【完結】貴族社会に飽き飽きした悪役令嬢はモブを目指すが思わぬ事態に遭遇してしまう

hikari

文字の大きさ
13 / 15

婚約

夏の日差しが眩しい。

この日もまた王宮に行くことになった。

トールとはかれこれもう10回以上会っている。


(トールは私を騙そうとはしてないわ!! トールを信じる!! お医者様なんてもうどうでも良いわ!!)


スティーブンは医者を志していた。

しかし、相手にされなかった。

元々狙っていなかった。

記憶が戻る前から、無視されていたから。

そう。これが悪役令嬢の宿命というやつ。


クララは王宮の階段を昇っていた。

すると、上の方から声がした。

「クララ」

トールだった。

「よく来てくれたね」

トールの笑顔には癒やされる。


「ヴィクトール王子殿下。今日も参りました」

「今日はね」


トールは階段から降りてきた。

「僕の部屋に来て欲しいんだ」

部屋?

いつも二人が会うのは執務室だった。

部屋って……寝室?


「寝室ですか?」

「そうだけど。変なことはしないよ」

変なこと……。


実はクララは結婚こそはできなかったけれど、処女ではない。

そう、結婚詐欺師に身体を許してしまったのだ。

結婚詐欺師には「浮気をしないように」と陰毛を剃られたのだ。

それをふと思い出してしまった。


(でも、トールなら信用できる)


トールとは学園時代の同級生。

交友関係も把握済み。


「ここだよ」

トールは部屋のドアを開けた。

「失礼致します」

クララはトールの部屋に入った。


部屋は絵画が飾られていた。

ふと、背後に人の気配を感じた。

メイドだった。

「アイシャ。ケーキとお茶を持ってきて」

「かしこまりました」

メイドはそう言って踵を返した。


「実はね。今日は特別な日だよね?」

この日はクララの18歳の誕生日だった。

「はい、ヴィクトール王子殿下。今日はわたくしの誕生日でございます」

「おめでとう」

トールは笑顔を見せた。そして、続けた。

「実はね……」

トールは小さな小箱をテーブルの上に乗せた。

「粗品なんだけど……」

粗品?

トールは小箱を開けた。

「これ」

中には宝石が嵌め込まれた指輪だった。

「さあ、手を出して」


クララは敢えて右手を出した。

「違うよ。反対の手!」

もしや!!

クララは左手を差し出した。

「はい」

トールは指輪を嵌めた。

「どう? 嫌ならいいんだよ」

「嫌ではありませんわ!! 嬉しいですわ」

それもそうだ。

アラフォー生涯独身の自分がようやく結婚できたのだ。

(嘘……みたい)

「本当にわたくしで良いのですか?」

「勿論だとも!」

「後悔無いですか?」

「後悔なんかしない!!」

「わたくし、魔法を使った料理ができないんですよ?」

「きみは手作りにこだわっている。あの手作り弁当は美味しかった」


トントン。

扉をノックする音がした。

先程のメイドがお茶とケーキを持ってきた。

「このケーキは特別に美味しいんだ。勿論、手作りさ」

クララはケーキに口をつけた。


美味しい。

しかも、見るからに高価なケーキ。


改めてクララは転生に感動してしまった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花*Q−73@文フリ東京5/4
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。