桜髪の乙女は元兄上様、魔女で絶対な悪役令嬢へと堕落す。弟を奪うために

書くこと大好きな水銀党員

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極悪令嬢に堕ちる

傷面の令嬢3

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「一緒に帰ろう。ロナ」

「えっ……」

「聞こえなかったか? 一緒に帰ろう。家はどこかな」

 学園の中で編入によりやってきたロナにメグルは近付く。メグルは一人ぼっちのロナに自分と同じような状態だと考える。『魔女の夜』の新参に厳しいのは入るのは難しく。馴れるのも難しい。浮いている彼女に気をかけるのも必要だとメグルは考えたのだ。

「メグル……あなたって人は私に気をかけてくれる?」

「もちろん、編入や姉貴にお願いした立場。姉貴のために鍛えないといけない。一緒に帰る中で訓練でもやろう」

「……お断りよ」

「残念だが。妹分のその発言は認めない」

「……わかった。わかったわ」

 ロナの暗い表情にメグルは内心まだ信じて貰えてないと考える。悩みを打ち明けられる所まで仲良くなりたいとメグルは思い構う。

「本当にいいのね」

「もちろん、仲良くするべきだし……」

「本当に甘いのね」

「砂糖ましまし、激甘よ」

 メグルの笑顔にロアはクスっと笑い立ち上がる。そして……一つだけ確認を取るように言う。

「じゃぁ、お願い……お願いよ」

「おう。剣の腕見せてやるよ。お前も剣がいいと思えるほどに鍛えてやる」

「ええ……ええ……」

 ロアはメグルの明るさを見ないように顔を伏せて立ち上がり、その後ろをメグルがついていく。多くの令嬢に挨拶を済ませ……学園を後にした。





「ロア、お前の家ってこんなへんぴな所なのか?」

「ええ、もう家を追い出されたから」

「大変だな、お前も」

「ええ……」

 ロアと話をしながらメグルは広めな路地裏へと足を踏み入れる。じめっとした空気に立ち並ぶ建物の隙間。レンガ造りの建物によって太陽は遮られ暗い道が続く。そんな中でメグルは口少なくなるロアを護るように並んで歩く。

「そういえば魔法使えるの?」

「いいえ。封じられてる。何も出来ないように」

「なら、鍛えるしかないな……ん?」

 路地の中で男が二人。皮装備を着た状態で顔を出す。荒れた髭にメグルは眉を歪め、ロアの前に出た後。手でロアに静止すりように手振りする。感じ取った空気にメグルは剣を抜く。

「……メグルだな」

「もちろん。メグル・ジゴクといいます。どちら様ですかね」

「知らなくていいぞ。『エルヴィス会』の幹部。メグルだなやはり」

「これが最近知った『矢じり』って奴ね。ロア……私から離れるな」

「……」

「ロア?」

 メグルは後ろを見る。すると、ロアの目線の先に新たな二人組が現れ短剣を抜く。小回りの聞きやすい剣に顔にマスクをしゆっくりと近付く。

「……囲まれたか。私が狙われる第一号ってことかぁ。いいでしょう……ロア。私がここは切り抜ける。姉貴に会って伝えて」

「……メグル……ごめん」

「ロア?」

「……」

「そうか……うん。ロア、お前。それは姉貴に黙ってろ。でっ……もう二度と姉貴を裏切らないでくれ死ぬぞ」

「メグル……」

「黙っておいてやるからさ」

「話はすんだか? 傷面の令嬢。大人しく捕まるもよし……選べ」

 距離を置き、メグルを警戒する男たちに彼女は笑う。

「はん? なにもせず捕まってベラベラと姉貴や妹分の事を喋る馬鹿はいねーよ。半グレのド素人が。喧嘩、売られて黙ってやられるほど私は弱かないぞ」

「なら、腕や足を奪うまで」

「脅しならな。もっと、姉貴のように問答無用でやるもんだ。ロア、そこで何もするな」

「メグル……何故そこまで……そこまで」

「答えなんか、自分で見つけろ。罪悪感があるなら一つワガママを聞いてくれ」

「なに……」

「よりを直そう。後でな……相手がゆっくりと間合いをつめてきやがる。もう喋れねぇよ」

 メグルが剣を強く握りしめ歯を食い縛る。戦うイメージを高め、男たちを切り伏せるイメージをし、身震いをして奮い立たせ恐怖を消し去る。その姿のメグルをロアは見つめ続けた。

「なぁ、仲間に裏切られる気持ちはどうだ……」

「……」

「……食えねぇ令嬢だ。だが、だからこそここで牙を抜く。お前は危険だ」

「裏切られるか……くくく」

 路地裏にメグルの苦笑いが響く。男たちは冷や汗が背中から溢れ出ている事を理解し、ジリジリと歩み寄る。ただの女と舐められないと感じ、動きを見るのだ。メグルが仕掛けた背中を刺すために。

「残念、裏切られたと考えてねぇから。私は」

「おめでたい野郎だ」

「そうだ。私を騙そうとする奴なんていねぇよ」

 男がゴクと唾を飲む。揺さぶりに全く聞かない亀のように剣を構えて動かないメグルに隙を見出だせず時間が過ぎる。痺れを切らした男たちがロアに話しかけるのは時間の問題だった。

「おい、ロア。にっくき雌犬だろう。捕まえろよ」

「……」

「そうだ、お前がやれ。家も追い出されるだろ? 売られるまで時間の問題だ。俺たちが優しくしてやるからな」

「私は……」

「さぁ、早く。短剣持たせてただろ。背中に居るんだ。殺れ」

「……」

 ロアに背中を向けるメグルは意を介せずにずっと向き続ける。男たちは近付かず。剣を構えるだけに止めていた。にらみ合いが続く。男に恐怖があるかぎり。

「殺す、殺す、殺す……」

 メグルの口から怨嗟が溢れる。その声に恐怖しながら。

「……メグル。魔法……使えるんだ。私」

「そうか」

「話をしたい……二人きりで」

「わかった!!」

 ロアがボソっと声を出した瞬間。メグルは剣を上段に構えたまま真っ直ぐ男に肉薄する。男たちも前に出て剣の内側、懐へ入ろうとした瞬間。メグルの剣が一人の男を捕らえて上から下へと寸断する。その後、もう一人の男が振りおろしたメグルに近づき下段から切り上げを受けて倒れた。

 あまりの速い剣筋に背中の隙をと近づいた男たちは少し足が止まる。その瞬間、ロアの手から魔力が流れ炎が路地裏に現れて壁を作る。

「メグル!! 今よ」

「ああ、ロアも早く」

 壁に阻まれた男たちは大きい声で叫び。それが路地裏に響く。逃がした事を理解した男たちが総出で路地裏を囲み出す。

「……路地裏をくまなく張り巡らしてるな」

「メグル、少し止まって!!」

「ロア!! なんでだ!?」

 メグルの手を引き、ロアは自身の右目を指差した。

「メグル、この右目はあなたを写してる魔導具なの。だから……潰して……私は……私自身で潰すのは怖い。だから!!」

「なに……見せてみろ!!」

 メグルがロアの右目を眺めるとそこには魔方陣が刻んであり、風の紋章なのが理解出来、盗み聞きもされているだろうと納得したメグルは唇を噛む。

「……これどうなってる?」

「そんなことはいいから潰しなさい……これがあったら場所もわかってしまう」

「魔方陣に傷をつけないといけない……顔を傷つけることに」

「……もう、あなたを裏切り続ける自分が嫌なの!! お願い……悪いのは私だから」

「……時間がない。責任取る」

「おあいこよ。顔を傷つけた……」

 メグルはロアから離れ、剣を一閃し右目の当たりに一本の傷をつける。ロアは痛みで叫ぶのを唇を噛み締めて嗚咽で止め、流れる血を右手で押さえて震える。メグルも今を抜けようと何も言わず。ロアに声をかける。

「治療は出来ないが……そのまま表通りに出る!! ついてこい!!」

「……」

 ロアが頷き、ポタポタと右手が赤く染まる中で二人は逃げる。だが、包囲されており。必ず、人に出会ってしまう。

「居たぞ!! ここに!! 右目を潰してやがる!! 女だと思うな!! 腕と足を傷つけろ!!」

「ちっ、3人か。ロア!! 切り払って抜けるから走れ!!」

 メグルが3人の男に切り払って行こうとしたとき、新たに3人の男が奥に見える。路地の声が響きゆっくりと間合いを詰められる。一人を切り払っていき、返しの刃でメグルの右手に傷が入る。

「ちっ!! 手練れか!! 時間……かかる」

「女、仲間を殺ってくれた御礼はたっぷり払って貰うぞ!!」

「そうね、払って貰いましょうか。命でね」

 カツーン、カツーン

 透き通った女性の声とヒールの音が響く。赤く染めた衣装に赤い扇子を持った女性が笑みを溢して脇から出てくる。その姿にメグルとロアは絶大な安心感を持ちその人を見る。男は震える身で振り向き、邪悪な笑みの令嬢と相対した。

「『魔女の会』をまとめさせていただいてます。『老人会』のエルヴィス・ヴェニスです。あの世の天使にお伝えください。誰に殺られたのかとね」

「姉貴!!」

「メグル。あなたは本当にくじ運悪いわね。大当たりよ」

「嬉しくないっす」

「まぁ、そうね。嬉しくないわ」

 エルヴィスは扇子を落とし、右手に炎を纏わせて叫ぶ。

「頭を下げなさい妹たち、綺麗な髪がなくなるわ」

 路地裏に男の悲鳴が響き渡るのだった。


 










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