28 / 54
戦争の火種姫
しおりを挟む家族間の風呂はいつでも問題になる。家族の風呂の順番は決まっていた。先ず、女性が先である。
ミェースチとガブリエルとミカエルは一緒に。ミカエルは拒否しても3人と言う括りで問答無用に犠牲となる。そして次に年長者からと言われるが自由でありラファエルとウリエルにロイドが一緒が多い。
風呂桶も3人入れるような大きさにしており。風呂を溜めない場合は体を流すだけにする。しかし、体を流すのも流量が決まっているため問題が起きる。
貯湯槽が少なく。お湯が決まった量しか沸かせないのである。ミェースチがケチケチしているため大きいのは作らない。
結果……溜めない場合はそこまで問題がないが……流す場合は量が増え……途中湧かし直しがあり時間がかかる。だからこそミェースチの後で順番を決めるのだ。
ただ全員、仕事などで時間がずれたりし。一緒に合致することは少ない。しかし無いとは限らない。溜めればいいが溜めるのも時間がかかり。その分でも時間も長くなるため。湯の花を使う時だけしか溜めないのである。
「今日は一番、私が行くわ」
「「「「「どうぞ」」」」」
「………たまに代わっても」
「「「「「いいえ」」」」」
「………」
ミェースチが譲ろうとしても必ず一番をすすめる。ミェースチはそれを少し寂しく思いながら席を立った。なお1番の理由は血を流す。血の付着率が高い事と皆が快く譲れる相手だからだ。
そしてあとは平等である。と言うよりもここからは全員は席を立ち。決戦場へと移った。
大きなバケツのような物にツルツルの魔物の皮を引っ張り。太鼓のようにした物を横にせず立て中央が窪んだ物の前にウリエルとロイドが立った。そして、各々が玩具を取り出す。
そう玩具である。特殊な発射装置から鉄を削った独楽を放ち戦わせる……子供の玩具である。しかし……それは奥が深く。帝国内での玩具と言えばこれと言われるまで大人もやっている玩具である。基本の形から鉄を削り成型したそれは……ウリエルが学園の時にやっと完成したと言える。
そう、ミェースチが息子のためになにか玩具をと考えたら。いつの間にか時間がたってしまい。予想に反して大人がやりだし。大人向けになってしまった物だった。なお、子供もしっかりとやっているので問題はない。今では基本から自分なりのオリジナルの形を作った鉄の独楽が流行っている。たとえば……
「……よし。今回は勝つぞ。ワシの【皇帝】で」
「父上……その蛮勇。僕の【聖剣】で挫いてあげましょう」
ロイドはドラゴンを彫り。ウリエルは剣を彫り、非対称のピーキーな構成にしたものや。ラファエルの女神の体を丁寧に描いた物。ガブリエルのすべての形の頂点は円と言う理論の物や。ミカエルの純正こそ至高派もいる。
とにかく……ミェースチが体を流している間に戦い。大人の子供遊びを行い。順番を決めるのがハウスルールである。
「「3、2、1、ゴー!!」」
簡易決闘でも使われる方法で。怒っての決闘後、知らぬ間に目的を忘れて仲良くなると言う異常な魔法物。風呂を入るのをしばしば忘れるほどである。
バキャーン!!
「ぼ、僕の【聖剣】が!?」
「くくく!! ワシの【皇帝】こそ独楽界の王……な、なに!? 割れている!? 崩御か!?」
これを5回戦やり順位を決めていく。そして………それを外から見ているメイドはいつも思う。平和だなと。
*
「……上がったよ」
「ガブ姉さん!! 俺の【原初】と勝負だ」
「いいでしょう。ミカエル……でも容赦はしない。これが全て答え。祝福されし【完成】よ」
「………」
ミェースチはまたやってると思いながら。わいわいとしている中を遠くで見続ける。開けたワインをチビチビ飲みながら、いつもその輪に入れない開発者ミェースチ。
己が生み出した戦う玩具を呪いながら……指を銜える日々を過ごすのだった。全てアイツが悪いと逆恨みしながら。
*
シャルティエは腹違いの子が最近ハマっている玩具を眺めていた。側室の子だがシャルティエは我が子として育てる事を強要されている。そんな子に貴族たちは玩具を買ってあげていた。
「よっしゃ!! 勝った!!」
鉄に独楽が弾き飛ばされて転がっていく。相手のメイチェルは悔しそうに弾かれた独楽を取った。弟の相手をしてあげているのだ。
「うーん。今日は勝てない」
「そりゃーオリジンだからね。帝国玩具だよ」
「……いいなぁ。あっ……いやいや。それはあの女の物。絶対に使わない」
「でも。これが元だよね。真似たけど」
「ぐぅ……」
メイチェルは悔しそうに唸る。面白い玩具の開発者が気に入らないが……面白いため。悔しいのである。シャルティエはと言うと……こんな物にまで彼女の影がと思いながらも、諦めに似た何かをその独楽に向けた。
シャルティエは……本当に何処にでも彼女が見ている気がして心苦しくなる。メイチェルはそれを見ながら……ミェースチを嫌う。自分の母が一番だと信じ揺るがない。
「母上、大丈夫です。母が一番です」
「ありがとう。メイチェル……でもいいの。わかってるから……」
「母上……」
メイチェルは舌を噛む。シャルティエはいつもいつもミェースチの影に晒され笑顔が少ない気がするのだ。許せないと思い。メイチェルは決断する。
相手もやったんだから私もやると……帝国に復讐しに行くのを決めるのである。シャルティエが幸せになるにはミェースチを消すしかないと考える。
ナイフや剣を習って来たのはそのためだ。
だからこそ……雇った。メイチェルの貰える物を売り。メイチェルの護衛を。
「母上……安心してください」
「?」
「いい報せを渡せるように私!! 頑張ります!!」
学園を休み。過酷な冒険を制しメイチェルは帝国に顔を出すことを決めるのだった。己が全く王位を継げない事を理由に……捨て身でミェースチに会う気であった。
そして今夜……王から妻へと報告が渡る。
*
後宮、王の寝室にワインを注ぐシャルティエはメイチェルの覚悟を王から聞いた。
「……どういうことですか?」
「王国に旅行だよ。メイチェルは帝国を見たいと言いだしたんだ……」
「そんな!! それは危険です!! 止めないと!!」
「シャルティエ……気持ちはわかる。危ない……だが後学のためだ。すでに出発した……昨日で挨拶を済ませてね」
「こ、後学ですか!? それならここでも!! あ、挨拶?」
「………婚約者の騎士団長に一晩。メイチェルは大人だ。冒険だって出来るだろう」
「………本当に。後学のためですか?」
「愛している。シャルティエ」
「…………はい」
シャルティエはその問いに察し……自分の弱さを痛感するのだった。お飾りの女王だと。
1
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます
咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。
そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。
しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。
アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。
一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。
これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる