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帰路
しおりを挟むミェースチは揺れる馬車で目が覚める。整備させれいない畦道を馬車は進んでいた。何台もあるそれはたっぷりとお土産と郷土品が乗っており帝国へ向かっていた。馬車の歩は遅い。それと同じように待つように最後尾をゆっくりと進んでいる。
「ふぁ~暇ね」
「暇ですか? 騎士団長」
馬車の手綱を持った騎士がミェースチの言葉に反応する。若い騎士であり、何処か臆病そうな雰囲気を持ち。優しく馬を導いている。
「騎士団長? あら……騎士団長ねぇ」
「嫌ですかその役職名は?」
「あなたも騎士団長になれるでしょう。【大陸最強騎兵】ネクター」
「騎兵団長なるものはございません。ただ薔薇騎士3番隊長です」
「何故……あの部隊に拘る? 騎兵団長と言う席を作り新しく組織しようと思ったのだが?」
「騎兵だけでは何も出来ません。それがよくわかっているからこそ反対したのです。それに……薔薇騎士3番も騎兵の集団でしょう。数も多い」
「女王命令ぞ?」
「女王陛下は優しいお方で恩赦をいただけるでしょう。私のように」
「……全く食えない奴ばかり。そんなにいいかね私が」
馬車の中からネクターの隣に移ったミェースチは自分の案に反抗した男を見る。
「申し訳ないですが。自分が輝けるのは馬の上だけです。他は何も出来ない。だから……お断りします。ウリエルにでもどうぞ」
「ウリエルか……まぁ。あの子は自由にさせたいわ」
「女王陛下は本当に息子に甘いですね」
「若造……子ができたら分かる」
ミェースチはネクターの肩を叩いた。ネクターはそれを笑顔で受け答えていく。1期生ネクターは元王国下級貴族だったが国交がある日に学園に入りウリエルとボロスの同期となる。そして……他教科ではウリエルとボロスには敵わないが馬に関する教科はぶっちぎりでボロスに勝った。ウリエルとは馬の上だけならライバルを張れる。
「子ですか。いい人紹介してください」
「帝国の令嬢なら選び放題よ」
「そうですね。ウリエルと選びますよ」
「ええ、頼むわ。あの子、八方美人で誰にでもああだから」
(ウリエル……お前はあれがなければな……)
ネクターはウリエルの母親大好きを思い浮かべ。隣のミェースチをみてわからないはないと思うと考える。騎士団長はネクターにとっても美しい人に見えるのだ。
そう……ネクターもミェースチに拾われた。
ミェースチの父母のせいで失脚し、帝国へ逃げて来た貴族なのだ。
「にしても……遅いですね。あのお子さん」
「ガブリエルとミカエルはきっと来るでしょうが……確かに遅いわね」
ミェースチが追ってくる筈の二人を心配する。心配するがすぐにミェースチはすぐに考えを改める。そんな弱いなら……既に幼少期に暗殺されていると思い直し信じる事にする。あとは、二人きりにするとガブリエルが喜ぶのでそうしてあげたのだ。きっと、イチャイチャしているだろうと考えていた。
「にしても……ネクター。商人に混じりどんな所に目が行った?」
「馬の大きさが違いました。帝国馬の方が大きいです。しかし、荒々しくなく大人しい印象です。まぁ馬車等で素晴らしいですね。それ以外は……騎兵はよく訓練されています」
「騎馬戦で勝てるの?」
「絶対はないですが……絶対にまで近付けさせます。武器の長さは我等が上になれる筈です」
「………わかった。ネクターよ久しぶりの故郷はどうだった?」
「女王陛下。いつか帝国の故郷になればいいと思いました」
「ふぅ……がめついな。土地が欲しいと?」
「帝国旗を掲げたいだけです。それよりも復讐はどうでしたか?」
「なーに、ガス抜きは出来たよ」
「そうですか。それは良かったです」
ネクターはミェースチに笑みを向け、期待を寄せる。復讐に。
「暇ね……何か話をしましょうか? ネクター」
「いいのですか?」
「いいわよ。気にしないから」
ネクターは嬉しさに叫びたくなった。戦場での紅の聖女の話を生で聞きたいと思っているのだ。ヴァリハラ戦役のその伝説についても。
「ヴァリハラ戦役の単騎駆けは本当にあったのですか?」
「……あれか。囲まれた時か。敵方が私を最重要危険人物で張って罠に嵌め込んだものだな」
「本当に最後は生き残ったのですね」
ネクターはその話を熱心に聞く。生きる伝説を……細かく聞き。最後の場面になる。
囲まれた絶対絶命の時。ミェースチは敵の主将に向けて突撃した。結果は………
「……ああ。死にきれなかったな」
「死にきれない?」
「皆は諦めるな、死にたいなんて言うなと言われたね。まぁ気持ちはわかる。だがな……もう。死んでもいいと思っていた。名誉の戦死者、復讐者として名を残し。息子たちや帝国へ撒いたお前らのように勇敢なる騎士がいつしか王国を喰らうと信じた。結果……神に祈ったよ。復讐心は苦しい。だから……楽にしてくれと」
「………そうですか。復讐心は辛いですか……」
「意外か? 燃えるようにたまに人に当たりたくなる。殺したくなる。まぁ……昔はな」
ミェースチは嘘をついた。今もである。
「そして突撃した」
「ああ。ネクター……お前の父上とともに一人でも多く道づれにしようとな。部隊はバラバラになりながらも一人一人馬から落ちようとも……戦い続けた」
ミェースチはその時の記憶が曖昧だった。ただただ……戦っていたことを覚えている。次に意識がはっきりしたのは……
「記憶が途切れ……次に意識がハッキリしたとき。帝国兵が驚いた顔をしている時だった。声をかけられて起きた気がした……そしてああ……私は神に嫌われたと知ったね」
「……神に嫌われた?」
ネクターは心の中で壮絶な話を思い出していた。
ネクターの父上や帝国騎兵の最後の勇敢なる戦いは有名な話だ。だがその話が語られる理由は生き残りがいるからだ。本来全滅してもおかしくない状況で生き残った人が同じ事を言う。
戦神に愛された聖女を見たと口々に言う。隣のただ薫製のベーコンを今、食べている人がだ。しかし、本人は嫌われたと言っている。
「嫌われたでしょう。神に嫌われたから生き残った。お前はいらないんだ。お前はそこで惨めに生きてろとね。死ぬ気だったのに連れていってはくれませんでした。一人ぼっちで膝をつきたってましたね」
ウリエルから聞いたこともある話だ。多くの敵が転がってる中で一人、膝をつき動かず敵将の首をもって下を見ていたと。光が照らされたその光景に兵は言葉を失ったと。だから……
「まぁ。面白い話ですね。嫌われてるから生き残る。そういう考えもあるのですね」
「ええ……まぁ。今では生きてて良かったと思ってるわ。だって……」
ミェースチは後ろを見る。二人の騎士が見え、馬車を追い抜く。そして……その騎手は驚いた顔でミェースチを見たのだ。何故わかったのかと。
「遅かったじゃない。おかえり二人とも」
裂けるような笑みを向けた。二人は驚いた顔で見たあと、汗を拭い真面目な表情で馬を降りる。もちろんネクターも馬車を止める。
「……ネクター様も居たんですね。お母様……何も言わないなんてひどい!!」
「母さん……少しイタズラが過ぎるとは思わなかったんですか? ガブ姉を危険に晒して……」
二人はグチグチと言葉を溢し、ミェースチは笑みを絶やさず一言だけ問う。
「王国はどうなりました?」
その問いに二人は報告も兼ねて残された事を知り。帰ってくる事を信じていたのがわかった。
「王国は……」
ガブリエルが顛末を言い。王にあったことを驚いたあと。ミェースチは息子と娘の二人の予想通りに大きく腹を抱えて笑い涙も流すのだった。
「ああ!! 爽快!! 生きてて良かったわぁ~ふふふ……さぁ。シャルティエの耳にも入るかしらね」
ミェースチは光と言われ比較されている女王を思うのだった。
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