【完結】復讐に燃える帝国の悪役令嬢とそれに育てられた3人の王子と姫におまけ姫たちの恋愛物語<キャラ文芸筆休め自分用>

書くこと大好きな水銀党員

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謁見

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 楽しい時間はすぐに去る。レイチェルは城に戻り一夜明けた早朝。王の間に人生は幸せだったと覚悟を決めて案内される。


 他の使用人たちも謁見の場で見ることを許され。ラファエル以下数人の騎士。ウリエル、ガブリエル、ミカエル等の息子たちに多くの番隊長が謁見の場に詰め寄せていた。


 そう……レイチェル姫を一目見ようと言う理由とミェースチのどうするかを見たいがために集まったのだ。見世物……そう。見世物だった。


 レイチェルは思う。惨たらしく殺されると……だけど最後に一矢報いようと唇を噛んだ。


「こんにちは……遠路遙々ようこそ。帝国へ」


 血のように紅一色のドレスと髪にレイチェル姫はこの人がミェースチだとわかる。切れ長の美しい瞳に睫毛。綺麗なスタイルはレイチェル自身の母上を思い出させた。赤い薔薇のように棘を持つ女性に妖しい美しさがレイチェルに言葉を失わせた。


「レイチェル姫……名を」


 レイチェル姫の隣に居るラファエルがボソッと言う。我に返ったレイチェルは胸を張った。


「私の名前はレイチェル・グローライト。シャルティア・グローライトの娘です」


「……ミェースチ・バルバロッサ」


 ミェースチがゆっくり近付いてくる。その表情は何も感情が浮かんでいなかった。


「ミェースチ……ミェースチ!!」


 ラファエルは隣の姫の豹変に……大きく溜め息を吐く。王国での洗脳教育だろうなと思ったのだ。ラファエルは様子を伺う。


「いい顔ね……動いていいわよ。レイチェル姫」


 レイチェル姫が立ち上がり。手慣れた行為でスカートの中からナイフを取り出し。鞘を取り投げ捨てる。


「あなたがお母様から笑顔を奪った!! この日をどれだけ待ったか!!」


 ガシッ!!


「レイチェル姫……お戯れはお止めください」


「なっ!! 離して!!」


 ラファエルはレイチェル姫を後ろから抱き締めて押さえる。暴れるレイチェル姫に優しく声をかけ続けるが全く聞いてくれず、レイチェル姫の蛮行に当たりがざわつく。ただ……王国側は落ち着いていたが。それをウリエルたちは見逃さない。


「ラファエル!! 離しなさい!!」


「母上!?」


「周りも動くな!! 私は動いていいと言っていない!! 口も開くな!!」


 ミェースチの声が謁見の間に響き、腰を浮かせていた騎士が全員座る。ラファエルもレイチェル姫を離し、ミェースチはレイチェル姫に近付く。


「憎い? 私が?」


「憎い!! 母上は!! いつだってあなたに怯えてた!!」


「……そう。なら。そのナイフで刺せばいい。逃げないわ」


「うぐ!?」


 レイチェル姫はミェースチの恐ろしい胆力に驚き、腰が引けてしまう。人を殺めた事のない少女の手は震える。レイチェル姫は動けず、気付けばナイフの先がミェースチの腹の辺りに当てられていた。


「さぁ……避けれない。ズブッとする。初めての人を殺める感覚ね」


「ひっ!?」


 ラファエルはレイチェル姫を庇おうかと悩みだす。レイチェル姫の覚悟はミェースチの恐ろしい気や行動に圧されて萎縮し動けなくなっていた。周りの騎士も唾を飲み込んで動向を見守る。


「あっ!?」


 レイチェル姫はナイフを下げようとする。レイチェル姫の心が嫌がった。しかし……下げようとした瞬間。ミェースチが両手でナイフを持つ手を掴み。固定する。


「あなた……人を刺したことないのね。こういうことよ」


「い、い!?」


 ズブッ!!


 ミェースチは笑みを浮かべて、レイチェル姫の手ごとナイフを突き入れた。自分の体に……お腹の横辺りにズブズブと押し込む。血がナイフから滴り、レイチェル姫の手を汚し、ミェースチの手を汚す。


「あっ……」


「ふふ。おめでとう」


 すとっ


 レイチェル姫はその場にへたりこみ。ナイフの刺さったままのミェースチはラファエルを見る。ラファエルはそのアイコンタクトに頷き、ミェースチの近くに行く。


「ラファエル、抜くの手伝って」


「わかってます」


 ラファエルはハンカチを手にしてナイフの拭く。吹いたあとに掴み。ミェースチを見る。


「抜きます」


「ええ、優しくね………ん!? ぐっ!!」


 ナイフを抜く。少し痛がったミェースチは抜かれた瞬間、魔法で傷口を塞ぐ。ラファエルはナイフの血を拭き取り。刃を持って柄を母に向ける。


 ミェースチはそれを受け取り。放心しているレイチェル姫の前でしゃがんだ。鞘をラファエルから受け取り納めてナイフをレイチェル姫の前に置く。


「いいナイフね。あなたの物よ、お返しする。でも殺す場合はもっと長い刃渡りのを持ってくることよ……こんなんじゃ死なないわ」


「………殺さないの?」


「あなたを殺してどうするの? あなたの事は嫌いじゃないわ。子は子……関係ないのよ。だから……殺してあげられない。ごめんね」


 ミェースチはそのまま、謁見の間を去る。ラファエルたちに後を任せたと言い残して。







 レイチェルは……生かされた事がわかった。あの憎い人が見せた笑顔に己の浅はかさを知る。


 血濡れた手で顔を覆い、大きく泣き出すレイチェル姫にラファエルは周りの者に静かに退室しろと睨みを効かせる。


 周りも黙って謁見の間を去る中で、みんながエエもの見たと言う表情で去っていく。


 劇場の一場面のようなのに大きく喜びながら仕事へ戻っていった。ウリエルたちも同じようにラファエルに任せようといい。そのまま部屋を後にする。


「レイチェル姫……お部屋でお泣きください」


「うぐ……ぐぅ……ぐす」


 ラファエルはレイチェルが立てるまで。そばに居てあげ。周りを警戒し続けるのだった。








「…………」


 レイチェルは部屋に戻ってきた。ラファエルは仕事に戻るといい離れる。一人残ったレイチェルは椅子に座り。静かにしていた。


「……」


 多くを悩み抜き。最後に散ろうとした結果。何もなく……泣きも落ち着きレイチェルは一つ溜め息を吐く。


「……なんでここまで来たんだろ」


 元は父上からの案だった。初めての頼み事と自身の母への復讐だった。しかし……レイチェルは殺せないと思ったのだ。死なない、ミェースチは手加減してても殺せないとわかり。無駄死に恐怖したのだ。


 しかし、それも目の前の惨劇に塗りつぶされる。ナイフで刺し込んだ感触もある。感触もあり、暖かい液体が触れたのに……


「同じ生き物じゃない!!」


 レイチェルは体を抱き締めてそう結論づける。考えられない行為をし、さも何もなかったようにする仕草に同じ人とは思えなかったのだ。


 レイチェルは何を恨んでいたんだと問答する。しかし、答えはそういう者だった。


 悪役だった者は正義に潰される。だが……正義より強い悪役だったら……それは正義なのではないかとレイチェルは思う。


 力が全てだと……理解し。少女は現実を知った。


「はは……そうです。そうです。そうです。私は……私は……何も出来ないんです」


 少女は絶望を知る。


トントントン、カチャカチャ。ガチャ!!


「!?」


 レイチェルは鍵を閉めていた扉が開けられ王国の使用人がゾロゾロと現れる。その異様な光景にレイチェルは立ち上がる。


「姫、ご無事でしたか?」


「え、ええ。その……ええ……」


 騎士の一人が剣を抜き、扉に再度鍵を閉められる。


「えっ……どういうこと?」


「お嬢様。申し訳ありません。王国の礎になってください」


「礎に?」


 何がどうなのかわからないレイチェル。しかし、身の危険はわかり窓に寄る。


「ええ……死んでもらいます」


「……わかった。でも人の手は借りません。この窓から飛び降ります」


「わかっていただけたでしょうか?」


 レイチェルは窓を開け冷たい空気を感じながら、舌を出す。


「………ばーか。死ぬわけないわ」


ヒョイ


 レイチェルは窓から飛び降りる。そして、水のクッシュンが地上に生まれたのを見たのちに叫ぶ。


「ラファエル様!! お願いします!!」


「わかってますよ」


ドボン!! バシュン!!


 水のクッシュンはレイチェルを受け止め、割れ路地裏の側溝に流れていく。濡れたレイチェル姫は悪態をつく。


「さ、さむい!! なんで……昨日みたいに……」


「応急措置です。冬ですから寒いのは当たり前ですが……少し我慢してください」


 ラファエルはマントでレイチェルを包み。姫様のように抱っこして走る。まだ子供っぽい体は軽々と持ち上げられた。ラファエルは上を見ると王国騎士と目が合い。ニヤリとする。出し抜けたことに喜び……そして………


「お前らの姫は貰った。捨てるならいただこう」


「ラファエル様……」


「いきましょう。あとは………兄と弟に……そうですね。母上にお任せします」


 そう言いラファエルはその場を去る。帝国中を探せるとは思えないため。逃げ切れると考える。


「魔法使いが入ればの話ですがね」


 ラファエルは帝国内で消えるのだった。








 ウリエルはボロスと一緒に騒ぎに駆け付ける。


「騒ぎがあったけど。どうされました?」


「そ、それが!! ラファエル王子にレイチェル姫が浚われました!!」


 廊下の真ん中で王国騎士が数人、使用人も含めて言い訳を言い出す中でウリエルはボロスに合図する。


「ボロス。素手かい?」


「ええ、素手。ウリエル。剣なんて捨てなさい」


「嫌ですね」


「えっ!? ま、まて!!」


 騎士一人の頭をボロスが掴み。握りつぶし、ミカンのように搾られる。それに反応し王国の使用人や騎士が得物を持ち出した。


「ガブリエル……ミカエルは退路を絶ってます。聞きますが……この搾られた人のようになりたくなければ。投降お願いします」


「………」


 廊下の窓から騎士達が飛び降りる。そして、魔法のようなもので着地をし逃げられた。それも全員に……ウリエル達はわざと逃がす。


「ウリエル……甘い」


「……相手が本物だったようですね。帝国の暗殺隊と王国の暗殺隊との2回目の勝負です」


「ええ。じゃぁ、あと始末しましょう」


「はい。行きましょうボロス」


 その日、再度。帝国民と王国からの敵との戦闘があり。そして……数人捕らえることが出来たのだった。









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