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貴族授業参観。元婚約者と婚約者
しおりを挟む中立を保ちながら体調も悪くても無理して出席を稼ぐ。そんな学園生活も慣れた寒い時期。
今日は授業参観がある。何度目かの授業参観が行われる予定だ。気持ちが滅入ってしまう。
授業参観とは貴族たちが男子禁制の花園に踏み入れる日っと言う。目的は舞踏会と一緒で午後は授業は無く社交の場となる。
暇か仕事を休む貴族たちはその日に気になる子に声をかけ、私たち令嬢は声をかけてもらいたいために授業を一生懸命受ける。貴族も何人ともその場で婚約を決めるため。重要なのだ。そして婚約者同士でもお茶会を開き親睦を深める。
「はぁ………」
そのために、頑張る人は多い。私も最初は焦っていたけど今は………苦痛な時間だ。
「お嬢様、ため息すごいですね」
「午後、今からは何もせず。お茶を飲むだけですし」
「トラスト様がお越しにならないから?」
「………忙しいので仕方がない事です」
「…………来ていただきたいと?」
「い、いいえ。そんなわがまま言えません」
たくさんいただいているのにこれ以上は。ワガママすぎる。それよりも、あの婚約破棄した家の貴族に出会うのが嫌なのだ。発作も出るし気分が悪くなる。
「ヌツェル家に出会うのが辛いのです。見るのも」
「そうですか………良く見ますものね」
ヌツェル家は上級貴族。たまに参観へ足を運んでは人気でチヤホヤされている。顔もいいし、優しそうなのだ。そんな彼を見るたんびに苦しくなる。
「…………早く帰りたいです」
廊下の窓から貴族たちが私たちを値踏みする。今日は制服は解禁されて、皆お洒落をしている。私もワルダも浮かないように同じように少しお洒落を無駄にする。いいえ…………ワルダは相手がいましたね。
「ワルダ、今日は婚約予定者と?」
「申し訳ございません。時間がくれば離れます」
前々回の授業参観、貴族様とお話をした。気になるといい接触した人がいた。今日はその人と話をするらしい。
「…………いいえ。頑張ってね」
「はい!! トラスト様には感謝しないといけませんね」
ワルダの貴族はトラストさんの知り合いらしい。彼から聞いたのか、その貴族様も騎士様だ。
「あれ!? ヌツェル家では!!」
ある令嬢が廊下を指差す。皆が廊下を見て歓声をあげた。アルス・ヌツェル。私を一方的に振った貴族様が現れて令嬢たちが我先に囲みだす。人気である。本当に何故………私に声がかかったのだろうか? 気紛れだったのかもしれない。
「ふぅ………トラストさん。来ないかな」
「くす、お嬢様。声に出てます」
「えっ!? あっ………そんな………」
顔を押さる。わかってる。一緒にいると気兼ね無く接する事が出来て安心する。好きなことぐらい。
「にしても人気ですねヌツェル家」
他の貴族たちもいるがヌツェル家は人気だった。
「なんで人気なんです?」
「ヌツェル家は皇帝陛下の分家。裁定の剣を抜く試験を行える家なんです」
「裁定の剣? 皇帝になれるチャンスがあるの?」
「あります。そして…………皇帝になる子を産めば」
貴族を統べる王の母。頂点だろう。それ以外も宮廷に顔を出せる資格を有するのだ。得は多い。そして尚更なぜ婚約者だったのかわからない。
「ふぅ………あんまり関係ないですね」
「お嬢様? 何を仰ってるんです? お嬢様のお慕いしてる人はですね!! 実は!!」
「ちょっと君たち退いてくれ。元気なったんですね‼ 心配してたんです!! アメリアさん!!」
囲まれたっと言う表現がいいだろうか。私は席に座っている。そして座っている私の目の前に元婚約者であるアルス・ヌツェルが私に頭を下げた。
「一方的な断り。申し訳ありませんでした」
「え、えっと。は、はい。なにか……り、理由があったんだと思います。えっと…………」
唐突な出来事に緊張し息苦しくなる。吐き気を押さえて絞り出すように喋る。動機も激しくなった。トラウマが蘇る。母の貶す声が………
「あぅ……えっと」
「ありがとうございます。胸のつっかえが無くなりました。お詫びにお茶でもどうでしょうか?」
周りがざわつく。皆が何故私がっと口々に聞こえるように話始めた。彼はそれを気にもとめず話を始める。
「病気で苦しんでいると聞いてました。元気になられて本当に良かったです」(あの振った子がこんなに綺麗な髪の子だったとは。顔も明るい)
周りからはお優しいとの声。私は手が震えだす。怖い。目が笑っていない。
「えっ? その…………」
「家に迷惑をおかけしました。償いを……」(再交渉しましょうか。体もまぁいい感じに育ってます。成長期なのか半年で変わった気がしますね)
彼は私の震える手を掴もうと伸ばす。私は手を引く。周りから最低との声が聞こえた。泣きそうになる。目が怖い。周りが怖い。
「恐がらなくていいですよ。そんなに」
「うぅぅ………」
「すいません。お嬢様まだ………調子が悪くてですね」
「………大丈夫ですか?」(ここでは周りの目がある。つれていこう)
心配そうに再度手を引こうと掴んでくる。優しさも感じない。強引にワルダが割って入ろうと席を立った瞬間。横から手が出たのがわかった。
がし!!
「つぅ………誰だい君は」
「トラストさん!?」
「トラスト様!?」
私とワルダが声をあげる。来ると思ってなかった。我慢が切れて泣きそうなのを我慢する。
騎士である彼は手を横から掴んで私の前へ立ち塞がったのだ。
「トラスト………聞かない名前だな」
「ええ、聞かないでしょうね。有名じゃありません」
「この手を離せ」
手を離した。周りの令嬢がどうなるのかっと静まり返り、変な空気になる。そんな中で彼は私に優しく声をかけてくれた。
「すいませんでした、アメリア。………ごめん、約束時間を過ぎたね」
「え……うぅ………そんなことないです」
約束なんてしていない。だけで彼は遅くなったと謝る。彼は私に手を差し伸べ私はそれを掴んだ。
「行きましょう。ワルダさんもお迎えが来てます」
「は、はい。お嬢様すいません。私、行きますね」
「う、うん」
「………通れない邪魔だ、どけ」
私を連れて彼は令嬢の包囲を底冷えした激で退かす。そそくさと教室から廊下に出たあとすぐに立ち止まる。
「すいません。遅くなって大変でしたでしょ?」
私は優しく声をかけてくれる彼の逞しい手を強く強く両手で握り反し額に当てる。安心し涙をが出てしまう。
「トラストさん………ありがとう………ありがとう………」
彼は空いた手で優しく撫でてくれた。周りの目を気にせずに。
§
逃げられたっと言うよりも横槍が入った。鋭い槍が。掴まれた手をフラフラさせて具合をみる。強く握られた痕があるが大丈夫だ。
「アルス様? 大丈夫ですか?」
「アルス様お怪我は?」
「ないです。自分も少し強引でした。反省しなくては」
聞いたことのない名前だった。家の名前は名乗らなかったのは俺に言えない家柄なのだろう。低級貴族めが。
「…………アルスさま?」
「あ、ああ。少し考え事を……お茶でも飲みに行きましょう」
トラスト。俺に恥をかかせたことを後悔させてやる。
*
「………」
「そろそろ泣き止んだ?」
「は、はい」
私たちはガラス貼りのカフェテラスに丸い机に挟んで座る。ガラス貼りの内側に魔力炉のストーブが置かれ寒さを感じることはない。外の冬でも咲くバラを眺められるのだ。
「お待たせしました」
ティーカップと紅茶の入ったポットが用意していただいた。カフェテラス形式なのは私たち令嬢がご用意するためだったのに。私はトラストさんに任せてしまった。他の令嬢が冷ややかな目で私をみる。軽蔑しているのだろうきっと。
「ごめんなさい………用意するべきなのに………泣いてるだけで………」
「落ち着いたね。美味しいそうな茶葉だねこれ………高そう」
「トラストさん………すいません」
「謝りはいりません。感謝は受け取りますがね」
「………ありがとうございます」
「どういたしまして」
満面の笑みを私に向ける。あまりの明るい顔だったので直視できず背けてしまった。
「真っ赤ですね、耳。まだ慣れませんか?」
「慣れません………好きな人の笑顔は慣れません…………はっ!?」
私は慌ててトラストさんの方へと向く。言ってしまった!! 言ってしまった!!
「そ、そうですか。はは………えっと。ありがとうございます。恥ずかしくて恥ずかしくて熱いですね」
「…………」
いつも、もっと恥ずかしい事をしてるのに。彼は目線を泳がせる。
「クスッ……いつも格好いいのに変です」
「まぁ、不意打ちでした。戦場ではそんなことはないのですがね」
「あら、勇ましい」
二人で笑い合う。やっぱり私は安心する。彼といると落ち着くのだ。
「あっ、そうそう………令嬢として訓練されてると聞いていたのですが。これ剥けます?」
トラストさんが小さい木箱を用意する。中からはリンゴが出てくる。ナイフも彼は用意した。
「剥けますけど?」
「では、お願いします」
「………トラストさん剥けますよね?」
「剥いて貰うという行為が嬉しいんです」
私は高鳴る胸を落ち着かせて黙ってリンゴを剥く。視線はリンゴに集中する。
「………うんうん」
ワクワクして待つトラストさんにかわいいと思いつつ私はリンゴを剥き終え、用意してくださった皿に置く。
「ウサギではないのですね?」
「ウサギのようにすれば良かったですか?」
「次回ぜひ」
「………トラストさんってかわいいですね」
「そうですか? 大分年上なんですけど」
「そうじゃなくてですね。カワイイ所がありますねって言ってるんです」
「はは、まぁ………君の前でしか言いませんしね。わかってるんです。そういうのは子供っぽいって………だけど。たまにはいいでしょう? 小説の参考にもなる!!」
「書きはしないのに小説の参考にするんです?」
「手酷いですねぇ………」
「照れ隠しですね」
「わかりますか?」
「わかります………なんとなく。逃げてるなって」
「………はい。すっごく今恥ずかしいですよ。ははは」
私はクスクスと笑う。本当にこの人が婚約者でよかった。そして………何故だろうか。この人に逢えるなら………婚約破棄されても良かったのかもと思えるようになりつつ。甘い甘いリンゴを食べるのだった。
本当にいつもより甘く感じれる。
§
「あれ、誰かしらね?」
私はカフェテラスで何人かの殿方と面接が終わり。舎妹と一緒に休憩に来ていた。そこで………アメリア・ヴィスが綺麗な笑みを格好いい殿方に向けて談笑している。
「お姉さまは御存知ないのですか?」
「知らないわ。誰か知ってる?」
皆、首を振る。っということは最近になって学園に来たか婚約者探しを始めた貴族様だ。アメリアが綺麗に……元気になった理由な気がする。
「婚約予定者………かしらね?」
アメリアの噂の婚約予定者さまは本当に格好いい方だ。何処で出逢ったのだろうか?
「少し興味が出てきた。調べましょう」
「はい、お姉さま」
「まぁ………きっと大きい家ではないわ」
「そうですね。ヴィス家と同じでしょう」
有名じゃない所なのでしょうけど。格好いいだけで気になるわ。
「………ああいう人なら。下でも愛して行けそうなのにね」
「本当にですね。私も格好いい人がいいです」
選ぶ基準は結局人それぞれ。そして………妥協できるかどうか。私たちはアメリアとは別のテーブルに座り。面接した貴族の酷評を口に出すのだった。
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