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正直者は英雄(失恋)の始まり①

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 モテ期と言うのがある。思春期真っ盛りの高校生に良くある奴で、それは非常に痛々しい事でもカッコよく見える。中二病的なのを思いながら、まるで漫画みたいな展開を味わっていた。ただ、俺は主人公ではなくモブのような感じではある。

「ふぅ、今日も会議かぁ」

 学生なのでリモートでの会議が許されており、勉強しながらの参加も許されていた。また、逆に彼らが先生を雇っていたり、教員免許を持っており、授業も行っているので学生は「慈善活動で勉強ができない」と言う「言い訳」ができない。

「集まっていただきありがとうございます。宿題提出は……全員出てますね。では『社会科、公民』から問題です。我々の活動名は?」

「ええと、警察公安代理活動。通称、特別公安員」

 「先生」と言う、活動者のトップ者からの問題。それに対してコメントを打ち込み、Aiによる正答の返信が来る。間違っていれば逆に詳しく教えてくれるので頭に残りやすい。

「正解ですね。ほぼ皆さん合っています。ただ……未回答が目立ちます。わからないなら、『わからない』と回答しなさい。特に……教える立場にある大人たちへ」

 先生は非常に厳しく。そして、誰にでも優しいこの世の人とは思えない女性である。大きいホールの中心で彼女はまるで聖女のような出で立ちで『公安』語る。それは非常にヒーロー活動に必要なものだ。

 そんな演説を終えた後、報告会が始まる。地方で決められた代表が事務的に話をする。その中で俺らが対処した事件が取り上げられて事故処理等々も説明された。その後に警察の公安部の方々が話をする。

 小説、漫画などとは違い。そこにはつまらない世界が広がっていた。「責任」「問題」「対処」とまるで一般会社のような組織に思える。なので居眠りもするヒーローも居るだろう。花型の存在は非常に現実では地味である。

「あーあ、もっとバシバシ活躍したいなぁ」

 だからこそ、力を持て甘していた。手の甲に一本の細いダーツ型のナイフのような剣を出して壁にあるダーツ板に投げつけて刺す。そのままその剣は消え、傷だけを残す。

 ダーツで思い出すのは実は幼馴染みの女性、カンバラヒムが得意と言う事だ。珍しい銀髪で、まつ毛が長く、柔らかい表情の女性でありながら、喋れば何処か変な目を見張る少女で表現できない女性である。

 そんな彼女は真っ直ぐダーツを投げるのは上手い。狙って揺れる胸を思い出す。ダーツの真ん中に当てて喜ぶ笑顔を思い出す。下半身が熱くなり、頬を叩いていさめる。

「ああ!! ちょっと運動しよ!! 俺のアホが」

 考える事は嫌いだし、思春期だから滅茶苦茶に異性が気になる。「実は好意があるんじゃないか?」や「付き合ったら」などの妄想もする。だが、今は公安活動もあって「難しい」とも思える。

「ああああああああ、面倒」

 悶々としながらの無線イヤホンを着けて庭に出る。身長より出かい剣を出してそのまま素振りをする。ブンブンと筋肉に刺激を与えながら邪念を払うが、どんどん邪念が増える。今日も「泊まっていけば?」なんて事を切り出そうとした。好意がある素振りがあるが、俺は踏み込めずにいる。今の状況で満足してる自分がいるのだ。

「はぁはぁはぁ……」

 俺は考える。「他の同級生はどんな気持ちでいるのだろうか?」と。

 プププププーーーーン

 誰とも被らない特徴的な着信音に俺は慌てて庭から部屋に戻りスマホを手にする。悩ませる当事者からの連絡だ。

「なに? ヒム」

 慌てて取った事を察せられないように俺はキザに答える。彼女の前ではかっこつけたい。

「生活支援者の戯言に辟易してるから、声が聞きたくて……通話大丈夫?」

「いいよ、そのままゲームする?」

 汗を拭きながら、会議を「気になる子から連絡来た」と理由をつけて抜ける。他の方々から「頑張れ」との応援のスタンプが押されだす。先生たちは本当に暖かい。

「うーん、どうしようかな?」

 彼女は本当に声だけを聞きたいようだった。俺は提案をして、場を繋げようと思う。彼女が話す「政治」とか「宗教」とか「難しい」話をされたら困る。そこらの同級生の子達と違った価値観で生きすぎてて、彼女は優しい言い方で「不思議ちゃん」。悪い言い方で「変人」である。

「新作ゲームの並走しよう」

「どうせ私が先にクリアするんでしょ」

 これは仕方がない。彼女はすぐに攻略サイトを頼る。そして、ネタバレをする。我慢してるようだが、ポロポロするから本当に困る。

「まぁ、いいじゃん」

「わかった。買ってあげる」

「はぁ、女に奢ってもらってばっかりは……」

「バイト代出たからね」

 スマホにギフト機能でゲームのコードが届く。俺は彼女の早い行動に苦笑いしながらも、嬉しく思う。一人暮らしであり、そんなにたくさんのお金はないのだ。

 だけど、奢られてばかりは何か嫌なのでいつもではなくたまにお返しにゲームを買って返している。昔の大人は凄いと思う。「男が全額払う」って言うのだから。

「ありがとうヒム」

「うん」

 素直な感謝の感情を吐露できる。数少ない友人だ。








 







 
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