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第13章 出会いと別れ
第421話 SS ネア『アドリブなんて無理……』
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私が村人Kに大敗を喫したあと、その場にいた団長からの指示で私たちは騎士訓練に臨むことになる。
まだ私たちには騎士鎧が配布されていないので、各自実技試験の時の服装で参加するように言われた。私は当然のこと冒険者服装での参加となる。
その日は走り込みやペアを組んでの打ち込みなど、基本的な動きからの教練となった。
中には初心者もいるようでぎこちない動きとなっているけど、初心者の人には団長がついて指導している。
『初心者でも可』とは記載されていたけど、まさか本当に初心者を入団させているとは思わなかった。
他にも人族以外の人たちもいるし、種族が不問だったから当然と言えば当然かな。このような騎士団なら差別意識のない人たちが集められるのも納得だ。
それにここへ移り住んで気づいたけど男性の騎士が1人もいない。そのことをニッキー先輩へ聞いてみたら、この帝都には女性だけの女性騎士団しかないそうだ。
私の入団した騎士団は普通の騎士団とは違う変わった騎士団だけど、それでも何とかやっていけそうではある。むしろ男性騎士がいないからセクハラされないで済む分、他の騎士団にいるよりも最高の職場なのかもしれない。
このような日々が続いたある日の午後、その日の訓練が終了したら団長が全員を集めて示達事項を伝えていく。
「明日は女性騎士団入団式兼発足式がありますわ。既に騎士として雇われてはいるもののちゃんとしたケジメをつけなくてはいけませんの。よって入団式と私たちの女性騎士団の発足式を行う内容となりますわ」
あぁー確かに。合格して国から雇われてはいるけど、帝国の騎士って感覚はなかったからなぁ。未だに冒険者服装なのがそういう気持ちにさせてしまうんだろうか。
「それに伴い、今から念願の騎士装備一式を皆さんに配布致しますわ」
ちょうど服装について考えていたから、私は団長の発言でびっくりしてしまう。
「1人ずつ渡しますので呼ばれたら受け取りに来てもらいますわ」
そう告げた団長が次々と木箱を出していく。
やっぱり団長のあのカワイイポーチは、ニッキー先輩と同じでマジックポーチだったんだ。いったいどこで買ったんだろ? 私もお金が貯まったら欲しい。
それから1人ずつ騎士装備を渡していく団長が、受け取ったあとは装備をして確認をとるように指示していく。
そして私の番となり団長から名前が書かれている木箱を受け取ると、元の位置に戻って開けてみる。
中を見ると綺麗な細工の施されている白銀の装備一式が収められていた。そして私は不備なところがないか確認するために、騎士装備を装着していく。
あれ……何かコレ……体にピッタリなんだけど……
私はあまりにも騎士装備が体に馴染んでピッタリなことに困惑していると、私よりも先に受け取った人たちもそう思ったらしく団長へ質問を投げかけていた。
「団長、何故この装備は体にピッタリなんですか?」
「ピッタリなら問題はないのではなくて?」
「いえ、何かこう……オーダーメイド品みたいな感じで、採寸されて作られたような服と同じ着心地というか、フィット感というか……この装備を作るにあたって採寸なんてしていないのですが……」
「ああ、そういうことですのね。この装備は特別な鍛冶師が作られた物となりますわ。その方は姿を見ればサイズが手に取るようにわかりますので、その装備品は貴女たちそれぞれのために作った、世界でただ1つのオーダーメイド品となりますわ」
「えっ!? いつの間に鍛冶師の方がこられたのですか!?」
いや、突っ込むところはそこじゃないでしょ! 姿を見られたらサイズがバレるのよ。しかも“手に取るように”よ!
まぁ、私は冒険者として活動していたから身は引き締まっているけど、普通の生活を送ってた人たちは……ねぇ……
あっ、あの人、自分のお腹を摘んでる……油断してたんだろうな。あわよくばこの訓練で絞れるだろうとか考えていたんだろうな。今から鎧を装備するのかな? あぁぁ……ピッタリ合ってしまったんだね、ガックリ項垂れてるよ……
あっ、あっちの人は自分の胸を揉んでる。うーん……今更揉んでも大きくはならないと思うけど……涙ぐましいね。あぁぁ……あの人も鎧がピッタリだったのか……鎧の胸部を触って平らなことにガックリ項垂れてるよ……
それから訓練場の彼方此方では、自分の体に自信のなかったものが鎧を装備したら、ガックリ項垂れては涙する姿が散見されていく。
「不備の合った方はいませんわね? あるはずもないのですけれど」
「不備がないほどその鍛冶師の方は優れた技術者なのですか?」
「今装着している鎧が何よりもの証明ですわ。ああ、ちなみに鍛冶師からの伝言で『体のサイズが変わったらその都度調整するから、その時は鎧を預かるね』とのことですわ」
団長からのその発言に対して涙していた女性たちは、顔を青ざめさせていくのだった。
うわぁ……その都度調整するからとか言われたら、迂闊に合わなくなったとか言えないよ。ってゆーか、見られたらサイズがバレるから黙っててもわかっちゃうのかな?
「それと殿方とお付き合いされていらっしゃる方は『胸が大きくなったらすぐ申告するように』とのことで、その理由が『胸を圧迫していたら息苦しくなって、訓練に危険等が生じる可能性が出てくる』とのことですわ」
あぁぁ……大きい人たちが自分の胸を揉んでいる……圧迫感でも確かめているのかな? 何か満足気になっているから問題ないみたいだ。
でも、その行動で一部の女性が凄い睨みつけてるよ。圧迫されるほどないのかな? うん、鎧の胸部が絶壁だね。
うーん……女の嫉妬って怖いね……私は普通サイズで良かったよ。無駄に敵を作らなくて済むし……
その後は団長たちの指示の元で、式の大まかな流れと練習を行ってこの日は解散となった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
女性騎士団入団式兼発足式がある今日は式場作りのため朝の訓練は程々で切り上げられて、それからは兵舎での待機時間だった。
それから午後になると私たち新人は女性騎士団入団式兼発足式のため、訓練場で整列してこの国の皇帝である陛下が到着するのを待っていた。
やがて開会の言葉が進行係の方から宣言されて、陛下が登壇するので私たちは揃って臣下の礼をとり地面とにらめっこをする。
あれ……おかしい……本来ならこのタイミングで陛下から「面をあげよ」って聞こえてくるはずなのに。練習した時はそうだったよね?
それから更に少ししたら陛下のお言葉が聞こえてきた。
「お、面をあげぽよ!」
ん!? あげぽよ? 陛下……もしかして噛んだ? 凄い静かになっているから誰も面をあげてないよね?
「あ……」
あ……陛下の声だ。やってしまったって時の声だよね。やっぱり噛んだんだ。雲の上の人でも噛むことってあるんだ。なんだか親近感が湧くな。
でも、なんだか親近感が湧いてもこの静寂は辛いものがある。陛下はもっと辛いだろうな。噛んだ本人だし……
そしてしばらくしたら気を取り直したのか、陛下のお言葉が再び聞こえてきた。
「面をあげよ」
そのお言葉で私は面をあげたのだが、目に飛び込んできた光景に混乱してしまう。
え……えっ!? 村人Kじゃん! 凄い豪華な服で着飾ってるけど間違いなく村人Kじゃん!
「静まれ、不敬であるぞ!」
周りがザワついていたから副団長の叱責が響き渡った。
いや、だって目の前にいる陛下が村人Kなんだよ? みんなもそりゃ驚くよ。ザワついたのは確かに不敬だけどさ。
「ミンディ、大目に見てやるが良い。此度は女性騎士団入団式兼発足式である。多少の羽目くらい外そうと気にするでない」
「陛下の御心のままに」
ヤバい……あの軽い感じの村人Kの喋り方が、生真面目な上位者っぽい喋りになってる。副団長も陛下って言ってるし、マジで本物なの……?
「新人諸君らがこの度我が帝国に属してくれたことは、大いに喜ばしいことである。よって諸君らを騎士へと任じ、今後は騎士として我が国へ貢献することを期待する。これにより、女性騎士のみの編成とした女性騎士団の設立をここに宣言する。騎士団長ターニャ」
「はっ!」
あ、あれぇ? 練習だと壇上に呼ばれて剣で肩をちょんってされるんじゃなかったかな? 何だか発足まで一気に進んだんだけど……しかも、団長は普通に返事してるし……
「規律を維持し、練度を高め、団の維持に努めよ」
「謹んで承ります」
れ、練習と違うし! 練習にはそういうのなかったよね!? 団長、謹んでる場合じゃないよ! 練習と違うんだよ!
「副騎士団長ミンディ」
「はっ!」
「騎士団長を補佐し、第2班以下、班長を指導し騎士の育成に努めよ」
「謹んで承ります」
ちょおぉぉぉぉっ! 副団長まで!? えっ、この流れでいくの!? アドリブ? アドリブをアドリブで対処するの!? ありきたりな私はアドリブに弱いんですけどぉぉぉぉっ!
「第2班から第6班班長」
「「「「「はい!」」」」」
「規律を維持し、練度を高め、班の維持に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
班長たちキター! しかも、班長たちアドリブで対処できてるし! 御意ってる、御意ってるよ!
「第2班から第6班副班長」
「「「「「はい!」」」」」
「班長を補佐し、班員の育成に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
うわぁー副班長まで終わっちゃった! もしかして次? 次は班員が呼ばれちゃうの!? 「謹んで承ります」から「御意!」まで使われたら、次は何て答えればいいの!? だ、誰か教えてぇぇぇぇっ!
「騎士諸君らに告ぐ。騎士たることに誇りを持ち、日々己を高め、民草を案じ、滅私奉公に努めよ。以上を持って、女性騎士団入団式兼発足式の閉会を宣言する」
よ……良かった……陛下が閉会を宣言した……アドリブが回ってこなくて助かった。
はぁぁ……何だか練習とは全然違ったけど、もの凄く早く終わってしまった。あとは、陛下が退場するのを待つだけだ。
……そう思っていた時期が私にもありました。
「第2班ネア・ミリオン」
「は、はいっ!」
何でぇぇぇぇっ! 何で個人攻撃してくるの!? 私、アドリブに弱いって言ったよね? 言ったよね!? あっ、陛下には言ってないや……どうしよう……「謹んで承ります」も「御意!」も使えない……
「先般の答えは皇帝だ。次回のクイズを楽しみにしておくがよい」
「ひゃいっ!」
ノオォォォォッ! 噛んだっ、よりにもよって噛んだっ! 「はい」すらまともに言えずに噛んで答えてしまった。アドリブの返事なんて考えなければ良かった……
……いや、待って……ある意味これはアドリブかな? 「ひゃいっ!」なんて誰も言わないよね。団長たちも「不敬だ」って言わないし、このアドリブは成功……?
それよりもクイズの答えが“皇帝”って……皇帝なんて選択肢はなかったし! 村人Kで正解にしてよ!
あっ、陛下がそそくさ帰ってる。やっぱり陛下だから仕事とかが忙しいのかな? ……そうか、だから式を短縮させて早く終わらせたんだ。山積みな仕事がいっぱいあるんだね。
そして私たちがそのままの体勢でいると、団長たちが立ち上がり振り向いた。
「えっと……みんなお疲れさま。ちょっと練習と違ったけどみんなちゃんとやれたと私は思うよ。みんなが騎士団の一員になってくれて良かった。今日はこのまま解散にするから、この後の時間はみんな好きに過ごしてね。また明日から頑張ろうね」
「「「「「はい!」」」」」
「では、解散!」
それから私は妙な脱力感とともに部屋へと戻るのだった。今日は何だかぐっすり眠れそうな気がする。
まだ私たちには騎士鎧が配布されていないので、各自実技試験の時の服装で参加するように言われた。私は当然のこと冒険者服装での参加となる。
その日は走り込みやペアを組んでの打ち込みなど、基本的な動きからの教練となった。
中には初心者もいるようでぎこちない動きとなっているけど、初心者の人には団長がついて指導している。
『初心者でも可』とは記載されていたけど、まさか本当に初心者を入団させているとは思わなかった。
他にも人族以外の人たちもいるし、種族が不問だったから当然と言えば当然かな。このような騎士団なら差別意識のない人たちが集められるのも納得だ。
それにここへ移り住んで気づいたけど男性の騎士が1人もいない。そのことをニッキー先輩へ聞いてみたら、この帝都には女性だけの女性騎士団しかないそうだ。
私の入団した騎士団は普通の騎士団とは違う変わった騎士団だけど、それでも何とかやっていけそうではある。むしろ男性騎士がいないからセクハラされないで済む分、他の騎士団にいるよりも最高の職場なのかもしれない。
このような日々が続いたある日の午後、その日の訓練が終了したら団長が全員を集めて示達事項を伝えていく。
「明日は女性騎士団入団式兼発足式がありますわ。既に騎士として雇われてはいるもののちゃんとしたケジメをつけなくてはいけませんの。よって入団式と私たちの女性騎士団の発足式を行う内容となりますわ」
あぁー確かに。合格して国から雇われてはいるけど、帝国の騎士って感覚はなかったからなぁ。未だに冒険者服装なのがそういう気持ちにさせてしまうんだろうか。
「それに伴い、今から念願の騎士装備一式を皆さんに配布致しますわ」
ちょうど服装について考えていたから、私は団長の発言でびっくりしてしまう。
「1人ずつ渡しますので呼ばれたら受け取りに来てもらいますわ」
そう告げた団長が次々と木箱を出していく。
やっぱり団長のあのカワイイポーチは、ニッキー先輩と同じでマジックポーチだったんだ。いったいどこで買ったんだろ? 私もお金が貯まったら欲しい。
それから1人ずつ騎士装備を渡していく団長が、受け取ったあとは装備をして確認をとるように指示していく。
そして私の番となり団長から名前が書かれている木箱を受け取ると、元の位置に戻って開けてみる。
中を見ると綺麗な細工の施されている白銀の装備一式が収められていた。そして私は不備なところがないか確認するために、騎士装備を装着していく。
あれ……何かコレ……体にピッタリなんだけど……
私はあまりにも騎士装備が体に馴染んでピッタリなことに困惑していると、私よりも先に受け取った人たちもそう思ったらしく団長へ質問を投げかけていた。
「団長、何故この装備は体にピッタリなんですか?」
「ピッタリなら問題はないのではなくて?」
「いえ、何かこう……オーダーメイド品みたいな感じで、採寸されて作られたような服と同じ着心地というか、フィット感というか……この装備を作るにあたって採寸なんてしていないのですが……」
「ああ、そういうことですのね。この装備は特別な鍛冶師が作られた物となりますわ。その方は姿を見ればサイズが手に取るようにわかりますので、その装備品は貴女たちそれぞれのために作った、世界でただ1つのオーダーメイド品となりますわ」
「えっ!? いつの間に鍛冶師の方がこられたのですか!?」
いや、突っ込むところはそこじゃないでしょ! 姿を見られたらサイズがバレるのよ。しかも“手に取るように”よ!
まぁ、私は冒険者として活動していたから身は引き締まっているけど、普通の生活を送ってた人たちは……ねぇ……
あっ、あの人、自分のお腹を摘んでる……油断してたんだろうな。あわよくばこの訓練で絞れるだろうとか考えていたんだろうな。今から鎧を装備するのかな? あぁぁ……ピッタリ合ってしまったんだね、ガックリ項垂れてるよ……
あっ、あっちの人は自分の胸を揉んでる。うーん……今更揉んでも大きくはならないと思うけど……涙ぐましいね。あぁぁ……あの人も鎧がピッタリだったのか……鎧の胸部を触って平らなことにガックリ項垂れてるよ……
それから訓練場の彼方此方では、自分の体に自信のなかったものが鎧を装備したら、ガックリ項垂れては涙する姿が散見されていく。
「不備の合った方はいませんわね? あるはずもないのですけれど」
「不備がないほどその鍛冶師の方は優れた技術者なのですか?」
「今装着している鎧が何よりもの証明ですわ。ああ、ちなみに鍛冶師からの伝言で『体のサイズが変わったらその都度調整するから、その時は鎧を預かるね』とのことですわ」
団長からのその発言に対して涙していた女性たちは、顔を青ざめさせていくのだった。
うわぁ……その都度調整するからとか言われたら、迂闊に合わなくなったとか言えないよ。ってゆーか、見られたらサイズがバレるから黙っててもわかっちゃうのかな?
「それと殿方とお付き合いされていらっしゃる方は『胸が大きくなったらすぐ申告するように』とのことで、その理由が『胸を圧迫していたら息苦しくなって、訓練に危険等が生じる可能性が出てくる』とのことですわ」
あぁぁ……大きい人たちが自分の胸を揉んでいる……圧迫感でも確かめているのかな? 何か満足気になっているから問題ないみたいだ。
でも、その行動で一部の女性が凄い睨みつけてるよ。圧迫されるほどないのかな? うん、鎧の胸部が絶壁だね。
うーん……女の嫉妬って怖いね……私は普通サイズで良かったよ。無駄に敵を作らなくて済むし……
その後は団長たちの指示の元で、式の大まかな流れと練習を行ってこの日は解散となった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
女性騎士団入団式兼発足式がある今日は式場作りのため朝の訓練は程々で切り上げられて、それからは兵舎での待機時間だった。
それから午後になると私たち新人は女性騎士団入団式兼発足式のため、訓練場で整列してこの国の皇帝である陛下が到着するのを待っていた。
やがて開会の言葉が進行係の方から宣言されて、陛下が登壇するので私たちは揃って臣下の礼をとり地面とにらめっこをする。
あれ……おかしい……本来ならこのタイミングで陛下から「面をあげよ」って聞こえてくるはずなのに。練習した時はそうだったよね?
それから更に少ししたら陛下のお言葉が聞こえてきた。
「お、面をあげぽよ!」
ん!? あげぽよ? 陛下……もしかして噛んだ? 凄い静かになっているから誰も面をあげてないよね?
「あ……」
あ……陛下の声だ。やってしまったって時の声だよね。やっぱり噛んだんだ。雲の上の人でも噛むことってあるんだ。なんだか親近感が湧くな。
でも、なんだか親近感が湧いてもこの静寂は辛いものがある。陛下はもっと辛いだろうな。噛んだ本人だし……
そしてしばらくしたら気を取り直したのか、陛下のお言葉が再び聞こえてきた。
「面をあげよ」
そのお言葉で私は面をあげたのだが、目に飛び込んできた光景に混乱してしまう。
え……えっ!? 村人Kじゃん! 凄い豪華な服で着飾ってるけど間違いなく村人Kじゃん!
「静まれ、不敬であるぞ!」
周りがザワついていたから副団長の叱責が響き渡った。
いや、だって目の前にいる陛下が村人Kなんだよ? みんなもそりゃ驚くよ。ザワついたのは確かに不敬だけどさ。
「ミンディ、大目に見てやるが良い。此度は女性騎士団入団式兼発足式である。多少の羽目くらい外そうと気にするでない」
「陛下の御心のままに」
ヤバい……あの軽い感じの村人Kの喋り方が、生真面目な上位者っぽい喋りになってる。副団長も陛下って言ってるし、マジで本物なの……?
「新人諸君らがこの度我が帝国に属してくれたことは、大いに喜ばしいことである。よって諸君らを騎士へと任じ、今後は騎士として我が国へ貢献することを期待する。これにより、女性騎士のみの編成とした女性騎士団の設立をここに宣言する。騎士団長ターニャ」
「はっ!」
あ、あれぇ? 練習だと壇上に呼ばれて剣で肩をちょんってされるんじゃなかったかな? 何だか発足まで一気に進んだんだけど……しかも、団長は普通に返事してるし……
「規律を維持し、練度を高め、団の維持に努めよ」
「謹んで承ります」
れ、練習と違うし! 練習にはそういうのなかったよね!? 団長、謹んでる場合じゃないよ! 練習と違うんだよ!
「副騎士団長ミンディ」
「はっ!」
「騎士団長を補佐し、第2班以下、班長を指導し騎士の育成に努めよ」
「謹んで承ります」
ちょおぉぉぉぉっ! 副団長まで!? えっ、この流れでいくの!? アドリブ? アドリブをアドリブで対処するの!? ありきたりな私はアドリブに弱いんですけどぉぉぉぉっ!
「第2班から第6班班長」
「「「「「はい!」」」」」
「規律を維持し、練度を高め、班の維持に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
班長たちキター! しかも、班長たちアドリブで対処できてるし! 御意ってる、御意ってるよ!
「第2班から第6班副班長」
「「「「「はい!」」」」」
「班長を補佐し、班員の育成に努めよ」
「「「「「御意!」」」」」
うわぁー副班長まで終わっちゃった! もしかして次? 次は班員が呼ばれちゃうの!? 「謹んで承ります」から「御意!」まで使われたら、次は何て答えればいいの!? だ、誰か教えてぇぇぇぇっ!
「騎士諸君らに告ぐ。騎士たることに誇りを持ち、日々己を高め、民草を案じ、滅私奉公に努めよ。以上を持って、女性騎士団入団式兼発足式の閉会を宣言する」
よ……良かった……陛下が閉会を宣言した……アドリブが回ってこなくて助かった。
はぁぁ……何だか練習とは全然違ったけど、もの凄く早く終わってしまった。あとは、陛下が退場するのを待つだけだ。
……そう思っていた時期が私にもありました。
「第2班ネア・ミリオン」
「は、はいっ!」
何でぇぇぇぇっ! 何で個人攻撃してくるの!? 私、アドリブに弱いって言ったよね? 言ったよね!? あっ、陛下には言ってないや……どうしよう……「謹んで承ります」も「御意!」も使えない……
「先般の答えは皇帝だ。次回のクイズを楽しみにしておくがよい」
「ひゃいっ!」
ノオォォォォッ! 噛んだっ、よりにもよって噛んだっ! 「はい」すらまともに言えずに噛んで答えてしまった。アドリブの返事なんて考えなければ良かった……
……いや、待って……ある意味これはアドリブかな? 「ひゃいっ!」なんて誰も言わないよね。団長たちも「不敬だ」って言わないし、このアドリブは成功……?
それよりもクイズの答えが“皇帝”って……皇帝なんて選択肢はなかったし! 村人Kで正解にしてよ!
あっ、陛下がそそくさ帰ってる。やっぱり陛下だから仕事とかが忙しいのかな? ……そうか、だから式を短縮させて早く終わらせたんだ。山積みな仕事がいっぱいあるんだね。
そして私たちがそのままの体勢でいると、団長たちが立ち上がり振り向いた。
「えっと……みんなお疲れさま。ちょっと練習と違ったけどみんなちゃんとやれたと私は思うよ。みんなが騎士団の一員になってくれて良かった。今日はこのまま解散にするから、この後の時間はみんな好きに過ごしてね。また明日から頑張ろうね」
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