三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

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怖くて堪らない

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家の鍵を開けた。

制服をハンガーにかけて、乾かす。

風呂場のシャワーの栓を開いた。

ザァー、ザァー。

雨と同じだ。

静まらない下半身を見つめていた。

[青(しょう)ちゃん、しっー。ゆうたらアカンよ。]

脳裏にあの日が、浮かんだ。

シャワーを浴びる。

自分のを触(さわ)ろうとしてやめた。

[こんなんなったん?駄目やないの?ちゃんとやり方わかる?]

11歳の冬、僕は下半身がおかしくなったのを見つめていた。

[しゃあないなぁー。教えてあげよか]

[いらん。]

[いらんゆうたって、このままやと、しんどいやろ?]

[やめろ、触(さわ)るな]

ヤバい、思い出したら、気持ち悪くなってきた。

「ウッ、オエッ…。オエッ…」

僕は、お風呂場で吐いてしまった。

はぁー。最悪。

シャワーから上がって、タオルで体を拭いた。

口をゆすいだ。

いつの間にか、下半身は静まってくれていた。

よかった。

少しだけ、休もう。

僕は、ベッドに横になった。

目を瞑る。

『青(しょう)、死ぬな。兄ちゃんおいていかんといてくれ』

『晴兄、僕。またやってしもたん?』

『汚(きたな)いなんて思わんから。青(しょう)は、何もわるうないで。おとんが、助けてくれたんやろ?青(しょう)の事。だから、もう怖くないんやで』


ガバッ…。

はぁー、はぁー、はぁー

動悸が、おさまらなかった。

「ただいま」

「晴兄ーー」

部屋から、デカイ声で叫んだ。

「青(しょう)、どないしたんや?」

「晴兄、あー。あー。」

「大丈夫や、大丈夫。兄ちゃんがおるからな。」

「うん、うん。」

晴兄が、背中を擦ってくれた。

「もう、怖い事は起きへんよ」

「うん、わかってる」

わかってるのに、あの目が怖い。

もう、あの目に見られる事はないとわかってるのに吐き気がする。

晴兄、僕死にたい。

って、言いたい言葉は飲み込んだ。

「今日は、ハンバーグ作ったるからな。」

「うん」

頭をポンポンと叩かれた。

ハンバーグを作ってる晴兄を見つめてた。

「晴兄、虐待ってあれもそうなるんか?」

「うん?虐待ってなんの話や?」

「いや、何もないねん。気にせんといて」

「青(しょう)、なるよ。あれは、なる」

晴兄は、怖い顔をしてハンバーグをコネ始めた。

「やっぱそうか」

虐待って、意味がわからなかった。

柚みたいな傷痕を言うのかと思っていた。

晴兄は、ハンバーグを焼き始めた。

「青(しょう)は、好きな人おらんのか?」

「おらんよ」

「いつか、好きな人とそうなった時に克服出来たらええなぁ。」

「そうなるって、あれの事ゆうてんの?あんな気持ち悪いのされるぐらいやったら、死んだ方がマシや」

「ごめん、青(しょう)。そやけど、あれは気持ち悪いもんやないよ。この先、青(しょう)が子供欲しかったらせなアカン事やで」

「そんなんいらん。結婚も子供も一生1人でええねん。いらん、何もいらん」

泣きじゃくる僕を晴兄は、なだめ続けていた。

現在ー ピリリリ

うーん。寝てたな。

スマホの着信に起きた。

「はい」

「生きてるかぁ?」

「晴兄、そっちは涼しいか?」

「ぼちぼちやな。彼女出来たか?」

「相変わらず一人やで」

「まあ、ええやん。一人も楽しいから。」

ワアー、ワアー、騒ぐ声がしてる。

「そっちは、相変わらず大家族やな」

「そやで!6人おるからな。大変やけど、香織も楽しんで育てとるわ。この季節やから、ちょっと青(しょう)が心配なってかけてもうたわ」

「そうか、ありがとー」

「明日の誕生日に、ええもん送ったから受け取りや」

「晴兄、あの日ごめんな。もう、やらんから。どんなにつろうても頑張るから」

「足は、まだ時々痛むんか?」

「うん」

「近くにおったら、助けられたかもしれんのに。ごめんな。一人でそっちに置いてしもて」

「晴兄は、自分の幸せだけ考えて生きなアカンで。今まで俺の為にしか生きてなかったんやから。」

「ありがとうな。また、そっち行くわ。来月かな?友達と久しぶりに会う事なったから」

「わかった、待ってるわ。おやすみ」

「ほな、おやすみ」

晴兄との電話を切った。

今もまだ、兄に心配かけてるなんて。

ビールを飲む。

僕は、二日目を思い出していた。



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