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悪夢の始まり

家から出てけ!

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かくして王太子に婚約破棄をされたローサ。王太子は城に帰り、リサは素知らぬふりをして歩く。

再び父、クロードの元に行った。しかし、クロードの返事は「お前は嫌われたんだよ」と言う。「リサに略奪された」と言っても「お前よりリサが良かったんたんだろ。潔く諦めな」と言う。「王太子殿下の意志だ。私には何の権限もない。下がれ」そう言ってパイプの先に火をつけた。全く二人の間には関与したくない意向だ。このままでは平行線をたどるだけ。

ローサは再び母の元へ行った。「だから言っているでしょう。王太子殿下がリサを選んだのだから、王太子妃の座はリサのものなのよ。全ては王太子殿下が決めた事。私には構わないで」だった。もはや両親はあてにならない。

「アイーダ。助けて」ローサはアイーダに泣きついた。そこへリサがやってきた。
「アイーダ姉さま。ローサお姉さまに騙されてはいけないよ。お姉さまが王太子殿下に嫌われただけなのよ」アイーダは首を左右に振る。
「リサ。いい加減認めなさいよ。私はローサお姉さまの味方よ」
「何でこの人手なしの味方するのよ!」とリサ。
「リサ。いい加減にしてちょうだい。私と王太子殿下が婚約していたことは周知の事でしょ?」と左手の薬指にはめられた指輪をこれみよがしに見せつけた。
「だから? 婚約していたと言っても王太子殿下も同じ人間だわ。気が変わる事だってあるじゃない。それにその指輪、もう要らないんでしょ? 売るなり煮るなり焼くなり何でもすればいいじゃない。それとも王太子殿下にまだ未練があるわけ?」
未練が無いと言ったら嘘になる。
「王太子殿下は私を……」
「ごちゃごちゃうるさいわね。負け犬は黙っていなさいよ」
リサは強気で出てきた。

「やめてよ!」
アイーダが間に入った。しかしリサは
「アイーダ。あなたも往生際悪いわね。王太子殿下は私を選んだのよ。わかる?」
口元を尖らせ、眉毛をピクつかせながら話す。

そこへ弟のヨハンがやってきた。
「僕はリサ擁護だ。何故か。やはり王太子殿下も婚約を破棄したかっただろうし、僕自身も婚約破棄をしたことがあるからだ」
そうなのだ。隣国の男爵令嬢に婚約破棄を言い渡したのだ。ヨハンがとある侯爵令嬢と交際していた事があった。結局は侯爵令嬢より破局を迫られたわけだが。
「父上も母上もこの件に関しては一切関与しないようだ。だとすれば、次期当主はこの僕だ。そうだ。次期当主のこの僕から言わせてもらう。姉上はリサに謝罪しなければ、この屋敷から出て行ってもらう。家族の秩序を乱すような人は要らない」
リサとの軋轢はもはや修繕不可能。溝は深まるばかり。もはや家を出るしかない。

名残惜しいがローサは家を出る事にした。
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