桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

文字の大きさ
48 / 71
極悪令嬢に堕ちる

面傷の悪役令嬢へと導く

しおりを挟む

 私は……トイレも行かせて貰えず……そのまま椅子に溢して待つ。男たちはその姿を眺めてニヤニヤと笑い続けた。

「だいぶ時間が立って薬の副作用が効いたな。いい放尿だったぜ」

「あーあ、臭いったらありゃしねぇ……」

「おいおい、泣きべそもとうとう泣かなくなったぜ……」

トントン

「ん?」

「開けてください。確認に来ました」

 扉の叩く音と一緒に私は顔をあげる。そこにはエルヴィス嬢が立っており、そして冷徹な表情のまま私を見下すように見つめていた。ああ、来たんだと私は思うだけで……再度顔を下げる。

「ふむ。確かにジゴク・メグルの令嬢ですね。引き取りに来ました。早く縄をほどいて頂戴」

「おっと、その前に……『復讐』の件。やめてもらってもいいですかね?」

「いいわよ。私は『復讐』しない。さぁ早く、ほどけ!!」

「おいおい、そんな口約束。信じれねぇなぁ」

「これでも持っていきなさい。ここに契約書もある」

じゃら!!

 地面に金袋が落とされる音がし、それを拾いあげる音共に私の周りに男たちが集まり縄をほどく。そのまま……私は前のめりに倒れる。力が入らず、そのまま立てない。

「薬を盛ったわね」

「ああ、力強いから逃げられたら困るのでね」

「……メグルちゃん。肩を貸そう」

 エルヴィス嬢に捕まれぐいっと引っ張られる。そのまま肩と腰に手を回してくっつき、汚れているのに全く気にせずに私を支えてくれた。そして、二人で部屋を出ると活気ある声が聞こえ、酒場のような場所で女の子たちが酒を楽しんでいた。

 それを見ながら……脇を抜けて店を出る。そのままそこで私は壁にエルヴィス嬢に座らせてもらった。立つのもやっとであり、それを察したのかもしれない。

「……メグルちゃん。解毒剤は後で持ってくるわ」

「……」

「本当にお疲れ様」

「なんで……なんで……」

「ん?」

「なんで助けに来たんですか?」

「……」

 エルヴィス嬢は少し頭を押さえた後に顔を振り、私に対して一つだけ言う。

「仲間とあなたが言った。私は私のかわいい妹分なら絶対に助けに行くわ……それが、昔からの私で……曲げようもないの」

「……そんな。嘘かもしれないのに」

「だから確認しに来たんじゃない。まぁ正解だったわね。そして……私はそこまでお利口でもないみたい」

 エルヴィス嬢は笑みを浮かべて私の頭を撫でた後に表情を固めて再度、酒場に入る。そして……大きい声で叫んだ。

「身柄確保!! 武装解除!! これより、この酒場の野郎は全員始末!! 我が魔法名エルヴィスが宣言する。この拉致監禁の事件を見過ごす事は出来ない!!」

 次の瞬間、大きな男の悲鳴と女性の叫び声が混じる音がし。騒ぎに気付いた騎士……いや。元々準備していたのか騎士が酒場の前で立っており、私に近付き介抱してくれる。

「メグルお嬢様ですね」

「は、はい……」

「では、離れましょう。傷は?」

「ないです……体に力が入らないだけ……」

「担架を!!」

 私は騎士に担架で運ばれる。何が起きているかわからないまま。その場を後にしたのだった。





 私は合図をした瞬間、惨状へと変わった。酒場で待機させていた令嬢たちが一斉に立ち上がり、ホルダーから魔方陣の書かれたカードを取り出した。驚く人達に向かってそれられを投げつけ、炎が生まれ焼いていく。

 他に燃え移らないように私は眺め、バーディスとルビアちゃんが指示をして酒場内を制圧していくのを眺めていた。阿鼻叫喚の光景を見ながらも、令嬢たちは全く躊躇せず殺していく。

「案外、簡単に制圧できるわね。バーディス!! ルビアちゃん!! 隠し通路も任せるわ」

「はい、お姉さん!!」

「全く、実戦経験欲しいなんて言うから……わかったわ」

 頷き返したのを確認後、そのまま私は階段を上がっていき、最上階の部屋にノックせず。ドアノブを壊して無理やり部屋に入り込んだ。堂々と胸を張り、中にいる剣を持った男を睨む。

「な、なにもの!? 下で何をした!!」

「自己紹介するなら先ず自分から名乗りなさい。上を者ならね。私の名前はエルヴィス・ヴェニス。下ではあなたの部下に罰を与えてる」

「エルヴィス・ヴェニス!? おまえが噂の令嬢か!!」

「噂は噂……尾ひれが伸びて伸びて。大変な事になってしまったわ。噂を野放しにするのも不味いことを知れた。いい勉強にまったわね」

「くっ!! この野郎!! 何を言っているかわからないがここが何処だかわかってんのか!!」

「傭兵や冒険者ギルドでしょう? ただ、いい仕事をしているわけではないようね。拉致監禁なんてね」

「おまえ、誰に喧嘩を売っているか理解してるんか? 俺のバックには多くの貴族、令嬢どもがいるんだぞ。それらを敵に回すってんなら……どうなるかわかってやってるんだろうなぁああ!! ああ!!」

 私の右手の紋章から炎が舞い、腕にまとわりつく。蛇のように丁寧に炎が寄り添う。

「自分の肩書きで威張り散らしなさいよ。さぁ聞こうか!! 我は魔法名はエルヴィス!! 『老人会』の若造よ!! 地獄で後悔しろ。あなたこそ、誰に啖呵を切ったかをね!!」

 男は冷や汗をかきながら、腰を抜かす。『老人会』と名乗った瞬間にその物が何かを理解しての行動だった。どっちが上か当然、わかるだろう。

「へ、へへ。嬢ちゃん。冗談キツイぜぇ。『老人会』なんて組織。あるわけないし、嘘も大概にしろよ」

 いや、あることを知っている。そんな雰囲気だ。

「虚勢はいい。罪の意識はないようね。罪状、冒険者ギルドを名乗り暗殺や監禁、一般人への拷問等により。極刑を我が炎で下す。天国へいけると思うな。地獄行きだ」

「ひっ!!」

 私はゆっくりと振り返り、右手の炎から火の粉を振り落とす。それは部屋に落ち、ゆっくりと火の手をあげた。

「ちょっと待ってくれ!! あの令嬢の事なら誰が依頼したかも全部を話をする!! だから、見逃してくれ!!」

「……死人にくちなし」

 私は一切振り返らず。背後でゆっくりと部屋の火の手が舞うのを待ち続けた。背中に向けて命乞いをする男に無視を続け、悲鳴に変わり。音がやむまでずっとそうしていた。

 物が焼ける音だけになったとき、私は右手から小鳥を生み。全ての炎をその小鳥に吸収させ、そのまま自身の魔力へと戻してやっと。ここの場所は落ち着いた。

「やっちゃった……あーあ。やちゃった。ヒナトを取り戻したいのに。めっちゃくちゃ……」

 私はそのまま、天井を見た後。昔では考えられない行動に大きく大きく……ため息を吐いたのだった。最近、そういうため息を吐く回数が多くなっており。悩みの種だなぁと思うのだった。




 私は騎士に連れられて体を綺麗に洗われたあとに病院の個室で安静にしていた。毒も抜け、体が動くようになった次の日に私の個室に顔を出す人がいる。そう……エルヴィス嬢。彼女だ。堂々とした足取りに私は顔を伏せる。

「眠れる姫様はお目覚めかしら?」

「……」

「私の家が良くしてる病院の居心地はどう? 悪くはないでしょう?」

「……申し訳ありません」

「あらあら、萎縮しちゃって。だいぶ怖い事があったのね……わかるわ。だけど安心して。全員」

 私はエルヴィス嬢の顔を見ると子供のイタズラのような笑顔で答えた。

「燃やしたから。ね? あなたを虐めた人はもういない」

「……殺したのですか?」

「殺した。そして建物は譲り受け、内装を整えてる。新な牙城ね。せっかくだから使わせてもらうのよ」

 エルヴィス嬢が丸い椅子を持ってドカッと座る。大きいお尻にふとましい足にそれを護る武具を装備していた。驚くのはスカートの中にそんな物を装備していたのかと驚くと共にこの人は令嬢なんて甘い物じゃない事を再認識させてくれる。

「……エルヴィス嬢はなんでこんな惨めな私を助けたんですか?」

「昨日も言ったじゃない。仲間ってあなたが言ったの……それだけよ。まぁただそれは建前で……たまたま。あなたが拐われたのよ。私のせいでね。それの尻拭いよ」

「エルヴィス嬢のせいで?」

「……聞いてないかしら? あなたを昔、虐めて顔を傷をつけた令嬢が怖がってる。安眠するために雇ったのよ彼らを。だけど、そういうのは昔からあって。親御さんが失敗した穀潰しの令嬢などはそういう所へ行って捨てられたりしてるのよ。今回はそれを咎める口実がちょうどよくあっただけ。たまたまよ」

「……あなたの『復讐』を怖がっている?」

「そうね。私は断ったのに……依頼を受けたと勘違いするなんてね。せっかちさん」

「エルヴィス嬢……なんで……そんな嘘に乗っかっても……」

「そんね、関係ないと無視をすればよかったわ。噂の悪役令嬢のように。血も涙もないとか」

 エルヴィス嬢は立ち上がる。そしてゆっくりと部屋に出る時にボソッと話した。

「だけど、私は……いいえ俺は知り合いが拐われていたり虐められているのを目の前で見たら。絶対助けるお節介は昔から変わらない、それだけよ。ごめんね、私のせいで巻き込んで」

 チラッと見せる男らしい言葉と背中に私は……いてもたっても居られなくなる。ベッドから這い上がり、廊下を歩く彼女に大きく声をあげる。

「エルヴィスさん!! 待ってください!!」

 私はそのまま廊下に座り、頭を下げる。私は……私は……彼女に心が動かされる。どうしようもない私を助けてくれた恩を返したいと心から思うのだ。

「今まで、何もわからず。その、すいませんでした!! そして……そんなガキを助けてくださり、ありがとうございます」

「……ええ。でっなんで頭を下げてるの?」

「姉さんと呼ばしてください。私を姉さんのような立派な戦士にして欲しいです!! なんでもします!! だから……お願いします!! もう惨めな気持ちは嫌なんです!!」

「メグルちゃん……頭を上げなさい」

「は、はい!!」

 私は頭を上げる。すると微笑んでいるエルヴィス姉さんと目が合う。

「元から仲間でかわいい妹分なのにそんなに畏まらなくていいわ。ね、メグルちゃん」

「は、はい!!」

 私はエルヴィス姉さんの大きい大きい器に触れたのだった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...