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授業参観2度目 前編
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授業参観日の前日。俺は借りていると言うよりもすでに家と化したヴィス家の寝室で小説を読む。前は父上と同じ屋敷だったが今は婚約者のためにお義父様には無理を言いこちらに引っ越したのだ。そして、アメリアには快く許可をいただき住まして貰っている。ありがたいことだ。
「ふむ」
テーブルの上に魔力で光るカンテラとテーブルの下に小型の魔力炉のストーブを使い。快適な空間で書に耽る。向かいに同じように小説を読む婚約者のアメリアがチラチラと私を伺っていた。自分は本を栞を挟んで閉じる。何かを待っているのだろう。
「どうしました? アメリア」
「あっ………いえ。いつ読み終わるのかと………」
「読みたかったですか? どうぞ」
「えっと…………ありがとうございます」
何故か微妙な顔をする。察しが悪かったな違う。
「本は関係なかったのですね。なんでしょうか?」
「あうぅ………ごめんなさい。その………お話がしたいなと………いつ読み終えるかなっと………思っておりました」
自分は目を閉じ深呼吸をする。鼓動を落ち着かせて再度彼女を見る。彼女はモジモジと自分の言葉を待って顔を俯ける。再度深呼吸。そしてなんとか落ち着きながら言葉を捻り出す。
「いいですよ?」
アメリアが顔をあげてパッと表情が明るくなった。もちろん直視後すぐに目線を他に移した。
「トラストさん!! ありがとうございます!!」
「…………」
「トラストさん?」
「…………………」
「あっ………トラスト」
「では、お話をしましょうか?」
「………えっと………本当に呼び捨てじゃないとダメなんですか?」
「二人の時は呼び捨てにしようと決めたじゃないですか?」
「馴れないです。その………年上ですし。お兄様のような感じもします」
「婚約者なんです。なれてくださいねアメリア」
「…………はい」
「でっ? 何かを聞きたがってましたが?」
「えっと………明日、授業参観があるんです」
「………忘れていました」
自分はメモ帳を確認しデカデカと参観日と書かれた文字を目にする。頭を押さえた。
「すいません。本当に忘れてました」
「そ、そうですか………」
アメリアが悲しい顔をする。本当に感情が豊かになって分かりやすくなった。何をすれば喜ぶかも分かりやすい。だから………
「参加しないとは言ってません」
「えっ? 本当ですか?………本当に!! ですか!!」
嬉しそうに声を出すアメリア。
「え、ええ………本当です」
「…………すいません。ちょっと騒ぎすぎました」
「感情表現が出来るようになりましたね」
虚ろな目をした彼女は何処かへ消えた。
「はい。トラストさんのお陰です」
「………さん付けですが許しましょう」
「…………すいません。あの!!」
「はい」
「明日が楽しみですね」
「………そうですね」
俺は考える。いつか過ちを犯してしまうのではないかと…………婚約者は本当に可愛くなった。
*
今日は冬休み前最後の授業参観日だ。冬は学園が閉じる。何故なら寒いなかで登校は体を壊すからっと言うワガママな理由だけで休みなのだ。
私にとっては………寒い時期は体の調子も悪くなりやすいので願ったり叶ったりでもある。
「ワルダ。彼、来るといいですね? 来るといいですね?」
「お嬢様。私の婚約者は来ることはご存じでしょう………ですからトラスト様が来られるのを嬉しがってますよね。そんな気がします」
「そ、そんなことは……………」
否定できない。
「お嬢様、トラスト様来るんですか?」
「来ますよ!! お仕事切り上げて来てくれるんです‼」
「お嬢様………嬉しそうですよ?」
「あっ………はい………えっと……」
私は恥ずかしさと嬉しさの混じる気持ちでソワソワする。会いたい今すぐに。
「お嬢様………トラスト様好きですね本当に」
「…………」
「黙認は肯定と一緒ですよ?」
「なら、そうなんでしょう。否定はしません」
そう、私は屋根の下で住んでいるの凄く元気になれる。鬱々としていた生活とは違う。触りたい時に触れる。でも………触れない。まだ勇気がない。
キスだって………あれからは額だけに………
「………あぅ」
私は少し贅沢になっている。
「アメリアさん。少しいいかしら?」
「は、はい」
私の席の前に立つのはリトスさんだ。腕を組んで私を睨む。
「トラスト・アフトクラトルですね」
「あっ…………えっと。トラストさまの事でしょうか?」
「ええ、そうよ。驚いたわ………長男でもない末っ子でもない。居た、次男が」
「あの………なんでしょうか?」
「紹介して欲しいの………婚約者候補で」
私は驚く。婚約者になりたいと言っているのだ。
「えっと………」
紹介するぐらいなら…………いいか………
「お断りします」
「あら、そう?」
「お、お嬢様?」
リトスさんが険しい顔をする。その顔にハッとなって我に帰る。
「…………その………ご自分でお誘いになればいいっと思います。優しい方なので。今日来ますから………」
「ふふ………そう。わかったわ、そうよね。自分で何とかしないとね。誘ってみます………邪魔はしないでね」
「お、お嬢様? いいのですか?」
「………わからない」
今、一瞬。紹介しようかなっと思った。けど………出た言葉は否定だった。強く強く拒否した。
「………私」
気付かされる。そう………トラストさんは素晴らしい方だ。だから………色んな方が彼に近寄る。
「……………自信ない」
「お嬢様………大丈夫です。トラスト様は信じれる方ですよ?」
「いい人だから………私でいいのか不安になるの」
他にもっといい人は多い。浮かれていた。
彼は…………側室なんてすぐに出来る。彼の気分次第で。
「お嬢様?」
「………ごめんなさい。少し一人にして」
私は驚くぐらい。贅沢になっている。
彼は私だけ見ていて欲しい。独占欲等が心に現れていた。
拾っていただいただけなのに。何もお返しをしていないのに。黒い感情が私を苛む。
「…………うん」
私は………何も出来ない女なのに………想いだけは一人前だと知り落ち込んだ。
§
苛立つ。下級のお家だと思っていた令嬢に出し抜かれ。余裕の表情でお断りされるのが。
「お姉さま? 本当にトラスト様に?」
「ええ、可笑しいっと思わないの?」
「思います。私の方が………」
「そうです。お姉さまの方が素晴らしいです」
皆が思い思いを打ち明ける。そう………どこぞの田舎令嬢。そんなのが上級貴族の婚約者になるなんて認めたくない。
私たちの努力はなんだったの? となる。
「どうしますか?」
「私一人で行きます。それから数人で替わりばんこを。一人一人はヴィス家のよろしく無い所をひとつひとつ報告してね」
「「「はい」」」
私たちはトラスト様にヴィス家と関わるのはよろしくないっと考えを改めさせようと思う。もしくは私たちの誰かでもチャンスを作ろうと考えた。
廊下を歩きながら、全員が別れる。トラスト様を探すために。
「何処で出会ったか知りませんが……美味しい思いは独り占めさせませんわ。アメリア」
私は真っ直ぐ睨み返した黒髪の少女を思い出し。歯を食い縛った。
§
校門も潜り、バラ園に自分は到着した。アメリアは教室で待っているだろう。迎えに行かないと………ずっと待っている。そんな子だ。
「あら!! お探ししておりました!! トラスト様ですね‼」
「ん?………そうですが?」
「リトスお姉さまがお探ししておりました。アメリアさんがリトスお姉さまに一度会ってから来て欲しいと仰っています」
「………そうですか」
黒。これは嘘だ。アメリアが言った言わなかったと言う事じゃない。勘という物だが。俺はドロッとした物を感じとる。黒騎士だった職業病なのだろう。
いつだったか……そうだ。あの現場だ。
近い物で恋違いの殺人現場の雰囲気だ。黒騎士だった時の嗅覚を思い出す。何故この時に思い出したのかは出会えばわかるだろう。
「わかりました。すぐ向かいましょう」
名前も知らない令嬢についていきカフェテリアへ案内してくれた。緑髪に染めた美少女がチラチラこちらを見ている。こそこそ伺っているようだがバレバレだ。可愛げもない。
「お誘いいただきありがとうございます。リトスさん」
「こちらこそ………わざわざ足を運んでくださりありがとうございます」
「アメリアさんは優しい。きっと………まぁそう言う事を言ったんだろうね」
言ってないだろう。そんなにしっかり受け答えはまだ出来ないはずだ。まだ………そこまで回復していない。
「ええ。お優しい方です」(優しいだけで令嬢なんて勤まりませんわ)
「……要件はなんでしょうか?」
「はい。先ずは………私の名前はリトス・リトラトスです。リトラトス家の長女です。得意な事は……」
「婚約者に立候補したいと………言いたいのですね」
俺は遮るように喋る。自分を売り出そうとする令嬢なんて腐るほど見てきた。うんざりする。
俺は婚約者にそんなのは求めいていない。
「………はい。その通りです。アメリアさんのように私も候補の一人とかどうでしょうか?」
「候補とは………婚約者のですか?」
「はい。婚約予定の一人として立候補したいです!! いっぱい頑張ります!!」
「………残念ですね。婚約者は一人と決めています」
「そ、そこをなんとか………ヴィス家よりも素晴らしい条件を提示できます」
「ヴィス家か………どうでもいいですね」
「そうでしょう!! リトラトス家はヴィス家よりも……」
「アメリアさんが居る家がたまたまヴィス家だっただけでどうでもいいですね」
「え?」
すっとんきょんな声を出す令嬢。自分は席から立ち上がた。
「婚約者アメリアに会いに行きます。せっかくの時間です。大切にしないといけませんから」
「婚約者!?」
知らなかったのか放心している。自分は無視して歩き出す。
「ま、まって!! トラスト様!!」
数歩だけ、進み。足を止めて振り返った。
「なんでしょうか?」
「………どうして。彼女を選んだのですか? 納得いく理由を教えてください」
「恋愛小説は好きですか?」
「えっ………書なら少々読みます。あっ……私でも読み上げてお話しする事が出来ます!!」
「自分は恋愛小説が好きなんです」
「そ、そうなんですか?」(変な趣味をお持ちですね。恋愛小説ですか………女でないのに)
「そんな目をしない。アメリアはね」
「あっ………」
彼女は分かっただろう。姿に出るものだ。変な趣味を持っている人と思ったのだろう。そう……軽蔑。
「えっ……わ、私も好きですよ‼」
「…………」
俺は無視して。教室で待つ姫様を迎えに行くのだった。
「ふむ」
テーブルの上に魔力で光るカンテラとテーブルの下に小型の魔力炉のストーブを使い。快適な空間で書に耽る。向かいに同じように小説を読む婚約者のアメリアがチラチラと私を伺っていた。自分は本を栞を挟んで閉じる。何かを待っているのだろう。
「どうしました? アメリア」
「あっ………いえ。いつ読み終わるのかと………」
「読みたかったですか? どうぞ」
「えっと…………ありがとうございます」
何故か微妙な顔をする。察しが悪かったな違う。
「本は関係なかったのですね。なんでしょうか?」
「あうぅ………ごめんなさい。その………お話がしたいなと………いつ読み終えるかなっと………思っておりました」
自分は目を閉じ深呼吸をする。鼓動を落ち着かせて再度彼女を見る。彼女はモジモジと自分の言葉を待って顔を俯ける。再度深呼吸。そしてなんとか落ち着きながら言葉を捻り出す。
「いいですよ?」
アメリアが顔をあげてパッと表情が明るくなった。もちろん直視後すぐに目線を他に移した。
「トラストさん!! ありがとうございます!!」
「…………」
「トラストさん?」
「…………………」
「あっ………トラスト」
「では、お話をしましょうか?」
「………えっと………本当に呼び捨てじゃないとダメなんですか?」
「二人の時は呼び捨てにしようと決めたじゃないですか?」
「馴れないです。その………年上ですし。お兄様のような感じもします」
「婚約者なんです。なれてくださいねアメリア」
「…………はい」
「でっ? 何かを聞きたがってましたが?」
「えっと………明日、授業参観があるんです」
「………忘れていました」
自分はメモ帳を確認しデカデカと参観日と書かれた文字を目にする。頭を押さえた。
「すいません。本当に忘れてました」
「そ、そうですか………」
アメリアが悲しい顔をする。本当に感情が豊かになって分かりやすくなった。何をすれば喜ぶかも分かりやすい。だから………
「参加しないとは言ってません」
「えっ? 本当ですか?………本当に!! ですか!!」
嬉しそうに声を出すアメリア。
「え、ええ………本当です」
「…………すいません。ちょっと騒ぎすぎました」
「感情表現が出来るようになりましたね」
虚ろな目をした彼女は何処かへ消えた。
「はい。トラストさんのお陰です」
「………さん付けですが許しましょう」
「…………すいません。あの!!」
「はい」
「明日が楽しみですね」
「………そうですね」
俺は考える。いつか過ちを犯してしまうのではないかと…………婚約者は本当に可愛くなった。
*
今日は冬休み前最後の授業参観日だ。冬は学園が閉じる。何故なら寒いなかで登校は体を壊すからっと言うワガママな理由だけで休みなのだ。
私にとっては………寒い時期は体の調子も悪くなりやすいので願ったり叶ったりでもある。
「ワルダ。彼、来るといいですね? 来るといいですね?」
「お嬢様。私の婚約者は来ることはご存じでしょう………ですからトラスト様が来られるのを嬉しがってますよね。そんな気がします」
「そ、そんなことは……………」
否定できない。
「お嬢様、トラスト様来るんですか?」
「来ますよ!! お仕事切り上げて来てくれるんです‼」
「お嬢様………嬉しそうですよ?」
「あっ………はい………えっと……」
私は恥ずかしさと嬉しさの混じる気持ちでソワソワする。会いたい今すぐに。
「お嬢様………トラスト様好きですね本当に」
「…………」
「黙認は肯定と一緒ですよ?」
「なら、そうなんでしょう。否定はしません」
そう、私は屋根の下で住んでいるの凄く元気になれる。鬱々としていた生活とは違う。触りたい時に触れる。でも………触れない。まだ勇気がない。
キスだって………あれからは額だけに………
「………あぅ」
私は少し贅沢になっている。
「アメリアさん。少しいいかしら?」
「は、はい」
私の席の前に立つのはリトスさんだ。腕を組んで私を睨む。
「トラスト・アフトクラトルですね」
「あっ…………えっと。トラストさまの事でしょうか?」
「ええ、そうよ。驚いたわ………長男でもない末っ子でもない。居た、次男が」
「あの………なんでしょうか?」
「紹介して欲しいの………婚約者候補で」
私は驚く。婚約者になりたいと言っているのだ。
「えっと………」
紹介するぐらいなら…………いいか………
「お断りします」
「あら、そう?」
「お、お嬢様?」
リトスさんが険しい顔をする。その顔にハッとなって我に帰る。
「…………その………ご自分でお誘いになればいいっと思います。優しい方なので。今日来ますから………」
「ふふ………そう。わかったわ、そうよね。自分で何とかしないとね。誘ってみます………邪魔はしないでね」
「お、お嬢様? いいのですか?」
「………わからない」
今、一瞬。紹介しようかなっと思った。けど………出た言葉は否定だった。強く強く拒否した。
「………私」
気付かされる。そう………トラストさんは素晴らしい方だ。だから………色んな方が彼に近寄る。
「……………自信ない」
「お嬢様………大丈夫です。トラスト様は信じれる方ですよ?」
「いい人だから………私でいいのか不安になるの」
他にもっといい人は多い。浮かれていた。
彼は…………側室なんてすぐに出来る。彼の気分次第で。
「お嬢様?」
「………ごめんなさい。少し一人にして」
私は驚くぐらい。贅沢になっている。
彼は私だけ見ていて欲しい。独占欲等が心に現れていた。
拾っていただいただけなのに。何もお返しをしていないのに。黒い感情が私を苛む。
「…………うん」
私は………何も出来ない女なのに………想いだけは一人前だと知り落ち込んだ。
§
苛立つ。下級のお家だと思っていた令嬢に出し抜かれ。余裕の表情でお断りされるのが。
「お姉さま? 本当にトラスト様に?」
「ええ、可笑しいっと思わないの?」
「思います。私の方が………」
「そうです。お姉さまの方が素晴らしいです」
皆が思い思いを打ち明ける。そう………どこぞの田舎令嬢。そんなのが上級貴族の婚約者になるなんて認めたくない。
私たちの努力はなんだったの? となる。
「どうしますか?」
「私一人で行きます。それから数人で替わりばんこを。一人一人はヴィス家のよろしく無い所をひとつひとつ報告してね」
「「「はい」」」
私たちはトラスト様にヴィス家と関わるのはよろしくないっと考えを改めさせようと思う。もしくは私たちの誰かでもチャンスを作ろうと考えた。
廊下を歩きながら、全員が別れる。トラスト様を探すために。
「何処で出会ったか知りませんが……美味しい思いは独り占めさせませんわ。アメリア」
私は真っ直ぐ睨み返した黒髪の少女を思い出し。歯を食い縛った。
§
校門も潜り、バラ園に自分は到着した。アメリアは教室で待っているだろう。迎えに行かないと………ずっと待っている。そんな子だ。
「あら!! お探ししておりました!! トラスト様ですね‼」
「ん?………そうですが?」
「リトスお姉さまがお探ししておりました。アメリアさんがリトスお姉さまに一度会ってから来て欲しいと仰っています」
「………そうですか」
黒。これは嘘だ。アメリアが言った言わなかったと言う事じゃない。勘という物だが。俺はドロッとした物を感じとる。黒騎士だった職業病なのだろう。
いつだったか……そうだ。あの現場だ。
近い物で恋違いの殺人現場の雰囲気だ。黒騎士だった時の嗅覚を思い出す。何故この時に思い出したのかは出会えばわかるだろう。
「わかりました。すぐ向かいましょう」
名前も知らない令嬢についていきカフェテリアへ案内してくれた。緑髪に染めた美少女がチラチラこちらを見ている。こそこそ伺っているようだがバレバレだ。可愛げもない。
「お誘いいただきありがとうございます。リトスさん」
「こちらこそ………わざわざ足を運んでくださりありがとうございます」
「アメリアさんは優しい。きっと………まぁそう言う事を言ったんだろうね」
言ってないだろう。そんなにしっかり受け答えはまだ出来ないはずだ。まだ………そこまで回復していない。
「ええ。お優しい方です」(優しいだけで令嬢なんて勤まりませんわ)
「……要件はなんでしょうか?」
「はい。先ずは………私の名前はリトス・リトラトスです。リトラトス家の長女です。得意な事は……」
「婚約者に立候補したいと………言いたいのですね」
俺は遮るように喋る。自分を売り出そうとする令嬢なんて腐るほど見てきた。うんざりする。
俺は婚約者にそんなのは求めいていない。
「………はい。その通りです。アメリアさんのように私も候補の一人とかどうでしょうか?」
「候補とは………婚約者のですか?」
「はい。婚約予定の一人として立候補したいです!! いっぱい頑張ります!!」
「………残念ですね。婚約者は一人と決めています」
「そ、そこをなんとか………ヴィス家よりも素晴らしい条件を提示できます」
「ヴィス家か………どうでもいいですね」
「そうでしょう!! リトラトス家はヴィス家よりも……」
「アメリアさんが居る家がたまたまヴィス家だっただけでどうでもいいですね」
「え?」
すっとんきょんな声を出す令嬢。自分は席から立ち上がた。
「婚約者アメリアに会いに行きます。せっかくの時間です。大切にしないといけませんから」
「婚約者!?」
知らなかったのか放心している。自分は無視して歩き出す。
「ま、まって!! トラスト様!!」
数歩だけ、進み。足を止めて振り返った。
「なんでしょうか?」
「………どうして。彼女を選んだのですか? 納得いく理由を教えてください」
「恋愛小説は好きですか?」
「えっ………書なら少々読みます。あっ……私でも読み上げてお話しする事が出来ます!!」
「自分は恋愛小説が好きなんです」
「そ、そうなんですか?」(変な趣味をお持ちですね。恋愛小説ですか………女でないのに)
「そんな目をしない。アメリアはね」
「あっ………」
彼女は分かっただろう。姿に出るものだ。変な趣味を持っている人と思ったのだろう。そう……軽蔑。
「えっ……わ、私も好きですよ‼」
「…………」
俺は無視して。教室で待つ姫様を迎えに行くのだった。
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