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第28話 ケイたちの見送り
しおりを挟む◇◇◇
「こんなに美味しいスイーツを食べれて幸せだったなぁ。また来るよ」
「はーい。また来てね」
ケイたちは会計を済ませ、耳を元気に動かしていた。
ルットもいつもより機嫌が良さそうだ。
試しにルットに訊いてみた。
「ルットも、また来てくれる?」
「え……」
私がルットに笑みを向けると、恥ずかしそうに一瞬目を伏せ、そしてまた合わせた。
「ケ、ケイが行くなら……また行きます」
「そっか、良かった。じゃあ……」
私はお釣りを革袋に入れているルットの前で、頭を下げ両手をパン!と合わせた。
ルットが若干引き気味になっているのが見なくてもわかる。なぜならルットのひゅっと喉を鳴らす音が聞こえたからだ。
私はお客さんがいないのをいいことに、少し大きめの声でこう言った。
「次来てくれたときは、モフモフを触らせてください!」
「……」
ルットの犬耳と尻尾は、とてつもなくフサフサなのだ。
揺れているときもピンと張っているときも私のモフモフ心をくすぐってくる。
もうルットのモフモフを触れたら悔いはない。
頼む、触らせて……! と私は願いをこめて目を閉じる。
……しかし、いつまで経っても返事が来なくて、私は目を開けて顔を上げた。
そこには、呆然としているルットの姿があった。
目は見開かれ、口をぽかんと開けている。
隣のケイはそんなルットの姿をにこにこ見つめていた。
「ダメ……?」
私がお願い! というような瞳で見つめると、ルットは深いため息を吐いた。
「……触る機会があれば、ですからね」
その小さな声を私は聞き逃さなかった。
私は思わず「やったぁ~~!」と叫び、万歳する。
ルットは「この耳のどこがいいんだ……」と自分の耳をいじりながら、ケイと共に私たちの店を後にした。
店がしん、と静まり、ユリクと私の二人だけになる。
珍しくお客さんが来ないなぁ。
暇になってしまったため、精霊と一緒にテーブルを掃除したり、調理器具の片づけをした。
ユリクも床や窓を拭いてくれている。
「お客さん来ないね」
「そうだね。平日の午前だし、こんなものじゃない?」
確かに平日の午前はみんなお仕事か。
メニューを整理して、テーブルをぴかぴかにする。
精霊たちも一生懸命手伝ってくれた。
……後でご褒美のスイーツあげよう。
暇だし、休憩時間にしてケイたちにあげたザッハトルテの余った分でも食べようかな、と思っていると。
コンコン。
控えめにドアが叩かれた。
「お客さんかな?」
「俺が出ようか?」
「ううん、大丈夫。私が出るよ」
ドアをわざわざ叩くお客さんなんて珍しいな。
サナさんみたいに開店前だったら鍵がかかっているから叩くしかないけど、もう開店して一時間は経っている。
外の看板にも開店時間と閉店時間は記してあるし、ノックする必要はないことはわかるんだけど……。
初めてのお客さんかな。もろ家だし入るのが怖いとか?
私はベルをカランと鳴らしてドアを開けた。
そこには——
「こんにちは、お嬢さん」
「え……!?」
深紅のローブを纏った青年。
金髪を一つに結んで肩に垂らしている。
瞳は海のように青く深い色。
そして、ローブの胸元には銀色の翼の紋章が縫われていた。
深紅のローブに、銀色の翼の紋章。
——間違いなく、王宮魔術師の人だ。
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