桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

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極悪令嬢に堕ちる

悪女の微笑

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 最近、学園内を私物化している者が現れた。もちろん俺は知っている。エルヴィス嬢、兄上の事だ。

 義理の母と妹にエルヴィス嬢とは縁を切れと言われたため距離を取っていたが……流石にそうとも言っていられずにバーディス嬢ではなく。養子となったルビア嬢。新たな妹君に話を伺った。彼女は一回目は秘匿のため何も教えてはくれなかったが、二回目の時に全てを話してくれた。そう、兄上が許可したのだ。

 そして……話を聞くなかでルビア嬢が熱を帯ながら語った内容を全て覚えて家に持ち帰った。そして、自身が大きな大きな足枷……いや。兄上を縛る鎖だった事を再認識した。

 兄上は私兵部隊を学園に作ろうとしているのだ。義理妹の『聖女』に対する訳じゃない。もっと上を交渉するために爪を磨いでいる魔物へと堕ちた。それも、老人会と言う予想外なクラスになった故に加速度的に兄上は表社会と裏社会に進出したことになる。母上の血が色濃く残っている。

 ここまでを1、2ヶ月で準備段階へと持ってきている。異様な才能の塊に俺は大きく身震いしたものだ。流石兄上と……そして、申し訳なさもをあった。この全てを自分に捧げ、自己犠牲を強いて俺の背中をずっと押していたのだ。だからこそ兄上は今まで日陰で鎖と首輪に縛られて生活していたのだ。

 しかし、鎖と首輪はなくなってしまった。それがこの結果だ。皆が知らない『悪名高い令嬢』が生まれてしまった。聡明な兄上はきっとこれからも学園内で頭角を示すだろう。

トントン

「兄上、いらっしゃいますか?」

 義理の妹、エミーリアが入ってくる。彼女はいつもと変わらない綺麗な髪を揺らして私の近くへと歩を進めた。

「いますよ、と言う前に入って来ますね」

「ごめんなさい。お兄さま……凄く今、お会いしとうございましたの」

「それは……どうしてだい?」

「聞いてください……お兄さまは父上の元へいつか向かわれます。それが寂しくて寂しくて……」

「それは寂しいですね」

「お兄さま~ふふふ」

 演じるは物語の王子様。そして……寂しいとはエルヴィス兄さんに会えなくなることだ。一人でも大丈夫だろう兄上には少し寂しさを覚えている中で更に離れるのは厳しい。

「そうそう。お兄さま……学園で最近エルヴィス嬢が色々と動いているのですが……何かご存知ありませんか?」

「ん? 会うなと言っているのに知っているわけないでしょう?」

「……その設定……あっ、いえいえ。エルヴィス嬢の事を何も知らないので教えて欲しいと思ったのです」

「他の令嬢から聞けばいいじゃないですか?」

「……エルヴィス嬢側の令嬢の方々は口が固く。私の友達は悪口ばかりでどんな方か尾ひれがついてわからないのです」

 俺は面白いと思った。悪評が立ちすぎて兄上の本当の姿がわからなくなっているのだ。兄上もずっと隠れ潜んでいたように目立たない生き方をしていたので非常に情報が少ないのだろう。

「なるほどですね。そうですね……最近、魔法使いで好成績をおさめたようです。それも最上級の」

「お兄さま? どうしてそれを?」

「エミーリア……君は魔法使いかい?」

「……魔法使いの試験してません。お兄さんは騎士ではないですか?」

「騎士の叙勲を貰ってますね。そして実はね……魔法使いでもあったんです。位は三等魔法曹です」

「お兄さまは魔法使いでしたの!?」

「両刀使いです。エルヴィス嬢に鍛えられて……一人で色々と噂を確かめるために。一つ……言っておきます。エルヴィス嬢は男でした」

「男、やっぱり……あっ」

「ん?」

 『やっぱり』と彼女は呟いた。何か誰かから聞いたのだろうか? セシルか?

「誰からお聞きしましたか?」

「は、はい……」

「誰ですか?」

「それはお伝えできません」

「……その方のが詳しいでしょうね。正直いいますと……今のエルヴィス嬢が全く知らないのです。あんな姿になる事なんて予想できませんよ」

「昔は、あのような方ではなかったのですか?」

「ええ、立派な兄上でした」

 俺は嘘をつく。今も立派だと心の底から言えるのだから。






 クラインお兄さまは懐かしそうに私に教えてくださった。その内容は私には普通に存じ上げている内容であり、女装していたのも黒歴史として辱しめのイベントであり。確かに女装イベントで人気なキャラであった。

 だからこそ、今のエルヴィスと言うキャラクターが全く私の知るキャラクターとは違ってしまっていた。いいえ、多くのキャラクターが私の知らない人生を歩んでいた。

 特に今の兄さんもその一人で秘密を沢山持っている。私の知らない縁があり……私の回りに居た付き人や同級生の男性の中でも異常に人が出来ていた。世界も何処か私の知る世界よりも非常に難しい。ただ一つだけ、イベントは変わらず起きていた。

 苛められるイベントもあったし、それをどうにかすると、セシル君とハルト君が仲間になるイベントもあった。バーディス嬢ではない令嬢が代わりに私を苛めや敵対をしたりと役代わりが起きているが。概ね私の知識通りに進む。

 だからこそ……そろそろ私は学園を休む事を考える。学園が標的になることがわかっていた。

「……さぁ、どうしましょう」

 私は私の慕う者だけを説得しなくてはいけない。世迷い言と思われるだろうが。始まった後は手のひらを返すだろう。

「それまで、避難をすませましょ」

 私は……一人で前もって似た未来を知っている。これを利用し……私は私で幸せを手に入れる。絶対に……







「……エルヴィス。何を見ているの?」

 私は放課後の時に酷く荒れている令嬢が目に入った。その令嬢は顔に多くの傷跡がついており何かがあったのだろう事がうかがい知れ、特徴な黒髪の令嬢だった。放課後一人で歩く彼女の周りは距離を離しており、今日の付き添いのバーディスが答えてくれる。

「彼女は……?」

「『傷面』ね。結構荒々しい令嬢だから気を付けてね。あの傷も喧嘩でそうなったらしいから」

「……本当にそうなのかしらね。あの背中……」

「エルヴィス何よ、気になるの?」

「気になるの……バーディス。ちょっと私、声をかけてみる」

 私から動くのは極力減らそうと考えてたときにどうしても彼女が気になり、私は声をかけて肩を叩く。その瞬間に……

「何すんだ!! てめぇ!!」

 拳が飛んできたのでそれを避ける。目で見て避けられない速度だったが……何故か最近、勘が鋭く勝手に動き避けれる。その行動にバーディスが血相を変えて荒々しい言葉を出した。

「エルヴィス怪我はない!! てめぇ、何をしてるのかわかってる!!」

「おうおう、私の後ろに立って何をしようとしたかわからないけど。立たんでほしいなぁ」

「こいつ!!」

「バーディス!! あなたは帰りなさい」

「エルヴィス!? こんな野蛮人関わるのは損よ」

「……私はエルヴィス・ヴェニス。これ名刺、ねぇあなたのお名前は?」

「ああん? 私の名前はメグリ・ジゴク」

「ニュアンス的に海の魔国側の令嬢かしら?」

「ふん、バカにすんのか? 外国人ってな……じゃな、今は気分が悪い」

「……あらあら。ふられちゃった」

「エルヴィス……彼女に何を見たのよ」

「顔、かわいくない?」

「エルヴィス?」

 私は驚く事にまだ男を捨てて居なかったようだ。女の子に興味を示すのなんてねと思うがそれを口に出さずに笑みを溢す。

「さぁ、名前を知りました。身辺調査をしましょう」

「エルヴィス。笑顔で……まぁいいわ。今日はそうしましょ。一人でも仲間が欲しいからね」

 そう、私は仲間が欲しい。どんな子でも。でも……

「あの動きは天才でしたね」

 よさげな逸材だった。



 








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