彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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シークレット作品②

【温度】②

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結婚して、三年目を迎える今日。

「ごめん、離婚して欲しいの」

「それは、なぜ?」

「私達、まだ若いでしょ?やり直せるじゃない。私は、子供が欲しいの。でも、一輝は無理じゃない」

「そうだね、わかった」

俺は、離婚届けにサインをした。

結婚して、すぐに妊活をした。

一年前、病院に行き出来ない原因が自分にある事を知った。

そっからかな?

二人の温度差が、目に見えてわかるぐらい違っていったのは…。

35.8℃の俺と36.5℃の桜。

俺は、どこか冷静で、桜は情熱的だった。

子供だって、出来なかったら出来なかったで仕方ないと思う俺に対して、桜はどうしても欲しい作るんだって気持ちが強かった。

体温も、二人の間を流れる温度も縮まらないまま生活を繰り返していた。

半年前だった。

ピンコン…

「うるさ」 

不妊がわかってから、よく眠れなかった俺。

スマホは、足元のサイドテーブルに置くのが、二人のルールだった。

なのに、ここ最近枕元でよく鳴って目覚める。

まだ、一時半じゃないかよ。

俺は、桜のスマホの画面で時間を見た。

三ツ村……?

明日まで、見えてる。

俺は、桜の指を取ってロックを解除させる。

【明日、夜七時にroseで待ち合わせでいいかな?】

roseは、有名なラブホテルだ。

不倫してる奴等が、よく使う。

その前のメッセージも読む。

【必ず、妻と離婚するから結婚しよう】

【愛してるよ、桜】

【今日も、綺麗だった】

【早く妊娠するといいね】

こいつら、結婚してる癖に避妊せずにしてるのか?

冷静な頭の中で、考えた一つの答えは復讐だった。

いつもは、冷たい頬が苛立ちで、熱くなるのを感じた。

俺は、それから度々桜のメッセージを読むようになった。

「一輝、しようよ」

はあ?って言いたい気持ちを我慢した。

「お腹痛いから、無理」

「じゃあ、してあげるね」

その口で、別の男としてんだろ?

避妊せずに、別の男としてんだろ?

流されるままに、してしまった。

「俺としたって妊娠しないよ」

終わった瞬間に、吐き捨てるように言った。

「何で、そんな酷いこと言うの?わからないじゃない」

「わかってるよ。自分の体の事ぐらい」

「一輝、じゃあもっかいしよう」

何を企んでる?

桜、お前は何がしたいんだ。

桜の心の中が、全く読めなかった。

そして、離婚だ。

「飲みに行ってくる」

「わかった」

「先、寝てていいから」

「わかった」

俺は、家を出た。

少し前に、この場所を見つけてた。

カランカラン

「いらっしゃいませ」

どこに座ろうかな?

淡いブルーのカーディガンを着てる女の人にピントが合った。

俺は、彼女の隣に座った。

三ツ村と言われた。

彼女と一緒に、復讐しよう。

そう決めた。

「で、どうしたらいいの?」

「まずは、離婚届。破ろうか?」

「わかった。それで?」

「週2日、二人が一緒に行ってるスーパーがあるんだ!突き止めたから!そこで、盗聴しながらついて行こう。出来る?」

「いいよ、何でもやる」

「あのさ」

「何?」

「俺、復讐したかったんだ。ずっと…」

「そう」

「でも、一人じゃ出来なかった。勇気がなかった。盗聴器も、盗撮するカメラも買ったのに使えなかった。」

「それは、怖いから?真実を知るのが…」

「うん」

「私も怖い。でも、20年もいたから…。やっぱり、諦めたくない。慰謝料ぐらい取ってやりたい。」

「そうだよ!二人が幸せになれたいぐらいに慰謝料とってやろうぜ!弁護士は、なしだから」

「わかってる」

「貯金いくらあるかわかってる?」

「二人の共同の貯金は、1000万だけど…。多分、彼は別に貯金してるはずなのよね。だから、まだあるはず。」

「だったら、その1000万。三ツ村さんが貰えるようにしよう。」

「三ツ村さんは、やめて!花香でいいわ」

「わかった!花香さん。」

「中目さんは?」

「桜は、別で貯金あるの知ってるんだ。結婚した時から、持ってたから…。俺は、二人の共同の貯金を桜に渡さない。そして、桜の貯金から花香さんへの慰謝料を払わせるよ。俺自身は、復讐出来ればお金はいらないから!だから、花香さん、宜しくね」

「うん、宜しく中目さん」

「一輝でいいよ」

「一輝さん」

不思議な程に、花香さんとは流れる温度が似ている。

連絡先を交換して、暫く飲んで二人は、それぞれの家に帰宅した。


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