彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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シークレット作品②

【温度】①

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結婚して、20年目を迎える今日。

「離婚しよう」と言われた。

理由は、簡単だ。

「好きな人が出来た」

42歳で、私は夫に捨てられるのだ。

随分と前から、私と彼には温度差があった。

子供が欲しくて堪らない夫と、いつか出来ればいいと思う私。

35.8分の私と36.5分の彼。

だからかな?

私は、冷静で、彼は情熱的。

体温も心も、温度差が埋まらなかった。

「わかった」

泣くのは、違う気がした。

サインをすらすら書いた。

印鑑を渡された。

押せば、終わり。

「本当にいいの?」

離婚したいと言った方が、言ってくる台詞か?

私は、印鑑をついた。

「どうぞ」

お望み通りにしてあげる。

「やっぱり、子供が諦められない」

「そっか!」

「ごめんね、花香」

「いいんじゃない?子孫繁栄は、本能でしょ?」

「花香は、いらないの?」

「別に…。いらなかったわけじゃないわ。孝輔の子供なら欲しかったわよ。」

涙を流さないように、上手に笑った。

「じゃあ、飲みに行くから」

「わかった」

私は、わざとらしく外に出た。

一秒も、同じ場所にいたくなかった。

家を出て歩く。

少し前に、見つけていた。

barにやってきた。

カランカラン

「いらっしゃいませ」

私は、角の席に座った。

「何飲まれますか?」

「カシスオレンジ」

「かしこまりました。」

私は、スマホを見つめる。

わかったと言った孝輔は、メッセージさえもなかった。

冷えきった関係だったのをハッキリと感じた。

「お待たせしました。」

「ありがとう」

私は、カシスオレンジを飲む。

42歳で、放り出された私。

慰謝料とかどうなるのかな?

「もしもし」

ボッーとしてたら、隣に綺麗な男の人が座った。

「はい」

「隣、よかったですか?」

「あっ、はい」

私は、そう言って笑った。

「一人ですか?」

「はい」

「よかったら、一緒にどうですか?」

「構いませんよ」

男の人の前に、ビールがおかれた。

「乾杯」

「乾杯」

私と彼は、グラスを合わせた。

「一人で飲みたくないぐらい悲しい事があったんで助かりました。」

「そうですか…。」

何があったか聞いてもいいのだろうか?

「気になります?」

「はい、少しだけ」

その言葉に彼は、ニコッと笑ってから「自己紹介忘れていました」と話した。

「あっ、そうでしたね。私、三ツ村花香です。初めまして」

「俺は、中目一輝(なかめいつき
)です。宜しくお願いします」

「宜しくお願いします」

一輝は、三ツ村と言う名字を聞いた瞬間から誰かわかっていた。

「俺ね、離婚しようって言われたんだよ」

その言葉に、驚く花香。

まさか、同じ日に同じ事を言われてる人間(ひと)がいるとは思わなかった。

「私も言われたんです」

一輝は、やっぱりと思った。

「どれぐらい?結婚して」

「20年です。中目さんは?」

「俺は、3年。」

「そうなんですね」

「あのさ…」

言わないつもりだった。

だけど、花香の目に涙が溜まってるのを見ていた一輝は言うのを決意した。

スマホのギャラリーから、写真を取り出して花香に見せる。

「これ、三ツ村さんの旦那さんじゃない?」

花香は、その写真を見て涙をポタポタ流した。

「何これ?」

そこには、孝輔が花香と出会った頃の笑顔を浮かべて可愛らしい女性と腕を組んで歩いているのだ。

「これね、俺の嫁なんだよ」

「中目さんのですか!?」

「そうだよ。どうせなら、お互い慰謝料もらうべきだよな」

「そうですね」

「話し合いぐらいしてわかれるべきだね」

「そうですね」

「協力しない?」

「もちろんです」

花香は、一輝の言葉に協力する事に決めた。

さっきまで、泣き寝入りしかないかもしれないと思っていたのに…

一輝の言葉に、旦那から慰謝料をもらって新しい未来に進もうと思えたのだった。

「俺ね、男性不妊なんだ!」

一輝の言葉に、花香は一輝を見つめていた。
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