桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

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悪役令嬢になる前の兄上

弟の告白

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 ヒナトの爆魔法発言に俺は戦々恐々とする。魔力をあえて暴発させて攻撃する諸刃の魔法を放たれた。それも実の弟に。あまりの身の毛のよだつ言葉に全力で部屋に俺は逃げこんだ。

「お、恐ろしい……この世に本当にそういう類いの人間がいようとは。いや、戦時中に若い少年を連れていくというのも士気上げに有能と聞いてたが……」

 ドアを机で押さえながら英雄の言葉を思い出していた。12となる少年を花盛りとその英雄は表現したのだ。だが、それも好まれたのは過去の事であり……今の俺はしっかりと歳を積んでいる。

「今は乱世ではない!!」

「兄上……この部屋は引き戸です。落ち着きがない所を見ると焦っておいでですね」

「なっ!? ち、近寄るな!! あの日からおかしいおかしいと思っていたが!! ここまでおかしいとは思いもしなかったぞ!! 婚約者に顔を向けられぬだろ!!」

「婚約者は全てお断りしております。まぁまぁ、お兄さん……昔からずっと一緒だったじゃないですか」

「そうだが!! 事情が変わった!! お前のその行動は異常である!! 俺は普通に女性が好きだ!!」

「私は男性が好ましく。それも、兄上のような男性を好ましく思っております。それに……女性が好きと言って思い付く方がいますか?」

「……いないが!! 俺は男とそういう関係になる事はない!!」

「兄上……あまりそう嫌がらないでください」

「嫌だ!! すまんが……すまんが……俺は男だ。お前をそんな風には思えない。しょ、ショックを受けるだろうが。振らせてもらう」

「ええ、知ってます。嫌がるのも好きです。残念ながら兄上は相談を受けてくださった。諦めたくないなら100回振られても101回告白すればいい。そう教えてくださいましたね」

「あ、あの相談は!? お、俺の事だったのか……」

 頭を押さえ……唸る。それをニヤニヤとヒナトは笑みを溢しながら。口を押さえて落ち着くために深呼吸をしていた。

「兄上、そそられる顔をしないでください。あと、明後日から学園に編入します。準備しておいてください。令嬢としてね」

「なに!?」

「兄は死んだ事になっており……兄上何処へ!!」

「母上と父上の元へだ!! お前の悪事を説明する!!」

「兄上!! 両親は協力者です!!」

「俺の目で判断する。ついてこい!!」

「……はい」

 ヒナトは大人しく俺についてきてくれる。

「お兄さん……手を繋ぎませんか?」

「繋ぎたいのか仕方な……いや!! 今日はダメだ!! 危ない危ない」

「……」

「ニヤニヤするな気持ち悪い」

「いいえ、兄上は兄上のままなんですよねぇ~」

「……ああ、そうだ。だからな諦めろ」

「いいえ、諦めません」

 俺は大きく溜め息を吐きながら本館へ向かうのだった。






「……すまん。エルヴィス。愛人の子であるヒナトがそうしたいと言うのだから合わせてやってくれ」

「エルヴィス……そうです。諦めなさい。あなたに言えない理由があるの」

「ぐっ……」

 本館で俺は珍しく。いや、何年ぶりかに怒って両親に当たっている。二人も申し訳ない表情だったが全く取り入ってはくれない。なんの理由か知らないが3人の利害が一致して今の状況なのだ。

「俺だけが……我慢しろと言うのですね!!」

「エルヴィス……妻のためなんだ。本当に申し訳ない……悩んだ末なんだ。わかっている……異常だとな。それよりもお前は俺とかまるで別人のように怒りだしているな?」

 そりゃそうだ。今の今までいい子を演じ、大人に都合のいい子供でいたのだがそれも流石に限度が来た。ヒナトが割って入って落ち着くように俺の肩を掴む。

「お兄さん。落ち着いて……交渉した俺に文句を言って」

「……ふぅ、ふぅ!! 戻せこらぁ!!」

「エルヴィスが……変わってしまった」

「はぁ……この子、人前ではいい顔をしてたと薄々気付いてたけど。やっぱりそうだったのね安心した」

「ああ!! そうですよ!! 父上母上!! おやつやお小遣い!! 弟のために立派な大人を演じる必要があったんです!! もう一緒の屋敷に住みたくはない!! 別宅で住みます!!」

((根は変わってない。やっぱエルヴィスね))

(兄さん……これで何を言ってるか全く気にしてないんだよなぁ~)

「くぅううう!! 何でこうなるかな!!」

 変に暖かい視線に毒気を抜かれ……鬼になれない自分に嫌気が差す。

「お小遣いだけは弾んでくれよ!!」

「もちろん……女の子ですからね」

「母上!!」

「……あら? 嘘じゃぁないでしょ。私が用意したのだから」

「母上!?」

「兄上、行きましょう。これ以上怒鳴っても何も出来ませんよ」

「……もとの元凶、お前だろうが」

「ええ、そうです。母上父上は私の悩みを聞き届けてくださったのです。本当に嬉しかったです」 

「……帰る。暴れてやるからな!! 学園でもな!! 元に戻してもらうまで!! ずっと!!」

 俺は振り向き指を噛む。今の状況には慣れるつもりがない。俺は俺のままで……わがままをいい続ける事を心に誓うのだった。

「兄上……今日のおやつのケーキ……お腹入りますか?」

「入る!! イライラを落ち着かせたい!!」

「はい、用意します」

 本当にイライラする。





「お兄さん落ち着いた?」

「落ち着いた……一緒に食べるか?」もきゅもきゅ

「いただきます。アーンしてください」

「もうお前は大きい。そんな子供っぽいこと言うな」

(幼かったらしてくれたのか? してくれたろうな。兄ならば)


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