異世界探訪記

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魔法の枕

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 枕が変わると眠れない。そんな話を聞く事もあるが、幸いにして私とは無縁の言葉であった。それは、私が割合、何処であろうと寝れてしまうたちだから。
 だから、新しい枕を買おうと思った事も無かった。けれど、それも向こうの世界の話だ。



 この世界に来て旅を始めてから、私は枕を使っていない。旅暮らしの間、枕を持っていると邪魔になる為、持ち歩いていないのだ。だから如何に〝魔法の枕〟と銘打たれていても、普段なら買う事は無かっただろう。

 けれど、その時の私はつい吸い込まれる様に枕に手を伸ばしていた。それは、別段特別な枕には見えなかった。だけど、それでも私が手を伸ばしたのは、それが向こうの世界で使っていたものと瓜二つであったからに他ならない。ふと、懐かしさを感じて手に取ってしまったのだ。
 だけど、それが間違いであったのだろう。私はその〝魔法の枕〟に懐かれてしまったのだから。



 後から聞いた話によれば、その枕は持ち主を選ぶ枕なのだという。そして、その持ち主の睡眠を補佐し、寝ている間に傷病を治す魔法の枕なのだとか。だから、枕に選ばれたのは幸運だと言われたのだけれど、その魔法に見合う出費を強いられた私にとっては、不運の象徴に思えてならなかった。



 ただ、誤解されるといけないので補足しておこう。その枕は出費に見合う性能であったのだと。
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