面倒くさがり屋の異世界転生

自由人

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第14章 聖戦

第473話 決着

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 ヒューゴがガブリエルの元を離れて右翼への応援に向かうと、またもや前方に女性の姿が出現する。その女性は冒険者服装に身を包んで桃色のロングヘアを靡かせて佇んでいた。

 ヒューゴが今までの流れからその女性が敵であることを認識すると、馬を止めて問いかける。

「貴女が俺の足止め係ですか……」

「少し違うわね。貴方だけじゃなくて後ろの騎士たちもよ」

「もしやパレスに住まうドラゴンなのですか?」

「違うわよ。私はただの人間よ」

「フッ……ただの人間に俺たちの相手ができるとでも?」

「できるからここにいるんじゃない。貴方、馬鹿なの?」

 アブリルに引き続き目の前の女性にまで馬鹿呼ばわりされたヒューゴは苛立ちを顕にすると、馬を降りるよう号令をかけたら自らも馬を降りて剣を抜き放つ。そして相手がドラゴンでないのなら数の有利を活かせば殺せると思ったのか、ヒューゴは気が大きくなり尊大な態度となる。

「今から貴女を殺しますが、とりあえず名無しの敵将より名有りの方が士気を上げるにも都合がいいので、名乗ってもらえますかね?」

「殺す相手の名前を知りたがるなんて趣味が悪いわね。貴方、性格が悪いでしょ?」

「くっ……」

「まぁいいわ、教えてあげる。私はマリアンヌよ、特に覚えなくてもいいわ」

「俺は神殿騎士団テンプルナイツが1人、青の騎士団ブルーナイツ団長のヒューゴです」

「知ってるわよ。貴方ってうちの中では2番目に評価が低いもの。ちなみに1番は真っ先に死んだヘイなんちゃらよ。残念だったわね、1番が取れなくて」

「減らず口をっ! 総員、かかれっ!」

 ヒューゴの号令により騎士たちが一斉に襲いかかると、マリアンヌは躱せない剣筋だけを剣で捌きながら、残りはヒラヒラと躱して騎士たちを翻弄していく。

「散開!」

 ヒューゴの声が響き渡るとマリアンヌと剣戟を交わしていた騎士たちが距離を取り、そこへヒューゴの放った魔法が飛来する。だが既にそこにはマリアンヌがおらず、散開した騎士を追いかけて斬りつけていた。

「ごふっ」

 プレートアーマーに身を包んでいる騎士は唯一晒している首から上を狙われてしまい、斬り裂かれた首からは夥しいほどの血液を噴き出していて、倒れた騎士はピクピクと痙攣していた。

 その光景に唖然とする騎士たちの足が止まると、マリアンヌは次々に斬り伏せていき、あまりの事態にヒューゴの思考も停止してしまい呆然と立ち尽くす中で、一緒に連れてきていた騎士たちが次々と倒されてしまった。

「貴方って無能ね。普通……仲間の窮地を助けるもんじゃない? 団長の癖になんでボケっと突っ立ってるの?」

 その言葉にヒューゴは何も言い返せなかった。まさに言われた通りの行動をしてしまったせいで、数の有利という優位性が失われてしまったからだ。

「興醒めだわ。貴方は殺す価値もない無能よ」

 ヒューゴに対して言うだけ言ったマリアンヌは、ケビンに連絡を取るとその場から転移で回収してもらった。そして残されたヒューゴは膝をつき、物言わぬ屍となった部下たちを見ては人生で初の挫折を味わわされた。

 部下とともに殺されていれば味わわされることのなかった無能感。相手からは殺す価値がないと言われて生かされ繋ぎとめた命。ヒューゴにとってはこれ以上ないくらいの屈辱を、マリアンヌによって感じさせられてしまった。

「くっそぉぉぉぉっ!」

 戦場における喧騒の中で叫ぶヒューゴの声は誰に届くまでもなく、周りの喧騒によって掻き消されてしまうのであった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 一方でヒューゴがそのような状況に陥っているとも知らず、タイラーは別の女性と対峙していた。

「タイラーさん、お久しぶりね」

「久しぶりだが、できれば会いたくなかったぜ」

「つれないわね」

「俺の相手は貴女なのか?」

「そうよ。マリーでも良かったのだけれど、あの青いのは生理的に受けつけないから押しつけたの」

 その言葉によってタイラーは、ヒューゴ側にマリーと呼ばれる女性が行っていることを理解した。

 初戦を終えた時の部下からの報告では、敵の姿を捉えることができず神出鬼没の攻撃を受けてしまい、混乱が後を絶たなかったと聞いていたことを思い出すとそれを口にする。

「見えない敵と戦わされるよりはマシか……」

「今日は見えてるわよ。隠れていたら面白味に欠けるって言っていたから、姿を見せて正面から戦うそうよ」

「戦争で面白さを求められるとは……」

「考えたらわかることよ。誰からも見られずにポンポンと殺していたら、単純作業で飽きちゃうでしょう?」

「擁護するわけじゃねぇけど、命の危険がなくて安全なんじゃねぇのか?」

「自分の命を脅かす相手ならそうだけど……敵でそれをできるとしたら総団長さんくらいじゃないかしら? さすがのマリーも総団長さん相手だと分が悪いもの」

「総団長でも勝てる相手がいたってことを喜ぶべきなのか、それともたった1人しかいないと絶望するべきなのか、判断に苦しむぜ」

「それならもう1人いるわよ。私の娘が来ているけど魔術師だから今回はケビンが出さなかったのよ」

「まさか……初日に中央を崩したあの魔法……」

「シーラのオリジナル魔法よ。ケビンのことが大好きで、ケビンに『凄い!』って言ってもらうためだけに編み出したのよ。それを見たケビンに魔法名を付けるようせがんでね。元は範囲も狭くて魔法名は《アイスフィールド》だったかしら……懐かしいわね……まだ2人とも子供だったのに、今ではすっかり立派な大人になって……」

 サラは当時のことでも思い出しているのか、柔らかな表情を浮かべて物思いにふけるが、思い出したかのように続きの言葉を口にする。

「そういえば、総団長さんが勝てる相手の話だったわね。今回は他の戦える冒険者たちが参加していないから、あの子たちが参加したとして……総団長さんに勝てるとしたらクズミさんに……クリスさんもいけるわね。メイドの中だとメイド長のプリシラに、ライラね。2対1でいいのならララとルルもいけるわ」

 サラによって次々と語られていった総団長の上を行く存在に、タイラーは帝国の抱えている戦力に戦慄する。ここに来ていないと言うだけで、まだまだ強い人が奥に控えていると言うのだ。

 そしてトドメはメイドである。使用人に負ける総団長など想像もできないが、目の前の強者である女性がそう言うのなら、間違いではないのだろうと思う他なかった。

「つまり、城には総団長と同じ2SランクかSランクがわんさかいると?」

「違うわ、みんな3Sランクよ。だけど技術が追いついている子もいれば、武器に頼らないといけない子もいるから、強さがみんなバラバラなのよ」

「なっ!?」

 サラから告げられた“3Sランク”という単語に、タイラーは絶句してしまう。そのランクを得るためには、1日でドラゴンを複数体討伐する必要があるからだ。

「い、いったい何人編成のパーティーでドラゴンを連続で狩ったんだ?」

 タイラーは大人数で対応したのなら個々の能力は低いだろうと思って尋ねたのだが、サラからの返答はタイラーにとってはとんでもない内容となる。

「パーティーなんか組んでないわ。1人で2体倒したのよ。大人のドラゴンを2体よ。白い人が幼体のドラゴンを倒して鼻高々だったけど、私からしてみれば世間知らずの幼稚な人にしか見えなかったわね」

「ありえねぇ……」

「それじゃあ戦いましょうか?」

 サラはそう言い放つと細剣を鞘から抜き放ち構え、対するタイラーは部下たちに指示を出して抜剣する。

 サラを取り囲む騎士たちの包囲網が完成すると騎士たちが一斉に襲いかかるが、サラは1番近くにいる騎士の喉元へ細剣を突き刺して包囲網に穴を開けたら、そこから包囲を抜けて騎士たちを眺める。

 そして簡単に包囲網を抜けられた上に早くも1人を失ったタイラーは、サラのその能力に戦慄した。

「何でこんな人間が存在する……ありえねぇだろ……」

「経験の差よ。貴方たちの本職は安全な所で勤務する騎士でしょう? こっちは毎日命を懸けて戦う冒険者なの。くぐってきた修羅場が違うわ」

「たとえ冒険者でもその強さは異常だ」

「貴方は命を捨てる覚悟で魔物を殺し続けたことはある? 絶対に死なない人数で訓練としてするのではなく、死と隣合わせの状況でたった1人で魔物と戦い続けるのよ」

「……それをしたってのか?」

「そうよ。私はソロ活動だったもの。それに当時は死んでも惜しくなかったし、何より早く強くなることの方が重要だったから。途中で失敗して死んだらそれまでだったってことよ」

「その考え方は異常だが、そこまでしないと手に入れられない強さか……」

「総団長さんみたいに才能があるわけではないから、普通よりも弱かった私は自分を追い込むしかないのよ。私も魔法を使ってみたかったわね……」

 そう感慨に耽るサラを他所に騎士たちは再度包囲したら、ジリジリと間合いを詰めていく。先程は一気に襲いかかってやられたため、今度は時間をかけてプレッシャーを与えつつ隙を見つける作戦だ。

 ジリジリと詰め寄る騎士たちにサラは特に身構えるわけでもなく自然体で立っていた。そして騎士が斬りかかる前に別の騎士から魔法が放たれると、それを合図に騎士たちが斬りかかろうとしたが、目の前で信じられない光景を目にする。サラが細剣で飛来する数多の魔法を斬っていたのだ。

 飛びかかろうとしていた騎士たちはつんのめり、タイラーは唖然としている。

「……なん……だと……」

 タイラーたちが呆然とする中でサラが動く。瞬く間に騎士たちを斬り伏せてしまい、タイラー側は更に人数が減ってしまった。

「戦闘中に呆けるのは良くないわ。魔物は待ってくれないのよ?」

 既に最初に比べたら半数以下となってしまったタイラーたちは、サラの苦言を聞いても呆けるのをやめられなかった。目の前で起こったことに対する処理が間に合わないのだ。

「は、範囲魔法だ! 範囲魔法で攻撃しろ!」

 それでも何とか持ち直したタイラーが指示を出すと、サラはその行きついた答えに満足したのか、頷いては頬笑みを浮かべている。

「やはり貴方は合格ね。青色のとは違うみたいだわ」

 タイラーの指示によって魔法を使える騎士が範囲魔法の詠唱に入るが、動き出したサラによって詠唱を終える前にその命を終えた。

「だけど、それならそれで魔術師を守らないとダメよ。相手がのんびりと待ってくれて、魔法を撃たせるわけがないでしょう?」

 タイラーは他の騎士に魔法の詠唱に入らせると、自らは殺されないということを活かしてサラへと果敢に攻め込んでいく。それに引き続いて他の騎士たちもサラへの攻撃を再開しては、タイラーの援護へと回った。

 そして詠唱が終わりそうな時に騎士たちが離れようとするが、今度はサラに張りつかれてしまい発動待機中の魔法が放てないでいた。

「団長、このままではっ!」

 味方の騎士が仲間もろとも放とうという暗に指し示した言葉をタイラーへ投げかけるが、タイラーはそれを許可しなかった。

「放ったところで被害を受けるのは仲間の騎士だ。あちらさんは難なく避けてみせるかもしれねぇんだぞ!」

「正解よ」

 サラが騎士を追い込みながらそう答えると、追い詰められている騎士は知らず知らずのうちに発動を待っている仲間の騎士の近くへと追いやられる。そしてサラがチラッとその騎士へ視線を向けると、相手にしていた騎士をそっちのけで斬り伏せた。

 そこからは瞬く間にサラが相手の騎士の数を減らしていき、残るはタイラー1人となってしまった。

「約束はしていなけど約束通り貴方は殺さないわ」

「このままじゃ終われねぇ……俺は団長なんだっ!」

 別にヤケを起こしたわけでもなく、タイラーは団長である矜恃からかサラへと斬りかかり果敢にも攻めていく。それを受けるサラはタイラーを殺すつもりがないので、適度に相手をしつつタイラーの消耗を待った。

 やがて立つほどの力さえ入らなくなったタイラーは、地面に膝をついてサラを見上げる。

「お前たちはいったい何なんだ……その強さは魔王って言われたっておかしくねぇだろ……」

「私たちは人族よ。一部人族じゃない種族も入っているけど、そんなことは些事だわ。私たち女性が求めているものはケビンの幸せ、ただ1つ。それを貴方たちが壊しに来たのよ。許せるはずがないでしょう? 貴方だって幸せを壊しにきた連中を快く歓迎したりしないでしょう?」

「だが、教皇聖下がおたくらの大将を魔王認定した。おたくらがどう思おうともこれは覆らねぇ。今回はうちの負けだが、これで終わりにはならないぜ。これからもセレスティア皇国のあの手この手が、おたくらの大将に降りかかるだろう」

「構わないわ。ケビンも暇つぶしができるだろうし、そもそもケビンがもう魔王だと名乗っちゃたもの。そっちが今更取り消しても遅いのよ。ケビンが楽しそうだから許してあげるけど」

「はぁぁ……降参だ。俺はもう戦えるだけの体力が残ってねぇ」

「あとは好きにしなさい。もうそろそろ総団長さんもやられるから」

 サラからそう言われて同じ場所へ視線を向けたタイラーは、その先でアブリルと総団長の戦いが起こっているのをその目に捉えたのだった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「くそっ、くそっ!」

「言葉遣いが汚くなっていますよ?」

 ガブリエルがいくら攻撃を仕掛けてもその剣は躱されるか拳で弾かれてしまい、アブリルへただの1撃すら浴びせることができないでいた。その悔しさからかガブリエルはいつしか言葉遣いが荒くなり、それをアブリルに指摘されてしまうのだった。

「まだです! 【スラッシュ】!」

 持ち直したガブリエルがおもむろに剣を振り下ろすと、その剣筋から剣閃が飛びアブリルを捉える……ことはなかった。

「どうやら集中力を欠いてしまっているようですね。そんなあからさまな攻撃が通用するわけないでしょう。剣の動きを見ればどこに飛んでくるか丸わかりですよ?」

「【スラッシュ】、【スラッシュ】、【スラッシュ】、【スラ――!」

 もう半ばヤケになったような感じで剣技を繰り出していたが、アブリルにとっては避けることなど容易いことで、ヒラヒラと舞いながらガブリエルから放たれ続ける剣閃を避け続けていた。

 ガブリエルにとってはこれ以上の屈辱はなく、いっそクララの時みたいにサクッと殴られて倒されてしまえば立ち直りも早かっただろう。

 だが、アブリルはケビンのために時間稼ぎをしては、セレスティア皇国軍へ大打撃を与えることを念頭に置いているので、避け続けられるガブリエルは自分の実力のなさを噛み締めてしまう状況に落とされる。

「どうして……」

「何ですか? 主様へ頭を下げる気になりましたか?」

「どうして攻撃してこないのですか!?」

「貴女に殴る価値があるとでも?」

「ッ!」

「戦いというのは双方が認めあってこそ、そこに華が咲くのです。一方的に殴るのは戦いではなく蹂躙です。たとえ敵同士でも、互いに認めていれば価値のある戦いとなります。さて、貴女のどこをどう見て価値を見い出せと?」

「わ、私は栄えある神殿騎士団テンプルナイツの総団長です!」

「それに価値はあるのですか? 立場に価値を見い出すというのなら、私はその役職と戦えばいいのですね? それならば攻撃しましょう。私はケビンパレスが1人、No.2のアブリルです……はい、これで戦いは終わりましたね。ご苦労様でした。お帰りはあちらですよ?」

 淡々と告げてきたアブリルの言葉に対して、ガブリエルは二の句が告げられなくなる。早い話が武力をぶつける戦いではなく、口上戦のように口撃を持ってして戦われてしまったからだ。

 加えて相手の判断により戦いを終えられてしまっては、ガブリエルとしても納得がいかない以前にありえないことだとして怒りを顕にした。

「ど、どこまで侮辱すれば気が済むのですか!?」

「侮辱も何も、立場に価値を見い出したのは貴女でしょう? 総団長という立場が戦うのでしょう? 貴女自身ではなく? 私はそれにお応えしたまでです」

「私は……私は……」

「全く……どこまで行ってもバカリエルですね……」

 幾度となく言われ続けてきた蔑称に、ガブリエルはとうとう総団長という仮面が剥がれて素の口調で反論する。

「私はバカリエルじゃない! ガブリエルっていう立派な名前があるもん! 院長先生がつけてくれた名前を馬鹿にするな!」

「ふむ……院長先生ですか……つまり貴女は元孤児というものですね? 『孤児は大事に。孤児に責任はない。悪いのは孤児を作る環境と大人の責任だ』」

「な……何ですか、それ……」

「我が主様の教えです。私たちの価値観は基本的に弱肉強食。たとえ孤児という者たちが出ようと、生きるか死ぬかはその孤児次第。そう考えておりましたが……私にも娘がいます。今年で3歳になりました」

「えっ……」

「娘が生まれた時はとても嬉しかったです。今までは単に個体数を増やすためだけのものと考えていましたが、あの感動は忘れられません。そしてそれを与えてくれた主様に対する愛しき想いも増えました」

 いきなりの急な展開についていけないガブリエルは、アブリルの語る内容を呆然としながらも聞き続けていた。

「その時に思ったのです。もしこの子が家族を失い孤児となって、1人きりになったらどうしようと。それを想像したら、とても耐えられるような気持ちではありませんでした。だから主様が孤児を大事にする気持ちを私も理解することができたのです」

 ガブリエルは思う。『この人はこの状況でいったい何を言っているのだろう』と。そしてその答えは続くアブリルの言葉によって理解させられる。

「ですから、ガブリエル。孤児であった貴女が死ぬことなく大人になったことへ敬意を表して、ここからは戦いをしてさしあげます」

 今までとは違う雰囲気を身に纏ったアブリルを見たガブリエルは、無意識のうちに後ずさりをしてしまい、それを意識したら自分の脚が震えていることを自覚する。

 そしてそれは今まで『バカリエル』と呼ばれていた言葉から、『ガブリエル』へと変わったことに気づく思考すらも奪い去っていた。

「本気は出しません。貴女を殺すことは主様が禁じていますので。ですが、対応しないと痛いですよ?」

 ガブリエルがアブリルへ視線を戻すと、既にそこにはアブリルの姿がなく真横から声が聞こえるのだった。

「呆けていないで戦う相手をちゃんと見なさい」

 その瞬間に腹部へと走る衝撃。ガブリエルは気づけばアブリルから殴り飛ばされていた。

「がはっ……ゴホッゴホッ……」

「立ちなさい、ガブリエル。戦いはこれからですよ」

 それからガブリエルは立てばアブリルから殴られ、膝をついていても状況を変える手立てが一向に思いつかず、為す術なくアブリルからの攻撃をその身に受けていたが、『負けたくない』という意思だけでアブリルへと食らいつく。

「これで最後です、ガブリエル。貴女にもいつか……家族を持つ喜びを与えてくれる人が現れるといいですね」

 その言葉を耳にしたのを最後にガブリエルの意識は途絶えた。

「戦況は……上々と言ったところでしょうか。この分ならセレスティア皇国軍はもう終わりですね」

 こうしてガブリエルを倒したアブリルはケビンへ状況を報告すると、その場から姿を消すのであった。
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