三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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day1 彼女の家

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名も知らぬ女の子の家にあがった。

「君は、虐待を受けていたの?」

「えっ?」

「その左手の甲の火傷の痕だよ」

「あっ、これはちゃうねん。」

「何が、違うの?」

自分の事を知らない人間と話すのが、こんなにイライラするとは思わなかった。

「去年、夏。一家心中のニュースあったやろ?ほら、九州の方で」

「知ってる。これでしょ?」

バサッと、週刊紙を出してきた。

「そうや、これの生き残りの少年が俺や。どうせ、可哀想って君も言うんやろ。帰るわ」

「君のどこが、可哀想なの?」

彼女は、バサッと制服を脱いだ。

下着姿になった彼女の背中には、大きな火傷の痕が広がってる。

「これは?」

「10歳の頃に、父親に熱湯をかけられた。今もずっと見えない所の虐待は続いてる。」

「見えないとこ?」

「詳しく言う必要はないから」

彼女は、制服を着た。

「僕は、虐待なんて一度もされたことない。あの日から、何で殺されたんかわからん。一緒に死ねばよかった。」

「だったら、三日後。ここにおいでよ。一緒に連れて行ってあげるから」

その言葉に、頷いていた。

僕は、兄の事なんて1ミリも考えなかった。

浅はかだ。

自分が、楽になる事だけを考えたんだ。

「自己紹介が、まだだったね。私の名前は、朝井戸柚羽(あさいどゆずは)よろしくね。」

「僕の名前は、杉野青生(すぎのしょうき)よろしく。」

朝井戸さんと握手をした。

「君をなんて呼べばいい?」

「何でも、家族には青(しょう)や青(しょう)ちゃんって呼ばれとる。」

「そうか、じゃあ、青(しょう)と呼ばせてもらおう。私は、柚(ゆず)や柚羽(ゆずは)と呼ばれている。」

「じゃあ、僕は柚(ゆず)って呼ばせてもらうわ」

そう言って、笑った。

柚は、いったん部屋から出ていった。

僕は、週刊紙を見た。

晴兄が、一度も見せてくれなかった。

[なぜ?一家は心中しなければならなかったのか?]

そんな決まり文句から始まっていた。

[8月31日、この日両親と子供達は、関西の自分達の家に帰るはずだった。]

あの日、父さんが言った。

「明日の朝に帰ろう。お父ちゃん休みとったから。今日は、ゆっくりしたらええやろ」

笑っているはずが、蝋人形のような目をしていた。

あの目が、たまらなく気色悪かった。

[父親をよく知る友人によると、二ヶ月前に仕事を解雇され、貯金がつき、祖父母にお金を借りに行くと言っていたと言う。貸してくれないなら、みんなで死んでやると叫んだと言う。その顔が、今でも忘れられない。少しでも、貸してあげるべきだったと後悔していると言う。]

少しでも…

最初から、貸す気なんかないのによくこんな言葉を言えるな。

「読まない方がいいよ。吐き気がするから」

戻ってきた柚は、麦茶をくれた。

「おとんをよく知る友人って誰やろか?」

「そんなの、青(しょう)も知らない人に決まってるよ。お金欲しくて話してるだけ。たった一回飲んだだけの人だよ。きっと」

柚は、そう言って週刊紙を取り上げた。

「そんな奴がペラペラと偉そうに話してるんか」

「そんなもんでしょ?ニュースなんて」

そう言って、柚は麦茶を飲んだ。

「青(しょう)の両親は、どんな人だった?」

「優しくて、明るくて、オモロイ事が大好きやった」

「それが、本当の姿だよ。」

そう言って、柚は笑って僕の手を握った。

ドキドキした。

「今まで、付き合った事はある?」

「ない」

「こんなに、格好いいのに珍しいね。」 

そう言って、頬を触(さわ)られる。

「キスした事ある?」

「あ、あるわけないやろ」

僕は、柚から目をそらした。

「じゃあ、私とやってみない?どうせ死ぬなら、全部やってみようよ」

そう言って、柚は笑った。

「好きでもない人とそんなんするのは、なんかちゃうやろ。おかしいやろ…」

「じゃあ、青(しょう)はドキドキしないの?私は、してるよ」

そう言って、僕の手を自分の胸に押し当てた。


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