彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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【それが、運命(さだめ)ならば…。】

【それが、運命ならば…】④

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帰宅するとすぐに、部屋に閉じこもった。

「十季、どうした?」

泣いてるのを正美に見つかってしまった。

「正美、僕ね。僕ね」

うまく話せない。

「十季」

正美は、僕の手を握る。

「十季、恋をしたんだね」

僕が、話さなくてもわかってくれた。

「正美、これは恋なの?」

「十季、恋だよ。よかったね。恋が出来て」

「でも、お化けだよ。」

「関係ないよ」

「男の子だよ」

「関係ないよ」

正美は、何も否定せずに僕を抱き締めてくれる。

「正美」

「よかったね。十季が、恋が出来て嬉しいよ。よかった。本当によかった。」

そう言って、正美は泣いてる。

正美は、僕の背中を擦ってくれる。

恋は、思っていたよりも素敵なものじゃなかった。

正美に抱き締められて感じる幸せと違うかった。

苦しくて、痛くて、胸が押し潰されて、涙が出る。

「どうして、よかったの?こんなの、しんどいだけだよ。」

「それが、大人になるって事だよ。十季」

「大人になる為に、こんな思いをしなくちゃいけないの?」

「そうだよ!十季、恋をしなくちゃ。これから、十季は沢山の幽体達に出会う。その悲しみ、苦しみ、痛み、わかってあげられるようにならなくちゃ。駄目なんだよ」

「正美も、こんな気持ちを味わった事があるの?」

「あるよ!十季。」

そう言って、正美は僕の頬の涙を拭ってくれる。

「僕は、どうしたら、いいの?」

「話しかけなよ。十季」

「無理だよ!イライラする」

「それは、十季がヤキモチ妬いてるからだよ」

「ヤキモチ?」

「涙のわけが知りたいんでしょ?自分じゃない誰かに、彼が泣いていたのが気になるんでしょ?」

正美に言われて、頭がクリアになる。

難解で解けないパズルだった気がしていたのに、ここが嵌め込む場所であるとわかった気がした。

「そうなのかな?」

「そうだよ。泣いてた理由が知りたくて、彼が見てた視線の先が知りたくて、十季はヤキモチ妬いてるんだよ。だから、苦しくて悲しくて…。ちゃんと、彼に話してごらん」

「無理だよ。すぐに、消えちゃうんだよ」

「だから、何度も何度も話しかけるんだよ!彼は、あの場所からどこにもいけない。成仏出来ていないから、囚われてる。十季、彼を導いてあげなよ。そしたら、どこにでもいけるよ!」

「どこにでもいけたら、僕なんかどうでもよくなっちゃうじゃないか!」

「そんな事ないよ!彼には、十季が必要だし。十季にも、彼が必要でしょ?だから、大丈夫」

「正美、僕」

「大丈夫だから、きちんと告白するんだよ」

「正美」

僕は、また正美に抱きついた。

「十季、大丈夫だよ」

正美の大丈夫は、安心する。

「うん」

「何で、泣いてるか?誰を想って泣いてるか?彼に聞いてごらん」

「うん」

「十季、恋はね。苦しいばっかりじゃないんだよ」

「そうなの?」

正美の言葉に、僕は正美から離れて顔を覗き込んだ。

「そうだよ!十季」

「他に、どんな気持ちを持つの?」

「十季、それはね!自分で、見つけるんだよ。だから、秘密だよ」

「意地悪しないでよ!正美」

「意地悪じゃないよ!自分で見つけるんだよ。今の十季に話しても、わからないから…。自分で感じてごらん。十季、わかった?」

「わかった」

「もう、泣かないで。十季」

正美は、僕の涙を拭ってくれる。

正美にこうされる幸せと同じような幸せを感じられるのだろうか?

十季は、正美の顔をマジマジと見つめる。

「十季、今のうちに恋をしておかないとね」

正美は、悲しそうに目を伏せる。

「正美は、もう恋をしないの?」

「僕はね、十季が中学を卒業したら、お見合いをする事が決まってるんだ」

「お見合いしたら、どうなるの?」

「きっと、その人と結婚する」

「正美は、その人が好きなの?」

「そんな感情なんてなくたって、結婚するんだよ。それが、遠藤に産まれたものの運命だから…。」

「そんなのおかしいよ」

「おかしくても、それは決められている事だから…」

正美は、そう言って僕の頭をポンポンと叩いた。

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