三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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day1 キス

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僕の心臓は、鳴りやむ事はなかった。

「ドックン、ドックンしてる。私のも感じて」

「ホンマや、してる」

今にも、飛び出しそうなほどお互いの心臓は鳴っていた。

「キスしてもいい?」

柚の言葉にゆっくり頷いた。

信じられないぐらい、柔らかい唇が僕にくっついた。

「やっぱり、君も男の子だね。」

そう言われて、彼女から離れた。

彼女の足に、僕のが当たっていた。

無意識だった。

恥ずかしくて、火がでそうだった。

「気持ちよくさせてあげようか?」

「え、いらんよ。大丈夫やから」

「君ならいいよ。いつもしてるから、慣れてる」

いつも?

慣れてる?

「そんなん慣れるもんやないよ。いつもって、彼氏がおるんやったら僕なんかとこんなんしたらアカンよ」

「違う」

「えっ?」

涙を溜めた赤い目で、僕を睨みつけた。

「君は、私を知らないでしょ?私は、君を知ってるよ。」

「どうゆう意味?」

「誰でもいいわけじゃない。君だから、いいんだよ。青(しょう)、させて」

「アカン、無理。無理。なんか、怖い」

「気持ちいいだけだよ。怖くなんてないよ」

「アカン、無理。ホンマに無理やから、ごめん。」

僕は、そう言って柚の家を飛び出した。

[男やったら、芋引くな。わかっとるんか?しょう]

父さんが居たら絶対にこう言った。

10歳の時に、僕は母に恥をかかせたらしい。

自分では、そんなつもりはなかった。

その時に、父さんに言われた言葉

[あんな青(しょう)。どない事があっても女に恥かかせたアカン。それが、お母さんであってもや、わかったか?]


さっき、柚に恥をかかせてしまった。

ザァー。

雨が、降ってきてしまった。

戻るべきだろうか?

いや、戻れない。

「傘、必要でしょ?」

「あっ、ごめん。さっき、ごめん」

「三日間だけ、私の彼氏になってくれない?」

「えっ、あっ、うん。」

「さっきみたいに、君の嫌がる事はしないから」

「してもええねん。けど、まだ今日は怖いだけやねん」

「じゃあ、戻って、お菓子とジュースでも食べて帰らない?」

「うん」

手を引かれ、僕はまた彼女の家に戻った。

彼女は、タオルを持ってきてくれた。

「ありがとう」

「うん、部屋で待ってて」

「わかった」

僕は、彼女の部屋にはいった。

柚は、僕を知ってる。

週刊紙の噂が広がっていたからかな。

「お待たせ、ポテトチップスとオレンジジュース持ってきたよ」

「ありがとう」

そう言って、机に置いた。

「僕を知ってるんわ。週刊紙の噂でやろ?」

柚は、首を横にふった。

「違うよ。去年、私は君を見つけていたよ」

柚の手が、僕の頬に触(ふ)れる。

「まだ、おさまってないよ」

いつの間にか、それも触(さわ)られていた。

「アカン。それは、ホンマに怖いねん」

僕は、泣いていた。

「怖いんじゃなくて、何か見たんでしょ?」

脳裏に、あの事が浮かぶ。

「誰にもゆうたらアカンねん。やめて欲しい。ごめん」

柚は、僕から離れた。

「君は、何をされるかわかってるんだね。勉強したの?」

「したことない。」

「じゃあ、両親のを見たとか?」

「ごめん。話したらアカンねん。内緒やから」

「最後の日に話してよ。どうせ、死ぬんだから私達」

そう言って、柚は僕にキスをした。

長い長いキスをした。

「柚は、なれてるんやな。怖くないん?」

「怖かったよ。最初は、でもすぐによくなる。」

「ホンマに言ってるん?」

「さあね。どうだろうか?」

「僕、やっぱり帰るわ」

「まだ、雨止まないよ」

「それでも、ここにいたらおかしなりそうやから」

「そのまま帰るの?大丈夫?」

「そのうち、直るよ。ほんなら」
 
「また、明日。八時に、歩道橋で待ってるから…。玄関の傘使って」

「ありがとう」

パタン…

柚の目から、涙が流れてるのを知りながら僕は扉を閉じた。

また、恥をかかせてしまった。

女の子にそんな事を言わせたのに
…。僕は、情けない男だ。

玄関で、傘を借りて家をでた。

リュックサックを揺らしながら、走った。

走って、走って、走って、家に帰った。

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