺達にしか見えない何かを腕に入れた。

「血圧を上げるお薬頼んでおきますね!」

そう言って、お辞儀をした。俺は、神下さんを見つめていた。

「今のは?」

ルシア様に尋ねた!

「あれは、寿命をコントロールする為の虫だ」

「寿命をコントロール?」

「ああ、人間の目には癌って形にしか見えないだろう」

「癌って虫なんですか?」

「まあ!そうだよ。神様の作った虫だ!神虫(しんちゅう)って呼ばれてる。注入されても、人間が気付くのは無理だ。そして、神虫にも種類がある!今の黒かっただろう?」

「はい」

「あれは、助からない時の神虫だ!助かる場合は、白!闘病が長いが完治出来るのは青、長い闘病生活の末に亡くなるのは赤、そして、何をしても死ぬのが黒」

俺は、ルシア様の顔を驚いた顔で見つめる。

「彼が何をしたのですか?」

俺の言葉に、男が話す。

「大転換期は、魂の選別!選別と言うと何か悪さをしたからと思うでしょうが違います。間違って大量に放出されてしまった魂の回収です。大転換期には、転換期よりも多くの魂の回収が行われるのです」

「この魂は、元は犬だ!ルカ、おいで」

俺は、ルシア様に手を握られて塩野の胸にその手を置く。

【ワン、ワンワン】と心臓が鼓動を叩き返す。

「どういう事ですか?」

「猫も杓子もってやつですよ!塩野は、プロミスリングの超過死が起きた30年前に、この世に産まれました。30年前は、我々の世界では300年前です!覚えていないですか?ルカ」

男にそう言われて、俺は少し考えている。
しおりを挟む

処理中です...