三日間の恋人

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
15 / 17

謎のお届け物

しおりを挟む
「柚からの、誕生日プレゼント…?」

段ボールを開けた。

誕生日なんて、話した覚えはなかった。

[40歳の誕生日おめでとう。もしも、この荷物を君が無事に受け取ったなら、会いに来てくれないかな?あの歩道橋で待っています。]

十字架のネックレス…。

綺麗なままだった。

僕は、家を飛び出た。

ザァー

ドンッ、ゴロゴロ

あの日と同じ天気だった。

鍵を締めて、家をでる。

大きな黒い傘をさして、歩道橋にやってきた。

先客がいた、真っ白なワンピースを来た女の人。

僕を見つめて、その人が話す。

「明日、君は後悔する。だけど、自分を責めないでいい。TVのコメンテーターが、好き勝手言っても…。気にしなくていい。君に出来ることは、これしかなかった。そうだろ?青(しょう)」

深く被った帽子を放り投げた。

「柚羽なんか?」

その人は、僕に笑いかけた。

「覚えていてくれて、嬉しいよ」

淡々と話す言葉が懐かしい。

「生きてたん?」

「勘違いするな、君とよく過ごしていたのは、朝井戸柚祢(あさいどゆずね)。双子の弟だ。」

「えっ?」

僕は、持っていた傘を落とした。

「ホテルに行ったのは、私だよ。あの日、君と体の関係を持ったのは私だ。だけど、それ以外の事をしていたのは弟だ。」

「背中の火傷は?」

「それは、私だ。」

「お兄ちゃんを殺したんは?」

「弟だよ」

25年経って、頭の中がグチャグチャになった。

「双子やったん?」

「そうだ」

「僕を刺したんは?」

「弟だ。」

「じゃあ、性的虐待を受けてたんわ?」

「弟だ。私は、両親からの虐待を受けていた。」

「僕を好きやったのは…?」

「弟だ。」

頭の中が、グチャグチャでその場に崩れ落ちた。

「何で、僕とやったんや」

「君を、助けて欲しいと頼まれたから」

柚、そっくりの女の人は、僕の頬を触(さわ)る。

「25年後、君がまだ一人でいたら傍にいてやって欲しいと言われた。」

「僕を好きやないのに?」

「好きだよ。君の事を、私も好きになった。柚祢(ゆずね)は、それを許さなかった。もし、君が気づいたら兄を殺す計画はやめるって話しになった。気づかなかったら、実行する。たった3日で見破れないと話したけれど…。柚祢(ゆずね)は、やりたいと言った。」


「僕が、ずっと会いたかったんは、柚祢(ゆずね)やったん?」

「そうじゃない?嫌なら、私は、消えるよ」

「待って、行かんといて。もう、無理や。どっちでもええ。もう、いなくなったら生きていかれへん。二度目のサヨナラは無理や。二度と立ち直られへんくなる。」

僕は、涙が止まらなかった。

「なら、君は私と一緒になるしかないよ」

柚羽(ゆずは)は、僕の手からネックレスを受け取った。

「もう、いなくならん?」

15歳の僕が顔を出して、柚羽(ゆずは)に聞いた。

「大丈夫。ならない」

そう言って、抱き締めてくれた。

「再会したら連れて行きたかった場所がある。」

そう言って、彼女は僕を立たせた。

大きな傘を手に取った、中の水を落としてから、二人ではいる。

柚羽(ゆずは)が、住んでいた家のあった場所は、駐車場にかわっていた。

バスに乗り込んだ。

「お姉ちゃんって君の事だったの?」

「そうだ」

窓から流れる景色を見つめている。

「両親は?」

「死んだよ。二年後に…。」

「なんで、死んだん?」

「交通事故だった。兄の奥さんも、兄が死んだ年に流産した。なぜ、君はあの日記を世間に出さなかったのだ?」

「出せなかった。受け止めたくなくて」

バスを降りて並んで歩く。

「柚祢(ゆずね)のお墓だ。両親が、別で作った。悪魔と悪魔は一緒に入れって。私を指差した。」

柚祢(ゆずね)…。

男の子だって、知らなくてごめんね。

僕が、ちゃんと見抜けていたら…

この世界にいたんだよね。

「誕生日を知っていたのは?」

「全部、探偵に頼んだ。」

「そうやったんやね。会いに来てくれてありがとう」

そう言って僕は、笑った。

「本当は、兄から、虐待をされるのは私だった。だけど、柚祢(ゆずね)がかわってくれた。女の子には、耐えられないと言って…。それでも、あいつはやってきた夜這いってやつだよ。夜になって襲われそうになるから、寝る場所をかわってくれた。何度も何度も繰り返し、兄は柚祢(ゆずね)で我慢すると言った。それから、両親からの暴力は私が受け止めて、柚祢(ゆずね)は、兄からの虐待を受け止めてくれた。脳裏に焼き付いて離れない兄の姿と柚祢(ゆずね)の顔。いつか、必ず救い出すと何度も約束した。なのに、私は助ける事が出来なかった。」

「僕も同じだよ」

「だから、君を助けにきたんだ。」

「えっ?」

「柚祢(ゆずね)のかわりに、君を助けにきた。これからは、ずっと一緒にいてあげるよ」

そう言って、柚羽は僕を抱き締めてくれた。

25年間の苦しかった日々が、今、終わろうとしている。

[僕を見つけてくれて、柚祢(ゆずね)、ありがとう。]

あの日も、こんな雨だった。

無力で、ちっぽけで、何も出来なかった。

知恵も金も何もなかった。

だけど、一つだけ確かに存在していたものがあった。

僕の中にも、柚祢(ゆずね)の中にも、柚羽の中にも…。


「愛してる」

ビカッ、ドーン、ザァー。

地鳴りみたいな雷とシャッターのような稲光と声もかきけされる程のどしゃぶりな雨の中。

僕と柚羽は、大きな声で叫んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...