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極悪令嬢に堕ちる
悪役令嬢の三悪女
しおりを挟む私は喜べる事があった。なんとスカウトが成功し、顔に傷を持つ令嬢。メグルちゃんが仲間になったのだ。そして……仲間になり、皆に挨拶を行う早朝から。彼女は元気だった。
「姉貴、おはようございます!!」
「おはよう」
「荷物お持ちします」
「……よろしく」
元気だった。以上に……異常とも言える親しさを私に見せてくれる。そのまま、学園に行き。私のクラスに入れて朝礼を行った。ご挨拶させ、そして……私は彼女に向けられる視線を理解する。
そう、年功序列。メグルちゃんがいきなり私の隣に立っているのは……バーディスとルビアちゃん含めて面白くないと思える状況だった。
だけど、私はそれは折り込み済みであり。そして……笑みを溢す。仲間になるのなら、一つ試験をしようと提案したのだ。
それは……もちろん。クラス全員と一騎討ちと言う難題をメグルちゃんに提示したのだ。もちろん、メグルちゃんに疎まれている事を全部を話している。
「姉貴がそう言うなら……信頼を勝ち取るためにやります。バーディスの姉貴、ルビアの姉貴もよろしくお願いします!!」
「はぁ……暑苦しい令嬢ね」
「……エルヴィス姉さんが言うからいいけど。私は認めてないからね。だって、連れ拐われた雑魚よ」
「はい、私はまだ若輩者。しっかりと姉貴の元で修行します。一から鍛えてください!!」
「……エルヴィス? こんな品のない令嬢連れてどうするのよ」
「品がないかしらね? 私は非常に綺麗な原石に見えるわ。私よりもね。ずっと」
バーディスもルビアちゃんも首を傾げてメグルちゃんを見続ける。メグルちゃんはきっと難しい事を分かっていないようなので私は細かく状況を伝える。
「メグルちゃん、あなたの今は正直に言うと疎まれてる。だけど私が連れてきたから皆が口出さずにいるわ。メグルちゃん……本当に私の妹分なら。あなたの強さを見せつけなさい。認めたくなるほどのを」
「は、はい」
「エルヴィス。このメグルにそこまでの強さがあると思えない。捕まっているじゃないか」
「じゃぁ……私がちょっと手ほどきする。それで戦えるわよ」
「エルヴィス姉さん。私はそれでいいよ。ただし……」
「なぁにルビアちゃん」
「私が勝ったら虐めさせてもらう。小指の爪、剥ぐよ」
「ルビアの姉さん……覚悟の上です」
「ふふ、わかった。悲鳴を聞かせてね」
険悪な空気の中で私は立ち上がる。認めたくない二人には実力で認めさすため、メグルちゃんの肩を叩く。
「バーディス、ルビアちゃん。今日は自習、前回の戦闘での反省点と改善点を考えてメグルちゃん対策を考えなさい。メグルちゃんはついてくる事」
「はい」
いい返事をする令嬢に私は快く。教える事にする。ヒナトにも教えた対魔法戦術を。
*
メグルちゃんを連れて来たのは訓練所である。今日は特待生たちは訓練を行っておらず。貸し切りに出来た。もちろん、鉄壁の防壁で内からは被害が出ないような作りとなっている。メグルちゃんには女騎士の礼装を着てもらっている。動きやすいだろう。しゃがむとパンツが見える筈だ。
「姉貴、よろしくお願いします!!」
「ええ、よろしく」
深々と頭を下げるメグルちゃんに私もゆっくりと頭を下げる。そして……右手を振り。火の粉を散らす。
「私の魔法は炎。それも、特殊な炎です。見ておきなさい」
今できる。私の全力を見せる。令嬢らしからぬ、異形の力を。
「見ておきなさい。これが魔法です」
手のひらの炎が大きく膨れ上がり、翼を生み、一つの生命のような物を生み出す。燃え上がり続ける鳥を形作り。私の背後に飛び、大きな姿を変える。背後に火の鳥を背負う。
「姉貴!? それは、伝説の!?」
「違うわ。これはただの私の炎よ。フェニックスではない。だけど、私が死ぬまで燃え続けるわ。きっとね」
後ろから首を下ろす鳥の頭を撫でる。笑みを溢し、私のこの炎をいとおしく思う。大切な炎なのだ。
「姉貴……それを見せてくれるのは感謝します。ですが……」
「なに、私はあなたを殺そうと思ってない。だけど……やるしかない。信じてるわ。私はあなたを……これ見える?」
私はポケットから小指に嵌める指輪。自分が作ったピンクゴールドリングを見せる。
「それはリングっすか?」
「ええ、バーディスとルビアにも渡してある。私もつけてる。これは私が信頼のおける妹分にだけ渡すものです。他の子にはプラチナリングを渡してるわ」
組織を示すために小指にはめてもらっている。なので小指を見せたらすぐにわかるようになっていた。また貴金属は朽ちないと言う特徴からか呪いなどを弾く事ができる魔法の触媒になるのだ。
「これを、私の目の前まで取りに来なさい。私はここから一歩もうごきません」
「!?」
背後の鳥を前に出す。そして……彼女が剣を抜く時に襲わせる。もちろん……彼女はすぐに焼かれるが。すぐに回復もする。ヒナトも味わった痛みに慣れる。痛みを消すための訓練である。
「あぐ!?」
「立て!! 満足するまで。やるわよ」
私はその場から動かず。眺め続けた。
*
エルヴィスがメグルを厚遇する理由が全くわからない中で、私は……訓練所に顔を出す。同じような事を思っているだろうルビアと一緒に様子を見に来た。
「そういえばルビアはシルバーライトの家よね。大丈夫なの?」
「家を追い出されたような物だから大丈夫です。姉さん……あんな糞家。思い出すだけ反吐が出ます」
「厳しい教育はどこも一緒よ」
「厳しいだけならよかったんですけど……私には耐えられなかった」
「エルヴィスのが厳しいでしょう?」
「エルヴィス姉さんには『愛』や『褒め』があります」
「わかった。あなたが何を嫌がったか」
ドゴォオオン!!
私たちは訓練所近くに来ると鉄板の激しい打撃音が響く。激しい音は断続的に続き、中で何が行われて居るのか気になり、中を覗く。
「はぁ、はぁ……」
「メグルちゃん、まだなの? 指輪はここよ」
「待っててください。取りに行きますから」
訓練所の中では炎の魔物とメグルが戦っており、エルヴィスの手に指輪があったのがわかる。桜色の金指輪だ。それを取りに来いと言うのだろう。魔物を倒して、しかし、メグルの力では遠く及ばない。魔法を使おうにも全く歯が立って居なかった。メグルの魔法も付け焼き刃。無理難題。
「ただの苛めですね」
「わぁ!? 楽しい!! メグルちゃん痛がってる!!」
「あなたねぇ……」
「女の子の痛がってる姿はかわいいよ?」
隣の令嬢は本当に変人だ。いや、私も含めて全員変人か。変わった子が私たちに集まっているのだ。まぁ、実益があると言うのは目に見えている。エルヴィスの力で。
「本当に怖いわ、彼女は……弟欲しいだけでここまでするんだから」
「私は逆に狂った感じがして好きです。姉さんの事は」
「まぁ、危なっかしい橋渡るときは注意だけしましょ」
「うん……それよりもさ。メグルちゃん立たなく……なったね。姉さん、動かないし……ちょっとヤバい」
「えっ!?」
私は中の様子を慌てて見る。メグルちゃんがピクリともせず、炎につつまれた事に冷や汗が溢れ、訓練所に入る。
「エルヴィス!! やりすぎよ!!」
腰から、水の魔法陣のカードを抜き。メグルに当てる。消火をすると所々、服が焦げており火傷もしており非常に危ない状況なのがわかった。ルビアもしっかりと庇うようにエルヴィスの前へ立つ。
「どけなさい、バーディス。ルビアちゃん。回復魔法撃つから。気絶してるけど、軽傷よ」
「エルヴィス!! 回復してまた戦わせるのでしょう!! 体壊れるわ!!」
「げほ……はぁ、はぁ。しまった。眠ってしまったようですね」
メグルが目を醒まし、ゆっくりと起き上がる。フラフラする足取りはスッとしっかりと地面を踏み、剣を拾う。気付いた時には傷はゆっくりと治りだし。顔の傷のみ残る。
「自己修復出来たじゃない。おめでとう、魔法の世界へようこそ」
「これは奇跡です。姉貴……それにまだ。姉貴を斬れてない。その指輪……貰いに行きます!!」
「ですね、来なさい。来れたらいいわね」
エルヴィスとメグルが構える。メグルは真っ直ぐ真っ直ぐエルヴィスだけを見つめ……歯をくいしばる。何処か諦めもせず。それでもと立ち上がっていたのだ。
蛮勇、火に近付く虫のようだとしても……立ち上がる。だが、圧倒的力量を埋めるには時間が足りなかった。なのに立ち向かおうとする。
「はぁ、全く……」
同じ事を私は出来るでしょうか? いいえ、出来ません。私はルビアと目線を合わせて頷いた。
「いいでしょう。エルヴィス……大人げないわ」
「そうです。お姉さん。弱い者いじめは壊さずにするべきです」
「バーディスの姉貴? ルビアの姉貴? 何を?」
「助太刀よ。指輪が欲しいのでしょう。姉なら、それをプレゼントしないとね」
「同じくです。正直に言いますと……女の子なのにここまで男らしい子も珍しいです。いじめたいので仲間になりましょう」
「姉貴!!」
私はルビアとともにメグルの前へ立つ。それに不敵の笑みをエルヴィスは向けてくる。背筋が冷えるその笑いをメグルに対して見られないように心を奮い立たせる。『悪役』よりも『魔王』に見えるエルヴィスが頷く。
「面白い。3人ですね。いいでしょう……遠慮いりませんよ」
カアアアアアアアアアア!!
エルヴィスの背後で炎の鳥が鳴き。ルビアと二人で圧力を感じながら……魔法を唱えるのだった。
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