水神様の注意事項についてよーく聞いておくように

渡り廊下

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よくよく考えてみればうちの子って結構モンスタだよね

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「す、ストーップ!何してんの!?」

急いでわたしの中に戻り少年を岸に戻す。あぶな、うちの子が危うく殺人犯になるとこだった。
てか誰だこの子たちは。
岸には襲われていた10歳くらいの少年とその少年の弟らしき少年がこちらを怯えた目で見ている。どちらもすごく泣きそうになっていて、弟君に関して既に泣いている。
さてどうしたものか。
わたしの心中など預かり知らない子供たちは呑気にも群がってくる。なんとも楽しそうなその様子に少しの脱力感を覚えた。
…楽しそうね、みんな。

「おかえり!まま!」
「ただいま。いい子にしてたかな?」
「うん!」

きゃらきゃらと笑い声を上げながら私の周囲を泳いでいるミニドラゴンたちと人魚たちを撫でる。
あれ?そういえば他の子たちは見当たらないな。
いや、わたしの中にいるのはわかってるんだけど下の方でなんか隠れているみたい。
ええ、もう何?とりあえず誰か説明して?
未だあの少年たちは逃げておらずこちらを見ている。怪我をしている様には見えないけどな。まだ何かあるのかな。
そう思ってそちらに視線を寄越せば大袈裟なくらい肩が跳ねた。超怖がられている。ちょっとショックなんですけど。
とりあえず少年たちのことは置いといて子供たちに聞いてみることにしよう。

「これは一体どういうこと?あの子たちは誰?」
「わるいやつだよ!どろぼう!」
「泥棒?あの子たちが?」

大きく声を上げたリュータは少年たちを見ながら「ギュールルルル!」と威嚇の声を上げた。他の子たちも少年たちを睨みつけている。あの少年たちは一体何したんだろう。
あ、弟くんが耐えきれなくなって泣き声を上げ始めた。
リュータを宥める様に撫でれば嬉しそうに擦り寄ってくる。うん今日もかわいいね!
兎にも角にも少年たちにも話を聞かなくちゃ。……聞けたらだけど。
ついてこようとす子供たちを抑えて少年たちにゆっくり近づく。なるべく怖がらせない様にして、ゆっくり。
ただあまり効果はないみたいで少年たちは怯えたように後ずさる。なんで逃げないのかなって思ってたけど、もしかして怖くて体が動かないのかな?

「大丈夫?ごめんねあの子たちが。悪気はないの」

多分。

「話を聞きたいんだけどいいかな?怖いことはしないよ」

安心させるように笑みを浮かべてみる。……やっぱダメそう。そりゃ死にかけたしねえ。困ったな。
弟の手前我慢していた兄の方の少年がいよいよ耐えきれなくなって泣き始めてしまった。
ああ~…どうしよ。

「ヒック、ご、ごめんなさい!殺さないでぇっ、うぇっ」
「うえぇぇぇん!にいちゃあん!」
「こ、殺さないよ!ただ話を聞きたいだけ!ね?君たち近くの島の子たちだよね?どうしてここにいるのかな?」

あぁああ!困るんだってえ!
うちの子だったら抱き上げれば泣き止んでくれるけど、この子たちはそうじゃないしそもそも私たちを怖がっているし!
どうしたらいいのコレ!
なんとか怖がられずに話を聞こうとするが一向に泣き止む気配はない。
しょうがないから子供たちの元に戻る。今は何を言っても逆効果そうだしね。

「どうしたの?みんな」

子供たちの様子がおかしい。
少年たちに話しかけるまではあんなに楽しそうにしていたのに今はなんだか悲しそうな不満そうな顔をしている。
何?どうしたの?私なにかした?

「まま、うれしくない?」
「何が?」
「ぼくたち、きょうだいを守るためにあいつらどっかやろうとした、でも」
「やっちゃダメだった?ままうれしくない?ぼくたちいけない子?」

言葉を紡ぐたびにその瞳から涙がじわりと浮かんでる。
そうだ。さっき少年たちをこの子たちは泥棒だって言ってた。つまりこの子たちは私がいない間、この湖とここに住む子供たちを守ろうとしてくれたんだ。
ああもう、私のばか。
子供たちを優しく引き寄せて抱きしめる。今の私なら十数人余りの子供たちを抱きしめるのも簡単なことだ。

「ううん、そんなわけないよ。みんなもママも守ってくれようとしたんだね。ありがとう、優しい子たち。大好きだよ。」
「ぐすっ、うん、まま。だいすきだよ!」

グスグスと鼻を鳴らす子供たちを目一杯抱きしめる。そのまま水流に流して揺らしてあげれば次第に笑い声が混じり始める。この子たちは水流で遊ぶのが大好きだから。
よかった。もう泣いてないね。
水流に身を任せて流されていく子供たちを横目に、今度は少年たちに目を向ける。
あ、まだいる。やっぱ逃げないんだね。まあ泣き止んでくれたみたいだからいいんだけど。
ニコリと笑って手を振ってみれば兄の方はびくっと肩を揺らしてこちらを睨んできた。生意気な。さっきまでギャン泣きしてたくせに。
弟の方は楽しそうに遊んでいる子供たちをじぃっと見つめている。羨ましいのかな?あんな目にあわされたのにこっちは図太いな。
さてどうしたものかな。
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