彩られる作品【仮】

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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待てを言われた僕達は…。

【待てを言われた僕達は…】⑯

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「凛音」

「海斗」

映像の一回目が、切れたのを見つめていた。

二回目は、三脚を取りに行ってから全体を撮影した。

同じだけの時間をかけた。

でも、海斗と凛音は二回目よりもこの一回目の撮影した映像を気に入っていた。

「海斗」

「どうした?」

「もう、こんな風に出来ないね」

「うん」

二人で性行為をして、一ヶ月後に関口に会いに行った。

検査の結果、凛音の身体に奇跡的に解毒剤のウイルスが寄生したのがわかったのだ。

そして、半年後。二万に辿り着いた。

解毒剤としての役割を果たせると言われた。

けれど、三回目の性行為はするべきじゃないからと関口は凛音の血液から薬を作り出した。

海斗は、それを飲んだのだ。

海斗の数値は、初期に戻った。

そして、その一ヶ月後凛音の身体の中から、解毒剤のウイルスが消滅していた。

繋がりを知ってしまった二人にとって、この日々はとてつもない程の拷問だった。

それでも、凛音と離れるよりマシだと海斗は考えたし…。

凛音もまた、あの日の痛みよりは今の痛みの方がマシだった。

「凛音」

「海斗」

頬に触(ふ)れる。

「キスは、まだ出来るからよかった。」

「そうだね」

凛音と海斗は、お互いの頬に触《ふ》れる。

「これからも、一緒にいてくれる?」

「当たり前だよ」

海斗の言葉に、凛音は笑った。

「でも、待てを言われるよ。俺といたら…。だから、凛音」

凛音は、海斗のうるさい口を塞いだ。

「海斗、待てを言われるのは、僕だけじゃないよね」

ニコッと笑った凛音の顔を見て、海斗の目からスッーと涙が流れる。

「凛音、俺のせいで」

「もう、いいよ」

「だって、普通の恋愛」

「したかったら、すぐにどっかにいってるよ。僕は、海斗の傍にいたいんだよ」

「凛音」

「海斗、僕ね。海斗といたいんだよ。ずっと、海斗と一緒にいたいんだよ。例え、お預けのまま生きていくしかなくても、それでも、それだけが全てじゃないよね?それをしなきゃ、一緒にいたらいけないなんてないよね?僕は、海斗がいいんだ。初めては、全部海斗だった。だから、僕のこれからも全部海斗にして欲しいんだよ」

海斗は、凛音の言葉に凛音をきつく抱き締めていた。

「辛くても一緒にいたい」

海斗の言葉に答えるように、凛音も腕を回してくる。

「凛音、愛してるよ」

「海斗、愛してるよ」

抱き合いながら、海斗は凛音に恋をした日を思い出していた。

あれは、凛音が海斗に告白してきて15回目の時だった。

「市川君が、好きなんだ。付き合ってくれる?」

「無理だから」

「何で?」

「何でもないから、無理なんだって」

「僕は、こんなに市川君が好きなのに?」

凛音は、そう言って海斗の手を掴んだ。

ドクン……。

今までならなかったのに、手を掴まれて心臓が波打った。

凛音の真剣な気持ちに気づいていた。だから、海斗は気づかないうちに凛音に惹かれていたんだと思った。

「離せよ」

振り払った瞬間、凛音はとんでもないぐらい悲しい顔をして笑った。

ドクン……。ドクン……。

胸の奥がギューとして、締め付けられて痛くなった。

「市川君、僕の事が嫌いなんだね。」

そう言って、くるりと向こうを向いてトボトボと歩きだした。

それからも、凛音は何度も告白をしてきたけど…。

あの時のように、腕を掴む事はなかった。

凛音が、凄く傷ついたんだと思った。

あの日、手を振り払われた事が…

何度も、ごめんや待てを繰り返しても、従順な犬のように、凛音はそれを受け入れたのだ。

二年続いて、凛音は「待て」を言われるのが嫌だと言った。

海斗自身も、「待て」を言うのが嫌だった。

そして、今。

また、海斗は凛音に「待て」を言いたくなかった。

もしかしたら、ウイルスが消滅して凛音と身体の関係を続けられるのではないかと期待した。

なのに…。

ウイルスは、消滅していなかった。

「海斗?どうしたの?」

「凛音と本当は、もっともっと繋がっていたかった。あの幸せは、もうないんだよ。あの感覚は、もう味わえないんだよ。」

「海斗、わかってるよ。僕だってそれは、わかってるよ。でも、僕と海斗にはそれだけじゃないでしょ?」

「そうだね、凛音」

それが、全てだなんて言いたくない。

これが、間違いだなんて思いたくない。

凛音は、海斗を抱き締めてあげる。

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