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※第二十話「このことは、忘れて」
しおりを挟む「……あ」
片付けも終わって寮に帰る途中、臼庭も寮の方面へ帰っているのが見えた。
芸術祭が終わるまで、臼庭はホールの仕事を行っていた。
俺がすぐ傍にいても甘い匂いはしなくて、ずっと心配だったけど問題なく仕事を終えることができた。
俺は『臼庭にラブレターを渡した恥知らずのオメガ』というレッテルが貼られているため、ピアノ専攻の打ち上げには誘われていない。
俺はともかく、臼庭なら絶対に打ち上げに誘われているはずだ。
でも、行かなかったということは……。
「臼庭、体調悪い?」
俺が駆け寄って臼庭に話しかけると、臼庭はゆっくりこちらを振り向いた。
上気した頬に、少し汗ばんだ肌。俺を見るとろんとした瞳。
そして……至近距離でわかる、仄かな甘い香り。
臼庭は俺が来たことがわかると、途端に不機嫌な顔になって早歩きし始めた。
「今日は練習休む。帰る」
「ま、待って! 俺も世話するから」
「しなくていいって」
臼庭と歩幅を合わせて、俺は詰め寄る。
「お願い。理事長にも頼まれてるっていうのもあるけど、俺が世話したいんだ」
「……」
それ以上臼庭は何も言わず、俺と一緒に裏道から寮へ戻った。
幸い芸術祭が終わってすぐに寮に戻る人はいないらしく、さらに人気の少ない裏道から帰ったことで熱っぽい臼庭を発見する人はいなかった。
「はぁ……っ」
臼庭が大きくため息を吐いて自室に入る。
俺は急いで自分の部屋からマスクを取ってきて、それを身に着けた上で臼庭の部屋に入った。
臼庭は息も浅く、布団にくるまって俺から顔を逸らしている。
「臼庭、体温測ろう。そのあと、俺がコンビニか寮の食堂でご飯買ってくる。俺が外出してる間何かあったら、LIMEしてもらってもいい?」
臼庭の脇に体温計を挟んで熱を測ってもらう。
ピピ、と音が鳴った体温計を見ると、少し微熱があった。
今はまだ寮の食堂はやっていない。
コンビニで軽く食べられるお弁当を買ってこよう、と思い臼庭の部屋から出ようとしたとき――くい、と袖を掴まれた。
「……臼庭?」
「……お前の匂いで、どうにかなりそう」
助けてほしい、というように臼庭は腰を揺らす。
布団の隙間から覗く臼庭の中心は……ズボン越しにでもわかるくらい膨らんでいて、俺はそれを見た瞬間ごくりと唾を飲んでしまった。
我慢しろ、蒼馬。
だって臼庭は俺のことが好きじゃないんだから、行為をすることは望んでいないだろう。
それにここは寮の部屋だ。
こないだみたいに緊急事態でもない。
だからしなくてもいい。しなくていい、のに。
「……な、なに」
俺は臼庭を起こして抱きしめてしまっていた。
細い身体と腰が、俺の身体と密着している。
臼庭の鼓動がとくんとくんと鳴っている。少し速いのは、熱のせいだろうか。
俺は少し離れて臼庭のズボンを下着ごと下ろす。
俺のズボンも下着と一緒に下ろして、露わになった臼庭の花芯と己の愚息をぴた、とくっつけた。
「……忘れていいから」
「え?」
「これからすること、終わったらすぐ忘れていいから。臼庭は俺のこと好きじゃないってわかってる。だから、忘れて。……ごめん。こんなわがままで」
「何言って……ぁっ」
臼庭のものごと、上下に扱いていく。
臼庭の下半身は既に涎を垂らしていて、扱きやすい。
ぬるぬると先走りが俺の指と掌に絡んで、マスク越しにどんどん甘い匂いで部屋が満たされていく。
「臼庭のここ、甘い匂いがする。……気持ちいい?」
「んっ、あ……、お前に下の世話までされる覚えは、ない……っ」
「でも、俺の匂いでどうにかなりそうだったんだろう? なら……一回出さないと」
「でも……あっ、あぁ!」
亀頭の部分を強く擦ると、臼庭から嬌声が漏れた。
臼庭の蕩けた瞳がこちらを見ていて、それだけで鼓動が高鳴る。
「ここ、好き?」
「そこばっかり、やぁ……っ! あ、あっ、高築、どうして、こんなことまでっ」
「臼庭のことが好きだからだよ」
「~~~~っ!」
臼庭の顔が真っ赤になって、先走りがさらに増えていく。
俺もどんどん気持ちよくなってきて、快感が腰のほうへと集中してきた。
びく、と臼庭の陰茎が揺れて、イきそうなのかと臼庭の顔を窺う。
臼庭は涙を目尻にたくさん溜めて、湿った吐息を零していた。
「はぁ……あ、ん……」
「……臼庭、可愛い。好きなときにイッていいからね」
「す、好きなときにイッたら……高築が、イけなくなっちゃう」
「俺の心配してくれてるの? 大丈夫、俺ももうすぐイきそうだから」
擦る力を強めて速くしていく。
臼庭の腰が動き、自分で俺のものに擦り合わせていた。
臼庭のカリ首が俺の裏筋にあたって、思わず呻いてしまう。
ぬるぬるして気持ち良くて、どんどん上下に速く擦っていきもっと気持ちの良いほうへと欲を傾ける。
俺の手は臼庭の先走りか俺の先走りかわからないもので濡れていって、快感がそこへと走り抜けていく。
「……臼庭」
「な、に……っ」
「俺の、少しでいいから触って欲しい」
俺が吐息混じりに言うと、臼庭は喘ぎながら俺の中心に少しずつ手が伸びていく。
その間も俺は擦ることをやめず、臼庭のカリ首や裏筋を刺激すると、臼庭はびくびくと腰を揺らした。
臼庭がそっと俺の逸物に触れる。
「は……ぁっ、高築の、おっきい……っ」
「興奮、してるから。……臼庭が触ってくれて、嬉しいよ」
俺が微笑むと、臼庭は限界を迎えてきているのか、唇をきゅっと結んで目尻から涙を一筋零した。
臼庭の中心からとろとろに液が溢れて、尿道口がぱくぱくと開きかけている。
「んっ、ん……っ、あっ、もう、イッちゃう……っ」
「俺ももう、イきそ……っ」
臼庭が俺のものを扱いて、俺が臼庭のものを擦る。
臼庭の手は温かくて心地良くて、臼庭に触れられていると思うとすぐに快楽が陰嚢からこみあげ、中心へと集まった。
「あっ、あ……! イくっ、イっ……~~~っ!!」
「……っ」
二人同時に、精液が溢れ出す。
その量はオメガと子を作るためなのか、アルファの俺のほうが量が多く、たくさん飛び出して……臼庭のシーツを汚してしまった。
「あっ! 臼庭、ごめん……」
「……別にいい。明日ランドリールームに行って洗っておいてくれる?」
「う、うん、わかった。ありがとう」
二人で飛び散った精液を処理するのが恥ずかしくて、ぎこちなくなってしまう。
処理している間の部屋には、沈黙が訪れていた。
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