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父上との決闘、交渉
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朝、トラストさんは早朝早くから鎧を着込んで先に出た後に私は時間をおいてワルダとともに決闘場へ向かった。
決闘場は南方騎士団の訓練所に併設されている。たまに出し物等にも解放しているらしい。円形の場で、硬い砂場だがよく見えるようにぐるっと観客席が円形に段となって広がる。
今日は騎士団の面々が観客席を埋め、騎士団員の多さを知った。各々が笑いながら騒ぎ。決闘を今か今かと待ち望んでいた。
ワルダと私は待っていたトラストさんから観客席前席に案内される。人が一斉に私たちを見て形見が狭い。
その観客の中央階段通路を歩き、トラストさんは皆に背中を叩かれ続け、皆に声をかけて奮戦を期待される。あまりの熱気に体が焼けそうだ。
「いたた………」
「トラストさん。戦う前ですけど大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。君には一度見てもらいたかったから頑張るよ。ワルダ………シェテム先輩は後で来ますから。それまで、かたみが狭いと思います」
「は、はい」
「シュテム遅い……」
「すいません」
「トラスト様がなぜ謝るんですか?」
「いえ、なんでもないです………行ってきます。姫様。僕の勇姿を目に留めてください」
「はい………トラストさん。頑張ってきてね」
最前列の私に跪き手の甲を持ってキスをする。後ろから口笛とヤジが一杯届く。こんなところでそんなことしないでっと言うのだが。周りの声で書き消された。
彼は立ち上がり観客席を後にした。入れ替わりでツンツン頭のシュテムさんが顔をしかめながら歩き。開けていたワルダの隣に腰かけて腕を組む。
「はぁ………くっそ。いてぇー」
「遅かったわね。シュテム………女をおいて何処行ってたのよ」
「ああ、うっせーなブス。訓練所だよ訓練所。早朝早くからトラストと決闘してたの………手加減無しだったぜ」
「決闘前に決闘ですか?」
「ああ、ウォーミングアップだそうだ。ああイテェ………」
「………ブスって言ったのはまぁいいわ。大丈夫なの怪我は?」
「大丈夫。心配するな」
ワルダがそっと彼の膝の上に手を置き彼はそれを掴む。私はいつもしていることを他人がしているのを見て恥ずかしくなる。そして、またヤジが飛んでくる。
「うっせーな!! いいだろ!! やっとできた婚約者なんだぞ!!」
「性格悪いもんね」
「うっせー」
「感謝しなさい。私……そういうのも含めて………ごめん。恥ずかしいから言えない」
「トラストみたいに上手くいかねーよなぁ普通」
「…………」
彼らの会話を聞き。私の婚約者は変わり者なのを再確認する。
ワァアアアアアア!!!
唐突に歓声が一際大きくなる。中央に目線を向けると決闘場にトラストと父上が立ち睨み合っていた。武器は木製の剣と盾。トラストさんは………大きい大きい木製の変わった盾みたいな剣。盾と剣が一緒になったような形だ。
「なんですかあれ?」
「ディフェンダーって言う大剣らしい。盾にもなるんだってさ。いつもは持たない武器だと」
「それって………どういう意味です?」
「1番隊長。頑張れるかなって………やつだ……本気だ」
「………トラストさん!! 頑張ってください!!」
「アメリア嬢」
「は、はい」
「今日、あったことは絶対覚えておけよ………」
「え、ええ…………なんでですか?」
「………トラストさんに聞けばいい」
カーン!!
何処からか金の音が聞こえ親子喧嘩のような決闘が始まった。私は終始ずっと見ていたが………全く目線が追い付けづに意味がわからなかったのだった。
§
決闘が終わり、トラストさんは勝った。なんとも呆気ない程優勢を持っての勝利。素人の私でもわかる勝利だった。倒れるお義父さんは他の団員に連れられ退場する。
歓声が治まり騎士団員は仕事へと戻り。トラストさんも何故か悲しげな顔でその場を去る。
私には彼らの感情はわからないが。何かが変わったと思う。トラストさんが来るまで私は観客席で待つことにした。
「アメリア様」
「はい……どちら様ですか?」
待つこと数十分。私は知らない騎士様に声をかけられる。彼は名乗る事は無く………お義父さんが呼んでいる事を告げた。私は観客席から番隊長の執務室へ向かった。トラストさんは後で向かうらしい。今は、揉みくちゃにされているそうだ。
トントン
「アメリアです。お、お………お義父様」
緊張しながら私は戸を叩き声を出す。そういえば初めて二人っきりになるのは。
「……ああ、入りなさい」
中からの声に導かれ私は恐る恐る部屋に踏み入れお辞儀をする。背中のお義父さまが見える。大きい男の背中は愛しい人に瓜二つだった。
「…………アメリア嬢。ありがとう」
「は、はい………?」
「君は知らないだろうが…………君のお陰で私は負けたよ」
「私は何も………しておりません」
応援も出来ない程にわからない戦いだった。
「いいや………君は私の息子を変えたよ。最初は同情だっただろう。だが今は、誰よりも剣が重く感じた。ありがとう」
「…………」
私はどうしたらいいのだろうか? なんと声をお掛けすればいいのだろうか?
「アメリア・アフトクラトル。我が可愛い娘よ………」
お義父さんは振り返り私と目線が合う。優しい瞳で私を見つめた。目線が合った一瞬で呼ばれた理由がわかった気がする。
「頼みがある。息子がここへ来るのは時間の問題だ。扉の前でいいっと言うまで。待たしてくれ………君なら言うことを聞くだろう」
私はゆっくり頷きながら、お義父さんの隣へたち静かに小さな携帯用手鞄から綺麗な刺繍されたハンカチを取り出す。
「…………はい。あの………これをどうぞ」
「ああ、すまない。早く出てってくれ」
「はい。わかりました」
言葉の端の厳しさは本当に早く部屋から出て欲しいのだろう。私は………お辞儀をし部屋から出たあと戸の前にただずむ。
数分後、駆け足で父親に会いに来たトラストさんに出会う。
「どうしてそこに?」
「………トラストさん。少しお待ちください」
「何故だ? 俺は父上にお話がある!! 退いてくれ‼ 君の事なんだ‼」
「ダメです………お願いです。トラストさん」
「………どうしてだい?」
「トラストさんは愛されて育ったんですね」
「…………………ああ。そうだよ」
私は彼の手を取る。そして扉から離れた。私がするべき事は父親のプライドを護ること。
「アメリア、父上と何があったんだい?」
「………娘と父親の契りです。お願いします。待ってください」
トラストさんは首を傾げたあと、慌てふためく。何故ならゆっくり私は泣き出してしまう。唐突に泣き出した私に驚いたトラストさんは私を強く抱き締めて焦りながら宥めてくれる。
私は扉の向こうから、もらい泣いてしまったのだった。
§
それから数十分後。お酒の匂いが満ちる部屋に私たちは招かれる。ソファーに座りながらトラストさんが口を開いた。
「父上、負けたからって高い酒でやけ酒はいけませんよ」
「五月蝿い。情けないんだよ」
目が充血し、酒がまわっているように見える。私はテーブルに目線を写すと濡れたハンカチが置かれていた。
「父上…………勝ったのでお願いを聞いてください」
「ああ、仕方がない聞いてやろう。約束だ」
テーブルから目線を外す。
「先ず一つ」
「おい、何個も聞けないぞ!!」
全く話を聞かずに喋り続ける。
「父上は死ぬその瞬間まで隠居せずにアフトクラトル家の当主であり続けて背中を見せてください」
「……………そうか。休むなと言うのか」
「ええ。お父さん………たとえ僕が勝っても。お父さんはお父さんだ。それに俺にはない。人徳や繋がりがある。まだまだ当主は無理ですよ。お父さん」
「…………」
お義父さんはコップに入ったビールを一気に飲む。そして勢いよくコップを叩きつけて叫んだ。
「ああ、わかった!! 死ぬまでやってやろう!!」
強い言葉。それにトラストさんは嬉しそうに頷いた。父親好きなんだとこのときになって初めて知ったのだった。
「あと………謝ることがあります。頼むことでもあるんですが。自分は過ちを犯したかもしれません。二つ目は…………ヌツェル家についてです」
「ああ、お前が決闘を申し込んだ事だろ。大騒ぎさ………貴族の中でな。面白そうな話で皆が噂する。騒ぎが大きくなりつつある」
「アフトクラトル家に自分の独断で迷惑をかけたことを謝ります。自分の浅はかな行為でした」
トラストさまが頭を下げる。私も彼にならい頭を下げた。
「私も、彼と同じです。ヌツェル家とお話したばかりかトラストさまを巻き込んでしまいました。申し訳ありません」
考えて見れば名家と名家。事が大きくなるのは当たり前だった。私は………彼が頭を下げて初めて事の大きさに身震いした。
「馬鹿が!! 顔を上げろ!!」
「はい。お父さん」
「俺を倒した男がそんな事で頭を下げてどうする!! 胸張って行け。俺はお前を信じるし。我が子が正しいと思っている。親が子の喧嘩に入るのもバカらしい。だからな…………盛大にやれ。終わってからの尻拭いは親の勤めだから安心しろ。だから負けたら承知しないぞ」
「お父さん………」
トラストが少し唇を噛んで頭を下げ大きく叫んだ。
「今まで!! そしてこれからも親不孝を続けます!! だから…………父さん!! これからもこんなバカ息子を見捨てないでください!!」
「ああ!! 見捨てるか!!…………一番似ていて一番ばか野郎な奴ほど手が焼ける。迷惑かけてこい!!」
私は、何故か羨ましさと胸に焼けるような物を感じとる。今まで何があったかわからないがきっと………何かが変わったのだろう。
「娘よ。ばか野郎な息子だが………最後までつきやってくれ」
「はい、私をお救いしてくださった人です。最後まで添い遂げます」
私を泥沼から拾い上げ救ってくれた彼以外に愛する事はないだろう。
「…………よし。迷いは無くなったよ」
トラストさんが立ち上がり私の手を引く。
「元婚約者がなんだ!!……………今は俺が君の婚約者だ」
強く強く………私の手を引き。部屋を出たのだった。
*
その日、ヌツェル家に正式な決闘の申し込みがあった。10日の猶予を出す。ヌツェル家が代理を立てて戦う事が決まりその探す日数だ。そして帝国はその話で持ちきりになるのだった。
決闘場は南方騎士団の訓練所に併設されている。たまに出し物等にも解放しているらしい。円形の場で、硬い砂場だがよく見えるようにぐるっと観客席が円形に段となって広がる。
今日は騎士団の面々が観客席を埋め、騎士団員の多さを知った。各々が笑いながら騒ぎ。決闘を今か今かと待ち望んでいた。
ワルダと私は待っていたトラストさんから観客席前席に案内される。人が一斉に私たちを見て形見が狭い。
その観客の中央階段通路を歩き、トラストさんは皆に背中を叩かれ続け、皆に声をかけて奮戦を期待される。あまりの熱気に体が焼けそうだ。
「いたた………」
「トラストさん。戦う前ですけど大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫。君には一度見てもらいたかったから頑張るよ。ワルダ………シェテム先輩は後で来ますから。それまで、かたみが狭いと思います」
「は、はい」
「シュテム遅い……」
「すいません」
「トラスト様がなぜ謝るんですか?」
「いえ、なんでもないです………行ってきます。姫様。僕の勇姿を目に留めてください」
「はい………トラストさん。頑張ってきてね」
最前列の私に跪き手の甲を持ってキスをする。後ろから口笛とヤジが一杯届く。こんなところでそんなことしないでっと言うのだが。周りの声で書き消された。
彼は立ち上がり観客席を後にした。入れ替わりでツンツン頭のシュテムさんが顔をしかめながら歩き。開けていたワルダの隣に腰かけて腕を組む。
「はぁ………くっそ。いてぇー」
「遅かったわね。シュテム………女をおいて何処行ってたのよ」
「ああ、うっせーなブス。訓練所だよ訓練所。早朝早くからトラストと決闘してたの………手加減無しだったぜ」
「決闘前に決闘ですか?」
「ああ、ウォーミングアップだそうだ。ああイテェ………」
「………ブスって言ったのはまぁいいわ。大丈夫なの怪我は?」
「大丈夫。心配するな」
ワルダがそっと彼の膝の上に手を置き彼はそれを掴む。私はいつもしていることを他人がしているのを見て恥ずかしくなる。そして、またヤジが飛んでくる。
「うっせーな!! いいだろ!! やっとできた婚約者なんだぞ!!」
「性格悪いもんね」
「うっせー」
「感謝しなさい。私……そういうのも含めて………ごめん。恥ずかしいから言えない」
「トラストみたいに上手くいかねーよなぁ普通」
「…………」
彼らの会話を聞き。私の婚約者は変わり者なのを再確認する。
ワァアアアアアア!!!
唐突に歓声が一際大きくなる。中央に目線を向けると決闘場にトラストと父上が立ち睨み合っていた。武器は木製の剣と盾。トラストさんは………大きい大きい木製の変わった盾みたいな剣。盾と剣が一緒になったような形だ。
「なんですかあれ?」
「ディフェンダーって言う大剣らしい。盾にもなるんだってさ。いつもは持たない武器だと」
「それって………どういう意味です?」
「1番隊長。頑張れるかなって………やつだ……本気だ」
「………トラストさん!! 頑張ってください!!」
「アメリア嬢」
「は、はい」
「今日、あったことは絶対覚えておけよ………」
「え、ええ…………なんでですか?」
「………トラストさんに聞けばいい」
カーン!!
何処からか金の音が聞こえ親子喧嘩のような決闘が始まった。私は終始ずっと見ていたが………全く目線が追い付けづに意味がわからなかったのだった。
§
決闘が終わり、トラストさんは勝った。なんとも呆気ない程優勢を持っての勝利。素人の私でもわかる勝利だった。倒れるお義父さんは他の団員に連れられ退場する。
歓声が治まり騎士団員は仕事へと戻り。トラストさんも何故か悲しげな顔でその場を去る。
私には彼らの感情はわからないが。何かが変わったと思う。トラストさんが来るまで私は観客席で待つことにした。
「アメリア様」
「はい……どちら様ですか?」
待つこと数十分。私は知らない騎士様に声をかけられる。彼は名乗る事は無く………お義父さんが呼んでいる事を告げた。私は観客席から番隊長の執務室へ向かった。トラストさんは後で向かうらしい。今は、揉みくちゃにされているそうだ。
トントン
「アメリアです。お、お………お義父様」
緊張しながら私は戸を叩き声を出す。そういえば初めて二人っきりになるのは。
「……ああ、入りなさい」
中からの声に導かれ私は恐る恐る部屋に踏み入れお辞儀をする。背中のお義父さまが見える。大きい男の背中は愛しい人に瓜二つだった。
「…………アメリア嬢。ありがとう」
「は、はい………?」
「君は知らないだろうが…………君のお陰で私は負けたよ」
「私は何も………しておりません」
応援も出来ない程にわからない戦いだった。
「いいや………君は私の息子を変えたよ。最初は同情だっただろう。だが今は、誰よりも剣が重く感じた。ありがとう」
「…………」
私はどうしたらいいのだろうか? なんと声をお掛けすればいいのだろうか?
「アメリア・アフトクラトル。我が可愛い娘よ………」
お義父さんは振り返り私と目線が合う。優しい瞳で私を見つめた。目線が合った一瞬で呼ばれた理由がわかった気がする。
「頼みがある。息子がここへ来るのは時間の問題だ。扉の前でいいっと言うまで。待たしてくれ………君なら言うことを聞くだろう」
私はゆっくり頷きながら、お義父さんの隣へたち静かに小さな携帯用手鞄から綺麗な刺繍されたハンカチを取り出す。
「…………はい。あの………これをどうぞ」
「ああ、すまない。早く出てってくれ」
「はい。わかりました」
言葉の端の厳しさは本当に早く部屋から出て欲しいのだろう。私は………お辞儀をし部屋から出たあと戸の前にただずむ。
数分後、駆け足で父親に会いに来たトラストさんに出会う。
「どうしてそこに?」
「………トラストさん。少しお待ちください」
「何故だ? 俺は父上にお話がある!! 退いてくれ‼ 君の事なんだ‼」
「ダメです………お願いです。トラストさん」
「………どうしてだい?」
「トラストさんは愛されて育ったんですね」
「…………………ああ。そうだよ」
私は彼の手を取る。そして扉から離れた。私がするべき事は父親のプライドを護ること。
「アメリア、父上と何があったんだい?」
「………娘と父親の契りです。お願いします。待ってください」
トラストさんは首を傾げたあと、慌てふためく。何故ならゆっくり私は泣き出してしまう。唐突に泣き出した私に驚いたトラストさんは私を強く抱き締めて焦りながら宥めてくれる。
私は扉の向こうから、もらい泣いてしまったのだった。
§
それから数十分後。お酒の匂いが満ちる部屋に私たちは招かれる。ソファーに座りながらトラストさんが口を開いた。
「父上、負けたからって高い酒でやけ酒はいけませんよ」
「五月蝿い。情けないんだよ」
目が充血し、酒がまわっているように見える。私はテーブルに目線を写すと濡れたハンカチが置かれていた。
「父上…………勝ったのでお願いを聞いてください」
「ああ、仕方がない聞いてやろう。約束だ」
テーブルから目線を外す。
「先ず一つ」
「おい、何個も聞けないぞ!!」
全く話を聞かずに喋り続ける。
「父上は死ぬその瞬間まで隠居せずにアフトクラトル家の当主であり続けて背中を見せてください」
「……………そうか。休むなと言うのか」
「ええ。お父さん………たとえ僕が勝っても。お父さんはお父さんだ。それに俺にはない。人徳や繋がりがある。まだまだ当主は無理ですよ。お父さん」
「…………」
お義父さんはコップに入ったビールを一気に飲む。そして勢いよくコップを叩きつけて叫んだ。
「ああ、わかった!! 死ぬまでやってやろう!!」
強い言葉。それにトラストさんは嬉しそうに頷いた。父親好きなんだとこのときになって初めて知ったのだった。
「あと………謝ることがあります。頼むことでもあるんですが。自分は過ちを犯したかもしれません。二つ目は…………ヌツェル家についてです」
「ああ、お前が決闘を申し込んだ事だろ。大騒ぎさ………貴族の中でな。面白そうな話で皆が噂する。騒ぎが大きくなりつつある」
「アフトクラトル家に自分の独断で迷惑をかけたことを謝ります。自分の浅はかな行為でした」
トラストさまが頭を下げる。私も彼にならい頭を下げた。
「私も、彼と同じです。ヌツェル家とお話したばかりかトラストさまを巻き込んでしまいました。申し訳ありません」
考えて見れば名家と名家。事が大きくなるのは当たり前だった。私は………彼が頭を下げて初めて事の大きさに身震いした。
「馬鹿が!! 顔を上げろ!!」
「はい。お父さん」
「俺を倒した男がそんな事で頭を下げてどうする!! 胸張って行け。俺はお前を信じるし。我が子が正しいと思っている。親が子の喧嘩に入るのもバカらしい。だからな…………盛大にやれ。終わってからの尻拭いは親の勤めだから安心しろ。だから負けたら承知しないぞ」
「お父さん………」
トラストが少し唇を噛んで頭を下げ大きく叫んだ。
「今まで!! そしてこれからも親不孝を続けます!! だから…………父さん!! これからもこんなバカ息子を見捨てないでください!!」
「ああ!! 見捨てるか!!…………一番似ていて一番ばか野郎な奴ほど手が焼ける。迷惑かけてこい!!」
私は、何故か羨ましさと胸に焼けるような物を感じとる。今まで何があったかわからないがきっと………何かが変わったのだろう。
「娘よ。ばか野郎な息子だが………最後までつきやってくれ」
「はい、私をお救いしてくださった人です。最後まで添い遂げます」
私を泥沼から拾い上げ救ってくれた彼以外に愛する事はないだろう。
「…………よし。迷いは無くなったよ」
トラストさんが立ち上がり私の手を引く。
「元婚約者がなんだ!!……………今は俺が君の婚約者だ」
強く強く………私の手を引き。部屋を出たのだった。
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その日、ヌツェル家に正式な決闘の申し込みがあった。10日の猶予を出す。ヌツェル家が代理を立てて戦う事が決まりその探す日数だ。そして帝国はその話で持ちきりになるのだった。
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