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消えた母親、残された姉弟
しおりを挟む夕食時。ガブリエルとミカエルは起き上がり。体を回す。何の音もせず。罠を外した。
「母さんが……動き出すね。ガブ姉」
「ええ……夕食誘うかもしれないから……どうだろう」
隣の物音を拾いながら待つ。静かな部屋だった。
「寝てますね……待ちましょう。ミカエル」
それから二人でトランプ……ポーカーを行い。時間を潰していると。あまりの静けさに疑問が出た。
「…………ねぇ。生活音がしない。ガブ姉」
「おかしい……時間はもう大分たってる」
そう、全く逆に物音がしないのだ。ミカエルとガブリエルはすぐさま隣の部屋に移動を開始する。
「……鍵はかかってる。中は静か。ミカエル……ちょっとまってね」
カチカチ……カチン!! ガチャ!!
「流石、元シーフ」
「ただの姉よ。どれ……」
二人はそ~と部屋を覗いた。覗くと……
「お母様がいない!?」
「姉さん!?」
鍵を開けたまま宿屋の店主に話を聞きに行く。聞きに行き。母親の目撃情報を聞き出そうとした……結果。鍵を返されて何処かへと行ったと言うのだ。
「鍵を返却された!?」
「はい。2本」
「2本? ミカエル鍵は持ってる?」
「ある……」
「……2本の鍵場所ってわかりますか?」
「並んで3つだよ」
若い店主が見取り図を見せてくれる。一部屋は2段ベットの個室が数個あり。隣の部屋からまた一つ借りていたのだ。
「てっきり3人だから3部屋と思ってたけど……一部屋だけでやっぱりいいと言い。お金をそのままで、二人は冒険で寝ているから起こさずにと言われました。あと……ただの冒険者仲間だから気にせずにと……」
「……わかりました。部屋に戻ります」
ガブリエルはミカエルと一緒に部屋に戻り……深刻な表情で話を始めた。
「……やられたね。ガブ姉さん。動きの早さが異常だよ」
「ええ。私たちはずっと脱け殻の部屋を監視し、お母様は一つ先の部屋にいたわけです。一つ先の部屋の物音は気にしません。隣と言う固定概念がそうさせた……窓からでも出られたでしょう。ミカエル……仕度しましょう。背中を預けるわ。もう遅い……寝て明日にしましょう」
「はい、ガブ姉さん。これは見つからないね……はぁ……ウリエル兄さんに大目玉だよ」
「お母様関わると……目の色変わるから……」
二人は消えた母親を探すために深くフードをかぶり仮眠を取るのだった。
*
次の早朝、ガブリエルとミカエルは母親探しを始める。酒場などで情報を聞くが売ってやろうと言う者はおらず……ようは知らない人ばかりで尻尾さえ捕まえない。
そんな……全く無意味な午前が終わり、午後、昼食を取り有名な情報屋を訪ねようと動き出そうとした瞬間に都市内であわだたしく駆け回る騎士、兵士が目立った。何か匂いを感じて二人はその駆け回る騎士を尾行する。
すると騎士は一ヶ所、裏路地に集まり。焦った声で情報を交換していた。
「いたか!?」
「いない!!」
「酒場は?」
「いなかった!!」
騎士はどうやら人探しをしている。その人探しの必死さから……匂い立つ物を感じて待つこと数分後に騎士たちが愚痴を漏らす。
「くそ!? なんで衛門はわからなかったんだ!!」
「それもだが同じ日に出発しているのに遅くなった伝令も悪いだろ……」
「くそ……なんで尻拭いを……国賓だからやばい」
「……帝国と戦争か……もしくは……もう誰かに」
「やめろ!! 絶対それを口に出すな‼」
騎士たちが焦り苛立ち口が軽くなる。その雰囲気から……ガブリエルとミカエルは察したのだ。
(お母様を探してるのは私だけではないようね。ミカエル……伝令と言っていたわ)
(そうですね……国賓と言うことはお忍びではなかった。子にも嘘を軽々しく言えるお母さんだからね……)
(親を信じきれなくなりそうよ……ミカエル。ごめん……嘘。そういう人でした)
そう……忍び込むように入ったが。実は王国の外交員に書をしたためて贈らせている事が話から予想が出来た。それが……早いか遅いかはわからない二人。しかし、帝国の女王がおめ見えなのに何もしないのは不義に当たる事は知っている。
敵国であると言え……流石に外交問題……大前提で王国は帝国とはまだ戦いたくないとの情報が有力である。準備が整ってないと。
もちろん……王国もだからこそ。自国で暗殺されるのは嫌がる。開戦の正統性を持たせてしまうのだから。
逆に言えばすでに行方不明だけでも大惨事ではある。お前の国で女王が拐われたでも……開戦事案になれるのだ。
(……お兄様の予想通りになりつつあるねミカエル)
(確かに……急ごう。とにかく状況をまとめ。俺たちのするべき事を考えるんだ。特に消えた母親の目的をね)
急いで最初の目的通り、情報屋へ二人は向かうのだった。
*
向かった先は占い小屋である。布のテントで立てられた小屋にガブリエルとミカエルが入る。慣れた手つきで椅子に座る。そして……目の前の女性を二人は見る。魔術士の風貌であり……胸の谷間が強調されている服を着ていた。
「あら、久しぶりのお客さんだね。何を占うんだい?」
「ミカエル」
ガブリエルが名を言う。意味は君が話せと伝わった。
「……お代のついでに言う。ミェースチ・バルバロッサが来ている。その人の場所を知りたい。俺の名前はミカエル・バルバロッサ。こっちはガブリエル・バルバロッサ。わかるね?」
「………わかった占いましょう」
占い師が占い用の水晶を触らず。キセルパイプを取りだし、丸めた草を先に詰めて火をつけた。一服し……全く水晶を触らずに話をする。
「……今朝、商人で彼女の名前が広まった。何人かの商人が帝国に品物を持っていく事が決まって喜んでいたね。帝国に入れると喜んでいたそうだ。他の商人も同じように通行証を求めて探してるが……今は見つかっていない」
「……ふむ。潜伏してるのかな? 今は騎士も探している。あんまり、広いと二人では無理か」
「二人ともテーブルの下へ」
スッ!!
言われた瞬間にガブリエルとミカエルはテーブルのテーブルクロスの中に入る。
「………」
そして……騎士が一人入ってくる。
「いらっしゃい」
「占って欲しい。帝国から女王が来ていると言う。だが……一人か三人かぐらいの小数で来るなんて事が信じられない。何か……あるか?」
ジャラ……
硬貨の入った袋がテーブルに置かれる。
「占ってあげましょう。3人……それもバルバロッサ名の3人。しかも……護衛はなし」
「嘘だろ!? 一人じゃない!? 3人だと!?」
「ミェースチ女王。ガブリエル姫。ミカエル王子の3人だ」
「くっ………全員行方不明か。何処にいる?」
「残念だが。水晶の霧が深いね……」
「わかった……」
そう言い騎士が占い小屋から外へ出る。ミカエル、ガブリエルは外へ出たあとにテーブルから這い出た。
「どうも、助けてくれて」
「情報を貰いすぎたからね。バルバロッサ名の君らが……何を目的か……それが知りたい。常連が王子と姫だったのに驚いたわ」
「理由はお忍びの旅行だった……結果……母さんは消えた」
「……消えた」
「何も言わずに」
「………わかったわ。それとなくその情報を売ってあげる。宿屋は?」
「………敵地で言えないな」
「大丈夫、戦争はしたくないと貴族が必死になっているわ」
「じゃぁ……数日様子を見てから情報を売ってください。ここにいるとね」
宿屋の場所のメモを渡す。ガブリエルにアイコンタクトを取ったミカエルの後ろをガブリエルがついていこうとし、ガブリエルが後ろを振り向く。
「情報屋として誠意を期待するわ」
短くそう伝えた。
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