彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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【身体だけが繋がらない】

【身体だけが繋がらない】⑪

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慎太郎は、恵美子より先に家を出た。
車に乗って、慶太を迎えに行く。
慶太は、嬉しさから下で待っていた。

「おはよう、慎太郎さん」

「おはよう、行こうか」

「はい」

慶太は、車に乗り込んだ。

わざわざ、隣の街まで行く。

「美味しいラーメンあるの?」

「うん、この八坂ってとこ食べたくてね!」

わざと、遠くにするのは噂をされないようにする為もあった。

「慎太郎さんとラーメン食べれるなんて嬉しい」

「よかった。」

笹森さんは、喜んでくれてる。

喜んでくれるのが、嬉しい。

俺は、笹森さんとラーメンを食べる。

「美味しい。」

「よかった」

ラーメンを食べ終わって、俺と笹森さんは店を出た。

車に乗り込んだ。

すぐに、気持ちを伝えた。

「車ですが、笹森さんに答えをいいます」

「はい」

「俺の心は、きっとずっと恵美子のものです。それでも、いいんでしょうか?」

「構わないです。」

「それなら、よろしくお願いします。」

「はい」

笹森さんは、人目もきにせず車の中で俺にキスをしてきた。

何度も、何度も、キスをしてきた。

.
.
.
.
.

かわって、恵美子と友里亜。

友里亜が、迎えにきた車に乗って映画館に行く。

【心だけが繋がらない】を見て、号泣した。恵美子

少し離れた場所の映画館にやってきたから、躊躇いもなく手を繋ごうとする友里亜。

恵美子は、それを受け入れた。

車に乗り込んだ。

「お昼、何食べる?」

「浜田さん」

「はい」

「私は、きっとこれから先も主人を愛します。それでも、本当にいいのですか?」

「構わないです。」

友里亜は、恵美子の手を握る。

「それなら、付き合ってみませんか?」

「はい」

友里亜は、恵美子にキスをした。

何度も、何度も、キスをした。

.
.
.
.
.

あの日から、3ヶ月が経った。

ピピピ…ピピ…ピピ

「慎太郎、目覚まし」

「はい」

相変わらずの朝を迎えていた。

顔を洗って並んで、歯を磨く。

トイレにいって、キッチンにいく。

一つだけ、かわったのは…

お互いに触(ふ)れない事だった。

「今日、慶太んちに泊まるから」

「了解!私も、友里亜が来るから」

「はいはい」

朝御飯とお弁当を用意する、恵美子。

向かい合って、食べる。

食べ終わると慎太郎は、珈琲をいれにいく。

二階の二部屋は、互いが恋人を泊めるための部屋に使うことにした。

珈琲を飲んで、慎太郎は立ち上がった。

「じゃあ、行くわ」

「気をつけてね」

恵美子は、お弁当を渡す。

.
.
.
.

夜ー

恵美子は、友里亜と抱き合ってキスをし始める。

慎太郎は、慶太と抱き合ってキスをし始める。

画面は、交互に二人を映し出す。

恵美子と慎太郎が、一緒に話す語りが流れる。

きっと、世の中の大多数の人は、私と彼の選択を気持ち悪いと嫌悪の眼差しを向けるだろう…。

それでもいい。

私達は、大多数の人間の選べる道を選べなかった。

私達夫婦には、この選択肢しかなかった。

常識や当たり前なんて、なくなってしまえばいい。

私達が、選ぶ道はこれが正解だった。

もう二度と、あなたとは身体だけが繋がらない。

繋がり合うことは、絶望する事だから…。

もう、これ以上の絶望はいらない。

これ以上の苦しみも悲しみもいらない。

切望する程に、惨めになった。

願う程に、悲しくなった。

叶うはずのない未来を何度手に入れたいと願った?

私達だって、大多数の中に入りたかった。

いらなかったわけじゃない。

手に入れられなかっただけ…。

他の道は、考えられなかった。

だから、私達夫婦にはこれが正解なんだ。

手に取るように、お互いの想いがわかるのに…。

身体だけが繋がらない。


恵美子と友里亜は、ベッドで横になる。

笑ってる恵美子を抱き締められるだけで、友里亜は満たされていく。身体の関係を失っても、恵美子に触(ふ)れられるだけでいい事がわかる。

慎太郎と慶太は、ベッドに横になっていた。

慶太は、慎太郎に抱きついているだけで幸せなのを感じる。
身体の関係を失っても、これだけで充分なのを感じている。

繋がらない身体と心を抱えながら、恵美子と慎太郎の日常はまた始まっていくのだった。



           END 
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