(完結)見捨てられた令嬢は王子と出会う。[アルファ、scraiv専用]

書くこと大好きな水銀党員

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トラストさんの告白

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 春、バラ園が咲き乱れる学園で私たちはカフェテリアでお昼を済まして、午後の授業の時間までゆっくりお話をする。私のお腹は日に日に大きくなっていき。少しだけポッコリと膨らんでいるのがわかった。

「アメリアさん触ってもいい?」
「いいですよ。リトスさん」

 リトス・リトラトスは許された。父上にも母上にも。私は感謝され………名実と共に友達になることができた。そして彼女には新しい婚約者も出来たと言う。トラストさんの紹介ではあり凄く名家ではないが彼女も………騎士様の素晴らしさを知る事となった。

 騎士を知ったら戻れなくなる。その背中の大きさに。

「本当にお子さんが………いるのね」
「そうですね」
「リトスさんばっかりズルい」
「私も触ります」
「私も私も~」
「皆さん、触りすぎですよ~」
「お嬢様。お時間です」
「えっ………もうそんな時間?」
「はい」
「アメリア。また、お医者様の所?」
「はい。定期的に見るようにトラストさんに言われてます」
「ふふ、行ってらっしゃい。今度休みはお家に行くわ」
「はい」

 私は立ち上がって。お辞儀をワルダと共にカフェテリアを去る。ワルダが声をかけてくれる。

「お嬢様は大きく変わられましたね。いつの間にか………たった。1年で」
「そうですね。トラストさんが変えてくれました」
「私も感謝しております。お嬢様に笑顔を取り戻してくれた事を」
「ワルダは婚約者を見つけてくれたのを感謝してるんじゃないのですか?………お子さんはいつですか?」
「感謝しております!! あとお嬢様!! それは恥ずかしい行為のお話で品がありませんよ?」
「………この子は品がない行為の子ですか?」
「あっ………すいません」
「その通りです」
「…………お嬢様。本当に芯が太くなりましたね?」
「だって………母親になるんですもん」

 私はお腹の中で育つ愛を大切にしようと思っている。

「そうですね。お嬢様………いいえ、奥さま」
「奥さまですか?」
「はい。お子を成すことはすでに成人をされています」
「………」
「どうされました?」
「婚約の儀はいつするのでしょうか?」
「お奥さま、それは………卒業後です」

 ワガママなのだろうか?子が産まれたら卒園しなくちゃいけない。しかし………

「子が出来る前に………トラストさんの奥さんでありたいな。本当の」

 心身共に彼の妻として子を産みたいと思うようになって来る。お腹が大きくなるにつれその想いも大きくなっていく。

「………………これ以上幸せを求めるのは贅沢ですね」

 ワルダに心の言葉を口にして我慢するのだった。


§


 冬の寒さが揺らいだ夜中、いつもの寝室で愛する人と話をする緩やかな時間。トラストさんはいつも優しく。最近は小説を読まずに私との時間を増やしてくれている。

 小さな事だけど愛されていることがわかる。毎日毎日。彼は私のお腹を擦る。愛しいと言葉にせずに行動で示す。

「名前………決めたい」
「んっ? トラストは何かいい名前をご存知ですか?」
「ランスロット」
「………えっ?」
「………ダメかい?」
「小説の騎士さまの名前ですが………その騎士は」
「そう、騎士道武勇を持ちながら愛に生きてしまい王を裏切ってしまった騎士だ」
「…………………ダメです」
「どうして?」
「そんな………悲劇の騎士様じゃないですか」
「それは小説の話さ。それに……悲劇が大きく取り出されるが彼は王の器を持っていた騎士。だからこそ、そんな素晴らしい騎士になってほしい」
「でも………その名前は苦労するのではないですか?期待をして潰れてしまいます」
「名前負けはしないよ。小説の騎士とは違うんだ」
「うぅ……しかし」
「お願いアメリア」

 彼が私の手をとって頭を下げる。少し引けるが気持ちはわからない訳じゃない。世の中に尊敬する人の名前をつけるのは多い。

 だけど空想上の英雄の名前は少し引く。

「うぅ………仕方ないです。いいですよ」
「やった!!」

 私より年上なのに子供のようにはしゃぐ。それを見てると許してあげたのは良かったかなっと思ってしまう。

「………ランスロットですか。ダメですよあんな小説の騎士様のようになって悲しいことしちゃ」
「アメリア。大丈夫………俺がそれをさせない。君と一緒に幸せにするから。いや!! 一人前の男にする。一人で歩ける男にする」
「………トラストさん。約束ですよ」

 私は首を傾げながら小指を出す。彼は頷いて小指を絡めてくれる。

「懐かしい」 
「懐かしいですね。トラストさん」

 大好きだった祖父とやったのを思い出す。私たちは指を切る。

「名付けの責任、頑張ってくださいね」
「任せろ。剣に誓って」
「………あとですね」

 私はクスクスと笑いながらある事を告げる。

「まだ、男の子か女の子かわかりませんよ?」
「えっ?」

 彼は驚いた顔をしたあと。頭を掻いて悔いる。

「女の子だったら可哀想」
「い、いや………女の子だったら名前を変えよう」
「騎士に二言はないですよ。お父さん」
「………くぅ。怒ってるだろ」
「ふふ」

 私はお腹を撫でながら。幸せを噛み締める。婚約しなくても大丈夫。幸せなんだから。



§



 バラが散る。春の暖かさが暑さに変わる。令嬢達が白い花弁のような日傘を掲げ太陽をその花に当てる事が多くなった時期。

 そんな中で服の上からでもわかるぐらい孕み大きくなるお腹。ランスロットは大きく大きく成長していた。順調に順調に。生まれるのは秋口ごろらしい。

「アメリア。もう学園にくるのやめなさい。つわりは無かったとはいえ………子を孕んだあなたにもしもの事があればアフトクラトル家はどうなるの?」
「心配しすぎです。それに………体を動かさないと難産になるらしいですよ?」

 最近、一層仲良くなりつつあるリトスさん。私を心配する。

 今日は珍しく二人だけで、他の方は授業をサボって買い物に行ってしまっている。私はお腹の子で一緒にはいけなかった。

「知ってるけど………不安よ。私が」
「リトスさん。丸くなりましたね。お腹はそれほどでもないですが」
「うるさい!!まだ丸くさせてないの!!」
「殿方のお相手も婚約者のお仕事ですよ?」
「本当にあなたは!!………は、はずかしげもなく」
「いつか、あることです」
「………大人ね」
「それも、訪れます」
「……………………不安だわ。自分もそうなるのかしらね」

 私もそれには多いに悩んだ。育てられる自信なんてない。だけど………お腹にはいるのだ。悩んでも母になる。例えトラストさんが焦って犯したとしても。

「そうそう。最近話題の小説が流行ってるの」
「小説ですか?」
「好きでしょ?」
「はい。今は絵本を読んでます。この子に聞かせる本を」
「………それで知らないのね。これを」

 リトスが一冊の本をテーブルの置いた。私はそれを掴む。

「空想の恋愛話なんだけど。どうみても………アメリアさんを思い出したわ。題名もね」

 題名を読む。

[婚約破棄され見捨てられた。母親にも見捨てられた。でも私には王子さまがいる]

 私はテーブルに本を叩きつける。顔が真っ赤になるのがわかるぐらい恥ずかしくなる。

「アメリアさん!? どうしたの!?」
「り、リトスさん………あらすじは!!」
「えっと………婚約破棄や母親のせいで引きこもった王国の姫が他国の王子ランスロットに救われる話です」
「そ、そうですか」

 既視感。何故かトラストさんの顔を思い出す。今夜、彼に文句を言わないといけない。

 勝手に相談なく書いたことを。


§



 その夜、私は彼の帰りを待ちながら。恥ずかしい恥ずかしい思いを抑え込みながらリトスから借りた本を読む。

 主人公は全員違う。名前も何もかも。だけど………

「わ、私がいる」

 小説の中で私みたいな女の子が王子と愛を囁きあっていた。リンゴのくだりは火を吹きそうなほど恥ずかしかった。ウサギがいいっとワガママを言う王子に心当たりしかない。

 こんな自分自身をどんな気持ちで書いたのだろうか?自己陶酔?それとも自分が王子だと信じて?

 とにかくも正常な感じではなかった。偽善者よりも恥ずかしいナルシストだ。

「ただいま。アメリア」
「お、おかえり………」

 私は途中まで読んだ本を栞を挟んで畳む。

「どうしたんだい?」
「ん!!」

 私は畳んだ本を彼の目の前につき出す。

「これは………ああ。やっと君の所に」
「やっぱり!! トラストさん!! どうしてこんな本を!! 恥ずかしいです!! ナルシストですか!!」
「最初っからそうだったじゃないか?王子に憧れているって」
「でも!! これは………相談なく書いたことは酷いと思います‼」

 私は初めて喧嘩してしまう。彼は起こる私を見ながら笑みを深める。

「売れ行きがいいんだ。初めて書いて夢が叶ったよ。リトスさんには時間を空けて渡すように言ってたんだ」
「それは良かったですけど…………それとこれとは別です!! 恥ずかしくないんですか!?………私は恥ずかしいです」
「ああ、俺も恥ずかしい」
「だったら………どうしてですか………何で笑ってるんです? 怒ってるんですよ?」
「………ごめん勇気がなくてさ。ちょっと」
「言い出す勇気ですか?モデルになって欲しいっと言う勇気がなかったんですか!?」

 トラストさんが首を振る。

「最後まで読んだかい」
「い、いいえ」
「我慢して読んで欲しい」

 私は、真面目な顔のトラストさんに押されて本を開けた。ゆっくり静かに最後まで読む。仲良くなった主人公は婚約者となり。時間がたったあと………王子が婚約の言葉をいい。そして儀式を行った後、幸せな日常が続いていた。

 私は不思議に思った。婚約して終わるもんだと思っていたからだ。そしてふと………感じ取る。

 怒りは治まった。

「読み終えた?」

 彼はずっと待っていた。椅子に座り。立ち上がりながらゆっくりと私にt近付いてくる。

 今さっき読んだ小説の王子は姫に言う言葉を思い出す。


 やっと勇気が出た。

「やっと勇気が出た」

 ずっと、悩んでいた。

「ずっと、悩んでいた」

 君を待つと言う行為に。自分は我慢ができないことに。

「君を待つと言う行為に。自分は我慢ができないことに」

 私は………小説の王子の最後の言葉を口にした。

「婚約者っと言われるのが耐えられない。だから、出会えた奇跡に感謝を、愛しい愛しい人よ。結婚してください」
「婚約者っと言われるのが耐えられない。だから、出会えた奇跡に感謝を、愛しい愛しいアメリア様。結婚してください」


 重なった言葉の意味は。そのまんまの意味。


「アメリア。両家の了承があった。子が生まれる前に正式に妻になってくれ…………ごめん。これを言うのにバラが散るほどの時間、かかってしまった」

 私は久しぶりに涙を拭い。頷くことしか出来ない。何故なら感情の高鳴りで声が出なくなってしまったのだから。
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