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グラント家
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「ようこそ、グラント家へ。私は執事のアダムと申します」
初老のちょび髭で小柄な男性がそう言った。
髭を生やしているという面ではなんとなくトーマスに似てなくもない。
「初めまして。私はディアナ・レンスターと申します。この度、ヴィルヘルムさんに会いにこちらに来ました」
「ヴィルヘルム様もディアナさんが来るのを今か今かと待っておりましたよ。さあ、ついてきて下さい」
ディアナはアダムについていった。
屋敷の中は広い。
ところどころに壷やら絵画がやらがある。
ドキドキしてきた。
ヴィルヘルムとは噂通りの人なのか?
いや、違う人なのか?
後者であって欲しい。
アダムが足を止めた。
「ここがヴィルヘルム様のお部屋です」
コンコン。
「ヴィルヘルム様。ディアナ様を連れてきました」
「中に入れてやってくれ」
「はい」
アダムは続けた。
「さあ、ディアナ様。ヴィルヘルム様が中でお待ちですぞ。中へとお入り下さいませ。ではわたくしはこれにて失礼させていただきます」
ディアナは中へと入った。
「初めまして。ディアナ・レンスターと申します」
ディアナは頭を30℃ほど下げ、お辞儀をした。
部屋にはソファーが2つあり、テーブルを挟み、向かいあうように並べられていた。
四方は本で溢れかえっている。
ジョージとは違い、何やらお固い系の本を読んでいるようだ。
ソファーには背の高い中肉中背の男性がいた。
肩まである青い髪に青い瞳。筋の通った鼻。厚い唇。
ジョージとは違う魅力がある男性だ。
部屋はパイプ臭くない。
テーブルの周りを舐めるように見回したが、パイプは無い。
パイプを吸わないのか?
「ど~も! 初めましてまして~。私がヴィルヘルムですぞ。よく来られましたね。道中長かったね。ゆっくりしていくと良いよ」
「はい。ありがとうございます」
部屋には暖炉があった。
パチパチ音を立てて、炎が燃え盛っている。
少し暑い。
ディアナは服を着込んでいた。
「おー。ディアナ」
ヴィルヘルムが一瞥してきた。
「暑いだろう? 上着を脱ぐといい」
ディアナは異性の前で服を脱ぐという行為が憚れた。
「大丈夫だよ。襲ったりなんかしないからさ~」
「あ……はい」
ディアナは躊躇はしたものの、やはり暑さに負けず上着を脱いだ。
「お~い、サリサ~」
ヴィルヘルムは指笛を吹いた。
「はい、御主人様」
「あ~、紹介しよう。彼女はレンスター伯爵令嬢だ。んで、こいつはうちのメイドの一人のサリサだ」
「初めまして。宜しくお願いしますわ」
ディアナは頭を下げた。
「初めまして。ご紹介に預かりましたメイドのサリサですわ。以後お見知りおきを!!」
サリサは深々と頭を下げた。
サリサ……。メイド……。
一体どのように扱われているのだろう?
でも、サリサの表情は良いし、元気も良い。
本当に彼女は酷い扱いを受けているのだろうか?
とてもそういうようには思えない。
「サリサ。彼女に紅茶を持ってきてあげて」
「はい、わかりました~!!」
サリサは元気よくそう答え、踵を返した。
「そしてな。家族がここにいるんだ」
「え!? 家族ですか!?」
どこをどう見渡しても家族らしき人はいない。
家族って?
「セス」
にゃーん!!
猫の鳴き声がした。
猫は鈴の音を響かせながら、ヴィルヘルムのもとへ行く。
猫は大きな黒ぶちの長毛種の猫だった。
「愛猫のセスだ」
「猫を飼っていらっしゃるんですね? 私も猫を5匹飼っています」
「おお! 同じ愛猫家だったのか~!! それならさらに話が合いそうだねぇ」
ヴィルヘルムは続けた。
「猫好きに悪い人はいない。私はそう思っている。そうだね。ディアナは愛猫家だけあって魅力的な女性だ。きみのような女性は地球上に誰一人としていないよ」
へ!?
頭の上にはクエスチョンマークでいっぱいだった。
想像とは全く違う。
こんな気さくな人だなんて聞いていない。
「なんか……聞いた話によると君は誰かと婚約破棄をしたようだね」
え!? 何で知っているの? と思った。
ヴィルヘルムは続けた。
「何で知っているのかいって顔に書いてあるね。そう。レンスター伯爵から聞いたんだよ。手紙にそう書かれていた」
「はい、そうですが」
「う~わ~き~ね~。ダメ、絶対だねぇ。一途に愛せない男なんて捨てて正解だよ~」
「はい。彼は浮気をしていました」
「どこのご令息なんだね?」
「バス侯爵です」
「ええっ!? バス侯爵ご子息が!?」
やはり、怪訝な顔をしている。
ジョージはやはり評判の良い男なだけに、ヴィルヘルムも信じられないのだろう。
「彼は確か占い師だったよな?」
「はい。そうです」
「よく当たるってよりはカウンセラーに近い占い師。評判も良い。んで、何でそんな男がよりにもよって浮気~?」
ヴィルヘルムはハイテンションだ。
「そうなんです」
「そいつ、なんだかわかったぞ。マトモな人間じゃない。私にはわかる」
「え!? どういう事ですか?」
「天狗様なんだよ!!」
「天狗?」
「あのな。いわゆる『ナールーシースートー』ってやつだ」
確かに言われてみれば俯瞰できる節はある。
「その男、自信過剰だろ? 俺様カッコいい~♡とか言っちゃっている男だろ?」
「は……い。心当たりあるかもしれません」
「そういう男は狼だ。気をつけろ」
ヴィルヘルムは続けた。
「そんな男と一緒になっても幸せにはなれない。虐げられるだけさ」
コンコン
「はい」
「ヴィルヘルム様、ディアナ様。紅茶を入れました」
サリサがやってきた。
サリサはポットとコーヒーカップを持ってきた。
「これはな、わがグラント領で採れた茶葉なんだ。とても美味しいから飲んでみて」
サリサは紅茶をなみなみと注いだ。
「どうぞ」
「はい。ありがとうございますわ」
ディアナは一口口に含んだ。
美味しい。とてもハーバーだ。
「健康にも良いんだぞ」
「では」
サリサは踵を返した。
「まあ、ゆっくりしていきな。ここにいる使用人はみんなアットホームだからな。自由でのびのびとしているんだ」
やはり、噂とは違う……と思った。
本当に暴君なら?
サリサはもっと祖粗に扱われているだろう。
「それにな。私は思うんだ。実は占い師として評判が良くても、欲にかまけて裏では悪どい商売をしているかもしれない。あ、かもしれない。これはあくまでも私の見解だ」
ディアナには何だかその一言が凄く刺さった。
初老のちょび髭で小柄な男性がそう言った。
髭を生やしているという面ではなんとなくトーマスに似てなくもない。
「初めまして。私はディアナ・レンスターと申します。この度、ヴィルヘルムさんに会いにこちらに来ました」
「ヴィルヘルム様もディアナさんが来るのを今か今かと待っておりましたよ。さあ、ついてきて下さい」
ディアナはアダムについていった。
屋敷の中は広い。
ところどころに壷やら絵画がやらがある。
ドキドキしてきた。
ヴィルヘルムとは噂通りの人なのか?
いや、違う人なのか?
後者であって欲しい。
アダムが足を止めた。
「ここがヴィルヘルム様のお部屋です」
コンコン。
「ヴィルヘルム様。ディアナ様を連れてきました」
「中に入れてやってくれ」
「はい」
アダムは続けた。
「さあ、ディアナ様。ヴィルヘルム様が中でお待ちですぞ。中へとお入り下さいませ。ではわたくしはこれにて失礼させていただきます」
ディアナは中へと入った。
「初めまして。ディアナ・レンスターと申します」
ディアナは頭を30℃ほど下げ、お辞儀をした。
部屋にはソファーが2つあり、テーブルを挟み、向かいあうように並べられていた。
四方は本で溢れかえっている。
ジョージとは違い、何やらお固い系の本を読んでいるようだ。
ソファーには背の高い中肉中背の男性がいた。
肩まである青い髪に青い瞳。筋の通った鼻。厚い唇。
ジョージとは違う魅力がある男性だ。
部屋はパイプ臭くない。
テーブルの周りを舐めるように見回したが、パイプは無い。
パイプを吸わないのか?
「ど~も! 初めましてまして~。私がヴィルヘルムですぞ。よく来られましたね。道中長かったね。ゆっくりしていくと良いよ」
「はい。ありがとうございます」
部屋には暖炉があった。
パチパチ音を立てて、炎が燃え盛っている。
少し暑い。
ディアナは服を着込んでいた。
「おー。ディアナ」
ヴィルヘルムが一瞥してきた。
「暑いだろう? 上着を脱ぐといい」
ディアナは異性の前で服を脱ぐという行為が憚れた。
「大丈夫だよ。襲ったりなんかしないからさ~」
「あ……はい」
ディアナは躊躇はしたものの、やはり暑さに負けず上着を脱いだ。
「お~い、サリサ~」
ヴィルヘルムは指笛を吹いた。
「はい、御主人様」
「あ~、紹介しよう。彼女はレンスター伯爵令嬢だ。んで、こいつはうちのメイドの一人のサリサだ」
「初めまして。宜しくお願いしますわ」
ディアナは頭を下げた。
「初めまして。ご紹介に預かりましたメイドのサリサですわ。以後お見知りおきを!!」
サリサは深々と頭を下げた。
サリサ……。メイド……。
一体どのように扱われているのだろう?
でも、サリサの表情は良いし、元気も良い。
本当に彼女は酷い扱いを受けているのだろうか?
とてもそういうようには思えない。
「サリサ。彼女に紅茶を持ってきてあげて」
「はい、わかりました~!!」
サリサは元気よくそう答え、踵を返した。
「そしてな。家族がここにいるんだ」
「え!? 家族ですか!?」
どこをどう見渡しても家族らしき人はいない。
家族って?
「セス」
にゃーん!!
猫の鳴き声がした。
猫は鈴の音を響かせながら、ヴィルヘルムのもとへ行く。
猫は大きな黒ぶちの長毛種の猫だった。
「愛猫のセスだ」
「猫を飼っていらっしゃるんですね? 私も猫を5匹飼っています」
「おお! 同じ愛猫家だったのか~!! それならさらに話が合いそうだねぇ」
ヴィルヘルムは続けた。
「猫好きに悪い人はいない。私はそう思っている。そうだね。ディアナは愛猫家だけあって魅力的な女性だ。きみのような女性は地球上に誰一人としていないよ」
へ!?
頭の上にはクエスチョンマークでいっぱいだった。
想像とは全く違う。
こんな気さくな人だなんて聞いていない。
「なんか……聞いた話によると君は誰かと婚約破棄をしたようだね」
え!? 何で知っているの? と思った。
ヴィルヘルムは続けた。
「何で知っているのかいって顔に書いてあるね。そう。レンスター伯爵から聞いたんだよ。手紙にそう書かれていた」
「はい、そうですが」
「う~わ~き~ね~。ダメ、絶対だねぇ。一途に愛せない男なんて捨てて正解だよ~」
「はい。彼は浮気をしていました」
「どこのご令息なんだね?」
「バス侯爵です」
「ええっ!? バス侯爵ご子息が!?」
やはり、怪訝な顔をしている。
ジョージはやはり評判の良い男なだけに、ヴィルヘルムも信じられないのだろう。
「彼は確か占い師だったよな?」
「はい。そうです」
「よく当たるってよりはカウンセラーに近い占い師。評判も良い。んで、何でそんな男がよりにもよって浮気~?」
ヴィルヘルムはハイテンションだ。
「そうなんです」
「そいつ、なんだかわかったぞ。マトモな人間じゃない。私にはわかる」
「え!? どういう事ですか?」
「天狗様なんだよ!!」
「天狗?」
「あのな。いわゆる『ナールーシースートー』ってやつだ」
確かに言われてみれば俯瞰できる節はある。
「その男、自信過剰だろ? 俺様カッコいい~♡とか言っちゃっている男だろ?」
「は……い。心当たりあるかもしれません」
「そういう男は狼だ。気をつけろ」
ヴィルヘルムは続けた。
「そんな男と一緒になっても幸せにはなれない。虐げられるだけさ」
コンコン
「はい」
「ヴィルヘルム様、ディアナ様。紅茶を入れました」
サリサがやってきた。
サリサはポットとコーヒーカップを持ってきた。
「これはな、わがグラント領で採れた茶葉なんだ。とても美味しいから飲んでみて」
サリサは紅茶をなみなみと注いだ。
「どうぞ」
「はい。ありがとうございますわ」
ディアナは一口口に含んだ。
美味しい。とてもハーバーだ。
「健康にも良いんだぞ」
「では」
サリサは踵を返した。
「まあ、ゆっくりしていきな。ここにいる使用人はみんなアットホームだからな。自由でのびのびとしているんだ」
やはり、噂とは違う……と思った。
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