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第169話 ブラック社畜のスミレさん

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 奇跡的な出会いをしたボク達ですが、駅のど真ん中でお話しするのもアレなのでレストランに向かう事になりました。ここは男らしくボクが彼女達をエスコートしようと思います。

 話す内容にレイプとか危険なワードがあるので、以前恵美さんと行ったことのある個室の高級レストランに向かいましょう。そうです、あの至高のハンバーガーを食べた美味しいお店です。

 でもあのお店は会員専用な気がします。ボクが行っても門前払いにされるような……? よし、困った時は恵美さんに相談だ! 幸いな事にミウちゃんとスミレさんは二人でコソコソとお話し中なのでした。今がチャンス!

 スマホを取り出して電話を掛けたところ、ワンコールで出てくれました!

『もしもし、ユウ君?』

「あ、恵美さんこんにちは! 今大丈夫ですか?」

 電話とかで必ず最初に『あっ』って言っちゃうのは何でだろうね?

『ユウ君だったらいつでもオッケーよ。それよりどうしたの? あ、分かった。夏っちゃんと喧嘩して家出の相談よね? うんうん、今日から家来るのね? オッケオッケ、待ってるからね~』

「ち、違いますよー! 夏子さんとはラブラブですし、喧嘩なんてしてませーん。それより具合は良くなりましたか? 風邪引いたって聞きましたよ?」

『あっ! なんか熱出てきたかもー。ユウ君がお見舞いに来てくれないと死んじゃう~! ごほっごほっ……』

 さっきまでピンピンしてたのに急に咳をしています。きっと仮病ですね?

「えええ!? だ、大丈夫ですか? 夏子さんが妊娠中で万が一にも風邪を移したら大変なのでお見舞いには行けそうにないです……ごめんなさい。そっかー、今週の『ホストクラブユウタアレ』はお休みですね。綾香さんにも伝えておきますね!!」

『ちょっ、待った待った! 気のせいだったみたいだわ~。うーん、寝不足だったのかな? ユウ君の可愛い声を聞いたら元気になっちゃったわー! だから、ね? 今週もホストクラブユウタやりましょう?』

「もう、しょうがないですねぇ恵美さんは。分かりました、綾香さんにも伝えておいて下さいね?」

『オッケー! うひひ、やる気出てきたわ~』

 やっぱり仮病でしたね。でもボクに会いたいっていう気持ちが伝わって来て嬉しくなりました。

「ちょっとちょっと、誰と話してんの? あーしが居るんだからあんまし電話でイチャイチャしないでよねー」

「あ、ごめんねミウちゃん。恵美さんにレストランの場所と予約を聞こうと思ったんでした」

『えっ、美羽いるの? おーい美羽~』

「おー、メグ久しぶりー!」

 ボクのスマホがミウちゃんに奪われてしまいました。ふむ、長くなりそうだ。しょうがない、一人ぼっちで黄昏ているスミレさんとイチャイチャしてよう。

「スミレさんは今日はお仕事お休みだったんですか?」

「え、ええ……。仮病使って強引に有給使ったのよ……。それくらいしないと休みなんて貰えないし、きっと今会社スマホの電源を入れたら着信が止まらないと思うわ」

「ひぃ……!」

 なるほど、超絶ブラックな会社なのですねキリリンビールさんは。そう言えば以前、テレビでキリリンビールさんのパワハラが話題にあったような気がします。確か飲み会の場で上司が部下にもっと売り上げ伸ばせって説教していたのです。楽しい飲み会の場で説教するビールメーカーって騒がれていたのを思い出しました。あれは営業さんだからなのかと思っていたけど、スミレさんを見ると企業的なパワハラ体質なんですねぇ。

 ビクビクと震えるスミレさんを見ていたら、ストレス解消にレイプオプションを付けちゃうのも分かる気がします。

 ボクが可哀想な子を見る目でスミレさんを憐れんでいたところ、ミウちゃんの通話も終わったようです。

「おまたせユウコ。レストランの場所聞いておいたから行こうか」

 そうしてボク達は、恵美さん御用達の高級レストランへ向かう事となったのでした!



   ◇



 タクシーを使ってやってきたのは個室もある高級レストランです。前にボクが隠しダンジョンを攻略されて恵美さんと一緒に水族館へ行った帰りに寄ったレストランですね。あの時食べたハンバーガーは最高でした。今日も食べようかなー。

 ミウちゃんは場慣れしているのか堂々と歩いているけど、スミレさんはビビッて挙動不審ですね。そりゃレイプした挙句、知らない女性に囲まれて個室レストランに連れて行かれたらビビるのは当然かもしれませんね。怖いお姉さんが勢揃いして身ぐるみ剝がされちゃうとか思ってそうです。

 店員さんに案内されて入った個室には、なんと恵美さんと綾香さんが居たのでした!

「あ、きたきた。やっほー!」

「どうも初めまして、恵美様の秘書をしております綾香です」

「こんにちは。お二人も一緒にお昼だったんですね。今日はボクがご馳走しますよ~」

「うへへ、ゴチになりま~す」

 席に着いてみんなが好きなものを注文して自己紹介を行いました。ミウちゃんと綾香さんは初対面か。どうやら恵美さんと綾香さんは近くに居たらしく、ミウちゃんのお誘いで一緒にお昼を食べる事になったそうです。さすミウ!!





 それからしばらくの間みんなで雑談しながらご飯を食べていたところ、恵美さんが本題に斬り込んだ!

「へぇ~、スミレちゃんってば随分楽しそうな事してたのねー。……どうだった? 興奮した?」

「そ、その………………はぃ。すっごく……楽しかったです」

 スミレさんがビクビクしながら話しています。スミレさんを囲んで尋問しているみたいで可哀想になって来ました。

「スミレさんったらそんなビクビクしないで大丈夫だってー。ユウタだって騒ぎにしようだなんて考えてないっしょ?」

「も、もちろんですよ!! これは偶然に偶然が重なっただけの事です。ボクもキリリンビールのお仕事が貰えるチャンスと思ってノリノリでしたし、もう気にしないで下さい」

「ユウタ様……」

 スミレさんがウルウルした目でボクを見つめて来ます。きっと仕事でボロクソに罵倒されているスミレさんはボクの優しさに惚れちゃったんですね!! ふふ、罪な男ですねぇ。

 ちょっとだけ安心したような顔になったスミレさんが美味しそうにステーキを食べています。ボクはハンバーガーセットですけどね!

 どうやらスミレさんも緊張が解れたようです。やっぱり女性には笑顔が一番ですよね~。

 他の女性陣とも打ち解けたのか、スミレさんのお話が始まりました。

「ううぅ……みなさん聞いてくださいっ! あたしキリリンビールで広報の仕事をして一生懸命働いたんです。なのに、なのにクソ上司がもっと働け、サンガリーに負けるなって精神論しか言って来ないんですっ!! しまいにはユウタ様と契約してCMに出て貰えって毎日毎日言ってくるんですよ。うわーん!!」

「あーあ、スミレさんの変なスイッチ入っちゃった。昨日BARで偶然知り合ったんだけどね、かなり精神的に参ってるようだったからあーしとBARのマスターで男で発散しろって発破かけたのよ。そうしたらユウタが釣れたって訳。良く考えたらめっちゃウケル!」

「噂では聞いてたけど、かなりブラックな会社なのねー。ビールは美味しいのに残念な会社ねー」

「あのあの、恵美様。私もかなりハードワークで大変なんですけど……?」

「ああん? アヤちゃんってばそんな事言うのね~? 一週間頑張って辛い仕事をやり切った後に迎えるホストクラブユウタお楽しみが最高なんじゃない?」

「た、確かにそうですね!! ストレス発散にはやっぱりアレですよね!!」

 スミレさんの暴露から女性陣のが盛り上がってます。そして流れはホストクラブユウタのお話に……。

「ちょっとメグ、あーしに隠して何か楽しそうな事やってんじゃないの?」

「うへへー、実は週末にユウ君とホストクラブごっこして遊んでるんだ~。いいでしょ~?」

「まじかっ!! メグばっかりずるいっ、あーしもやーりーたーいー!!」

「ホストクラブユウタは一般人NGの会員制よ。品行方正な淑女しか入れないのでした~」

「ぐぬぬ……それだったらメグだって入れないじゃない! あーあ、ユウタに全部話しちゃおうかなー? メグの武勇伝を」

「ちょっ、それは卑怯よ!!」

 何やら恵美さんとミウちゃんが楽しそうにイチャイチャしています。恵美さんの武勇伝とやらにはちょっと興味ありますけど聞かない方が良さそうな気がしますね。

 お隣では綾香さんがスミレさんを慰めています。よし、ボクはこっちに参加しようかな。ジンジャーエールのような炭酸飲料をストローでズゾゾーと吸い上げて気合を入れます。

「ううぅ……綾香さんありがとうございます」

「いえいえ、私もスミレさんの気持ちが良く分かりますよ。恵美様も急に会議をブッチしたりしますからね。今日だって本当は午後から会議だったのですが、遅刻して行くって言ってますよ……。関係者には私が頭を下げて謝ったんですけど、辛いですよね」

「綾香さんも辛い思いをしているんですね……。でも私よりも元気で生き生きとしているような?」

「それはもちろん週末にストレス発散ですよ~」

「やっぱり男なんですね?」

「うふふ……正解です♪」

 恵美さんはサボりの常習犯です。きっと綾香さんも苦労しているのでしょう。そんな綾香さんとスミレさんは意気投合したのかお互いに慰め合っているのでした。

 ブラックな会社にずっと居ても良い事ないと思います。偶然知り合ったスミレさんですが、何か良い方法は無いのでしょうか?

「皆さん大変なんですねぇ。いっその事、スミレさんは会社を辞めたらどうでしょうか? 凄くブラックな感じですし、そのうち体を壊しちゃいますよ?」

「そうですけど……。私なんか雇ってくれるところなんて無いですし……」

 ああ、またスミレさんが落ち込んでしまいました。ボクの会社はまだ出来ていませんし、ミウちゃんの実家は業種が違います。うーん……。

 その時、ユウタブレインがキュピーンと閃きました。目の前に経営者が居るじゃないかと!!

「あのあのっ、恵美さん! 綾香さんがお仕事大変って言ってましたし、スミレさんを雇ってみてはどうでしょうか!?」

「んー?」

 ボクの話を聞いた恵美さんの目が鋭くなりました。経営者の鋭い目でスミレさんを射抜きます。

「ユウ君がどうしてもって言うなら考えても良いけど…………。あっ、そうだわ! 今週末に面接してあげる。スミレちゃんは履歴書作って来なさい。アヤちゃんセッティング任せたわよ?」

「分かりました恵美様」

「えっ!? 面接ですか?」

 何やら恵美さんと綾香さんの間でアイコンタクトが交わされました。きっとろくでもない事を考えているのでしょう。そして状況に付いていけないスミレさんがキョロキョロしています。

「面接はあたしの家でやるからね。ユウ君も必ず参加する事、良いわね?」

「うぇっ!? ボクもですか?」

「当たり前じゃなーい! スミレちゃんはユウ君の推薦なんでしょ? 最後まで責任持って貰わないと困るわよ~」

「た、確かに……?」

 いや、ボクは必要ないと思いますけど……。週末って言ってたし、どうせ飲み会をしたいだけな気がします。

「あ、週末だったらあーしも予定無いから付いてってあげるねユウタ♪」

「あんたは呼んでないわよー。これはね、神聖なる儀式なの。スミレちゃんがうちの会社に相応しいかチェックする大事な面接なんだから。ミウは来なくて良いわよ?」

「絶対に怪しいしっ。絶対にあーしも参加するし」

 また恵美さんとミウちゃんのイチャイチャが始まってしまいました。ふぅ、どうやら週末は何かイベントがありそうな予感です。




 そうしてボクの主夫としての休日は終わったのでした。



   ◇



 お家に帰ってシャワーを浴びてスッキリした後、久しぶりにゲームをして遊んだりして時間を潰しました。

 そしてお夕飯を食べている時に今日の報告をしています。

「ユウタ君、今日は一日楽しかったかしら?」

「はいー! やっぱりお外の空気を吸うとリフレッシュ出来ますね」

「そうね。定期的な運動は大事だから、夜とかに一緒に歩きましょうか?」

「良いですね!」

 今日の夕飯は葉物野菜がたっぷりなヘルシーメニューです。何やら夏子さんの体の事を考えたスペシャルメニューなのだそうです。お手伝いしてる時に桜さんから聞きました!

 そんな桜さんですが、ずっとジト目をボクに向けて来るのでした。ボク、何かやっちゃいました?

「あのですね、今週末に恵美さんのところにお泊りになりそうなんですけど……良いですか?」

「さっきメグちゃんから連絡貰ったから聞いてるわよ。そうね、あんまりお酒飲み過ぎちゃダメよ?」

「わ、分かりましたー!」

 ふぅ、どうやら外泊許可を貰えました。でも何故だろう、桜さんの目が更に鋭くなってますよ?





 ご飯を食べ終わって洗い物をしていたところ、桜さんがコッソリと近づいて来てボクの耳元で囁きました。

「ユウタさん、今日は私の番ですからベッドで待ってますからね?」

「っ!? 分かりましたっ!!」

 つまりそういう事ですねっ! 愛棒がピクンと反応しました。

 しっかりとお風呂に入ってから向かうとしましょう。いくぞ、愛棒!!

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