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第11章 新規・新装・戴冠・結婚
第282話 墓参りr
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翌朝目が覚めたケビンはスカーレットの寝息を聞きつつ、あどけない寝顔を1人で楽しんでいた。
「んぅ……ん……」
あまりにも可愛い寝顔のスカーレットへ、ケビンは頬をツンツンしてぷにぷにとした触感を楽しみだしたのだった。
「んー……」
ケビンがツンツンしたからか、スカーレットが目覚めてしまいケビンと目が合う。
「ケビンさまぁ……」
「おはよう、レティ」
スカーレットが起きたことにより、ケビンは朝食を食べるために準備を始めて、スカーレットは自室へと着替えに戻った。
2人で仲良く食堂へ向かうと他の嫁たちも既に起きており、全員揃ったところで食事を始めたのだった。
朝食後、憩いの広場へ場所を移した嫁たちは、ケビンのいない所で第2回嫁会議を開くのである。
「第2回嫁会議を始めたいと思います」
ティナがいきなり始めた第2回嫁会議にアリスが待ったをかける。
「ソフィさんがいませんよ?」
「ソフィさんが提唱したことについてだから、不在でも大丈夫よ」
「議題」
「今日の議題はケビン君の奴隷たちへの対応です」
ティナが伝えた議題内容にとうとうこの時がきたのかと、嫁たちもゴクリと生唾を呑み込む。
一般公開(この場のみ)されている嫁会議の議題を聞いた奴隷たちもじわりじわりと距離を詰めて、より聞きやすい位置へと移動を始める。
「私たちは全員無事に初夜を終えたわ。となると、ケビン君が気兼ねなく他の女性たちを抱けるはずよ」
「議長」
「はい、ニーナ」
その場の雰囲気を楽しんでいるのか、ニーナは挙手をして発言権をティナから与えられる。
「ナナリーの存在」
「……いい意見ね、この城の中で唯一嫁でもなく奴隷でもない存在だわ」
「議長」
「はい、クリス」
ニーナのやったことが面白いと思ったクリスは、普通に喋るのではなく同じように挙手をして発言権を得るのであった。
「ナナリーを観察してみたところ、今はベッドで休んでいるけど1日でも早く元の体型に戻すことを心がけてるわ。つまり、ナナリーは本気よ」
「そうね、ナナリーがケビン君を見る時の顔は恋する乙女よ。あれは確実に惚れているわ」
「議長」
「はい、アリス」
今までの流れからそうしなければいけないと思ってしまったのか、遊んでいる3人とは違ってアリスは真面目にその流れを汲み取るのであった。
「ケビン様のナターシャに対する接し方は、既に父親の域へ達していると思われます。それを眺めるナナリーさんは母親の顔です。3人だけでいれば誰がどう見ても家族であると間違える程でしょう」
「ケビン君は子供に甘いからね。叱る時は叱るけど、悪いことをしてなければとことん好きにさせているものね」
「議長」
「はい、サーシャ」
「結局どうするの? ケビン君の奴隷たちとナナリーへの対応を話し合っているんでしょ?」
「サーシャは遊び心がないわね」
「横道に逸れるくらいなら会議にしなくて普通の世間話で充分でしょ」
「ぐっ……」
「それにそのことはケビン君自身が決めることなんだから、私たちがとやかく言う筋合いはないわよ? 私たちはそれがわかっててお嫁にしてもらったんだから」
「議長」
「はい、レティ」
「私はケビン様が他の女性たちを抱いても問題ないと思います。古来より『英雄色を好む』と言われていますので、むしろ英雄であるケビン様には至極当然のことかと思われます。最終的に私たちの所へ帰ってきてくれたらそれで良いのでは?」
「レティが妻の風格を現しつつあるわね。ソフィさんに考えが似てきているわ」
「結局何のための話し合い?」
そろそろ飽きてきたクリスが、ティナへ議題の本質に迫る言葉を投げかける。
「それは簡単よ。ケビン君が他の女性たちに手を出しても、ソフィさんを見習って温かく見守ろうって話よ」
「議題にする必要性がないよね?」
「ぐっ……」
「ティナのあんぽんたん」
「ちょ、ニーナ!」
こうして、さして意味のなかった第2回嫁会議は閉会するのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
城で嫁たちが会議を開いていることなど露知らず、ケビンが1人でやってきたのは実家でもあるカロトバウン家の本宅である。
リビングにいきなり現れたケビンにサラ以外の者は唖然とする。食後の紅茶と言わんばかりに飲もうとしていたギースを始め、アインやカイン、カインの婚約者で一緒に住んでいるルージュはポカンと口を開けてケビンを見つめている。
「ただいま」
「おかえり、ケビン」
この空気の中でも平常運転でマイペースを貫いているケビンとサラが、なんてことのない感じで挨拶を交わしたのだったが、ひと足早く復帰したカインが怒涛の剣幕でケビンに言葉を投げかける。
「ケビン! いつ帰ってきたんだ!」
「今だけど?」
「いや、そうだがそうじゃねぇだろ!」
全くもってその通りなのだが、ケビンにとってはそこまで慌てるほどのことかと頭をひねるばかりだ。
「母さん、伝えてなかったの?」
「だって、ビックリさせたいじゃない?」
「困った母さんだね」
「ふふふっ」
ケビンが帰ってきたことを家族へ秘密にしていたサラの思惑は成功したようで、まんまと家族がビックリすることになるがイタズラを仕掛けた相手がサラなので誰も文句は言えないのである。
「あ、カイン兄さん、婚約おめでとう。ルージュさん、シスコン卒業おめでとう」
「おお、ルージュさんと過ごせて幸せだぞ。これもケビンが体を元に戻してくれたお陰だ。ありがとな。また剣を握ることができて兄ちゃんは嬉しいぞ。何かあったらすぐに言ってくれ、兄ちゃんは一生かけて恩返しするからな」
「それなら部位欠損の回復を口外しないだけでいいよ。あの魔法は神聖皇国がひた隠しにしている魔法だからね」
「で、放蕩息子はいつ戻ってきたんだ?」
「え……その言い方は酷くない? ねぇ、母さん?」
「そうね、私の可愛いケビンに放蕩息子だなんて……あなた、ちょっと後でお話しましょうね?」
「え? 今のは軽い挨拶で……」
「お・は・な・し」
「あ、はい」
ギースのちょっとした父親から息子へ向けての『お・も・て・な・し』が、サラからギースへ向けての『お・は・な・し』となってしまい、後のことを考えたギースはしょんぼりとするのである。
「まぁ、こっちに戻ってきたのは10日くらい前だよ」
「ケビン、その間は何をしてたんだい?」
ギースがしょんぼりしてしまって使えなくなったことで、アインが代わりに聞いておきたいことの質問をするのだった。
「ああ、それで言わなきゃいけないんだけど、俺、皇帝になったから」
「さすが私のケビンね、侯爵の次は皇帝なのね!」
サラ以外の者が絶句して黙り込む中、サラだけが唯一ケビンを褒めているとケビンが皇帝になった経緯を語りだした。
「簡単に言うと2国で爵位を持っているから領地経営の問題が浮上してね、どうせならと皇帝不在の土地を与えてしまえってライル陛下とエムリス陛下の間で決まったみたいだよ」
「他国はどう反応しているんだい? さすがに無反応ってことはないだろ?」
「あぁ、それは口出しするな的なことを手紙で送ったらしいよ。戦争になったにも関わらず支援申請しても帝国と離れてるからって、我関せずでのらりくらり支援準備をしていたらしい。まぁ、自国さえ良ければいいというのはどこの国でも同じだろうから」
「確かに他国から援助があればもっと被害を抑えられただろうしね。それにしてもケビンがどんどん出世していくね」
「あっ、そうだケビン! 兄ちゃんも出世したぞ!」
ケビンの出世話で思い出したのか、カインが嬉しそうにケビンへ報告する。
「殿を務めた時の報奨?」
「あぁ、辺境伯閣下が陛下に進言してくれてな、名誉男爵で収まりそうだった話が子爵になったんだ」
「伯爵でもいいと思うんだけどね。全滅予定の辺境伯を救ったんだし多大な貢献だと思うけど」
「伯爵なら父さんがなったぞ。よくわからんが告知されたあとの決断の早さとかで」
「ん? 決断の早さ?」
ケビンは何のことだろうと首を傾げるが、それに答えたのはアインであった。
「すぐに戦場へカインとシーラを送り込んで、その後は自領の兵士も送ったからね。ウカドホツィ様もカインたちが来なければ死んでいたと言うくらいだし、実際カインたちがいなければ戦線はもっと早くに瓦解して酷い状況になっていたと思う」
「まぁ、父さんが黙ってたら辺境伯は死んでたわけだしね。間接的に救ったってことでの陞爵かな」
ケビンが納得していると、アインが他に何か近況報告がないのか尋ねてみたところ、ケビンは伝えておくべきことを話していくのだった。
「あとは婚約者たちと結婚した。戴冠式を今度行うからその後に引き続き結婚式を挙げる予定だよ。みんな招待するから来てね」
「あらあら、まあまあ。ソフィさんたちとの結婚式ね」
「ソフィ……? 聞いたことのない名前だね。誰なんだい?」
「んー……どうしよう……説明できるけど本人の許可がいるし……とりあえず、ティナたちと出会う前からの知り合いで第1夫人だよ。日頃は仕事が忙しいからアイン兄さんたちはあまり会うこともないだろうね」
「まぁ、結婚式の時にでもご挨拶させてもらうよ」
「是非そうして。で、父さんと母さんに聞きたいんだけど」
「何かしら?」
未だにしょんぼりから復帰できていないギースに代わって、サラがケビンの対応をするのだった。
「今から姉さんの部屋に行くけど、ファラさんのこと伝えていい?」
「その件について私では答えることが難しいわね。あなた、どうするの?」
サラに呼びかけられて一時的に復帰したギースが、ケビンへ真剣な表情を向けて口を開いた。
「ケビン、それを伝えるということは覚悟があるんだろうな?」
「なければ聞かないよ」
「……わかった。シーラのことはお前に全て任せる。大事な親友の忘れ形見だ。助けてやってくれ」
「わかった。じゃあ、姉さんを連れ出すから」
「頼んだ」
この場で1人、何のことだかサッパリわからないルージュは、珍しく場の空気を読んで話についていくための追及はしなかったのだった。
それからケビンはシーラの部屋へと向かうのだが、既に気配探知でベッドにいるのはわかっている。
もちろん相手はあのシーラである。ケビンが近づいてくることなど百も承知だろう。
「姉さん、入るよ」
ケビンが軽いノックとともに部屋へ入ると、ベッドの上で布団をかぶり隠れているシーラの姿があった。もっこりしているので隠れきれてないが。
「弟が会いに来たのに顔も見せないの?」
「……合わせる顔がないの」
やれやれと思いつつ、ケビンは強硬策に出て布団を【無限収納】の中に仕舞い込むと、当然シーラは丸くなった状態を晒すことになった。
「……」
ケビンはベッドへ腰掛けてシーラへと声をかける。
「顔を見せて」
ケビンが声をかけても黙ったままのシーラの手を掴んで、無理やり動かして顔を見ると涙をポロポロとこぼしていた。
「ただいま、姉さん」
「……ごめんなざい、ごめんなざい……」
「何か謝るようなことでもしたの?」
「わだじのぜいで……ゲビンが、ゲビンが……」
「あれは俺が望んでしたことだ。姉さんのせいじゃない」
「でも……でも……」
「ほら、泣き止んで」
お礼を言うつもりだったシーラはいざケビンを前にすると、お礼よりも悔恨から謝罪の言葉が出てしまい、ケビンは泣き止まないシーラを慰めながら今後の予定を伝えるのだった。
「今日は姉さんを部屋から連れ出しに来た。ずっと部屋暮らししてるだろ? そのうち不健康で病気になるよ」
「……いいの。自分への罰だから、ケビンと一緒にいちゃいけないの」
後ろ向きなことばかり答えるシーラに、ケビンはここまで気にしていたのかとシーラの変わり様にどうしたもんかと悩んでしまう。
「はぁぁ……いつものケビン大好きって言ってた姉さんはどこへ行ったの?」
「それもやめる……もう迷惑かけない……」
「迷惑かけてる自覚があったんだ……」
「う……」
「どのみち連れ出すけど」
「いいの、私はケビンと一緒にいられないの」
「何をそんな頑なになってんの?」
「だって……だって……」
せっかく泣き止んでいたシーラが再び泣き出してしまい、ケビンはまた慰めなおすことになるのだった。
「で、頑なに拒む理由は?」
「……お姉ちゃん、穢されたから……もう綺麗じゃないから……」
ポロポロと涙を流しながら答えたシーラの言葉に、ケビンは『あのことか?』と推察すると、当時カレンにも「女性にとっては大切なことです」と言われていたこともあり、その推察で結論づけるのである。
「姉さんは穢されてないし、綺麗なままだから心配しなくていい」
「違う! 私は穢れてるの」
いつまでたっても水掛け論になりそうだったケビンは、強硬策を取ってシーラをベッドへ押し倒すとそのまま唇を奪った。
「ッ!」
いきなりのことで理解が追いつかないシーラは、驚きで目を見開くと今起きている光景に困惑するのである。
ケビンはそのままシーラの服を【無限収納】へ仕舞い込むと、その晒された肌を隅々まで観察する。
「え……え……?」
当の本人であるシーラは、キスされた上に服までどこかに消えてしまい、下着姿のままでいる状況に混乱が後を絶たない。
「俺が言った通り綺麗じゃないか」
「え……?」
「姉さんはどこも穢されていない。綺麗なままだ」
「ケ……ケビン……お姉ちゃんにキスしたの?」
次から次へと混乱することが起きているシーラは、1つ1つ解決しようと試みてケビンへ質問するのであった。
「したよ。わからなかったの? じゃあ、もう1回」
「んっ!」
今度はシーラにもわかるように、ケビンは長めのキスをしてから唇を離した。
「わかった?」
「……うん……服は?」
「姉さんの体が綺麗なのを確認するために取った」
「ダ……ダメだよ? いきなり服を取ったら女の子はビックリするんだよ?」
「姉さんがわからず屋なのが悪い。で、これでもまだ俺と一緒にいるのは嫌なの?」
「こんな私でもいいの? ケビンは嫌じゃない?」
「嫌だったらキスしない。それよりも何でそんなにしおらしいの?」
「だって……ケビンから色々されたから……お姉ちゃん、混乱しちゃって……」
「そういうことか。今日は出かけるよ、行くよね?」
「どこへ行くの?」
「今は秘密」
どこへ行くかは教えなかったケビンに対して、シーラはモジモジとしながら頬を染めて服の返還を求めるのだった。
「……あ、あの、ケビン? いつまでお姉ちゃんを押さえつけてるの? 服も返して欲しいな」
「ん? ああ、姉さんの下着姿ってまじまじと見たことないから、今のうちに見ておこうかと」
「お姉ちゃん、恥ずかしいんだよ?」
「昔に比べると胸も大きくなったよね。一時期はツルペタのまま大人になるのかと予想してたけど。あと、髪の毛が短くなってしまったけど似合ってて可愛いよ。その髪の長さの姉さんは見たことがないから、ちょっとムラムラするね」
敵兵から雑に切られて不揃いだった長い髪は、今や肩にかかるくらいの長さまで短くなっており、綺麗に整えられていることからカレンあたりが散髪したのだろうとケビンは推測するのであった。
「うぅ……お姉ちゃん、恥ずかしい……」
「姉さんって攻めるのは得意でも攻められるのは苦手なの? なんか思ってたイメージと全然違う……」
ケビンがあまりにも態度の違うシーラを見て、全然いつものシーラではないと感じてしまうのだったが、それよりもシーラは服を返してもらうことに必死であった。
「今度また見てもいいからとりあえず服を返そ、ね? お願いだから。ケビンはいい子でしょ?」
「うん、新鮮だ……姉さんっていじめがいがある。そそるよ、その姿」
「うぅ……お願いよ、ケビン。お姉ちゃんをいじめないで」
「ごめん、姉さん。ちょっと発散させて」
いつもは見ることのないシーラのギャップにケビンは萌えてしまい、再びその唇を奪った。
「ん、ちょ……んんっ、ケビン……ぬちゃ(えっ、舌が入ってきた!?)……くちゅ、くちゅ……ふぁ……にちゅ、ねちゃ……」
ケビンは自然とその手が胸へと伸びていき、下着の上からシーラの胸を堪能し始める。
「ひゃんっ!」
(うそっ!? ケビンにおっぱい触られてる!?)
「んあっ……ケビン、ダメだよ……あんっ、んちゅ、はぁ……まだ朝なんだよ? ……くちゅ、れろぉ、れろっ……」
朝でなければいいのかと、ふと疑問に思ってしまうケビンだったが、それよりも成長したシーラの体を堪能する方が優先されてしまい、疑問は頭の中から追い出されてしまった。
下着越しの感触がもどかしくなったケビンは、ブラの中に手を突っ込むと直接触るために外へぽろりと出してしまい、柔らかい感触に満足するのである。
「んんっ!」
(うそうそうそっ!? おっぱい外に出されちゃった!?)
「ダメぇ……あんっ、んちゅう……れろっ、んっ、じゅる……」
やがてケビンはピンっと立ってしまった先端を弄り始めるとシーラの嬌声が激しくなり、キスをしながらだと苦しいだろうと思い唇を離して、次のターゲットに狙いを定めたら口に含んでちゅうちゅうと吸い始めてしまう。
「ッ!」
(ああっ、おっぱい吸われちゃってる……ケビン、赤ちゃんみたい……)
既にケビンは拘束を解いているのでシーラが逃げようと思えば逃げれるのだが、何故か逃げることはせずに逆に胸に埋もれているケビンの頭を抱えてしまう。
「んあっ、あっ、あっ……ケビン、ケビン……あんっ、ダメ、なんかきちゃう……んんっ、はぁ……くる、くる……あっ、あっ、んんっ――!」
絶頂を迎えそうなシーラに合わせてケビンが先端を甘噛みすると、ビクンっと体を仰け反らせてシーラが達してしまう。
やがて落ち着いたシーラへケビンが声をかける。
「これでもう姉さんは俺のものだ。誰にも渡さないし、離さない」
「ケビン……その前に服を返そう? お姉ちゃん恥ずかしすぎて死んじゃうよぉ」
顔を真っ赤に染め上げるシーラを見て、ケビンは再びムラムラとしてしまうのだが、それでは今日の予定が進まなくなるので煩悩を振り払って服を返すのであった。
そして下着を整えて服を着たシーラはケビンに聞いておきたいことを伝えるのだった。
「ケビン……お姉ちゃんね、初めてだったんだよ? だからこれだけは聞かせて。お姉ちゃんのこと好き?」
「愚問だね、大好きに決まってる」
「ふふっ、嬉しい。お姉ちゃんを皇帝から救ってくれてありがとう。ケビンが穢れてないって言ってくれてお姉ちゃん嬉しかったよ」
ケビンの答えに満足したシーラは晴れ晴れとした笑顔を見せて、出かける準備が整ったところでリビングへと2人で向かった。
「みんな、心配かけてごめんなさい」
リビングに入ったシーラは、家族へ心配をかけてしまったことを謝罪したが、家族からしたら助け合うのは当たり前で誰も気にしてはいなかった。
「やっぱりシーラにはケビンが特効薬だよな」
「ケビン以上にシーラを御せる人はいないしね」
「ん? 母さんだったら力づくで御せるだろ? いつもみたいに」
「あ……」
「……そう……カインは私を乱暴者と言いたいのね……しかも、いつもそう思ってるってことね……」
カインのうっかり癖は未だ健在のようで、アインがカインの失言に気づきルージュが青ざめる中、サラのにこやかな笑顔がカインを射抜いていた。
「とりあえず、カイン兄さんは母さんのお仕置きでも受けるとして、ちょっと姉さんと出かけてくるから」
「行ってらっしゃい、ケビン」
青ざめているカインを他所に、ケビンはシーラを連れて自宅を出発した。その後、カインがどんなお仕置きをされたのかはケビンの知る由もないことである。
自宅から出て十数分歩いて行くと街の集団墓地が見えてきた。ケビンはシーラと手を繋いでその地を目指している。
次第に近づく墓地を見てケビンが先祖の墓参りでもするのだろうと思い、シーラは特に不審がることはなくケビンに引かれてついて行く。
やがて1組の墓の前につくと、そこに彫られているのはカロトバウンの名前ではなく、家名を持たない者の名前であった。
「ケビン、ご先祖さまの墓参りじゃないの?」
「違うよ、今日は姉さんをこの墓へ連れてきたかったんだ」
「この前の帝国との戦争で亡くなった人?」
「1人が戦争で亡くなったのは合ってるけど、この前の戦争じゃない。姉さんが生まれる前の戦争だよ。もう1人は病気がちな人で体が弱くてね、長生きできなかったんだ」
ケビンの言っていることはシーラも理解できるが、それと今ここにいることがどう繋がってくるのかは全く理解できなかった。
「この人は父さんの親友の人だよ。戦争で亡くなったんだ。そして隣がその奥さん」
「そう……2人とも若くして亡くなってしまったのね」
「ハワードさんとファラさん。この人たちが姉さんの本当の両親だよ」
「え……」
ケビンから突然告げられた内容に、驚くどころか全く意味不明といった感じでシーラは呆然とする。
「アイン兄さん、カイン兄さん、そして姉さん。3人はこの人たちの子供なんだ」
それからケビンは昔話を始めて、当時戦争でハワードが亡くなった後にファラの体の弱さから子供を育てられないだろうと、親友である自分の父親がカロトバウン家へ周囲の反対を押し切って迎え入れたことや、その後、忘れ形見でお腹の中にシーラが宿っていたことなどをゆっくりと説明していく。
「これが姉さんだけが知らなかった出生の秘密だよ」
「……」
「秘密にしてたからって父さんたちを責めないでね。兄さんたちはそれなりに成長してたから記憶として覚えているだけで、俺も自分で知っただけだから教えてもらったわけじゃないし、そのままずっと教えるつもりもなかったみたいだから」
「本当なの……?」
「事実だよ。みんなを軽蔑する?」
「しない……ここまで私を育ててくれたんだもの。それに気づかないってことは私を実の娘のように扱ってくれていたってことだから。感謝と尊敬しかないわ」
「良かった。真実を知って姉さんがグレたらどうしようかと思ったよ」
「ケビンはこれを伝えるために会いに来てくれたの?」
「いや、ここからが本番」
ケビンはその場で跪くと指輪を取り出して、真剣な表情をシーラへ向ける。
「結婚しよう、シーラ」
「え……」
「姉さんは前に言ったよね? 実の姉弟としてでも俺と結婚したいんだと。あの時には既に血の繋がりがないことは知ってたんだ。俺が知ったのは子供の時だしね」
ケビンのプロポーズから呆然としたままのシーラは、何を答えるでもなくただケビンの言葉をずっと聞き続けていた。
「その時からずっと考えてた。結婚するなら本当の両親の前で告白しようって。だから今日はこの場に姉さんを連れ出したんだよ。ハワードさんとファラさんに娘さんを下さいって言いにね」
少しずつ現実を受け入れ始めたのか、シーラの瞳には雫が溜まり始めていく。
「再度言うよ。シーラ、俺と結婚して欲しい」
「……ぃ……はい! 私を……貰って下さい……」
シーラは瞳からポロポロと雫を流して、愛しいケビンからのプロポーズを受けたのだった。
ケビンは結婚指輪を左手にはめると、他の人と差が出ないように右手にも婚約指輪をはめた。
「愛してるよ、シーラ」
「お姉ちゃんも世界で1番ケビンのことを愛してる」
こうしてケビンはシーラを新しいお嫁さんとして迎え入れるのであった。
「んぅ……ん……」
あまりにも可愛い寝顔のスカーレットへ、ケビンは頬をツンツンしてぷにぷにとした触感を楽しみだしたのだった。
「んー……」
ケビンがツンツンしたからか、スカーレットが目覚めてしまいケビンと目が合う。
「ケビンさまぁ……」
「おはよう、レティ」
スカーレットが起きたことにより、ケビンは朝食を食べるために準備を始めて、スカーレットは自室へと着替えに戻った。
2人で仲良く食堂へ向かうと他の嫁たちも既に起きており、全員揃ったところで食事を始めたのだった。
朝食後、憩いの広場へ場所を移した嫁たちは、ケビンのいない所で第2回嫁会議を開くのである。
「第2回嫁会議を始めたいと思います」
ティナがいきなり始めた第2回嫁会議にアリスが待ったをかける。
「ソフィさんがいませんよ?」
「ソフィさんが提唱したことについてだから、不在でも大丈夫よ」
「議題」
「今日の議題はケビン君の奴隷たちへの対応です」
ティナが伝えた議題内容にとうとうこの時がきたのかと、嫁たちもゴクリと生唾を呑み込む。
一般公開(この場のみ)されている嫁会議の議題を聞いた奴隷たちもじわりじわりと距離を詰めて、より聞きやすい位置へと移動を始める。
「私たちは全員無事に初夜を終えたわ。となると、ケビン君が気兼ねなく他の女性たちを抱けるはずよ」
「議長」
「はい、ニーナ」
その場の雰囲気を楽しんでいるのか、ニーナは挙手をして発言権をティナから与えられる。
「ナナリーの存在」
「……いい意見ね、この城の中で唯一嫁でもなく奴隷でもない存在だわ」
「議長」
「はい、クリス」
ニーナのやったことが面白いと思ったクリスは、普通に喋るのではなく同じように挙手をして発言権を得るのであった。
「ナナリーを観察してみたところ、今はベッドで休んでいるけど1日でも早く元の体型に戻すことを心がけてるわ。つまり、ナナリーは本気よ」
「そうね、ナナリーがケビン君を見る時の顔は恋する乙女よ。あれは確実に惚れているわ」
「議長」
「はい、アリス」
今までの流れからそうしなければいけないと思ってしまったのか、遊んでいる3人とは違ってアリスは真面目にその流れを汲み取るのであった。
「ケビン様のナターシャに対する接し方は、既に父親の域へ達していると思われます。それを眺めるナナリーさんは母親の顔です。3人だけでいれば誰がどう見ても家族であると間違える程でしょう」
「ケビン君は子供に甘いからね。叱る時は叱るけど、悪いことをしてなければとことん好きにさせているものね」
「議長」
「はい、サーシャ」
「結局どうするの? ケビン君の奴隷たちとナナリーへの対応を話し合っているんでしょ?」
「サーシャは遊び心がないわね」
「横道に逸れるくらいなら会議にしなくて普通の世間話で充分でしょ」
「ぐっ……」
「それにそのことはケビン君自身が決めることなんだから、私たちがとやかく言う筋合いはないわよ? 私たちはそれがわかっててお嫁にしてもらったんだから」
「議長」
「はい、レティ」
「私はケビン様が他の女性たちを抱いても問題ないと思います。古来より『英雄色を好む』と言われていますので、むしろ英雄であるケビン様には至極当然のことかと思われます。最終的に私たちの所へ帰ってきてくれたらそれで良いのでは?」
「レティが妻の風格を現しつつあるわね。ソフィさんに考えが似てきているわ」
「結局何のための話し合い?」
そろそろ飽きてきたクリスが、ティナへ議題の本質に迫る言葉を投げかける。
「それは簡単よ。ケビン君が他の女性たちに手を出しても、ソフィさんを見習って温かく見守ろうって話よ」
「議題にする必要性がないよね?」
「ぐっ……」
「ティナのあんぽんたん」
「ちょ、ニーナ!」
こうして、さして意味のなかった第2回嫁会議は閉会するのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
城で嫁たちが会議を開いていることなど露知らず、ケビンが1人でやってきたのは実家でもあるカロトバウン家の本宅である。
リビングにいきなり現れたケビンにサラ以外の者は唖然とする。食後の紅茶と言わんばかりに飲もうとしていたギースを始め、アインやカイン、カインの婚約者で一緒に住んでいるルージュはポカンと口を開けてケビンを見つめている。
「ただいま」
「おかえり、ケビン」
この空気の中でも平常運転でマイペースを貫いているケビンとサラが、なんてことのない感じで挨拶を交わしたのだったが、ひと足早く復帰したカインが怒涛の剣幕でケビンに言葉を投げかける。
「ケビン! いつ帰ってきたんだ!」
「今だけど?」
「いや、そうだがそうじゃねぇだろ!」
全くもってその通りなのだが、ケビンにとってはそこまで慌てるほどのことかと頭をひねるばかりだ。
「母さん、伝えてなかったの?」
「だって、ビックリさせたいじゃない?」
「困った母さんだね」
「ふふふっ」
ケビンが帰ってきたことを家族へ秘密にしていたサラの思惑は成功したようで、まんまと家族がビックリすることになるがイタズラを仕掛けた相手がサラなので誰も文句は言えないのである。
「あ、カイン兄さん、婚約おめでとう。ルージュさん、シスコン卒業おめでとう」
「おお、ルージュさんと過ごせて幸せだぞ。これもケビンが体を元に戻してくれたお陰だ。ありがとな。また剣を握ることができて兄ちゃんは嬉しいぞ。何かあったらすぐに言ってくれ、兄ちゃんは一生かけて恩返しするからな」
「それなら部位欠損の回復を口外しないだけでいいよ。あの魔法は神聖皇国がひた隠しにしている魔法だからね」
「で、放蕩息子はいつ戻ってきたんだ?」
「え……その言い方は酷くない? ねぇ、母さん?」
「そうね、私の可愛いケビンに放蕩息子だなんて……あなた、ちょっと後でお話しましょうね?」
「え? 今のは軽い挨拶で……」
「お・は・な・し」
「あ、はい」
ギースのちょっとした父親から息子へ向けての『お・も・て・な・し』が、サラからギースへ向けての『お・は・な・し』となってしまい、後のことを考えたギースはしょんぼりとするのである。
「まぁ、こっちに戻ってきたのは10日くらい前だよ」
「ケビン、その間は何をしてたんだい?」
ギースがしょんぼりしてしまって使えなくなったことで、アインが代わりに聞いておきたいことの質問をするのだった。
「ああ、それで言わなきゃいけないんだけど、俺、皇帝になったから」
「さすが私のケビンね、侯爵の次は皇帝なのね!」
サラ以外の者が絶句して黙り込む中、サラだけが唯一ケビンを褒めているとケビンが皇帝になった経緯を語りだした。
「簡単に言うと2国で爵位を持っているから領地経営の問題が浮上してね、どうせならと皇帝不在の土地を与えてしまえってライル陛下とエムリス陛下の間で決まったみたいだよ」
「他国はどう反応しているんだい? さすがに無反応ってことはないだろ?」
「あぁ、それは口出しするな的なことを手紙で送ったらしいよ。戦争になったにも関わらず支援申請しても帝国と離れてるからって、我関せずでのらりくらり支援準備をしていたらしい。まぁ、自国さえ良ければいいというのはどこの国でも同じだろうから」
「確かに他国から援助があればもっと被害を抑えられただろうしね。それにしてもケビンがどんどん出世していくね」
「あっ、そうだケビン! 兄ちゃんも出世したぞ!」
ケビンの出世話で思い出したのか、カインが嬉しそうにケビンへ報告する。
「殿を務めた時の報奨?」
「あぁ、辺境伯閣下が陛下に進言してくれてな、名誉男爵で収まりそうだった話が子爵になったんだ」
「伯爵でもいいと思うんだけどね。全滅予定の辺境伯を救ったんだし多大な貢献だと思うけど」
「伯爵なら父さんがなったぞ。よくわからんが告知されたあとの決断の早さとかで」
「ん? 決断の早さ?」
ケビンは何のことだろうと首を傾げるが、それに答えたのはアインであった。
「すぐに戦場へカインとシーラを送り込んで、その後は自領の兵士も送ったからね。ウカドホツィ様もカインたちが来なければ死んでいたと言うくらいだし、実際カインたちがいなければ戦線はもっと早くに瓦解して酷い状況になっていたと思う」
「まぁ、父さんが黙ってたら辺境伯は死んでたわけだしね。間接的に救ったってことでの陞爵かな」
ケビンが納得していると、アインが他に何か近況報告がないのか尋ねてみたところ、ケビンは伝えておくべきことを話していくのだった。
「あとは婚約者たちと結婚した。戴冠式を今度行うからその後に引き続き結婚式を挙げる予定だよ。みんな招待するから来てね」
「あらあら、まあまあ。ソフィさんたちとの結婚式ね」
「ソフィ……? 聞いたことのない名前だね。誰なんだい?」
「んー……どうしよう……説明できるけど本人の許可がいるし……とりあえず、ティナたちと出会う前からの知り合いで第1夫人だよ。日頃は仕事が忙しいからアイン兄さんたちはあまり会うこともないだろうね」
「まぁ、結婚式の時にでもご挨拶させてもらうよ」
「是非そうして。で、父さんと母さんに聞きたいんだけど」
「何かしら?」
未だにしょんぼりから復帰できていないギースに代わって、サラがケビンの対応をするのだった。
「今から姉さんの部屋に行くけど、ファラさんのこと伝えていい?」
「その件について私では答えることが難しいわね。あなた、どうするの?」
サラに呼びかけられて一時的に復帰したギースが、ケビンへ真剣な表情を向けて口を開いた。
「ケビン、それを伝えるということは覚悟があるんだろうな?」
「なければ聞かないよ」
「……わかった。シーラのことはお前に全て任せる。大事な親友の忘れ形見だ。助けてやってくれ」
「わかった。じゃあ、姉さんを連れ出すから」
「頼んだ」
この場で1人、何のことだかサッパリわからないルージュは、珍しく場の空気を読んで話についていくための追及はしなかったのだった。
それからケビンはシーラの部屋へと向かうのだが、既に気配探知でベッドにいるのはわかっている。
もちろん相手はあのシーラである。ケビンが近づいてくることなど百も承知だろう。
「姉さん、入るよ」
ケビンが軽いノックとともに部屋へ入ると、ベッドの上で布団をかぶり隠れているシーラの姿があった。もっこりしているので隠れきれてないが。
「弟が会いに来たのに顔も見せないの?」
「……合わせる顔がないの」
やれやれと思いつつ、ケビンは強硬策に出て布団を【無限収納】の中に仕舞い込むと、当然シーラは丸くなった状態を晒すことになった。
「……」
ケビンはベッドへ腰掛けてシーラへと声をかける。
「顔を見せて」
ケビンが声をかけても黙ったままのシーラの手を掴んで、無理やり動かして顔を見ると涙をポロポロとこぼしていた。
「ただいま、姉さん」
「……ごめんなざい、ごめんなざい……」
「何か謝るようなことでもしたの?」
「わだじのぜいで……ゲビンが、ゲビンが……」
「あれは俺が望んでしたことだ。姉さんのせいじゃない」
「でも……でも……」
「ほら、泣き止んで」
お礼を言うつもりだったシーラはいざケビンを前にすると、お礼よりも悔恨から謝罪の言葉が出てしまい、ケビンは泣き止まないシーラを慰めながら今後の予定を伝えるのだった。
「今日は姉さんを部屋から連れ出しに来た。ずっと部屋暮らししてるだろ? そのうち不健康で病気になるよ」
「……いいの。自分への罰だから、ケビンと一緒にいちゃいけないの」
後ろ向きなことばかり答えるシーラに、ケビンはここまで気にしていたのかとシーラの変わり様にどうしたもんかと悩んでしまう。
「はぁぁ……いつものケビン大好きって言ってた姉さんはどこへ行ったの?」
「それもやめる……もう迷惑かけない……」
「迷惑かけてる自覚があったんだ……」
「う……」
「どのみち連れ出すけど」
「いいの、私はケビンと一緒にいられないの」
「何をそんな頑なになってんの?」
「だって……だって……」
せっかく泣き止んでいたシーラが再び泣き出してしまい、ケビンはまた慰めなおすことになるのだった。
「で、頑なに拒む理由は?」
「……お姉ちゃん、穢されたから……もう綺麗じゃないから……」
ポロポロと涙を流しながら答えたシーラの言葉に、ケビンは『あのことか?』と推察すると、当時カレンにも「女性にとっては大切なことです」と言われていたこともあり、その推察で結論づけるのである。
「姉さんは穢されてないし、綺麗なままだから心配しなくていい」
「違う! 私は穢れてるの」
いつまでたっても水掛け論になりそうだったケビンは、強硬策を取ってシーラをベッドへ押し倒すとそのまま唇を奪った。
「ッ!」
いきなりのことで理解が追いつかないシーラは、驚きで目を見開くと今起きている光景に困惑するのである。
ケビンはそのままシーラの服を【無限収納】へ仕舞い込むと、その晒された肌を隅々まで観察する。
「え……え……?」
当の本人であるシーラは、キスされた上に服までどこかに消えてしまい、下着姿のままでいる状況に混乱が後を絶たない。
「俺が言った通り綺麗じゃないか」
「え……?」
「姉さんはどこも穢されていない。綺麗なままだ」
「ケ……ケビン……お姉ちゃんにキスしたの?」
次から次へと混乱することが起きているシーラは、1つ1つ解決しようと試みてケビンへ質問するのであった。
「したよ。わからなかったの? じゃあ、もう1回」
「んっ!」
今度はシーラにもわかるように、ケビンは長めのキスをしてから唇を離した。
「わかった?」
「……うん……服は?」
「姉さんの体が綺麗なのを確認するために取った」
「ダ……ダメだよ? いきなり服を取ったら女の子はビックリするんだよ?」
「姉さんがわからず屋なのが悪い。で、これでもまだ俺と一緒にいるのは嫌なの?」
「こんな私でもいいの? ケビンは嫌じゃない?」
「嫌だったらキスしない。それよりも何でそんなにしおらしいの?」
「だって……ケビンから色々されたから……お姉ちゃん、混乱しちゃって……」
「そういうことか。今日は出かけるよ、行くよね?」
「どこへ行くの?」
「今は秘密」
どこへ行くかは教えなかったケビンに対して、シーラはモジモジとしながら頬を染めて服の返還を求めるのだった。
「……あ、あの、ケビン? いつまでお姉ちゃんを押さえつけてるの? 服も返して欲しいな」
「ん? ああ、姉さんの下着姿ってまじまじと見たことないから、今のうちに見ておこうかと」
「お姉ちゃん、恥ずかしいんだよ?」
「昔に比べると胸も大きくなったよね。一時期はツルペタのまま大人になるのかと予想してたけど。あと、髪の毛が短くなってしまったけど似合ってて可愛いよ。その髪の長さの姉さんは見たことがないから、ちょっとムラムラするね」
敵兵から雑に切られて不揃いだった長い髪は、今や肩にかかるくらいの長さまで短くなっており、綺麗に整えられていることからカレンあたりが散髪したのだろうとケビンは推測するのであった。
「うぅ……お姉ちゃん、恥ずかしい……」
「姉さんって攻めるのは得意でも攻められるのは苦手なの? なんか思ってたイメージと全然違う……」
ケビンがあまりにも態度の違うシーラを見て、全然いつものシーラではないと感じてしまうのだったが、それよりもシーラは服を返してもらうことに必死であった。
「今度また見てもいいからとりあえず服を返そ、ね? お願いだから。ケビンはいい子でしょ?」
「うん、新鮮だ……姉さんっていじめがいがある。そそるよ、その姿」
「うぅ……お願いよ、ケビン。お姉ちゃんをいじめないで」
「ごめん、姉さん。ちょっと発散させて」
いつもは見ることのないシーラのギャップにケビンは萌えてしまい、再びその唇を奪った。
「ん、ちょ……んんっ、ケビン……ぬちゃ(えっ、舌が入ってきた!?)……くちゅ、くちゅ……ふぁ……にちゅ、ねちゃ……」
ケビンは自然とその手が胸へと伸びていき、下着の上からシーラの胸を堪能し始める。
「ひゃんっ!」
(うそっ!? ケビンにおっぱい触られてる!?)
「んあっ……ケビン、ダメだよ……あんっ、んちゅ、はぁ……まだ朝なんだよ? ……くちゅ、れろぉ、れろっ……」
朝でなければいいのかと、ふと疑問に思ってしまうケビンだったが、それよりも成長したシーラの体を堪能する方が優先されてしまい、疑問は頭の中から追い出されてしまった。
下着越しの感触がもどかしくなったケビンは、ブラの中に手を突っ込むと直接触るために外へぽろりと出してしまい、柔らかい感触に満足するのである。
「んんっ!」
(うそうそうそっ!? おっぱい外に出されちゃった!?)
「ダメぇ……あんっ、んちゅう……れろっ、んっ、じゅる……」
やがてケビンはピンっと立ってしまった先端を弄り始めるとシーラの嬌声が激しくなり、キスをしながらだと苦しいだろうと思い唇を離して、次のターゲットに狙いを定めたら口に含んでちゅうちゅうと吸い始めてしまう。
「ッ!」
(ああっ、おっぱい吸われちゃってる……ケビン、赤ちゃんみたい……)
既にケビンは拘束を解いているのでシーラが逃げようと思えば逃げれるのだが、何故か逃げることはせずに逆に胸に埋もれているケビンの頭を抱えてしまう。
「んあっ、あっ、あっ……ケビン、ケビン……あんっ、ダメ、なんかきちゃう……んんっ、はぁ……くる、くる……あっ、あっ、んんっ――!」
絶頂を迎えそうなシーラに合わせてケビンが先端を甘噛みすると、ビクンっと体を仰け反らせてシーラが達してしまう。
やがて落ち着いたシーラへケビンが声をかける。
「これでもう姉さんは俺のものだ。誰にも渡さないし、離さない」
「ケビン……その前に服を返そう? お姉ちゃん恥ずかしすぎて死んじゃうよぉ」
顔を真っ赤に染め上げるシーラを見て、ケビンは再びムラムラとしてしまうのだが、それでは今日の予定が進まなくなるので煩悩を振り払って服を返すのであった。
そして下着を整えて服を着たシーラはケビンに聞いておきたいことを伝えるのだった。
「ケビン……お姉ちゃんね、初めてだったんだよ? だからこれだけは聞かせて。お姉ちゃんのこと好き?」
「愚問だね、大好きに決まってる」
「ふふっ、嬉しい。お姉ちゃんを皇帝から救ってくれてありがとう。ケビンが穢れてないって言ってくれてお姉ちゃん嬉しかったよ」
ケビンの答えに満足したシーラは晴れ晴れとした笑顔を見せて、出かける準備が整ったところでリビングへと2人で向かった。
「みんな、心配かけてごめんなさい」
リビングに入ったシーラは、家族へ心配をかけてしまったことを謝罪したが、家族からしたら助け合うのは当たり前で誰も気にしてはいなかった。
「やっぱりシーラにはケビンが特効薬だよな」
「ケビン以上にシーラを御せる人はいないしね」
「ん? 母さんだったら力づくで御せるだろ? いつもみたいに」
「あ……」
「……そう……カインは私を乱暴者と言いたいのね……しかも、いつもそう思ってるってことね……」
カインのうっかり癖は未だ健在のようで、アインがカインの失言に気づきルージュが青ざめる中、サラのにこやかな笑顔がカインを射抜いていた。
「とりあえず、カイン兄さんは母さんのお仕置きでも受けるとして、ちょっと姉さんと出かけてくるから」
「行ってらっしゃい、ケビン」
青ざめているカインを他所に、ケビンはシーラを連れて自宅を出発した。その後、カインがどんなお仕置きをされたのかはケビンの知る由もないことである。
自宅から出て十数分歩いて行くと街の集団墓地が見えてきた。ケビンはシーラと手を繋いでその地を目指している。
次第に近づく墓地を見てケビンが先祖の墓参りでもするのだろうと思い、シーラは特に不審がることはなくケビンに引かれてついて行く。
やがて1組の墓の前につくと、そこに彫られているのはカロトバウンの名前ではなく、家名を持たない者の名前であった。
「ケビン、ご先祖さまの墓参りじゃないの?」
「違うよ、今日は姉さんをこの墓へ連れてきたかったんだ」
「この前の帝国との戦争で亡くなった人?」
「1人が戦争で亡くなったのは合ってるけど、この前の戦争じゃない。姉さんが生まれる前の戦争だよ。もう1人は病気がちな人で体が弱くてね、長生きできなかったんだ」
ケビンの言っていることはシーラも理解できるが、それと今ここにいることがどう繋がってくるのかは全く理解できなかった。
「この人は父さんの親友の人だよ。戦争で亡くなったんだ。そして隣がその奥さん」
「そう……2人とも若くして亡くなってしまったのね」
「ハワードさんとファラさん。この人たちが姉さんの本当の両親だよ」
「え……」
ケビンから突然告げられた内容に、驚くどころか全く意味不明といった感じでシーラは呆然とする。
「アイン兄さん、カイン兄さん、そして姉さん。3人はこの人たちの子供なんだ」
それからケビンは昔話を始めて、当時戦争でハワードが亡くなった後にファラの体の弱さから子供を育てられないだろうと、親友である自分の父親がカロトバウン家へ周囲の反対を押し切って迎え入れたことや、その後、忘れ形見でお腹の中にシーラが宿っていたことなどをゆっくりと説明していく。
「これが姉さんだけが知らなかった出生の秘密だよ」
「……」
「秘密にしてたからって父さんたちを責めないでね。兄さんたちはそれなりに成長してたから記憶として覚えているだけで、俺も自分で知っただけだから教えてもらったわけじゃないし、そのままずっと教えるつもりもなかったみたいだから」
「本当なの……?」
「事実だよ。みんなを軽蔑する?」
「しない……ここまで私を育ててくれたんだもの。それに気づかないってことは私を実の娘のように扱ってくれていたってことだから。感謝と尊敬しかないわ」
「良かった。真実を知って姉さんがグレたらどうしようかと思ったよ」
「ケビンはこれを伝えるために会いに来てくれたの?」
「いや、ここからが本番」
ケビンはその場で跪くと指輪を取り出して、真剣な表情をシーラへ向ける。
「結婚しよう、シーラ」
「え……」
「姉さんは前に言ったよね? 実の姉弟としてでも俺と結婚したいんだと。あの時には既に血の繋がりがないことは知ってたんだ。俺が知ったのは子供の時だしね」
ケビンのプロポーズから呆然としたままのシーラは、何を答えるでもなくただケビンの言葉をずっと聞き続けていた。
「その時からずっと考えてた。結婚するなら本当の両親の前で告白しようって。だから今日はこの場に姉さんを連れ出したんだよ。ハワードさんとファラさんに娘さんを下さいって言いにね」
少しずつ現実を受け入れ始めたのか、シーラの瞳には雫が溜まり始めていく。
「再度言うよ。シーラ、俺と結婚して欲しい」
「……ぃ……はい! 私を……貰って下さい……」
シーラは瞳からポロポロと雫を流して、愛しいケビンからのプロポーズを受けたのだった。
ケビンは結婚指輪を左手にはめると、他の人と差が出ないように右手にも婚約指輪をはめた。
「愛してるよ、シーラ」
「お姉ちゃんも世界で1番ケビンのことを愛してる」
こうしてケビンはシーラを新しいお嫁さんとして迎え入れるのであった。
応援ありがとうございます!
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