抗えない衝動ー冬桜の下でー

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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これからも宜しくね

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私達、桜はこの桜の木の下に来ていた。

青々と美しい緑が色づいていた。

「ここだけ、いまだにお花見に使われないって知ってた?」

「知ってる」

「殺人の桜の木で、有名だからね」

私達、三人は花を手向ける。

「可哀想だから、来年からはここで私達がお花見しない?」

「いいね」

「賛成」

私達は、笑い合った。

「引っ越しするって?」

「そうなの」

「どうせなら、三人で住まない?」

「えー。それいいね」

「じゃあ、住もうよ」

「いいね」

私達三人は、手を繋いだ。

「彼等を待つつもり?」

「どうかな?」

「出てきたら、会うかもね」

「許せる?」

「あの日のあの目は、恐ろしかったから…」

「確かにね」

「でも、殺人犯じゃなかったのよね」

私達三人は、考えていた。

「許すしかないんだよね。」

「私は、何故、私に近づいてきたのかを知りたい」

「私も、それは知りたい」

二年前に、何故近づいてきたのかその理由はわからなかった。

カランカラン

「いらっしゃいませ」

私達は、週三回。

三人と同じように、この場所に来る。

「ご注文は?」

「ビールで」

「かしこまりました」

相変わらず、香乂さんは人間が作ったものには思えない程の美しさだ。

「何かついてる?」

「いえ」

ビールを3つ渡してくれた。

「ハナサクちゃんは、香乂さんが気になる?」

「いえ、そんな」

私達は、同じ名前の為、ハナサクちゃん、ナミサクちゃん、タテサクちゃんと呼んでいた。

私は、恥ずかしくて俯いた。

「別にいいんじゃないの?フリー同士だし。香乂さんは、ハナサクちゃん嫌い?」

ナミサクちゃんは、香乂さんに尋ねた。

「可愛らしい方だと思いますよ」

香乂さんは、そう言って笑った。

「いいじゃん、いいじゃん。明日のお休みにデートぐらい。駄目?」

タテサクちゃんは、そう言って笑った。

「構いませんよ。明日、行きましょうか」

「やったじゃん」

「イェーイ」

二人は、喜んでいた。

.
.
.


次の日、私は香乂さんとデートをする事になった。

「こんにちは」

「こんにちは」

サマーニットを着ている香乂さんは、いつもより美しい。

「何をしましょうか?」

「何でもいいです」

香乂さんは、私の手をそっと繋いでくれた。

「手繋いでくれるのですか?」

「デートですよね?」

「誰にでもするんですか?」

「桜さんは、特別ですよ」

香乂さんの笑顔は、美しい。

「特別ですか?」

「はい。」

「いつからですか?」

「初めて、お会いした日からですよ。」

私も、初めから香乂さんに感じていたのかも知れない。

「それは、好きって事ですか?」

「それは、どうでしょうか?私は、人を好きになってはいけない人間ですから」

私は、香乂さんの手を強く握りしめた。

「若い時とは、違うんじゃないですか?今の香乂さんなら、気持ちをコントロールできるのではないですか?」

「そうでしょうか?」

「やってみませんか?何て、大胆な事を言ってますね」

「私は、あの日汚(きたな)くなりましたよ。彼等の手によって。桜さんもご存じでしょ?あの週刊紙の記事も本当だ。私は、抗う事もしなかった。受け入れたし、感じていた。そんな人間です。」

「何で、そんな風に言うのですか?」

泣いてる私を香乂さんは、人から見えない場所に連れていった。

「桜さんが、泣かないで下さい。桜さんには、他にも素敵な人がいますから。」

「私とやってみて下さい。無理なら、諦めます。優季を亡くして、初めて心の底から一緒にいたいと思ったんです。何ヵ月も香乂さんと過ごすうちに、私の中で香乂さんがいっぱいになった。どんな風に抱くのか?どんな風に抱かれるのか?毎日、毎日、私の頭の中は、香乂さんでいっぱいなんです。」

香乂さんは、私を抱き締めてくれた。

「私は、変わらない性癖の持ち主ですよ。桜さんを痛めつける。それでも、いいのですか?」

「はい」

そう言った私の唇に香乂さんは、噛みついた。

舌を食べそうなキスをする。

血がでないぐらいに、噛みつく。

キスだけで、頭も心も溶けていきそうだった。

唇を離して、香乂さんは私の頬に手を当てて言った。


「ようこそ、私の世界へ」

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