11 / 136
【蛹は、蝶の夢を見る。】
TV【蛹は、蝶の夢を見る。】④
しおりを挟む
かわって、章悟と悠斗。
ソファーに座りながら、バーボンを飲む二人。
「愛する人の所有物で、いたいのにいれない事は、辛かっただろうね。」
「章悟、俺ね。姉ちゃんの旦那さん、殺そうと本気で思ったんだよ。」
「許せなかった?」
「許せるわけないよ。あの人は、姉ちゃんにこう言ったんだ。子供は、養子だっていいじゃないか?無理に君が作る必要はないんだよ。それは、何だよ。酷くないか…。養子だってって何だよ。姉ちゃんは、あの人の子供が欲しかったんだよ。あの人の遺伝子と自分の遺伝子が入った子供を望んだんだよ。軽々しく傷つけた事をあの人は気づいてなかった。」
「養子だって…」
僕は、その言葉に涙が止まらなかった。
養子を待っている子供達にも失礼な言葉だ。
愛する人との子供を望む、真壁さんのお姉さんにも失礼な言葉だ。
僕が、もし淳にそれを言われたら殺すだろう
そんなに軽く考えられている事に、嘆き苦しむだろう。
「俺は、姉ちゃんの葬儀の後、あの人に言ったよ。姉ちゃんを化け物に変えたのはあんただって!!あんたの言葉が、姉ちゃんを追い詰めた。あんたの言葉が、姉ちゃんを苦しめた。そう言ってやったんだよ。何度も話し合いをして、養子にしようと言うならわかるけれど…。何の話し合いもしてないのに、あの人は養子にしようと言い放ったんだよ。俺は、気に入らなかった。あの人の姉ちゃんに対する言葉が気に入らなかった。だって、姉ちゃんは出来るかも知れないから治療をしなくてもやれる事はやりたいって。」
真壁さんの目から、大粒の涙が流れてくる。
「わかるよ、僕も…」
どちらか片方が悪いなんてあるはずがないんだよ。
軽はずみな言動で、追い詰めてきたのは相手だ。
なのに、こっちがキレたりヒステリックになれば、DVだ!モラハラだと騒ぎ立てる。
僕も、淳にそう言われた。
【章悟に出すだけ、勿体ない】
別れ話の前から、何度も言われた台詞。
僕は、怒りで淳を殴り付けた。
【お前、すぐDVするじゃん】
と言われた。
殴りたかったわけじゃない。
好きなんかじゃ足りないぐらい愛してる相手で、なのに…。
勿体ないって、言葉を言われた事が許せなかった。
お前には、その能力がないんだよって言われてるのをわかっていた。
街行く家族を見つめては、【俺の子供もあんな可愛いかな?】って笑った。
だから、気づいていた。
勿体ない=出来ない体。
苦しくて、痛くて、悲しくて、毎晩毎晩、声を殺して泣いた。
その気持ちが、いつの間にか弾けとんで…。
気づけば淳を殴り付けるようになった。
もう、その言葉を言って欲しくなかった。
「大丈夫?章悟。泣いてるよ」
真壁さんは、右手で僕の涙を拭ってくれた。
「化け物を作るのは、いつだって人だよ。僕だって、彼を殺す。もし、今、彼が目の前にお腹の大きな女の人と現れたら……間違いなく殺す」
真壁さんは、僕のメガネをはずした。
「その目は、たくさん傷ついたんだね」
僕の前髪を上げて、目を見つめてきた。
「僕に出すのは、勿体ないと別れを告げる一年前から言われていた。多分、物色していたんだと思うんだ。毎回言われたんだよ。僕を抱く度に…。あー。勿体ない。眠ってる彼を殺してしまおうとも思った。愛してるから、憎しみが込み上げてきた。毎日、苦しんだ結果。僕は、彼を殴るようになった。勿体ないって、もう言って欲しくなくて。その言葉を言われたら殴った。だけど、気づいてくれなくてDV男にされたんだ。僕は、悪い人間だろ?大多数の人は、僕が悪い奴だって言うよ。小説や漫画の主人公に僕がなれば、迷わず叩かれるよ。わかるでしょ?真壁さん」
「大多数がどう思っても、俺は章悟を悪い奴だって思わないよ。章悟は、自分の心を守るためにそうしたんだろ?だから、俺は悪い奴だって思わないよ」
真壁さんの言葉に、無言で涙が流れ続けた。
ソファーに座りながら、バーボンを飲む二人。
「愛する人の所有物で、いたいのにいれない事は、辛かっただろうね。」
「章悟、俺ね。姉ちゃんの旦那さん、殺そうと本気で思ったんだよ。」
「許せなかった?」
「許せるわけないよ。あの人は、姉ちゃんにこう言ったんだ。子供は、養子だっていいじゃないか?無理に君が作る必要はないんだよ。それは、何だよ。酷くないか…。養子だってって何だよ。姉ちゃんは、あの人の子供が欲しかったんだよ。あの人の遺伝子と自分の遺伝子が入った子供を望んだんだよ。軽々しく傷つけた事をあの人は気づいてなかった。」
「養子だって…」
僕は、その言葉に涙が止まらなかった。
養子を待っている子供達にも失礼な言葉だ。
愛する人との子供を望む、真壁さんのお姉さんにも失礼な言葉だ。
僕が、もし淳にそれを言われたら殺すだろう
そんなに軽く考えられている事に、嘆き苦しむだろう。
「俺は、姉ちゃんの葬儀の後、あの人に言ったよ。姉ちゃんを化け物に変えたのはあんただって!!あんたの言葉が、姉ちゃんを追い詰めた。あんたの言葉が、姉ちゃんを苦しめた。そう言ってやったんだよ。何度も話し合いをして、養子にしようと言うならわかるけれど…。何の話し合いもしてないのに、あの人は養子にしようと言い放ったんだよ。俺は、気に入らなかった。あの人の姉ちゃんに対する言葉が気に入らなかった。だって、姉ちゃんは出来るかも知れないから治療をしなくてもやれる事はやりたいって。」
真壁さんの目から、大粒の涙が流れてくる。
「わかるよ、僕も…」
どちらか片方が悪いなんてあるはずがないんだよ。
軽はずみな言動で、追い詰めてきたのは相手だ。
なのに、こっちがキレたりヒステリックになれば、DVだ!モラハラだと騒ぎ立てる。
僕も、淳にそう言われた。
【章悟に出すだけ、勿体ない】
別れ話の前から、何度も言われた台詞。
僕は、怒りで淳を殴り付けた。
【お前、すぐDVするじゃん】
と言われた。
殴りたかったわけじゃない。
好きなんかじゃ足りないぐらい愛してる相手で、なのに…。
勿体ないって、言葉を言われた事が許せなかった。
お前には、その能力がないんだよって言われてるのをわかっていた。
街行く家族を見つめては、【俺の子供もあんな可愛いかな?】って笑った。
だから、気づいていた。
勿体ない=出来ない体。
苦しくて、痛くて、悲しくて、毎晩毎晩、声を殺して泣いた。
その気持ちが、いつの間にか弾けとんで…。
気づけば淳を殴り付けるようになった。
もう、その言葉を言って欲しくなかった。
「大丈夫?章悟。泣いてるよ」
真壁さんは、右手で僕の涙を拭ってくれた。
「化け物を作るのは、いつだって人だよ。僕だって、彼を殺す。もし、今、彼が目の前にお腹の大きな女の人と現れたら……間違いなく殺す」
真壁さんは、僕のメガネをはずした。
「その目は、たくさん傷ついたんだね」
僕の前髪を上げて、目を見つめてきた。
「僕に出すのは、勿体ないと別れを告げる一年前から言われていた。多分、物色していたんだと思うんだ。毎回言われたんだよ。僕を抱く度に…。あー。勿体ない。眠ってる彼を殺してしまおうとも思った。愛してるから、憎しみが込み上げてきた。毎日、苦しんだ結果。僕は、彼を殴るようになった。勿体ないって、もう言って欲しくなくて。その言葉を言われたら殴った。だけど、気づいてくれなくてDV男にされたんだ。僕は、悪い人間だろ?大多数の人は、僕が悪い奴だって言うよ。小説や漫画の主人公に僕がなれば、迷わず叩かれるよ。わかるでしょ?真壁さん」
「大多数がどう思っても、俺は章悟を悪い奴だって思わないよ。章悟は、自分の心を守るためにそうしたんだろ?だから、俺は悪い奴だって思わないよ」
真壁さんの言葉に、無言で涙が流れ続けた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる