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第52話 手料理です
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泣くのに体力を消費してしまったのかよほどお腹がすいていたらしく、ぎゅる~と鳴った。
朝食は早かったし、ユリクもお腹を空かせているはずだ。
早く作らなきゃ。
家にある食料を確認し、迅速に作っていく。
前世は一人暮らしだったし、包丁の使い方にも慣れている。
野菜をざく切りにして水が入った鍋に入れ、スープの粉を加えて煮込んでいく。
このスープの粉は昔魔術師が発明したもので、適当に水を入れた鍋にこれを加えれば美味しいスープが完成するというものだ。
この国の人々は日本人が米にみそ汁は欠かせないというのと同じで、毎食スープが欠かせないという考えを持っている。
獣人は毎食スープを飲まないと嫌という考えはあまり持っていないが、人々は必ずスープは食事に欠かせない! と思っているのだ。
でも毎回毎回手間暇かけてスープを作るのは面倒くさい。
そこで開発されたのがこのスープの粉。
これを使えば美味しいスープが完成するというもの。
スープの粉が普及してからすぐはそれを使う人がほとんどだったのだが、この粉にはデメリットがあった。
毎回同じ味のスープが完成するということ。
三食同じ味のスープはきついと感じる人がちらほら出てきていて、最近では一からスープを作る人の方が多くなった。
時間をかけて作るスープの方が美味しく感じるんだとか。
まぁ私はスープの粉を使った方が時間短縮できるから、喜んで使うんだけどね。
スープを煮込んでいる間に、お皿にパスタと水、カマンベールチーズ、ベーコン、塩などの調味料を加えて魔石オーブンで温める。
温めたものをバターと溶き卵を混ぜたソースに絡めてブラックペッパーをかければ、カルボナーラの完成だ。
後はハーブ多めのプチサラダを作って……。
「うん、できた!」
野菜スープにカマンベールチーズのカルボナーラ、野菜とハーブのプチサラダが完成した。
「ユリク、できたよー」
お盆に全てのっけてユリクの元まで運んでいく。
ユリクは「わ、すごい!」と尻尾を振りながら珍しく歓声を上げていた。
「食べていいの?」
「どうぞ!」
「えっと……いただきます」
手を合わせて目の前の食事に軽く頭を下げる。
ユリクは日本の挨拶を教えて以降、こうして食事前と食事後に挨拶をしてくれるようになった。
まだ慣れないようではあるけど、日本の文化をリスペクトしてくれるのはとても嬉しい。
ユリクはカルボナーラをフォークにくるくる巻いて、一口ぱくっと食べた。
「……! おいしい」
「ほんと? 良かった!」
咀嚼して飲み込んでから、ユリクが言葉を続ける。
「まろやかなソースと、柔らかすぎず固すぎないパスタ……。カナメって料理も上手なんだね。すごいよ」
「ふふ、ありがとう」
料理を褒められるのは素直に嬉しい。
私も自分の分をお盆にのせ、ユリクの向かい側に座って挨拶をしてから、カルボナーラを一口。
「うん、美味しい!」
カマンベールチーズの濃厚な味と、パスタに絡んで溶けた卵とバターの味が口の中で一つになって美味しい。
ブラックペッパーも効いているし、パスタもユリクの言う通りちょうどいい固さだ。
これは何口でもいけちゃう、と自分でも思ってしまう。
野菜スープも安定で美味しいし、プチサラダもシャキシャキで美味しく、ユリクもあっという間に完食してしまった。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまです」
しっかり挨拶してから、ユリクも私も食べ終わった食器をキッチンに持っていく。
魔法版食洗機に食器を洗わせていると、ユリクは二階に行ってしまった。
「……? 部屋でゆっくりするのかな」
部屋に行くときはいつも私に声かけてから行ってくれるんだけど。
ユリクが無言で部屋に行くことは滅多にない。
なら戻ってくるのかな……? としばらくキッチンから階段を見つめていると、案の定ユリクがひょこっと現れた。
トントンと規則的に階段を下りていくユリクの手には剣が握られている。
「ちょっと庭で練習しててもいい?」
「え、うん、行ってらっしゃい」
食べたばかりなのに、もう練習するのね。
私に許可を貰ったユリクは、歩いて窓を開け、庭に行ってしまった。
随分剣の練習に熱心だけど、森で魔物退治にでも行きたいのかな。
確かに騎士じゃなくてもルッサリアの森に入れたくらいだもんね。
……騎士じゃなくても?
「……!」
そこまで考えて、ハッとした。
ユリクの考えていることがなんとなくわかった気がする。
私は汗を流しながら剣を振るうユリクを、じっと見つめていた。
朝食は早かったし、ユリクもお腹を空かせているはずだ。
早く作らなきゃ。
家にある食料を確認し、迅速に作っていく。
前世は一人暮らしだったし、包丁の使い方にも慣れている。
野菜をざく切りにして水が入った鍋に入れ、スープの粉を加えて煮込んでいく。
このスープの粉は昔魔術師が発明したもので、適当に水を入れた鍋にこれを加えれば美味しいスープが完成するというものだ。
この国の人々は日本人が米にみそ汁は欠かせないというのと同じで、毎食スープが欠かせないという考えを持っている。
獣人は毎食スープを飲まないと嫌という考えはあまり持っていないが、人々は必ずスープは食事に欠かせない! と思っているのだ。
でも毎回毎回手間暇かけてスープを作るのは面倒くさい。
そこで開発されたのがこのスープの粉。
これを使えば美味しいスープが完成するというもの。
スープの粉が普及してからすぐはそれを使う人がほとんどだったのだが、この粉にはデメリットがあった。
毎回同じ味のスープが完成するということ。
三食同じ味のスープはきついと感じる人がちらほら出てきていて、最近では一からスープを作る人の方が多くなった。
時間をかけて作るスープの方が美味しく感じるんだとか。
まぁ私はスープの粉を使った方が時間短縮できるから、喜んで使うんだけどね。
スープを煮込んでいる間に、お皿にパスタと水、カマンベールチーズ、ベーコン、塩などの調味料を加えて魔石オーブンで温める。
温めたものをバターと溶き卵を混ぜたソースに絡めてブラックペッパーをかければ、カルボナーラの完成だ。
後はハーブ多めのプチサラダを作って……。
「うん、できた!」
野菜スープにカマンベールチーズのカルボナーラ、野菜とハーブのプチサラダが完成した。
「ユリク、できたよー」
お盆に全てのっけてユリクの元まで運んでいく。
ユリクは「わ、すごい!」と尻尾を振りながら珍しく歓声を上げていた。
「食べていいの?」
「どうぞ!」
「えっと……いただきます」
手を合わせて目の前の食事に軽く頭を下げる。
ユリクは日本の挨拶を教えて以降、こうして食事前と食事後に挨拶をしてくれるようになった。
まだ慣れないようではあるけど、日本の文化をリスペクトしてくれるのはとても嬉しい。
ユリクはカルボナーラをフォークにくるくる巻いて、一口ぱくっと食べた。
「……! おいしい」
「ほんと? 良かった!」
咀嚼して飲み込んでから、ユリクが言葉を続ける。
「まろやかなソースと、柔らかすぎず固すぎないパスタ……。カナメって料理も上手なんだね。すごいよ」
「ふふ、ありがとう」
料理を褒められるのは素直に嬉しい。
私も自分の分をお盆にのせ、ユリクの向かい側に座って挨拶をしてから、カルボナーラを一口。
「うん、美味しい!」
カマンベールチーズの濃厚な味と、パスタに絡んで溶けた卵とバターの味が口の中で一つになって美味しい。
ブラックペッパーも効いているし、パスタもユリクの言う通りちょうどいい固さだ。
これは何口でもいけちゃう、と自分でも思ってしまう。
野菜スープも安定で美味しいし、プチサラダもシャキシャキで美味しく、ユリクもあっという間に完食してしまった。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまです」
しっかり挨拶してから、ユリクも私も食べ終わった食器をキッチンに持っていく。
魔法版食洗機に食器を洗わせていると、ユリクは二階に行ってしまった。
「……? 部屋でゆっくりするのかな」
部屋に行くときはいつも私に声かけてから行ってくれるんだけど。
ユリクが無言で部屋に行くことは滅多にない。
なら戻ってくるのかな……? としばらくキッチンから階段を見つめていると、案の定ユリクがひょこっと現れた。
トントンと規則的に階段を下りていくユリクの手には剣が握られている。
「ちょっと庭で練習しててもいい?」
「え、うん、行ってらっしゃい」
食べたばかりなのに、もう練習するのね。
私に許可を貰ったユリクは、歩いて窓を開け、庭に行ってしまった。
随分剣の練習に熱心だけど、森で魔物退治にでも行きたいのかな。
確かに騎士じゃなくてもルッサリアの森に入れたくらいだもんね。
……騎士じゃなくても?
「……!」
そこまで考えて、ハッとした。
ユリクの考えていることがなんとなくわかった気がする。
私は汗を流しながら剣を振るうユリクを、じっと見つめていた。
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