彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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【身体だけが繋がらない】

【身体だけが繋がらない】⑥

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帰宅して、恵美子に離婚と言われて、服を着替えて家を出ていた。

ブー、ブー

「はい」

『もしもし、三上。晩御飯食った?』

「佐木先輩、お疲れ様です。今から、ラーメンでも食べに行こうかなと思ってまして」

『じゃあ、一緒に飯食おうよ!駅前で待ってるわ』

「わかりました。」

俺は、駅前まで行った。

「よっ!」

「お疲れさまです」

「嫁と喧嘩しちゃってよ。息子の高校受験、私立は駄目だとかそんなんでな!三上は?」

「今日、嫁が体調悪くて」

「えっ?おめでたか?」

「いや…。違うと思います。」

「そうか」

「何、食べますか?」

「焼き肉行こうぜ」

佐木先輩に、焼き肉に連れてこられた。

「お疲れ」

「お疲れ様です。」

「後で、いきつけのbarに連れていってやるよ。」

「ありがとうございます」

先輩が、肉を注文して俺は食べる。

「三上は、いいよな!子供なんかいたって金かかるだけだぞ!こんな、ご時世未来に期待なんかできないし。選択子なしが、正解だぞ!」

選択子なし?

誰が、いつしたと言うのだ。

「夫婦二人の方が、楽だぞ。この先の人生も大変だしな!今から、産まれたってめんどくさいだけだろ?子供産まれてから、喧嘩ばっかりだしよ。」

先輩は、愚痴を言いながら肉を焼いてる。

こういう話が嫌だから、俺は後輩としか飲みに行かなかった。

めんどくさい。

選択子なしだと思われている。

「さあ、bar行こうか」

そう言って、お会計をした。

「ここは、俺が払うから次よろしく」

「はい」

次って、何だよ。

恵美子の元にも、帰りたくないけれど…。

先輩とも、いたくなかった。

「ここのbarは、普通じゃないんだよ。」

「えっ?」

カランカラン

「いらっしゃいまーせー」

「ゲイバーだよ。」

「先輩、俺…」

「大丈夫、大丈夫。ゲイしかきちゃ駄目なわけじゃないから」

そう言われた。

暫く飲んでると…。

「悪いな!俺、沢井さんとガールズバー行くからさ!三上は、ゆっくりしとけよ。店長、こいつ。そっちじゃないからね」

「はい、わかりました。」

「よろしく」

そう言って、帰ってしまった。

何だ、あの人。

「悩みあるんですか?」

「えっ?ああ、まあ」

「私でよかったら聞きますよ」

「あっ。今日ね、妻に離婚って言われて。昔から、喧嘩する度に離婚だって言っちゃうような人なんです。でもね、そんな事言っても俺を愛してるのわかってるから…。なのに、今日のは違ったんです。本当にサヨナラって言われたんです。それを、ハッキリ感じてショックで…。」

「三上さんは、奥様を愛してるんですね。」

「うん。15年経っても、まだ妻を愛してるよ。俺達ね、子供出来ないんだ。それを周りには、選択して子なしを選んだって思われててさ。選択してたら、辛くなかったんだけどね。無理やり、それを選ばされたせいで。妻が、苦しい思いや悲しい思いをしてるのは、知ってる。でも、俺は妻を、その沼から救い出してあげられないんだ。」

思い出して、泣いていた。

店長さんに、ハンカチを差し出された。

「すみません」

「それでも、一緒に居たいからお互いに辛いんですね。」

「そうだね」

気づくとお酒をどんどん飲んでいた。

「閉店ですよ」

「寝てましたか?すみません」

「大丈夫ですよ。」

スマホを見たら、真夜中の2時だった。

「すみません」

フラッとしてしまった。

「送りますよ。私も上がりなんで」

店長さんに、送られる。

ふわふわ、ふらふら。

久々にこんなに飲んだ。

恵美子といたいだけなのに、どうして神様は、俺達に嫌がらせするんだよ。

二人の子供が欲しかったのは、俺だって同じだよ。

俺は、やっぱり恵美子と一緒に生きていきたいんだ。

初めて、こんなに人を好きになって。

初めて、こんなに一緒にいたいと思った。

結婚しなかったら、俺達は仲良しのままでいられたのかな…。



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