(完結)見捨てられた令嬢は王子と出会う。[アルファ、scraiv専用]

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ヌツェル家の代理決闘

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 ヌチェル家の代理が決まったことで。決闘が行われる。場所はあの、お義父さまと戦った場所。南方騎士団の決闘場。

 しかし、今回は歓声も何もない。数人の騎士とヌチェル家の当主と息子のアルス・ヌチェル。アフトクラトル家の当主と円形の決闘場に来ている。私も誘われ観客席に座る。両家の代表は挨拶し。自分も挨拶を交わした。数人なのは正式な決闘であり見世物ではないからだ。

 トラストさんは大きな大きな盾のような剣を持って代理の決闘者を中心で待つ。

「真剣でいいのだろうか? ヌチェル家当主」
「ええ、問題ないです」

 ヌチェル家当主は不敵な笑みを浮かべる。代理が認められるのは代理を雇う財力と縁を持っている事を誇示でき、それが破られるっと言うことはその程度の代理しか用意できないっと思われ社交界でも………陰口を叩かれる。

 だからこそ………代理もなかなか難しいのである。

「………君が娘の元婚約者か」
「はい。おさがわせしております」
「…………ああ。まぁいい決闘で決まる」

 お義父さまが元婚約者を見たあとに踵を返す。私は観客席に座り、なぜか隣にアルスさんが座る。

「今回の代理は骨がおれたよ」
「そうですか………」
「勝ったら分かっているね? 君は婚約者を失い。また一人だ。可哀想だから………もしって言うのであれば考えるよ」
「そんなことは無いです。ご心配なさらず」

 自分が戦わないから楽な気持ちで観戦してるのだろう。私は………苛立ちを覚える。

「まぁ、強情なのはいい」

 グルルル!! グワアアアアアオオオオオオウ!!

「あれを見るまでそんな態度でいいのかな?」

 決闘場に咆哮が響く。大きな門から複数の鎖から引っ張られ…………翼をもがれた姿の魔物が現れる。唸り、目をギラッっと睨みながら。私たちはその姿を知っている。深く知っている。

「ドラゴン!?」
「そうだよ。お金がかかった」

 決闘代理は数メートルの巨体のドラゴンだった。

「そんな!! ドラゴンなんて!!」
「くくく。慌てふためいて命乞いを見たいなぁ………アメリア。お前が俺の元へ来るなら取り止めてもいい」
「く!?」

 私は彼の屑な笑い声胸が裂けそうになる。

「ほう………ドラゴンかぁ」
「くく、ええ。わざわざ取り寄せました………多くの冒険者を犠牲にね」
「…………トラスト!!」

 当主が声をあげる。その声に反応しこちらを見るトラストさんは…………全く恐れを感じさせない表情だった。

「やるか!!! やめるか!!!」
「…………アメリア!!」
「は、はい!!」

 父上と呼ばずに私を彼は呼んだ。私は観客席から立ち上がり身を乗り出しながら彼の声を聞こうとする。やめるべきだ。やめさせるべきだ。だけど……………私は言葉を飲み込んだ。ドラゴンが咆哮をあげ続ける中。彼は申し訳無さそうに言う。

「もしかしたらケガをするかも!! 約束………護れそうにない!!」

 彼は剣を振り上げ叩きつける。決闘場が振動し彼が戦意があることを伝えた。お義父様が声を張り上げる。

「ヌチェル家。アフトクラトル家の決闘を執り行う!! 始め!!」
「へぇ~やるんだ」
「息子よ黙っていろ」
「はいはい………アメリアさん。危ないですよ」

 私の肩に触れ観客席へ誘導しようとする。だが、私は首を振って成り行きを見定めようとして。立ちあがりトラストさんを見る。

 グルルル!! グオオオオオオウ!!

 鎖が解かれ、咆哮。決闘場を揺るがす。

「…………」

 トラストさんは剣を両手で掴む。魔物に臆せず歩き距離を詰めていく。

 ドラゴンは叩き潰すそうと爪を立てて地面を削りとろうとした。

 わかったのはそれだけだった。

 ギャン!!

 甲高い金属の撃ち合う音と共に、私は仰け反る。衝撃の余波が私を吹き飛ばしたからだ。

「ん!?」

 ポフゥ!!

「大丈夫か娘よ」
「お義父さま………ありがとうございます」
「娘よ………しっかり見るんだ。これが………必要な事なんだ。我々の世界だ」

 グワアアアアアオオオ…………アアアウ。

 ドラゴンが仰け反っていた。そして………ドラゴンの腕は落ち。地面に転がる。

「………ト、トラストさん?」

 彼は駆け出し。ドラゴンの足を切り刻んだあとに横断無人に走り切り払い。ドラゴン体勢を崩した瞬間に腹を裂く。返り血を浴びながらドラゴンの内蔵が重みで吐き出され。激痛で嘆く咆哮が響いた。

「うぅおえ…………」

 私は………倒れ吐いてしまう。

「………娘には酷だったか。さぁ……決着はついたぞヌチェル家」

 私は顔をアルスに向ける。今さっきまで元気だった顔が青ざめ。硬直する。

「嘘だろ………こんなあっさり………化け物」

 血まみれの騎士鎧に身を包んだトラストさんは倒れているドラゴンの首を落とし、角をつかんで観客席へ投げつける。びびっている人に向けて。

 べちゃ!!

 首はアルスの背後で転がり続け、皆がそちらに向く。私はなぜ投げたのかわからなかったが。気付いたら風が吹き。私を通りすぎるトラストが見え、驚いた。あの一瞬でここまで上げって来たのだ。体より大きい剣を持って。

「な、なに!?………お、お……おまえ……」

 得体の知れない化け物を見る目でトラストさんを見る。顔の血を手甲で払い。剣を構えた。

「勝ったんだ。嫁の肩を触れた右手を切り落としても問題ないだろ?」
「ぃ!?」

 声にならない声がアルスから発せられる。恐怖で顔が歪んでいた。そこへ………アルスの父親が割り込む。

「待ってくれ………私の大事な息子なんだ。決闘で勝った。そこの女性には手を出させないし………交渉もする。頼む斬らないでやってくれ。うちで処罰するから」
「ち、父上、処罰!?」
「…………ふぅ」

 トラストさんは剣を決闘場に投げ入れる。

「おお、ありがとう。トラスト・アフトクラトルどの」
「勘違いするな。親が喧嘩に出てきたんだ………あとは………任せるよ。俺は血で汚れた。拭いてくる」
「わ、わたしも行きます」

 彼らに踵を返すトラストさんに私はついていく。

「トラスト!!」

 お義父さまがトラストを呼ぶ。

「お前は素晴らしい騎士だ。ドラゴンを倒す事が出来るのは誉れだ。あとは尻拭いだ任せろ」
「ああ、ありがとうございます父上。それとヌチェル家にひとついいですか?」

 トラストさんが笑顔で話す。可笑しそうに無知をバカにしているような声でヌチェル家に向かっていい放つ。



「あれ、ドラゴンじゃない。ただのワイバーンだ。もう少し外を見てこい愚かな王子」



§



 終わってみればアッサリ倒した。トラストさん………私の不安を吹き飛ばすように勝った。血濡れた鎧を脱ぎ。服を脱ぐ。私は彼の体に濡れたタオルを渡した。

 体をふき始め。タオルが赤くなる。

「トラストさん…………すごく強かったんですね」
「………強くない。当然の事をしたまでだ」
「当然の事?」
「一応はワイバーンっと言う魔物。倒さなければもしかしたら被害が出ていた。もしかしたらだが」
「そんな事を考えていたんですか!?」
「ああ、あと少しケガするかなって」

 軽くいつものトラストさん。だけど、私は怖くなる。いつもの彼だからこそ不安になる。だから………聞いた。

「………トラストさん。いつもあんなことをするんですか?」
「………………………ねぇ。アメリアはワイバーン怖かったかい?」
「………怖かったです」
「なら………俺は怖がれない。君を護るためにね。君たちを護るためにね」

 私はハッと顔を上げる。シェテムさんお義父さんの言った言葉を思いだしながら意味を感じとる。

 何故、必要な事なのかわかった。私たちは感じ取れていない。

「私………魔物の怖さを知らない」

 今日、見た魔物が始めてだ。そして………それはつまり。

「帝国の壁の中を護るのが騎士だ。魔物を倒すのも仕事なんだ。君たちを護るために。まぁそれは四方騎士団たち。白騎士、黒騎士も変わらない」
「そ、それじゃぁ………私たちの知らないところで………」
「そう。戦ってるんだよ。皆ね」

 彼が横を向き血濡れた鎧を見つめる。真剣な眼差して。

「冒険者は魔物に立ち向かい勝てないなら逃げれるが俺たちは違う。逃げたら………誰が護れるんだってな…………知っている奴は少ない」
「そうだったんですね………知りませんでした。それなのに………ケガをしないなんて……甘いこと考えて………」
「知ってくれればいい支えてくれればいい。それだけで立ち向かえる。そうそう、アメリア………ワイバーンのステーキ食べれるな今日」
「えっと………ちょっと気持ちわるいです」

 あの黒と白の混じった臓物を見てしまっているから。

「ああ、そうか………なれてないよね。俺たちにとって最高の飯なんだけどな」
「た、たくましいですね」
「黒騎士だったからね。言っとくけど黒騎士なら1体楽に倒せるからな。安心しろよ」

 私は黒騎士が化け物ばっかりなのに驚く。

トントン、ガチャ

「トラスト、1番隊長がお呼びだ」
「わかった。アメリア行ってくる」
「はい…………」

 私の知らないところで男たちは戦っている。私は………私たちはなんと恵まれた人達なのでしょうか。


§


「父上、トラスト。ただいま参りました」

 1番隊長室に入りお辞儀する。中に居たには両家の当主はたちだ。

「アルス殿は?」
「ばか息子は家へ帰したらしい。これで女遊びが落ち着けばいいがな」
「はい。トラスト殿。息子が迷惑かけました。さすが………黒騎士だったっと言うことですね。普通の騎士は一人では倒せません」
「俺もそうだな。一人は厳しい………息子よ。ここまでやるとは思っておらんかった」
「………あんまり爪を見せるべきではないのですがね。黒騎士はそこまで強くないっと思っていてください」

 評価されるのはダメだ。やりづらくなる。

「息子よ。黒騎士の目的は知っている」
「………」
「黙秘か。だが、予想はできた。白騎士、四方騎士団を全員敵に回しても倒せる戦力であり、騎士団が倒せない魔物を屠る最後の砦。他の騎士団の悪さを正すのも行う。強くて当たり前だ」
「………息子も命知らずでいした。本当に申し訳ない。これからは自制させる。それに南方騎士団を支援する。それで手をうって欲しい」
「父上がそれでいいのでしたら」

 父上は尻拭いよりも俺を使い脅して益を得たらしい。さすが番隊長っと言った所か。

「まぁヌチェル家と繋がりが出来た。白騎士に来ずこちらに来るだろう。新しい後輩たちだぞ」
「…………」
「ええ、白騎士は緩いですから………強い騎士団に編入します。息子たちをお願いしますね」
「もちろんだ」

 俺はまた…………訓練の人数が増えることを感じ取り。そして、アルスの立場が危ういことも感じとる。

「ヌチェルご当主はアルスの立場は?」
「婿に出す」
「……………そうですか」

 実質の家を追い出す行為。当主の道は途絶えたのだろう。そして………自分はもうひとつやり残した事があることを思い出し。ヌチェル家当主に話を振る。

「リトス・リトラトスをご存知ないですか?」
「リトラトス家か? どうしたんだい?」
「自分の婚約者のあらぬ噂を流されまして辟易しております。学園で悪さをしているとね」
「………」
「まぁなんでもないのですが」
「トラスト。首を突っ込む気か?」
「それは………返答次第です。決闘を取り下げたっと言うことで手をうつのでどうでしょう?」

 両家がやっぱりやめたと言えば両家は傷がつかない。

「そうですか。わかりました………汚れ役を受けましょう」
「ありがとうございます。言うだけでいいのでお願いしますね」
「はい。本当に………アフトクラトル家が羨ましいですね」
「だろ? 自慢の次男だ」
「お兄さんも褒めてあげてくださいね」
「帰ってこんやつをどう褒めろと?」
「同じ息子がいますわ。ハハハハ」

 そのあと、父上は酒の瓶を空け。俺はアメリアを呼んでお酌をさせて彼女をヌチェル家に紹介し。ヌチェル家当主を後悔させてやった。
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