彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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【身体だけが繋がらない】

【身体だけが繋がらない】⑦

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ピピ…ピピ…ピピ…

「慎太郎、目覚まし!!!」

私は、目覚ましを止めた。

慎太郎が、帰宅してないなんて初めてだった。

事故に遭った?

スマホを見たけど、目立った連絡はない。

リビングに行って、家電に近づいたけど留守番電話も入っていなかった。

ポットでお湯を沸かしてる間に、顔を洗って、歯磨きをした。

「ポム、おはよ」

ポムに、朝御飯をあげる。

九時過ぎだった。

慎太郎に、メッセージを送る。

【夜、話せるなら話したい】

怒って、先輩のとこに泊まったのかな?

冷凍庫から、味噌玉を取り出してお湯でといた。

私達、どうなるのかな……。

.
.
.
.
.

画面が変わって、慎太郎ー

ブー、ブー

「う、恵美子。スマホ取って」

「はい」

「うわっ」

ビックリして、タオルケットを被ったままベッドから落ちた。

「驚き過ぎだよ。」

「店長さん、何で?」

「昨日、タクシー乗って寝ちゃうから。どこに連れていけばいいかわかんないから、僕の家にきたんだよ」

「俺、裸?」

タオルケットの下を覗いた。

「だって、そうなったから。あっ!避妊具はちゃんとつけたよ。」

「そうなったって?」

「体の関係」

「えー。」

BLものが、嫌いな俺が男を抱いたのか…!!!!

「気持ちよかったよ。すごく、相性よかったみたい」

「触(さわ)るな」

恵美子に、申し訳ない。

「泣かないでよ。僕から、誘ったから」

「そんな問題じゃない。」

どうしていいかわからない。

どんな顔して、今日恵美子に会えばいいのだ。

「ごめんね。お水飲んで、落ち着こう」

店長さんは、俺を宥めていた。

.
.
.
.

恵美子は、出かける準備をしていた。慎太郎から、何の連絡もなかった。

ピンポーン

「ポム、行ってくるよ」

恵美子は、ポムを撫でて家を出る。

「こんにちは」

「こんにちは」

「どうぞ」

「どうも」

玄関の鍵を確認して、浜田さんの車に乗り込んだ。

「主人が、帰ってこなかったんです。」

「そうなんですか」

「はい、離婚とか妊娠できないとかしたくないとかいっぱいいっきに話しちゃって。多分、落ち込んだんじゃないかって思ってます。」

「そうですか」

「何か、こんな話してすみません。」

「いえ、いいんですよ。気にしないで下さい。お昼は、食べましたか?」

「まだなんです。」

「食べませんか?一緒に」

「はい」

お昼ご飯を食べに行く恵美子と友里亜。

友里亜は、恵美子といるだけで幸せだった。

初めて泣いてるのを見た時から、惹かれていた。

そんな彼女が、助手席に座ってる事実だけで充分だった。

.
.
.
.
.

一方、慎太郎と慶太ー

「心は、奥さん好きでいいから。付き合って下さい。」

「突然、どうした?」

「一目惚れです。初めてです。あっ!男同士の恋愛って、割りと早いんですよ。だって、じっくり時間なんかかけてたら年取っちゃいますし。」

「そうだけど…」

「もう、奥さんとは、出来ないって泣いてました。だったら、僕と身体だけの関係でいいから…。お願いします。」

「待ってくれ。考えさせて欲しい。そんな、いきなり言われても困る。」

「そうですよね。わかってます。すみません。」

「店長さん、名前は?」

「笹森慶太です。」

「俺は、三上慎太郎」

「よろしくお願いします。」

「よろしく」

順番が、アベコベになってしまったけど…。

何だか、無下に出来なかった。

「子供出来ない事に、すごく苦しめられたんですね。昨日、そう何度も言ってました。恵美子、ごめん。って…。」

「そっか。そうだな!15年間の結婚生活で、13年間は子供を欲しがっていた。恵美子は、薬を飲まないと排卵しないらしい。でも、飲むと重度の副作用が出るんだ。だから、お医者さんがやめようって!これ以上すると、アナフィラキシーになる可能性があるって!恵美子は、怖くなったって泣いていた。でも、子供は欲しいと言っていたから…。自分で排卵を促す方法を調べてはやっていた。でも、排卵チェッカーは真っ白のままでね。俺も、精子の運動率が悪いんだって!だから、余計に出来なかったのかもな。もっと、若くて元気な精子なら恵美子に子供授けてあげられたのかな?」

笹森さんは、俺にハンカチを差し出してくれた。

「本当に愛してるんですね」

「ごめん。」

俺は、ハンカチをもらって涙を拭った。

愛しているのに、どうにもできない。

そんな事が、存在するって思わなかった。

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