In Another World〜異世界で送る新人生〜

勝田美雪

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森林波瀾篇

出発

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 次の日、予定通りに城を出た。その時は、ゼピュロスが見送りに出てくれた。そこで、ゼピュロスから地図と、幾ばくかの金貨と食料をもらった。

 ほんとは、カオスにも見送りに出てほしかったが、あいつは『神』として君臨しているんだし、見送りになんか来ない、ということは分かっていた。が、来て欲しかったというのが本音だ。

 あ、あとあのメイドさんも出てくれた。

 この景色がもう見られなくなることはとても残念であったので、しっかりとこの目に焼き付けてきた。

 抱きつこうとも一瞬ながら思ったが、拒否されたときの心の傷を考えて控えた。

 王都"ユレイグル"までは、地図のおかげで迷うことなく進むことができ、3日で辿り着くことができた。

 まあ、能力付与-風(ウィンドエンチャント)で走るのを最大限早くしたからなんだけどね。

 本来ならば、踏破するには相当な日数がかかると言う。術技様様である。



 と、言う訳で、現在に至る。ようやくたどり着いたところだ。

 ユレイグルの第一印象は、とにかく広い、だった。

 入り口に関所があり、そこで旅人ないし商人毎に検問をしていた。ご苦労なことだ。

 そこで、初訪問の人間にはマップを配っているようだ。

 僕もそれを貰った1人だ。

 それを見る限り、とても広い。

 あの『おうち』よりも、だ。まあ、城と都とを比べて、城の方が大きかったら、それはそれで色々と問題なのだが。

 検問の際、僕が身分証を一切持っていないと宣言すると、何やら訝しんでいたが、手に持っていた書類を見るや否や、入場の許可が下りたのだ。

 僕はそれは疑問でしかなかった。が、今となっては迷宮入りである。

 入場してすぐに、とりあえず宿屋の位置を把握した。

 マップ貰ったんだろって?

 こう見えても倹約家なんだよ。それに、マップには宿屋が複数書いてあったし、安くていいところを選ぶのは当然だろう?



 とりあえず、安くていい宿屋は見つけた。綺麗な宿だった。

 這いずり回った。疲れたよほんとに。

 次は、武器だ。

 武器が無ければ、あの森での修行のように野生動物のような闘いかたになる。そんなのはRPGなどではない。

 僕は、こちらの世界に来て、実際に魔物とかを見て、剣に憧れた。

 だから剣を買いたい。

 なんだって?単純だなって?子供みたいだなって?

 そんなの、この世界じゃあ関係ないんだよ。

 魔物と闘って分かった。いや、実際には僕自身は闘ってないんだけど。

 この世界は、弱肉強食だ。

 強ければ正義。

 それがこの世界なんだ。

 僕は、それは正しいと感じつつも、憎らしくも感じていた。

 だって、それは、前の世界と同じなのだから。

 僕は"弱"だった。


 と・に・か・く!!僕は剣を買うんだ!!

 と、言うわけで、武器屋に来た。何故か武器屋は1つしかなかった。宿屋はたくさんあったのに。

 武器屋に入ると、「いらっしゃい!」という粋のいい男の声が耳に響いた。

「お、兄ちゃん、初めてだな?」

「え、えぇ。」

「何を買いに来たんだい?」

「とりあえず剣を買いに来ました。」

「おぉ!剣か!そうだなぁ。片手剣か両手剣、どっちがいいんだい?」

 あ、そうか。その区別があった。それは失念していた。

 ここでの選択も重要になる、と僕は思っていた。

 片手剣なら、片手で持てるので、もう片方の手は自由になる。盾を持ったり、二刀流だってできる。

 正直、二刀流には憧れる。なんだかかっこいいし。

 ……………………

 しかし、片手で持てる分軽い。だから、一発のダメージは多少なり少ない、とは思う。

 反対に、両手剣は両手で持つので、盾などは持てないし、二刀流などは以ての外。

 しかし、重いため、一発は大きい。

 悩んだ末、

「片手剣でお願いします。」

「兄ちゃん、初心者かい?」

「えぇ。まあ」

「おっしゃ!そしたら、良いもん持ってきてやろう!!」

 武器屋のおじちゃんはそう言って店の奥に消えていった。

 ん?なんで片手剣にしたかって?

 そりゃぁ!!二刀流がカッコいいからだろうが!!!

 ………………

 いや、だってさ、片手が暇なんだから、それで色々出来るじゃん?そっちの手で魔法だって撃てるかもしれないし、それこそ二刀流だって出来る。

 両手剣のメリットよりも、そっちのメリットの方が大きいって単純に思ったんだよね。

 しばらく待っていると、おじちゃんは複数本の剣を担いで帰ってきた。

 危ない、と思うかもしれないが大丈夫。全て鞘に収まっていたから。

「ほらよ!どっちがいい?どちらも、初心者用の、かなりリーズナブルな物だから、兄ちゃんでも十分買えると思うぜ?」

 と言われた。持ってこられた剣をまじまじと見つめた。

 見ては見たが、正直どちらも変わらないように見える。素人にはその違いが分からないのだ。

「えぇっと、これって何が違うんですか?」

「おお!よくぞ聞いてくれた!!!それはだなーーーーー」


 長かったので割愛。……というか、聞いても理解できなかった。いや、正確にはしようとはしていなかった。おじちゃんには申し訳ないが。

「オススメってどっちですか?」

 よく分からないことは聞くものだ。

「それはだなぁ。どちらもオススメだが………こっちだな。どうだい兄ちゃん。これにするかい?」

「はい。それで。いくらですか?」

「これなら銀貨25枚だ!」

 銀貨25枚……日本円で25万円。イマイチ、この世界の価値観が分からない。これが高いのか安いのかすらも。

「えぇ。それでお願いします。お金はこれで。」

「はいよ!!……って兄ちゃん金貨かよ!!お釣りの銀貨75枚だ!!ほらよ!剣だ!これでたくさん魔物を倒してくれや!!」

「ありがとうございます。」

 僕は、そう言い、剣を腰に掛けて店を出た。

 後ろから、おじちゃんの「頑張りな!」が聞こえてきた。




 そして、今は宿屋のベッドの上でまたもゴロゴロして、剣を眺めている最中である。

 なに?怖いって?いや、一回マイ剣持ってみなよ。もうウハウハよ。

 子供の頃、おもちゃ買ってもらって、ずっと遊んでただろ?それと同じさ。


 ちなみに、普段から話し相手としていたシャドウは、何やら城を出た途端、

(俺はちょっと寝る)

 と言い、それっきりになっている。

 まあ、僕の中にいるわけだし、あまり心配はしていないが…寂しい。


 ……あ、そういえば、修行のときに色々、術技を取得した。

 元々取得していたもの
 ・風の化身(ウィンドアバター)

 ・能力付与(ウェポンエンチャント)

 能力付与(ウェポンエンチャント)に関しては、色々試した結果、火・水・雷・地・風の基本5属性全てを付与することができた。

 そもそも、属性とは、火・水・雷・地・風の5種類と、光・闇の2種類の計7種類らしい。ゼピュロスさんが、森を歩いているときに教えてくれた。

 火は水に、水は雷に、雷は地に、地は風に、風は火に弱いという。そして、光と闇は相反する属性であるらしいので、互いが弱点であるという。

 これを聞くと、ますますゲームなのだが。まあそんなことは良い。

 が、化身については風しか出来なかった。今度他属性もできるようにしたいと思う。

 ……火とか、あんまり熱くなかったけどどうしてなんだろ。普通大火傷だよ。

 そして、
 新たに取得したもの
 ・飛燕琉舞
 ・烈風拳
 ・疾風乱舞
 ・断空剣

 飛燕琉舞は、まあ飛び蹴りだよね。それをかっこよく、威力を高くしてみた感じ。

 烈風拳は、拳から風の波動を発ながら殴る技。

 疾風乱舞は、風の勢いでスピードを上昇させながら、相手を殴るなら蹴るならしてボコボコにする技。

『お手製レイピア』を使って取得できた唯一の術技が断空剣。

 レイピアとして使ってたけど、突きから斬りに変更してある程度やってると、なにやらゼピュロスが教えてくれた。

 マイ剣を手に入れたので、これからは多用したいものである。

 まあ、これ全部ゼピュロスが伝授してくれたんだけど。だから、ほぼ風属性の術技なんだよ。そこはネックだが、我儘はいけない。


 なに?1ヶ月もあったのに、覚えられたのこれだけかって?

 いやいや、これで多いとか少ないとかもわからないし、自力で発明するのなんか、ほぼ不可能なんだよ。

 というか、短期間でこれだけ覚えたんだ。むしろ褒めて欲しいよね。うん。



 夜ご飯を食べ終えたユウキはやることも無いので、早々に眠ることにした。
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