上 下
62 / 64
リゼとルカの話

きちんと…(ルカ)

しおりを挟む
俺は、リゼの手を自分の頬に持っていった。

「リゼ」

「どうした?」

「頭を撫でてくれないか?」

「いいよ」

リゼは、そう言って頭を撫でてくれる。ドクドクが強くなるのを感じる。俺は、小さな頃母親によくこうされた事があった。頭を優しく撫でてもらった事が…。懐かしくて涙が流れてくる。

「ルカ」

「何だ?」

「また、向こうに帰ったら俺のバディになってくれるか?」

「許されるなら、そうしたいな」

「俺もだ」

確かにリゼなら、キスしてもよさそうだ!俺は、馬鹿馬鹿しい事を考えてる。どうやら、人間の感情ってものを勉強しなくちゃいけないようだ。
 
「そんなに見つめられたら照れる」

「もう充分だよ」

俺は、リゼの手を掴んだ。

「キスしたくなったか?」

リゼは、俺の顔を覗き込んでくる。

「何言ってんだよ」

「照れるなよ!俺は、してもいいよ」

「桜木杏柰としろよ」

俺は、リゼから目を反らした。

「何だよ!ルカ」

「いいから、早く戻れよ」

「わかったよ」

俺は、ドキドキと胸の鼓動が早くなるのを感じる。

「リゼ」

「何だ?」

「明日も待ってる」

「ああ、じゃあな」

リゼは、ニコニコしながらいなくなった。何なんだよ。俺は、リゼが好きだったのか?
思えば死神学校で、リゼがローズとイチゴジュースを飲んでた時も、胸の奥がチクリとした。あー、わからない。俺は、恋のこの字も知らないまま死んだ。だから、何もわからない。ただ、母親に対しての感情はわかっていたから…。それとリゼへの気持ちが同じだと感じていた。でも、今のは同じだったのか?
俺は、わからなくて頭を抱えていた。

「いろんな気持ちを経験しないといけないね!ルカ」

そう言われて顔を上げた。

「アーリーさんですか?」

「久々だね」

アーリーさんは、俺がリゼと言い争った日に助けてくれた死神だった。

「人間になれたんですね!」

「そうだよ!もうこっちに来て58年が経った」

「なかなか、会えなかったから心配していたんです」

「ルカも、元気そうでよかったよ」

アーリーさんは、目の前の椅子に腰かけた。

「どうして、ここに?」

「私も入院してるんだ!と言っても、死ぬような病気ではない」

「そうでしたか…」

アーリーさんは、俺の手を握りしめた。

「300年前、ルカに会った時は大丈夫かと思ったけれど…。リゼ君とは、素晴らしいパートナーになれたようだね」

「はい」

「ずっと気がかりだったんだけどね!私もバタバタ忙しくて!それで、10年前に下界(こっち)に飛ばされたわけだよ」

「どうして下界(こっち)に?」

「魂が不足していたらしいんだ」

そう言ってアーリーさんは、俺から手を離した。
しおりを挟む

処理中です...