50 / 136
【それが、運命(さだめ)ならば…。】
【それが、運命ならば…】⑤
しおりを挟む
十季から離れて出ていく正美。
十季は、その姿を見つめていた。
「正美…」
何も声をかけられなかった。
部屋から出て歩く正美に切り替わる。
「十季が、恋をしたか?」
志吹に声をかけられる。
「そうです」
「正美、十季にお見合いの話をしたんだな」
「はい。十季が、羨ましくて」
「もう、いいのか?彼女の事」
「そんな事を言うことは、許されないって志吹はわかっていますよね?」
「そうだな」
「五年前なら、僕も十季のように、何故って思っていたでしょうね。でも、二十歳になってわかったのは…。遠藤に産まれた限りは、自分に与えられた責務を全うするだけです。」
「正美、悲しいな。心を揺さぶられても、意味がないって言ってるみたいに聞こえるよ」
「実際に、意味がないだろ?心を燃やそうが、揺さぶられようが、遠藤に産まれた限りは、意味がないんだよ。志吹、わかるだろう?」
志吹は、正美を抱き締めていた。
「すまない、私が…。変わってあげれば、よかった。」
「志吹は、能力が強いから変われないよ。わかってるよ。そんな事は、昔からわかってるから」
正美は、志吹に抱き締められながら泣いていた。
「子孫繁栄だけで、正美が嫌な思いをして欲しくない。」
「でも、それが決められた事なんだよ。」
「正美は、子供を作るだけの存在じゃないよ」
「遠藤では、その為の存在だよ。志吹…。僕は、人だったかな?いつだって、命令通りに動くんだよ。それが、遠藤に産まれた運命(さだめ)でしょ?」
「悲しいね。普通の人間に産まれたかったね」
志吹の言葉に、溢(あふ)れる涙を止められない正美。
「嫌な思いをするのは、僕だけでいいんだ。それに、お見合い相手を愛せるかもしれないだろ?」
「十季には、幸せになって欲しいね。そうだね。素敵な人かも知れないね」
正美は、志吹から離れる。
「僕は、まだましだよ。志吹は、結婚も出来ないじゃないか」
「気にするな」
「呪いだね。いつになったら、こんな呪縛からぬけれるかな」
「来世は、遠藤に産まれない事を祈るしかないよ。でもね、私は遠藤に産まれてよかったと思ってるよ。正美や十季と過ごせてよかったと思ってるよ。だから、呪いだとは思っていないよ。遠藤に産まれる事が出来たから、正美と十季に出会った。」
志吹の言葉に、正美は忘れていた気持ちを思い出した。
「志吹。僕も幸せだよ。志吹と十季と生きてこれて幸せだよ。それだけで、遠藤に産まれてよかったと思っていたのを忘れていたよ。ごめんね、志吹」
正美は、志吹にまた抱きついた。
「正美、十季だけは幸せになれるようにしてあげようね」
「勿論だよ、志吹」
そう言って、二人は笑い合った。
かわって、十季…。
部屋で、ゴロリと寝転がって天井を見ていた。
正美や志吹の気持ちなどしるよしもなかった。
手を見つめながら、自分は何故こんな場所に産まれてきたのかと思っている。
普通の中学生で、平凡な子供で、だったら、どれだけ楽だっただろうか…。
クラスのみんなのように、ゲームの話で笑っていられたら、どれだけ幸せだっただろう…。
何故、義務教育を受けているのかわからなかった。
別に、ここを継ぐならば必要ないではないか
何故、わざわざ学校という場所に行き、みんなの悪意を受け、幽霊と話をするのかが、十季には全く理解が出来なかった。
学校に行かなければ、他人の悪意を師匠以外で感じる事はなく。
ポカポカと陽だまりの中、ボッーと過ごせるのだ。
なのに、わざわざ悪意の中に飛び込まされている。
確かに、きっかけは自らが放った言葉だったのはわかっている。
十季は、頭をガシガシ掻いた。
【あー。もう、何なんだよ】
さっきと、違って何のピースも見つけられない。
答えさえもない。
なのに、また明日になれば行かなければならないのだ。
十季は、その姿を見つめていた。
「正美…」
何も声をかけられなかった。
部屋から出て歩く正美に切り替わる。
「十季が、恋をしたか?」
志吹に声をかけられる。
「そうです」
「正美、十季にお見合いの話をしたんだな」
「はい。十季が、羨ましくて」
「もう、いいのか?彼女の事」
「そんな事を言うことは、許されないって志吹はわかっていますよね?」
「そうだな」
「五年前なら、僕も十季のように、何故って思っていたでしょうね。でも、二十歳になってわかったのは…。遠藤に産まれた限りは、自分に与えられた責務を全うするだけです。」
「正美、悲しいな。心を揺さぶられても、意味がないって言ってるみたいに聞こえるよ」
「実際に、意味がないだろ?心を燃やそうが、揺さぶられようが、遠藤に産まれた限りは、意味がないんだよ。志吹、わかるだろう?」
志吹は、正美を抱き締めていた。
「すまない、私が…。変わってあげれば、よかった。」
「志吹は、能力が強いから変われないよ。わかってるよ。そんな事は、昔からわかってるから」
正美は、志吹に抱き締められながら泣いていた。
「子孫繁栄だけで、正美が嫌な思いをして欲しくない。」
「でも、それが決められた事なんだよ。」
「正美は、子供を作るだけの存在じゃないよ」
「遠藤では、その為の存在だよ。志吹…。僕は、人だったかな?いつだって、命令通りに動くんだよ。それが、遠藤に産まれた運命(さだめ)でしょ?」
「悲しいね。普通の人間に産まれたかったね」
志吹の言葉に、溢(あふ)れる涙を止められない正美。
「嫌な思いをするのは、僕だけでいいんだ。それに、お見合い相手を愛せるかもしれないだろ?」
「十季には、幸せになって欲しいね。そうだね。素敵な人かも知れないね」
正美は、志吹から離れる。
「僕は、まだましだよ。志吹は、結婚も出来ないじゃないか」
「気にするな」
「呪いだね。いつになったら、こんな呪縛からぬけれるかな」
「来世は、遠藤に産まれない事を祈るしかないよ。でもね、私は遠藤に産まれてよかったと思ってるよ。正美や十季と過ごせてよかったと思ってるよ。だから、呪いだとは思っていないよ。遠藤に産まれる事が出来たから、正美と十季に出会った。」
志吹の言葉に、正美は忘れていた気持ちを思い出した。
「志吹。僕も幸せだよ。志吹と十季と生きてこれて幸せだよ。それだけで、遠藤に産まれてよかったと思っていたのを忘れていたよ。ごめんね、志吹」
正美は、志吹にまた抱きついた。
「正美、十季だけは幸せになれるようにしてあげようね」
「勿論だよ、志吹」
そう言って、二人は笑い合った。
かわって、十季…。
部屋で、ゴロリと寝転がって天井を見ていた。
正美や志吹の気持ちなどしるよしもなかった。
手を見つめながら、自分は何故こんな場所に産まれてきたのかと思っている。
普通の中学生で、平凡な子供で、だったら、どれだけ楽だっただろうか…。
クラスのみんなのように、ゲームの話で笑っていられたら、どれだけ幸せだっただろう…。
何故、義務教育を受けているのかわからなかった。
別に、ここを継ぐならば必要ないではないか
何故、わざわざ学校という場所に行き、みんなの悪意を受け、幽霊と話をするのかが、十季には全く理解が出来なかった。
学校に行かなければ、他人の悪意を師匠以外で感じる事はなく。
ポカポカと陽だまりの中、ボッーと過ごせるのだ。
なのに、わざわざ悪意の中に飛び込まされている。
確かに、きっかけは自らが放った言葉だったのはわかっている。
十季は、頭をガシガシ掻いた。
【あー。もう、何なんだよ】
さっきと、違って何のピースも見つけられない。
答えさえもない。
なのに、また明日になれば行かなければならないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる