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シークレット作品②
【温度】⑫
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「桜、もういいだろ?」
一輝は、洗面所の床の上に押し倒されていた。
「嫌よ、一輝。愛してるんだから…。一輝だって、私を愛しているでしょ?」
その勝ち誇った目に、一輝は桜が
自分を愛しているわけじゃないのに気づいた。
まだ、奥底にある桜への愛を感じているから手放すのが惜しいだけなのだ。
「俺としたって妊娠しないだろ?やめろよ」
「妊娠する為ばかりじゃないじゃない。愛し合ってるからするの。一輝の愛が欲しいの。」
それをするのが、愛なのか?
一輝は、もう抵抗しなかった。
好きなだけすればいい。
どうせ、俺は桜の人形(おもちゃ)なのだから…。
花香と孝輔に画面が変わった。
「シチュー、温めるね」
花香は、服を整えて立ち上がった。
もう、涙が出なかった。
冷蔵庫から、シチューを取り出して温める。
早く、孝輔から離れたい
花香は、手を洗った。
もう、嫌。
フランスパンを切る花香
誰かに愛されたい。
所有物じゃなくて、愛されたい。
こんな風に、欲望の捌け口になるだけなら、いたくなかった。
孝輔の中に、まだ自分への愛が僅かでも残っていると花香は信じていた。
なのに、なかった。
その事が、辛くて悲しくて…。
フランスパンをお皿に入れる。
いっそ、消えてしまいたい。
「シャワー、浴びてくる」
「うん」
花香は、その言葉にシチューをかき混ぜていた。
カチャ…
火を止めた花香…
桜と一輝に、画面が変わる。
「トンカツ作るから」
ニコニコと嬉しそうに桜は、洗面所を出ていった。
一輝は、立ち上がった。
少しでも、桜は自分を愛していると信じていた。
実際は、違った。
桜の中にあるのは、愛ではなかった。
シャワーに入る、一輝は身体を洗い流す
誰かに、愛されたい
欲望の捌け口や所有物ではなく。
誰かの愛を感じていたい
ザァー、ザァー
シャワーの音が鳴り響く
画面が切り替わる。
「いらっしゃいませ」
スーパー閉店の5分前だった。
「大丈夫ですか?」
泉は、花香に声をかけた。
「えっ、あっ。大丈夫です」
バターを買いに来た花香
「あの、もうすぐ上がるんです。ちょっと話したいです」
「えっ?」
「駄目ですか?」
「大丈夫です」
「じゃあ、待ってて下さい。そこの自転車置き場で」
「はい」
花香は、バターを持って外に出た。
「花香」
「何で?」
花香の前に、一輝が現れた。
「こんな時間に何してるの?」
「あっ、バター買いにきたの。忘れてたから…」
「家から距離があるのに?」
「こっちのスーパーの方が、いいバターが買えそうだったから」
花香のぎこちない笑顔を見て、一輝は抱き締めていた。
ムスクの香りがする。
花香は、旦那さんにそうされたのがわかった。
花香も一輝が奥さんにそうされたのがわかった。
孝輔からも匂ったエキゾチックな香り
「少しだけ、こうさせて」
一輝に言われて、拒めない花香
「わかった」
孝輔とは違って、力ずくじゃない。
花香も自然と一輝の背中に手を回していた。
一輝に抱きしめられて、花香は気づいた。無理矢理されるのが、嫌だったんじゃない。
そこに愛がないのがわかった事が嫌だったんだ。
愛しているとうわべだけをなぞられていたのが嫌だったんだ。
20年間も一緒にいたのに…。
そこに、愛はなく、情すらもなかった事が花香は悲しくてしかたなかった。
せめて、孝輔が情だけでももってくれていたら違った。
ただの、人形(おもちゃ)だった事が嫌だった。
一輝も同じだった。
桜と一輝は、結婚生活は三年だけど、恋人期間も含めたら七年間は一緒にいた。
桜は、そんな一輝に愛情も情も持ち合わせていなかった。
ただ、歳月を重ねただけの人形(おもちゃ)だった事に悲しかった。
同居人ですらなかった事が悲しかった。
花香を抱き締める力を少しだけ強くした。
花香の体温と流れる温度と花香の香り…
さっきまでの悲しさが少しだけ消える。
花香は、優しくしてあげたいって気持ちを一輝から感じていた。
それだけで、心が少しだけ暖かくなる。
涙が、スッーと流れてくる。
一輝は、洗面所の床の上に押し倒されていた。
「嫌よ、一輝。愛してるんだから…。一輝だって、私を愛しているでしょ?」
その勝ち誇った目に、一輝は桜が
自分を愛しているわけじゃないのに気づいた。
まだ、奥底にある桜への愛を感じているから手放すのが惜しいだけなのだ。
「俺としたって妊娠しないだろ?やめろよ」
「妊娠する為ばかりじゃないじゃない。愛し合ってるからするの。一輝の愛が欲しいの。」
それをするのが、愛なのか?
一輝は、もう抵抗しなかった。
好きなだけすればいい。
どうせ、俺は桜の人形(おもちゃ)なのだから…。
花香と孝輔に画面が変わった。
「シチュー、温めるね」
花香は、服を整えて立ち上がった。
もう、涙が出なかった。
冷蔵庫から、シチューを取り出して温める。
早く、孝輔から離れたい
花香は、手を洗った。
もう、嫌。
フランスパンを切る花香
誰かに愛されたい。
所有物じゃなくて、愛されたい。
こんな風に、欲望の捌け口になるだけなら、いたくなかった。
孝輔の中に、まだ自分への愛が僅かでも残っていると花香は信じていた。
なのに、なかった。
その事が、辛くて悲しくて…。
フランスパンをお皿に入れる。
いっそ、消えてしまいたい。
「シャワー、浴びてくる」
「うん」
花香は、その言葉にシチューをかき混ぜていた。
カチャ…
火を止めた花香…
桜と一輝に、画面が変わる。
「トンカツ作るから」
ニコニコと嬉しそうに桜は、洗面所を出ていった。
一輝は、立ち上がった。
少しでも、桜は自分を愛していると信じていた。
実際は、違った。
桜の中にあるのは、愛ではなかった。
シャワーに入る、一輝は身体を洗い流す
誰かに、愛されたい
欲望の捌け口や所有物ではなく。
誰かの愛を感じていたい
ザァー、ザァー
シャワーの音が鳴り響く
画面が切り替わる。
「いらっしゃいませ」
スーパー閉店の5分前だった。
「大丈夫ですか?」
泉は、花香に声をかけた。
「えっ、あっ。大丈夫です」
バターを買いに来た花香
「あの、もうすぐ上がるんです。ちょっと話したいです」
「えっ?」
「駄目ですか?」
「大丈夫です」
「じゃあ、待ってて下さい。そこの自転車置き場で」
「はい」
花香は、バターを持って外に出た。
「花香」
「何で?」
花香の前に、一輝が現れた。
「こんな時間に何してるの?」
「あっ、バター買いにきたの。忘れてたから…」
「家から距離があるのに?」
「こっちのスーパーの方が、いいバターが買えそうだったから」
花香のぎこちない笑顔を見て、一輝は抱き締めていた。
ムスクの香りがする。
花香は、旦那さんにそうされたのがわかった。
花香も一輝が奥さんにそうされたのがわかった。
孝輔からも匂ったエキゾチックな香り
「少しだけ、こうさせて」
一輝に言われて、拒めない花香
「わかった」
孝輔とは違って、力ずくじゃない。
花香も自然と一輝の背中に手を回していた。
一輝に抱きしめられて、花香は気づいた。無理矢理されるのが、嫌だったんじゃない。
そこに愛がないのがわかった事が嫌だったんだ。
愛しているとうわべだけをなぞられていたのが嫌だったんだ。
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