桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

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悪役令嬢になる前の兄上

放課後は愛弟と

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「ヒナトオオオオオ!!」

ドンッ!!

 登校日初日の午後の自由な時間。令嬢たちは多くの人と交遊を持とうと躍起になる時間にエルヴィスは……ヒナトを探し、廊下を走り抜けていた。

 その勢いのまま特待生教室に扉を蹴破って入っていく。真っ赤な髪が揺れ、長い睫毛ときつめな瞳で部屋を睨み付けた。もちろん、部屋にはセシルとハルトが驚いた表情をする。

「何処にいる!! ここにいる!! あいつを感じる!! どこだ!! すまない、そこのイケメンさん。ヒナトを見なかったか!! 俺は……いや俺は!! 兄上だ!!」

「あっ……あなたですか。下をみてください。そこに居ます」

「……やぁ、兄上。立派に白い女性下着つけてますね」

ドンッ!!

 エルヴィスは下を向き、スカートを押さえてヒナトの顔を踏みつける。

「ば、ばかやろおおおおおお!!」

「……痛くないのか!? ヒナト!?」

「なかなかいいですね。眺めも、恥じらいも、痛みも全て」

「ハルト……不登校したい」

「セシル、逃がさねぇよ」

「くぅ、このこの!!」

「あだだだだ」

 エルヴィスの踏みつけに満足したヒナトは足を掴み、そのまま避けて立ち上がる。爽やかな表情でホコリを払い、エルヴィスに向かって言う。

「走ると短いスカート翻るので気を付けてください。兄上」

「走らせるような事をしたからだろうが!!」

「気付きました? 手紙」

「これだろう!! 机に入ってビックリした……恋文なぞ身の毛がよだつ」

「読みましたか?」

「吐き気に負けた。爽やかなお前のその顔を思い出して一発ぶん殴ってやろうとおもう」

「女性らしく平手でいきますか?」

「拳だ。鉄拳制裁」

「懐かしいようで最近頻繁ですね」

「顔に力を入れよ」

「腹に来ますね」

パァアアアアン!!

「ひ、平手ですか?」

「ふん。帰る」

「待ってください兄上、初の平手……なかなか痛いですね」

「ついてくるな!!」

「同じ家でしょう!!」

「じゃぁ交遊しろよ!! クラスの令嬢は皆かわいかったぞ!!」

「目の前に素晴らしい令嬢がいます。お茶を飲みに行きませんか?」

「却下!! よそむけ!!」

「いいお店知ってるんです。美味しいケーキもおごります」

「………却下」

「考えましたね。兄上」

「却下だ!! しつこい!!」

 二人が騒がしく部屋を出たあとにセシルとハルトは立ち上がりため息を吐きながら教室を出る。

「訓練するか」

「ええ、頭が痛いので一緒に訓練所行きましょう」

「あれどう思う?」

「重度ですね」

 セシルとハルトはそのまま訓練所で汗を流し、考えをまとめるのだった。








「くぅ、なんでついてくる」

 歩きながら、止まり振り向くエルヴィスはヒナトを睨み付ける。

「だから家が一緒と言ったではないですか?」

「………遠回りする」

「ついていきます」

「だああああああ!! お前はなんだ!! 魚のふんか!!」

「もっと綺麗な言葉をお使いください。兄上……姉上と言った方がよろしいですかね?」

「ああん?」

「眼をつけないでください。襲いたくなるでしょう!!」

 エルヴィスは体を抱きしめて震える。背筋が冷え、身をとっさに守ったのだ。

「おえぇ」

「気味悪いですか?」

「気味悪いわ!! はぁ……昔は本当に可愛い弟だったのにいつからこんなに……」

「最初からです。兄上」

「腹に抱えるのは父上の性だなぁ」

「兄弟ですね」

「兄弟だろう?」

「いえ、確認したかっただめです。言葉で……手を繋いで帰りませんか?」

「……お前、大きくなっただろう。気恥ずかしくないのか?」

「恥ずかしいというより……その、寂しいと言うのがあります。あの日々を思い出すのです。誰にも構われず……愛されず」

「……ほれ。もうそんな昔を思い出すな。顔を上げて歩け。立派な特待生様だぞ。そんな湿気た面では騎士の面目が立たない」

「……兄上?」

「もう大人なんだ。少しだけだぞ」

 エルヴィスがスッとヒナトの手を掴み引っ張って行く。力強く、痛みを伴うほど。

「はい、兄上」

 それを嬉しそうにヒナトは暗い表情から笑みを溢す。なお、ヒナトは心でほくそ笑んだ。兄上の甘さに漬け込んだがやはり。甘えたがりの自身であることに再認識したのだった。



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