彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
48 / 136
【それが、運命(さだめ)ならば…。】

【それが、運命ならば…】③

しおりを挟む
恋ってなんだろうか?

どんな時に、おちるのだろうか?

中学に向かいながら、考えていた。

難しいけど、頭で考える事じゃないから…。

学校についた。

いつも、馬鹿にされる木の場所に愛斗がいた、通りすぎようとした。

ドクン、ドクン、ドクン

「うっ…」

『十季、大丈夫?』

血の通っていない手が、僕に触(ふ)れる。

昨日まで、何も感じなかったのに…。

どうして?

「苦しい」

『どこが?病院行かないといけない?』

「違う、違う。そうじゃない。そういうのじゃない」

『僕は、死んでるから十季を助けられないよ。病院行かないとダメじゃない?若くても、病気になるんだよ』

「だから、そうじゃないんだよ」

僕は、愛斗の腕を振り払って走り出した。

そんなんじゃない。

何だろう?この感じ

胸が苦しくなった。

聞いた事のない音を心臓が叩いていた。

ギューって、掴まれたみたいに苦しい。

昨日まで、何もなかった。

愛斗の顔が、急に見れなくなった。

僕は、淡々と授業をこなした。

「おい、遠藤」

「なに?」

「今日は、独り言いわねーのか?」

「毎日、言うわけないだろ」

「へぇー。たまには、普通の人間になりたいって思ったんだな」

「普通って何だよ」

「普通って言うのは、テメーみたいに独り言、言わない人間だよ。木に向かって独り言いうとか気持ち悪いんだよ」

ドカッ…と腹を蹴りあげられた。

気持ち悪いが、頭をこびりつく。

悪意が流れてくる。

学校が終わっても、僕は教室の椅子に座っていた。

「遠藤、気をつけて帰れよ」

「はい」

先生に、声をかけられて僕は立ち上がった。

トボトボと歩きだした。

普通じゃない。

僕は、気持ち悪い。

『十季』

手を引っ張られる。

「愛斗」

『泣いてるの?』

愛斗は、僕を引き寄せようとした。

「触(さわ)らないで」

その声に、愛斗は驚いている。

胸が、壊れる程に早くて愛斗を見れない。

『ごめんね』

愛斗は、項垂れて僕から離れる。

「ごめん」

『嫌いなのに、ごめんね。僕を見つけてくれたから、つい嬉しくなっちゃったんだ。』

その顔を見た瞬間、鼓動はさらに強くなった。

ドクン、ドクン、ドクン

「何で、朝も…。泣いてたの?」

『ごめん。忘れて』

愛斗は、そう言って目を伏せる。

「何で?何で?愛斗。朝も泣いていたのか教えてよ」

『それは、言えない』

掴まえようとした愛斗は、スッーと消えた。

言えないって、何なんだよ。

ふざけるなよ。

勝手に、現れるくせに…。

僕の質問には、答えないのかよ。

僕は、家への道を歩きだす。

『お兄ちゃん、泣いてる?』

「実奈ちゃん」

『どっか、痛いの?』

「痛くないんだよ」

『じゃあ、何で?』

「僕ね、今、恋をしてるんだ。」

『恋?』

「今まで、感じた事のない。胸の痛みでね。心臓病にでもなったのかと思った。息が苦しくなってね。胸がギューって絞られるみたいでね。顔が思うように見れなくてね。思ってる事と逆の言葉を言っちゃってね」

『うん、それで』

「好きな人と喧嘩してきちゃったんだ。」

『駄目だよ。仲直りしなくちゃ』

「そうだよね」

『よしよし』

僕は、実奈ちゃんに頭を撫でられる。

「明日、ちゃんと謝るよ」

『その方が、いいよ』

「そうだよね」

『どんな所が好きなの?』

どんな所と言われて、今朝の愛斗を思い出していた。

目に一杯、涙を溜めて誰かを見ていた。

その涙が、ポトリと落ちた瞬間

僕の胸は、押し潰されるかと思う程に痛みだしたのだった。

「凄く綺麗なところかな」

『そうなんだね。綺麗なお顔なんだね』

「うん。目がね!凄く綺麗なんだよ」

『そうなんだね』

「また、明日話そうね」

『うん、話して!聞きたい』

「わかった!また、明日。この時間にね」

『うん、じゃあね』

僕は、実奈ちゃんと別れた。

昨日、正美と志吹さんが言っていた、これが恋だ。

だけど、全然。

幸せじゃない。

苦しい

苦しい

僕は、胸を押さえながら家に帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...