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第13章 出会いと別れ
第422話 SS ケビ「お?」ネア「……」
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あの式が終わってからというもの、私たちは騎士装備を身につけて今まで以上に訓練を励むようになった。
やっぱり陛下から直接お言葉をもらえたことが、私たちの抱える気持ちに変化を齎した。
私もそのうちの1人で、今ではこの国のために頑張ろうと心から思えるようになった。
「今日は来るのかなー?」
誰とはなしにそう呟く声が聞こえてくる。
そう、今までの団長たちと行ってきた訓練はあの日以来変わるものとなって、今ではたまにふらっと現れるあの人を待ち焦がれるようにみんなはなっている。
ちなみに私はあまり来ないで欲しい……と密かに思っている。
そのような時に噂をすればなんとやらで、みんなの待ち人が来てしまった。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
そう、これだ……
あの日以来、陛下が噛んでしまった言葉が騎士団の中で流行ってしまったのだ。その言葉が流行ってしまった原因は、雲の上の存在である陛下が噛んでしまったことでみんなは私と同じく親近感が湧いてしまい、その日の夜の大浴場でみんなが「あげぽよ」の言葉をカワイイと褒めちぎっていたの。
確かに“ぽよ”って部分が“ぽよぽよ”って感じがして、何かこう……カワイイとは思うけど。
そして翌朝に誰が発信源か今はもう特定できないけど、朝に顔を合わせたら「おはよ~」と言ったのに対して、「あげぽよ~」って寝ぼけて言ったのが始まりらしい。
それ以来、兵舎で顔を合わせた時の挨拶が「あげぽよ~」と染まってしまうまでに大した時間はかからなかった。
でも元々は「面をあげよ」のはずで、“あげよ”は挨拶ではないと私は思う。
そして兵舎内で広まっていた挨拶は不意に現れた陛下に聞かれてしまい陛下が顔を真っ赤にしていたので、その場で使っていた女性たちは不敬罪で処刑される未来を想像したに違いない。
ちなみにその時の私だけは処刑を免れると思っていた。何故なら私は挨拶ではないと思っていたので、「あげぽよ」は一切使っていなかったから。
それから陛下が「何故その言葉を使っているのか」と、使っているところを見られた女性へ尋ねられ、問われた女性は「挨拶として使っておりました」と陛下へ答えたところ、陛下は全員をロビーに集めるように指示を出された。
そしてみんながロビーに集合して陛下へ対して平伏すると、私も一応はその行為を止めなかったため連帯責任として同じく平伏して、みんなで謝罪を行った。
するとしばらく経っても静寂が解けなかったので、陛下が不敬罪に対する処罰を考えているものだと思っていたら、不意に陛下の声がこぼれ出した。
「えっ……何でみんな謝るの? ちょっとあまりの勢いの凄さでドン引きしてたんだけど」
え……ドン引きって……? みんな命をかけて謝罪をしているのにドン引きしてたの? 処罰を考えていたんじゃなかったの?
「お、恐れながら陛下! 陛下がご尊顔を紅潮させていましたので、お、お、お怒りに触れたのだと思い……」
あぁー確かにあれは怒ってたよ。顔が真っ赤だったし……
「い、いや、あれはね、何て言うか……その……恥ずかしかった?」
「……」
え……恥ずかしかった……? いや、意味わからないし! ってゆーか、みんな平伏したまま黙っちゃたよ! みんなも意味がわかってないんだよ!
「あ、あの……陛下? 恥ずかしかったというのは?」
このままでは拉致があかないと思ったので、私がみんなを代表して尋ねてみると思いもしない言葉が返ってきた。
「いやね、あの言葉って式の時に俺が間違って言った言葉だろ? それをみんなが使っていたから恥ずかしかったんだよ。俺の間違いで“あげぽよ”の言葉が広まっちゃったなぁって感じで」
「えっ……あれはただ単に噛んだのではないのですか? “あげよ”を“あげぽよ”と……」
「確かに噛んだのは噛んだんだけど、“あげぽよ”って元々は“上気”って意味で簡単に言うと“興奮する”って言葉なんだよ。それをみんなが顔を合わせた時に「あげぽよ~」って使ってたから、まぁ、わかりやすく言えば“貴女に会って気分が上がる”って感じだから、あながち間違いじゃないんだよね」
「で、では……本当に恥ずかしかっただけ……?」
「まぁ、そうだね」
「では……不敬罪で処刑されるのは……」
「ないよ。何で言葉を交わしているみんなを処刑しないといけないんだよ。そんなことをしたら愚帝未満の狂気の皇帝で歴史に名を残すことになるだろ」
えぇー……普通は不敬罪なんだけど……仮にも陛下の間違いで言った言葉を挨拶として使ってたんだよ? 馬鹿にされたと思うのが普通だよ?
「その……これからも使ってよろしいのでしょうか……?」
勇者だ、あんた勇者だよ! 陛下を前にして“あげぽよ”の使用権を勝ち取ろうとしているよ!
「いいよ」
まさかの許可キター!
「うーん……俺も使おうかな……」
使っちゃうの!? 陛下自ら「あげぽよ~」って言っちゃうの!? どうなってんの、この国!
「よし、これからはみんなと挨拶する時は「あげぽよ~」って言うことにする。まぁ、その時の気分を表す言葉だけど、何となく挨拶でも使えそうな感じがする」
いやいや、ダメでしょ! 陛下さっき、言葉の意味で“興奮する”って言ってたよね!? それってつまり私たちを見て興奮するってことでしょ!? 変態じゃん!
「ということで、練習しようか?」
……はい? 練習……? 意味がわからない……
陛下は私のそんな気も知らずに本当に練習するつもりらしく、私たちを立ち上がらせると声を出した。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
いけない……もうここはダメだ……何か違う世界になっている……
「よし、みんなの元気が出たところで、恒例のクイズターイム!」
「「「「「イェーイ!」」」」」
団長ぉぉぉぉっ! 助けてぇー! みんなのテンションがおかしくなってますぅぅぅぅっ!
「ネア君、準備はいいかね?」
良くないっ! 何で私が狙われるんですか!?
陛下や周りのみんなはテンションが上がっているみたいで、私は逃げ場がないことを感じてしまう。
もしや、この状況が“あげぽよ”なのではないだろうか。陛下に乗せられてみんなの気分が上昇しているこの状況……まさに“あげぽよ”!
「ネア君、準備は如何かな?」
くっ……こうなったらヤケだ! クイズでも何でも受けてやるわよ!
「あげぽよ、ウェーイ!」
こうして私はヤケを起こしてタガが外れてしまい、兵舎1階ロビーという名の【あげぽよエリア】で禁断の「あげぽよ、ウェーイ!」という流行語(女性騎士団限定)を作り出してしまったのだった。
「その意気や良し! ここに第2回ケビオネアの開催を宣言する!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
えっ……今の何っ?! みんなとは違う声が聞こえてきたんだけど!?
「第1問、帝国法における奴隷制度で間違っている名称は次のうちどれ? A:犯罪奴隷 B:精神奴隷 C:借金奴隷 D:自主的奴隷」
ああっ、変な声に惑わされていたら最初の問題が始まってる! 落ち着かなきゃ……ここへ来てから帝国法の座学も訓練の中であったから、私に死角はないわ!
そして私は自信満々に答える。
「Bの精神奴隷!」
「ファイナルケビンサー?」
え……ちょっと待って……ふぁいなるあんさーじゃなかったの? この前と違うじゃない!?
相変わらずの意味のわからなさを猛進する陛下へ、私はその言葉を口にする。
「ふぁいなるけびんさー」
「…………」
あ……やっぱり引っ張るんだ……1問目なんだからサクッと進行して欲しいんだけど。ってゆーか、陛下ってさっき「第1問」って確かに言ったよね? これって何問まであるの? 早くしないと集合に遅れて団長たちが来ちゃうんだけど。朝の訓練前でこんなことをしていたら絶対に怒られる。
「……正解!」
よし第1問突破ね。この調子でどんどん答えていけば、団長たちが来るまでに終わるんじゃないかな。
「第2問、帝国法における納税について正しい名称は次のうちどれ? A:鶴里納税 B:固形資産税 C:所得税 D:盗賊税」
これも簡単ね。ってゆーか、色々とおかしいよね。固形資産税って何……? 固まっちゃうの? 資産が固まっちゃうの……? 資産凍結ってこと!? それなのに税金を納めないといけないの!?
いや、それよりもDが1番意味わからないわね。盗賊って認められているの!? 税金を払えば職業としてやっていいってわけ?
「Cの所得税でふぁいなるけびんさー」
私は少しでも時間短縮ため陛下から問われる前にその言葉を口にした。
「……正解っ!」
それからも私は陛下のクイズに正解していき、10問目が終わったところで陛下が伝えてきた。
それによると11問目以降で不正解を出しても、正解していた分の10ポイントは維持されるというものだった。
「さぁ、11問目に進むかね?」
「進みます!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
私はまんまと陛下の口車と周りの雰囲気に騙されて、このあと痛い目を見ることになる。
私が順調に20問目を突破して30問目へ差し掛かろうかとした時に、入口の自動ドアが開いたのだ。
「やっぱりここにいた!」
そう……団長たちがやって来てしまった……ヤバい……怒られる……
「みんなが訓練場に来ないと思ってましたら、ケビン君が足止めをしていらしたのですわね!」
団長の凄い剣幕に対して、陛下は悪びれもせずに怯むことなく答えていた。
「足止めなんて人聞きの悪い。俺はみんなの心をひとつに纏めて団結力の強化を図っていたんだ」
「嘘をつくのはやめてくださいまし! ケビン君が騎士たちで遊んでいましたら騎士団の訓練が滞りますわ!」
「ふっ、ならば見るがいい。団長と騎士たちの団結力よりも、俺と騎士たちの団結力の方が上だということを!」
陛下はシャフ度を決めて左手で顔を覆い隠し、ビシッと団長へ右手の人差し指を突きつける。
そのあと何故か村人服装と変なポーズでカッコつけている陛下が、私たちの方へ向いた。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
えぇー……ここでそれを言っちゃうの……団長たちが唖然としてるし……絶対あれは意味がわかっていない顔だよ。
「どうだ、これが俺と騎士たちの団結力! みんな、今日も訓練を頑張るぞー!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
……もうやだ……おうち帰りたい……団長助けて……
「ケ、ケビン君に騎士団が乗っ取られましたわ……」
「これは早くも汚染されましたね」
「でも何だか楽しそうっスよ、アレ」
「あげぽよ~」
「ウェーイです」
「ハハハハハ! 我の勝ちだ、騎士団長よ!」
「酷いよ、ケビン君……私だって頑張ってたのに部下を奪うなんて……」
あ……団長が泣いちゃった……副団長が頭をポンポンしてる……
「え……いや、その……」
団長が泣き出すなんて思いもしなかったのだろう。陛下が急にあたふたしだして焦っていた。
そして副団長が陛下へ耳打ちすると、団長へ近づいた陛下が顎クイからのキスをする。
「「「「「キャー! 顎クイよ、顎クイっ!」」」」」
陛下、何やってんの!? 団長は人妻だよ! これが俗に言う権力者のお手つきというものなの!? 副団長も混ざろうとしないで!
みんなはキャーキャー言いながらはしゃいでいるし、ここは常識人である私が止めるしかない。
「お、恐れながら陛下! 団長はご結婚されている人妻にありますれば、何卒ご配慮をしていただきたく」
「ん? 妻に配慮……? ああ、恥ずかしがるからみんなの前でしちゃいけないってことね。ゴメンゴメン、泣き止ますのに必死でそこまで考えが至らなかったよ」
「いえ、そうではなく……恐れながらも団長は他所様の伴侶でありまして……」
陛下ってお手つきの意味を理解していないの? 服装も服装だし、そこら辺の常識がないのかな?
そう思っていた私に泣き止んで頬を染めている団長が声をかけてきた。
団長って……チョロイン……?
「ネア、ケビン君は私の夫だからいいのよ」
「……はい?」
「私たちはケビン君のお嫁さんなの」
えぇーっと……今、何と申されました? 陛下は団長の夫? 私たちは陛下のお嫁さん? あれ? 座学で習った皇后様は確か違う名前だったような……確かソフィーリア様が第1夫人とお聞きしたような……
「ソフィーリア様ではないのですか?」
「ソフィ様は第1夫人よ」
「ですよね。第2夫人がいるとは聞いてませんが……もしや、団長が第2夫人……? 騎士団長をしているからそれもありえる……ということは、副団長が第3夫人……」
色々と考え込んでボソボソと呟く私に団長が答えを教えてくれるのだけど、それがまた意味のわからない内容だった。
「第2夫人はいないわ。序列があるのはソフィ様だけ。あとはみんな横並びよ」
その後に続く説明で、表には出ていないとんでもない話を私は聞かされていく。
どうやら正妻と側妻で形式上は別れてはいるものの、序列はソフィーリア様が1番で他は全員が2番だと団長は言う。だけど、中には奴隷の妻がいるみたいで、その方たちは陛下の奴隷であることを誇りに思っているらしくて自らの序列は最下位だと意識しているのだとか。
その奴隷たちの中でもケイト様、あの式を進行していた人がそうらしいけど、その人が奴隷たちのまとめ役をやっていて、更には陛下がよくサボる執務も捌いているらしい。
サボってるんだ、陛下……ここでクイズなんてやってる場合じゃないでしょ……
他には側妻の方たちはやはり正妻を立てるみたいで、自分たちは正妻組の次の序列であると意識していることを教えられた。
「ネア、これが正妻と側妻の違いよ」
団長と副団長が指輪を私たちへ向けると右手の指輪は同じだけど、左手の指輪が違うのを見せてくれた。そしてそれに続くようにニッキー先輩たちも指輪を見せてくる。
指輪に興味がなかったからあまり注視していなかったけど、よくよく見比べてみると副団長以下4人は右手と左手それぞれにお揃いの指輪をしている。
「私はケビン君のお嫁さんになれるなら側妻でも良かったんだけどね、『昔から好きな人だから正妻にする』って言ってくれたの」
私にそう伝える団長は、両手で頬を覆ってはイヤイヤと体を揺らしている。
え……ここへきてノロケですか? 胸焼けするんでやめてもらっていいですか?
つまり団長たち第1班は陛下の戯れでされるお手つきではなく、実際に嫁として娶っているということだった。
「ネア、これからはこの敷地にいる女性を見た時は、まず相手の指を見るといい。両手の薬指に指輪をしていたら間違いなくケビンさんの妻だ」
ん? 副団長……とんでもないことをぶっ込んできました? 私がここへ住み始めて結構な人数の女性を見た気がするのですけど。
「えぇーっと……つまりそれほど沢山の奥方様が、ここの敷地にいらっしゃるということでしょうか?」
「そうだ。ちなみに敷地というのは孤児院からこちら側の私有地の話だ」
「えっ……まさか……ミレーヌさんまで毒牙に……」
陛下はあの美人シスターミレーヌさんを手篭めにしたのでは……確かミアちゃんと初めて会った時に帝城へ行く私に「パパのとこー?」って言ってた気が……
「毒牙と言ったことは聞かなかったことにしておいてやる。ミレーヌさんは確かにケビンさんの妻だ。と言うよりも、あそこの孤児院のシスターたちはみんなケビンさんの妻だ。城下に住んでいる妻もいるし、他国に住んでいる妻もいる」
「……節操なし」
私は陛下の手当り次第なやり方に対して、つい暴言を吐いてしまった。だけど、陛下はその言葉を不敬だと言うよりも慌てて言い訳をしていく。
「違うんだって! 何かみんな俺の嫁になりたいって言うんだよ!」
「断ればいいじゃない」
「ぐっ……」
陛下が言葉を詰まらせた時に、静観していた【あげぽよ団】の誰かがいきなり声を挙げた。
「陛下、私も陛下をお慕いしています! 是非、お嫁さんにしてください!」
その内容に私は自分の耳を疑った。たった今、節操のないところが暴露された陛下へこともあろうか、お嫁さんにしてくれと言い出した人がいるのだ。
「それとも私みたいな人族じゃない者はダメなのですか!?」
「ダメじゃないですよ」
なんとそこへ音もなく現れたのは使用人だった。
えっ、いつの間に!? 自動ドアって開いてないよね?!
「貴女のお慕いする気持ちは痛いほど共感できます」
「え……あなたは……?」
そう、それ! 誰ですかあなたは!? いったいいつからそこにいたんですか!?
「申し遅れました。私は【ケビン様を慕う会】の会長を務めておりますプリシラと申す者です。日頃はメイド長として勤務しております」
「メイド長……」
「貴女の懸念は無用のものです。何故ならケビン様は人族に限らず、亜人族の女性も娶っていらっしゃいますから。更にはそれだけに留まらず魔人族の妻もいらっしゃいます」
「何と御心の広い……このような尊きお方に巡り会えて私は幸せです」
「その言葉、確かに聴きました!」
えっ、次は何っ!? あっ、また使用人が増えた! いったいどこから現れてるの!?
「私は【ケビン教】の教祖を務めているルルと申します。日頃はプリシラメイド長の下で働いています。ちなみに双子の姉であるララもケビン教信者です」
会長の次は教祖キター! ここの使用人はいったいどうなってんの!? おかしくない? おかしいよね!?
「貴女の心の内にあるケビン様を尊ぶ気持ち。それこそまさにケビン教の理念!」
この使用人、理念を説いてきちゃったよ!
「さぁ、貴女も会員になりましょう!」
「貴女は信者になる素質があります!」
「え……え……!?」
知らないうちに勧誘合戦が始まったぁぁぁぁっ! 陛下、早く止めて! あなたの部下たちでしょう!
「プリシラ、ルル」
私の気持ちが届いたのか、陛下は2人の使用人へ声をかけた。
「「はい、ケビン様」」
「その子が困っているから無理矢理はダメだよ。誘うならちゃんと落ち着いて話し合わないと」
「申し訳ありません」
「はぁ……その配下を慮る気持ち……尊いです……」
ですよねー陛下がまともに注意するわけないですよねーそこは勧誘するなくらい言って欲しかった……落ち着いて勧誘されたら確実に逃げ場を失うと思うんだけど……
「ありがとうございます、陛下! 私、会員と信者になります!」
えぇぇぇぇっ!? あっさり入っちゃったよ! しかも2足のわらじですか!?
「無理してない? 雰囲気に流されたらダメだよ?」
「いえ、陛下の御心に触れて私は生まれ変わりました! これからは陛下のお嫁さんになれるよう頑張ります! みんなもそうよね!?」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
なにこのカオスぅぅぅぅっ! まともなのって私だけなの!? みんなおかしくない?
団長、貴女の夫が目の前で新しい女を作ろうとしていますよ! 止めてください!
「ケビン君って本当にモテるよねー」
「英雄の運命ですね」
「プリシラさんとルルさんは相変わらずっスねー」
「私も勧誘されて入ったよー」
「私も入りました」
止めろぉぉぉぉっ! ダメだ、ここの妻たち。夫に新しい女ができる可能性を許容している……
はぁぁ……私、この騎士団でやっていけるのかな……
「あっ、言い忘れていたけど、今回は乱入があってクイズが滅茶苦茶になったから、今までのポイントはナシだね」
私の苦労を返せぇぇぇぇっ!
こうして私はこの騎士団で唯一の常識人として、今回の貯めていた29ポイントを失いつつも【あげぽよ団】とともに、訓練に向けて励んでいくのであった。
やっぱり陛下から直接お言葉をもらえたことが、私たちの抱える気持ちに変化を齎した。
私もそのうちの1人で、今ではこの国のために頑張ろうと心から思えるようになった。
「今日は来るのかなー?」
誰とはなしにそう呟く声が聞こえてくる。
そう、今までの団長たちと行ってきた訓練はあの日以来変わるものとなって、今ではたまにふらっと現れるあの人を待ち焦がれるようにみんなはなっている。
ちなみに私はあまり来ないで欲しい……と密かに思っている。
そのような時に噂をすればなんとやらで、みんなの待ち人が来てしまった。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
そう、これだ……
あの日以来、陛下が噛んでしまった言葉が騎士団の中で流行ってしまったのだ。その言葉が流行ってしまった原因は、雲の上の存在である陛下が噛んでしまったことでみんなは私と同じく親近感が湧いてしまい、その日の夜の大浴場でみんなが「あげぽよ」の言葉をカワイイと褒めちぎっていたの。
確かに“ぽよ”って部分が“ぽよぽよ”って感じがして、何かこう……カワイイとは思うけど。
そして翌朝に誰が発信源か今はもう特定できないけど、朝に顔を合わせたら「おはよ~」と言ったのに対して、「あげぽよ~」って寝ぼけて言ったのが始まりらしい。
それ以来、兵舎で顔を合わせた時の挨拶が「あげぽよ~」と染まってしまうまでに大した時間はかからなかった。
でも元々は「面をあげよ」のはずで、“あげよ”は挨拶ではないと私は思う。
そして兵舎内で広まっていた挨拶は不意に現れた陛下に聞かれてしまい陛下が顔を真っ赤にしていたので、その場で使っていた女性たちは不敬罪で処刑される未来を想像したに違いない。
ちなみにその時の私だけは処刑を免れると思っていた。何故なら私は挨拶ではないと思っていたので、「あげぽよ」は一切使っていなかったから。
それから陛下が「何故その言葉を使っているのか」と、使っているところを見られた女性へ尋ねられ、問われた女性は「挨拶として使っておりました」と陛下へ答えたところ、陛下は全員をロビーに集めるように指示を出された。
そしてみんながロビーに集合して陛下へ対して平伏すると、私も一応はその行為を止めなかったため連帯責任として同じく平伏して、みんなで謝罪を行った。
するとしばらく経っても静寂が解けなかったので、陛下が不敬罪に対する処罰を考えているものだと思っていたら、不意に陛下の声がこぼれ出した。
「えっ……何でみんな謝るの? ちょっとあまりの勢いの凄さでドン引きしてたんだけど」
え……ドン引きって……? みんな命をかけて謝罪をしているのにドン引きしてたの? 処罰を考えていたんじゃなかったの?
「お、恐れながら陛下! 陛下がご尊顔を紅潮させていましたので、お、お、お怒りに触れたのだと思い……」
あぁー確かにあれは怒ってたよ。顔が真っ赤だったし……
「い、いや、あれはね、何て言うか……その……恥ずかしかった?」
「……」
え……恥ずかしかった……? いや、意味わからないし! ってゆーか、みんな平伏したまま黙っちゃたよ! みんなも意味がわかってないんだよ!
「あ、あの……陛下? 恥ずかしかったというのは?」
このままでは拉致があかないと思ったので、私がみんなを代表して尋ねてみると思いもしない言葉が返ってきた。
「いやね、あの言葉って式の時に俺が間違って言った言葉だろ? それをみんなが使っていたから恥ずかしかったんだよ。俺の間違いで“あげぽよ”の言葉が広まっちゃったなぁって感じで」
「えっ……あれはただ単に噛んだのではないのですか? “あげよ”を“あげぽよ”と……」
「確かに噛んだのは噛んだんだけど、“あげぽよ”って元々は“上気”って意味で簡単に言うと“興奮する”って言葉なんだよ。それをみんなが顔を合わせた時に「あげぽよ~」って使ってたから、まぁ、わかりやすく言えば“貴女に会って気分が上がる”って感じだから、あながち間違いじゃないんだよね」
「で、では……本当に恥ずかしかっただけ……?」
「まぁ、そうだね」
「では……不敬罪で処刑されるのは……」
「ないよ。何で言葉を交わしているみんなを処刑しないといけないんだよ。そんなことをしたら愚帝未満の狂気の皇帝で歴史に名を残すことになるだろ」
えぇー……普通は不敬罪なんだけど……仮にも陛下の間違いで言った言葉を挨拶として使ってたんだよ? 馬鹿にされたと思うのが普通だよ?
「その……これからも使ってよろしいのでしょうか……?」
勇者だ、あんた勇者だよ! 陛下を前にして“あげぽよ”の使用権を勝ち取ろうとしているよ!
「いいよ」
まさかの許可キター!
「うーん……俺も使おうかな……」
使っちゃうの!? 陛下自ら「あげぽよ~」って言っちゃうの!? どうなってんの、この国!
「よし、これからはみんなと挨拶する時は「あげぽよ~」って言うことにする。まぁ、その時の気分を表す言葉だけど、何となく挨拶でも使えそうな感じがする」
いやいや、ダメでしょ! 陛下さっき、言葉の意味で“興奮する”って言ってたよね!? それってつまり私たちを見て興奮するってことでしょ!? 変態じゃん!
「ということで、練習しようか?」
……はい? 練習……? 意味がわからない……
陛下は私のそんな気も知らずに本当に練習するつもりらしく、私たちを立ち上がらせると声を出した。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
いけない……もうここはダメだ……何か違う世界になっている……
「よし、みんなの元気が出たところで、恒例のクイズターイム!」
「「「「「イェーイ!」」」」」
団長ぉぉぉぉっ! 助けてぇー! みんなのテンションがおかしくなってますぅぅぅぅっ!
「ネア君、準備はいいかね?」
良くないっ! 何で私が狙われるんですか!?
陛下や周りのみんなはテンションが上がっているみたいで、私は逃げ場がないことを感じてしまう。
もしや、この状況が“あげぽよ”なのではないだろうか。陛下に乗せられてみんなの気分が上昇しているこの状況……まさに“あげぽよ”!
「ネア君、準備は如何かな?」
くっ……こうなったらヤケだ! クイズでも何でも受けてやるわよ!
「あげぽよ、ウェーイ!」
こうして私はヤケを起こしてタガが外れてしまい、兵舎1階ロビーという名の【あげぽよエリア】で禁断の「あげぽよ、ウェーイ!」という流行語(女性騎士団限定)を作り出してしまったのだった。
「その意気や良し! ここに第2回ケビオネアの開催を宣言する!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
えっ……今の何っ?! みんなとは違う声が聞こえてきたんだけど!?
「第1問、帝国法における奴隷制度で間違っている名称は次のうちどれ? A:犯罪奴隷 B:精神奴隷 C:借金奴隷 D:自主的奴隷」
ああっ、変な声に惑わされていたら最初の問題が始まってる! 落ち着かなきゃ……ここへ来てから帝国法の座学も訓練の中であったから、私に死角はないわ!
そして私は自信満々に答える。
「Bの精神奴隷!」
「ファイナルケビンサー?」
え……ちょっと待って……ふぁいなるあんさーじゃなかったの? この前と違うじゃない!?
相変わらずの意味のわからなさを猛進する陛下へ、私はその言葉を口にする。
「ふぁいなるけびんさー」
「…………」
あ……やっぱり引っ張るんだ……1問目なんだからサクッと進行して欲しいんだけど。ってゆーか、陛下ってさっき「第1問」って確かに言ったよね? これって何問まであるの? 早くしないと集合に遅れて団長たちが来ちゃうんだけど。朝の訓練前でこんなことをしていたら絶対に怒られる。
「……正解!」
よし第1問突破ね。この調子でどんどん答えていけば、団長たちが来るまでに終わるんじゃないかな。
「第2問、帝国法における納税について正しい名称は次のうちどれ? A:鶴里納税 B:固形資産税 C:所得税 D:盗賊税」
これも簡単ね。ってゆーか、色々とおかしいよね。固形資産税って何……? 固まっちゃうの? 資産が固まっちゃうの……? 資産凍結ってこと!? それなのに税金を納めないといけないの!?
いや、それよりもDが1番意味わからないわね。盗賊って認められているの!? 税金を払えば職業としてやっていいってわけ?
「Cの所得税でふぁいなるけびんさー」
私は少しでも時間短縮ため陛下から問われる前にその言葉を口にした。
「……正解っ!」
それからも私は陛下のクイズに正解していき、10問目が終わったところで陛下が伝えてきた。
それによると11問目以降で不正解を出しても、正解していた分の10ポイントは維持されるというものだった。
「さぁ、11問目に進むかね?」
「進みます!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
私はまんまと陛下の口車と周りの雰囲気に騙されて、このあと痛い目を見ることになる。
私が順調に20問目を突破して30問目へ差し掛かろうかとした時に、入口の自動ドアが開いたのだ。
「やっぱりここにいた!」
そう……団長たちがやって来てしまった……ヤバい……怒られる……
「みんなが訓練場に来ないと思ってましたら、ケビン君が足止めをしていらしたのですわね!」
団長の凄い剣幕に対して、陛下は悪びれもせずに怯むことなく答えていた。
「足止めなんて人聞きの悪い。俺はみんなの心をひとつに纏めて団結力の強化を図っていたんだ」
「嘘をつくのはやめてくださいまし! ケビン君が騎士たちで遊んでいましたら騎士団の訓練が滞りますわ!」
「ふっ、ならば見るがいい。団長と騎士たちの団結力よりも、俺と騎士たちの団結力の方が上だということを!」
陛下はシャフ度を決めて左手で顔を覆い隠し、ビシッと団長へ右手の人差し指を突きつける。
そのあと何故か村人服装と変なポーズでカッコつけている陛下が、私たちの方へ向いた。
「あげぽよ~」
「「「「「あげぽよ~!」」」」」
えぇー……ここでそれを言っちゃうの……団長たちが唖然としてるし……絶対あれは意味がわかっていない顔だよ。
「どうだ、これが俺と騎士たちの団結力! みんな、今日も訓練を頑張るぞー!」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
……もうやだ……おうち帰りたい……団長助けて……
「ケ、ケビン君に騎士団が乗っ取られましたわ……」
「これは早くも汚染されましたね」
「でも何だか楽しそうっスよ、アレ」
「あげぽよ~」
「ウェーイです」
「ハハハハハ! 我の勝ちだ、騎士団長よ!」
「酷いよ、ケビン君……私だって頑張ってたのに部下を奪うなんて……」
あ……団長が泣いちゃった……副団長が頭をポンポンしてる……
「え……いや、その……」
団長が泣き出すなんて思いもしなかったのだろう。陛下が急にあたふたしだして焦っていた。
そして副団長が陛下へ耳打ちすると、団長へ近づいた陛下が顎クイからのキスをする。
「「「「「キャー! 顎クイよ、顎クイっ!」」」」」
陛下、何やってんの!? 団長は人妻だよ! これが俗に言う権力者のお手つきというものなの!? 副団長も混ざろうとしないで!
みんなはキャーキャー言いながらはしゃいでいるし、ここは常識人である私が止めるしかない。
「お、恐れながら陛下! 団長はご結婚されている人妻にありますれば、何卒ご配慮をしていただきたく」
「ん? 妻に配慮……? ああ、恥ずかしがるからみんなの前でしちゃいけないってことね。ゴメンゴメン、泣き止ますのに必死でそこまで考えが至らなかったよ」
「いえ、そうではなく……恐れながらも団長は他所様の伴侶でありまして……」
陛下ってお手つきの意味を理解していないの? 服装も服装だし、そこら辺の常識がないのかな?
そう思っていた私に泣き止んで頬を染めている団長が声をかけてきた。
団長って……チョロイン……?
「ネア、ケビン君は私の夫だからいいのよ」
「……はい?」
「私たちはケビン君のお嫁さんなの」
えぇーっと……今、何と申されました? 陛下は団長の夫? 私たちは陛下のお嫁さん? あれ? 座学で習った皇后様は確か違う名前だったような……確かソフィーリア様が第1夫人とお聞きしたような……
「ソフィーリア様ではないのですか?」
「ソフィ様は第1夫人よ」
「ですよね。第2夫人がいるとは聞いてませんが……もしや、団長が第2夫人……? 騎士団長をしているからそれもありえる……ということは、副団長が第3夫人……」
色々と考え込んでボソボソと呟く私に団長が答えを教えてくれるのだけど、それがまた意味のわからない内容だった。
「第2夫人はいないわ。序列があるのはソフィ様だけ。あとはみんな横並びよ」
その後に続く説明で、表には出ていないとんでもない話を私は聞かされていく。
どうやら正妻と側妻で形式上は別れてはいるものの、序列はソフィーリア様が1番で他は全員が2番だと団長は言う。だけど、中には奴隷の妻がいるみたいで、その方たちは陛下の奴隷であることを誇りに思っているらしくて自らの序列は最下位だと意識しているのだとか。
その奴隷たちの中でもケイト様、あの式を進行していた人がそうらしいけど、その人が奴隷たちのまとめ役をやっていて、更には陛下がよくサボる執務も捌いているらしい。
サボってるんだ、陛下……ここでクイズなんてやってる場合じゃないでしょ……
他には側妻の方たちはやはり正妻を立てるみたいで、自分たちは正妻組の次の序列であると意識していることを教えられた。
「ネア、これが正妻と側妻の違いよ」
団長と副団長が指輪を私たちへ向けると右手の指輪は同じだけど、左手の指輪が違うのを見せてくれた。そしてそれに続くようにニッキー先輩たちも指輪を見せてくる。
指輪に興味がなかったからあまり注視していなかったけど、よくよく見比べてみると副団長以下4人は右手と左手それぞれにお揃いの指輪をしている。
「私はケビン君のお嫁さんになれるなら側妻でも良かったんだけどね、『昔から好きな人だから正妻にする』って言ってくれたの」
私にそう伝える団長は、両手で頬を覆ってはイヤイヤと体を揺らしている。
え……ここへきてノロケですか? 胸焼けするんでやめてもらっていいですか?
つまり団長たち第1班は陛下の戯れでされるお手つきではなく、実際に嫁として娶っているということだった。
「ネア、これからはこの敷地にいる女性を見た時は、まず相手の指を見るといい。両手の薬指に指輪をしていたら間違いなくケビンさんの妻だ」
ん? 副団長……とんでもないことをぶっ込んできました? 私がここへ住み始めて結構な人数の女性を見た気がするのですけど。
「えぇーっと……つまりそれほど沢山の奥方様が、ここの敷地にいらっしゃるということでしょうか?」
「そうだ。ちなみに敷地というのは孤児院からこちら側の私有地の話だ」
「えっ……まさか……ミレーヌさんまで毒牙に……」
陛下はあの美人シスターミレーヌさんを手篭めにしたのでは……確かミアちゃんと初めて会った時に帝城へ行く私に「パパのとこー?」って言ってた気が……
「毒牙と言ったことは聞かなかったことにしておいてやる。ミレーヌさんは確かにケビンさんの妻だ。と言うよりも、あそこの孤児院のシスターたちはみんなケビンさんの妻だ。城下に住んでいる妻もいるし、他国に住んでいる妻もいる」
「……節操なし」
私は陛下の手当り次第なやり方に対して、つい暴言を吐いてしまった。だけど、陛下はその言葉を不敬だと言うよりも慌てて言い訳をしていく。
「違うんだって! 何かみんな俺の嫁になりたいって言うんだよ!」
「断ればいいじゃない」
「ぐっ……」
陛下が言葉を詰まらせた時に、静観していた【あげぽよ団】の誰かがいきなり声を挙げた。
「陛下、私も陛下をお慕いしています! 是非、お嫁さんにしてください!」
その内容に私は自分の耳を疑った。たった今、節操のないところが暴露された陛下へこともあろうか、お嫁さんにしてくれと言い出した人がいるのだ。
「それとも私みたいな人族じゃない者はダメなのですか!?」
「ダメじゃないですよ」
なんとそこへ音もなく現れたのは使用人だった。
えっ、いつの間に!? 自動ドアって開いてないよね?!
「貴女のお慕いする気持ちは痛いほど共感できます」
「え……あなたは……?」
そう、それ! 誰ですかあなたは!? いったいいつからそこにいたんですか!?
「申し遅れました。私は【ケビン様を慕う会】の会長を務めておりますプリシラと申す者です。日頃はメイド長として勤務しております」
「メイド長……」
「貴女の懸念は無用のものです。何故ならケビン様は人族に限らず、亜人族の女性も娶っていらっしゃいますから。更にはそれだけに留まらず魔人族の妻もいらっしゃいます」
「何と御心の広い……このような尊きお方に巡り会えて私は幸せです」
「その言葉、確かに聴きました!」
えっ、次は何っ!? あっ、また使用人が増えた! いったいどこから現れてるの!?
「私は【ケビン教】の教祖を務めているルルと申します。日頃はプリシラメイド長の下で働いています。ちなみに双子の姉であるララもケビン教信者です」
会長の次は教祖キター! ここの使用人はいったいどうなってんの!? おかしくない? おかしいよね!?
「貴女の心の内にあるケビン様を尊ぶ気持ち。それこそまさにケビン教の理念!」
この使用人、理念を説いてきちゃったよ!
「さぁ、貴女も会員になりましょう!」
「貴女は信者になる素質があります!」
「え……え……!?」
知らないうちに勧誘合戦が始まったぁぁぁぁっ! 陛下、早く止めて! あなたの部下たちでしょう!
「プリシラ、ルル」
私の気持ちが届いたのか、陛下は2人の使用人へ声をかけた。
「「はい、ケビン様」」
「その子が困っているから無理矢理はダメだよ。誘うならちゃんと落ち着いて話し合わないと」
「申し訳ありません」
「はぁ……その配下を慮る気持ち……尊いです……」
ですよねー陛下がまともに注意するわけないですよねーそこは勧誘するなくらい言って欲しかった……落ち着いて勧誘されたら確実に逃げ場を失うと思うんだけど……
「ありがとうございます、陛下! 私、会員と信者になります!」
えぇぇぇぇっ!? あっさり入っちゃったよ! しかも2足のわらじですか!?
「無理してない? 雰囲気に流されたらダメだよ?」
「いえ、陛下の御心に触れて私は生まれ変わりました! これからは陛下のお嫁さんになれるよう頑張ります! みんなもそうよね!?」
「「「「「あげぽよ、ウェーイ!」」」」」
『あげぽよ、ウェーイ!』
なにこのカオスぅぅぅぅっ! まともなのって私だけなの!? みんなおかしくない?
団長、貴女の夫が目の前で新しい女を作ろうとしていますよ! 止めてください!
「ケビン君って本当にモテるよねー」
「英雄の運命ですね」
「プリシラさんとルルさんは相変わらずっスねー」
「私も勧誘されて入ったよー」
「私も入りました」
止めろぉぉぉぉっ! ダメだ、ここの妻たち。夫に新しい女ができる可能性を許容している……
はぁぁ……私、この騎士団でやっていけるのかな……
「あっ、言い忘れていたけど、今回は乱入があってクイズが滅茶苦茶になったから、今までのポイントはナシだね」
私の苦労を返せぇぇぇぇっ!
こうして私はこの騎士団で唯一の常識人として、今回の貯めていた29ポイントを失いつつも【あげぽよ団】とともに、訓練に向けて励んでいくのであった。
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